宙畑 Sorabatake

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SpaceXが大型宇宙船Starshipの詳細を発表!【週刊宇宙ビジネスニュース 9/23〜9/29】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

SpaceX、Starshipをお披露目!!

9月28日にSpaceXは開発中の宇宙船Starshipのプロトタイプ(Starship Mark1)を公開し、同社CEOのElon Musk氏がプレゼンテーションを実施しました。今回の発表については事前にかなりの注目を集めており、youtubeのLivecastでは5万人を超える人が中継を視聴していたそうです。

今回公開されたStarshipの全長は約165フィート(約50m)、直径9m、最大でおよそ100人が搭乗できるように製作されており、同社が現在開発中の大型ロケットSuper Heavyの上段に搭載して打ち上げられる予定です。Super heavyとStarshipを合わせた全長は合計して約387フィート(約118m)で、完全に再利用可能であるとのことです。

これらは、ZOZO前社長の前澤氏がアーティストと一緒に月を目指す際に搭乗するロケットと宇宙船と同じです。

StarshipとFalcon 1ロケットの大きさ比較 Credit : SpaceX

上記画像は、2008年に初めてSpaceXが打ち上げに成功したFalcon 1ロケットとの大きさ比較です。今回公開されたStarshipが銀色のボディなのは、プロトモデルのため塗装をしていないためだと推測されます。SpaceXは初打ち上げからの11年間で合計78回のミッションを成功させ、世界初の再利用可能な軌道投入ロケットの開発に成功してきました。これまでの同社の軌跡を感じることができますね。

Starshipと他の機体との比較 Credit : SpaceX

Elon氏の発表の中では、Star Warsに登場するミレニアムファルコンとの大きさ比較もあり、遊び心を感じますね。

Super heavyの概要 Credit : SpaceX

今回の発表で更新された点は、Starship下段の大型ロケットSuper heavyに6枚の尾翼がついた設計になったことです。Super heavyには現在SpaceXが開発しているラプターエンジンが37機搭載される予定です。

 

今回のElon氏のプレゼンテーション中で、Starshipの特徴について一番新しい発表になったと思われる点は、Starshipに使用される材料についての言及でした。

今回のStarshipの設計には、SUS301と呼ばれる準安定オーステナイト鋼(ステンレス鋼)が使用されているそうです。SUS301は鉄道車両やベルトコンベヤー・ばね・ボルト・ナットなどに多用されており、特にバネへの利用が多いため”ばね用ステンレス鋼”と呼ばれることもあります。

Starshipでも、ボーイング787などと同様にCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を最初は使用する予定だったとのことですが、2点の理由でSUS301の採用を決定したそうです。

1つ目の理由は、地球への再突入の際の高温に耐えるため。2つ目の理由は、コストの削減のためです。Elon氏の説明によると、CFRPの場合1トンあたりの価格は13万ドルだが、ステンレス鋼の場合は1トンあたり2,500ドルであり、CFRPの場合のわずか約2%のコストに抑えることができたと発言していました。

The best design decision on Starship is the use of 301 stainless steel, because of its strength during extreme temperatures. It’s 130,000 dollars a ton for the carbon fiber and 2,500 dollars a ton for the steel, so the steel is two percent of the costs of the carbon fiber.

Elon氏のプレゼンテーションは、「引き続き月および火星を目指し、地球人類をmulti-planet speciesにすることを目指していく」と改めて決意表明するかたちで終了しました。

Starshipの月面でのイメージ図 Credit : SpaceX

外見は少しハリボテのように見えてしまうStarshipですが、今回お披露目されたStarship Mark1はプロトタイプですので、基本的な要素と概要が掴めることができればOKというSpaceXの認識だと思われます。先月のStarhopperの飛行試験のように、宇宙機の開発に対してもアジャイルに開発していく姿勢は、シリコンバレーのITベンチャー界で成功したElon氏らしい戦略かもしれません。

JimBridenstine氏のツイート(2019年9月27日 - 15:26) Credit : JimBridenstine

NASAから受注した宇宙船が遅れてしまっているため、NASA長官ジム・ブライデンスタイン氏から

”In the meantime, Commercial Crew is years behind schedule. NASA expects to see the same level of enthusiasm focused on the investments of the American taxpayer. It’s time to deliver.”
(NASAが発注している民間有人宇宙開発は数年スケジュールから遅れています。NASAは、アメリカの納税者の投資に値するレベルの興奮を期待していますよ。そろそろ納品してね。[意訳])

とTwitterで言われてしまっていますが、常に新しいことに挑戦し誰も見たことのない世界を作り出そうとしているのはまぎれもない事実です。引き続きSpaceXのStarshipに注目です!

Blue Origin、2020年の商業打ち上げを目標に!

Elon氏が率いるSpaceXと熾烈な競争を繰り広げている、Jeff Bezos氏が率いるBlue Origin。9月24日に、2020年の商業打ち上げをFCC(FEDERAL COMMUNICATIONS COMMISSION)に申請したことを発表しました。

FCCへの申請内容 Credit : FCC(FEDERAL COMMUNICATIONS COMMISSION)

Blue Originの競合の1つであるVirgin Galacticが、2020年に宇宙へ観光客を送り出すことを検討していることから、遅れをとらないために開発を進めていると思われます。

長年の開発を経て、2020年がついに宇宙観光が本格的に始まる年になりそうです。

 

<参考文献>

Elon Musk outlines SpaceX’s Starship plans, aiming to reach orbit in six months and then fly people
SpaceX to update Starship progress
Elon Musk Unveils SpaceX’s New Starship Plans for Private Trips to the Moon, Mars and Beyond
Jeff Bezos to receive the 2019 IAF Excellence in Industry Award for Blue Origin
Blue Origin says a new era of space tourism will probably launch in 2020
FEDERAL COMMUNICATIONS COMMISSION APPLICATION FOR SPECIAL TEMPORARY AUTHORITY