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IAC2020 月面探査ダイジェスト!アルテミス協定に8カ国が署名するも、ロシアは参画控える方針【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/10/12〜10/18】

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宇宙に関するテーマでは世界最大級のイベントである国際宇宙会議(IAC)が開催された先週は、国際協力や各国の取り組みなどが発表され、話題となりました。

IACの様子

アルテミス協定に米国を含む8カ国が署名

10月13日、月の資源開発に関する国際協定「アルテミス協定(Artemis Accords)」に米国、日本、カナダ、英国、イタリア、ルクセンブルク、オーストラリア、UAEの8カ国が署名しました。

アルテミス協定には、平和的利用の原則や宇宙飛行士の救助や宇宙物体登録条約への署名が含まれています。宇宙資源に関しては、宇宙条約に準拠して行動することや有害な干渉を防ぐことが定められています。

さらに、科学的データは署名国以外にも公開することが盛り込まれており、途上国や民間企業による月面探査および開発参入への障壁を下げるのに一役買うのではないでしょうか。

同協定のねらいは、米国が月面での資源採掘に関する枠組み整備を友好国との間で先行して進めたい目的だと考えられ、草案が作成されていると報道された2020年5月当初から、各国がどのような姿勢を取るのか注目されていました。

署名式の様子 Credit : NASA TV

IACで配信された署名式に日本からは、萩生田光一文部科学相と井上信治宇宙政策担当相が参加し、連名で署名しました。

8カ国のうち2名が署名したのは日本のみ。アルテミス計画に宇宙開発技術の向上だけではなく、外交や安全保障など多角的な面から期待を寄せる日本としては、アルテミス協定に署名したことは大きな前進だと言えます。

かたや、アルテミス計画頼みの宇宙政策のようにも見え、関係国間との調整をより慎重に進めていく必要がありそうです。

ロシア アルテミス計画への大規模な参画を控える姿勢を明らかに

前述のアルテミス協定には、ISSの建設に大きく貢献したロシアは署名国に含まれていません。

10月12日に実施されたIACのセッションで、ロスコスモスの総裁であるドミートリ・ロゴジン氏は、ロスコスモスはアルテミス計画への大規模な参画は控える旨を話しました。中でもロスコスモスは、月軌道ゲートウェイの構築は米国が主導となって進められていることに疑問を感じているようです。

2019年9月には、ロシアと中国が月面共同探査協定を締結しています。今後、月面探査に関してこの2カ国がどのような動きをしていくのか、さらに注目していく必要がありそうです。

月探査ミッションでタレス、エアバスが受注獲得

ESAがタレスとエアバスとの契約締結を発表

10月14日に開催されたIACのセッションにて、ESAはアルテミス計画の一環である月軌道ゲートウェイのモジュール開発にThales Alenia Space(タレス・アレニア・スペース、以下タレス)とエアバスを大型月着陸船の研究開発のメンバーとして選出したことを発表しました。

タレスは、フランスとイタリアを拠点とする大手宇宙機器メーカーで、ISSのモジュールで7枚の窓が特徴的な「キューポラ」をはじめ、欧州実験棟「コロンバス」など複数のモジュールの開発および構築した実績があります。

キューポラの窓 Credit : NASA

今回の契約により、イタリア拠点は月軌道ゲートウェイの「I-HAB(International-Habitat、国際居住モジュール)」、フランス拠点はゲートウェイ・月面間の通信と推進剤の給油、科学実験装置用のエアロックを提供するモジュール「ESPRIT(European System Providing Refuelling, Infrastructure and Telecommunications)」の設計・開発を担当します。

2023年に打ち上げが予定されている、Maxar Technologies(マクサー・テクノロジーズ)が担当する電力と推進を提供する装置(Power and Propulsion Element)とNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン)有人モジュール (Habitation and Logistics Outpost)に続き、I-HABは2026年に打ち上げられる予定です。

Credit : Thales Alenia Space

続いてエアバスは、「ヨーロッパ大型輸送宇宙船(European Large Logistic Lander 、以下EL3)」の研究開発に参画することが発表されました。

European Large Logistic Lander Credit : Airbus

EL3のコンセプトは、着陸の精度を向上させるために動力後下時に、エアバスが開発し欧州補給機に採用された、映像解析ナビゲーション技術を活用すること。さらに、衛星によるリモートセンシングでは難しい、月面の小さな岩やクレーターを発見し、安全評価に基づいて着陸可能な地点を特定します。

この研究開発には、ヨーロッパの宇宙探査ハブであるドイツ・ブレーメンのチームが主導し、エアバスのドイツ、フランス、英国拠点から20名以上のエンジニアが参画するとのことです。

EL3の打ち上げはアリアン6が使用される計画で、ヨーロッパ独自で月面まで物資を輸送することが可能となります。運用は2020年代後半に開始される予定です。

Intuitive MachinesがCLPSで新たに契約を受注

アルテミス計画において、月への輸送を委託することで民間企業の輸送技術向上と打ち上げの事業化を図っている先行事例として、NASAの商業月輸送サービス(CLPS)があげられます。

CLPSの選出企業の一社であるベンチャー企業Intuitive Machinesは10月16日に、新たに4,700万ドル相当の受注を得たことを発表しました。

Intuitive Machinesは2021年7月に月面にペイロードを輸送するミッションを2019年5月に受注しています。

ペイロードは、月面から最大1メートルまでで水氷を探す40キログラムの「極地水氷資源採掘実験機(Polar Resources Ice Mining Experiment 1、通称PRIME-1)」です。打ち上げは2022年までに実施される計画で、来る2021年以降はより月探査が身近になりそうで、幅広い分野から注目が集まりそうです。

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参考

NASA, International Partners Advance Cooperation with First Signings of Artemis Accords

N° 19–2020: Call for Media: A new decade of European exploration – to the Moon and Mars

ESA awards contracts for moon and Mars exploration

THALES ALENIA SPACE ON ITS WAY TO REACH THE MOON

Airbus selected for ESA’s Moon lander study

Airbus to bring first Mars samples to Earth: ESA contract award

NASA awards contracts for lunar technologies and ice prospecting payload

Russia skeptical about participating in lunar Gateway