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FAAが商業打ち上げに関する規則を改訂。規制緩和で市場拡大を後押し【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/10/12〜10/18】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

商業ロケット打ち上げの規制緩和をFAAが発表

アメリカ合衆国運輸長官のElaine L. Chao氏が、連邦航空局(FAA)の”Streamlined Launch and Reentry Licensing Requirements(商業ロケットの打ち上げと再突入に関する規則)”を改訂したことを10月15日に発表しました。

今回の改訂は、今まで安全性の確保のために厳重に規制されていた確認項目を緩和する内容となっています。

これによって国家機関・民間企業のあらゆる仕様のロケット運用について共通のライセンスと安全規制が適用され、柔軟性をもって運用することが可能になり、商業ロケットの打ち上げが大幅に効率化されることになりそうです。

Rocket LabのElectronの打ち上げ様子 Credit : Rocket Lab

今回の改訂ポイント

・複数回の打ち上げを単一の運用ライセンスでカバーが可能。
※保有企業が同一であれば、異なる射場でも適用される

・申請者がライセンス申請を複数回に分けて提出する場合の早期審査の実施。

・安全性承認の申請と事業者免許の申請を個別ではなくまとめて実施可能。

・官民による安全監視基準の差を撤廃し、安全上のリスクを考慮の上、打ち上げ時の安全監視要件を柔軟に対応。

Rocket Labのように、既に商業打ち上げを実施しており複数の国に射場を保有している企業にとっては、異なる射場の利用の際も単一の運用ライセンスが適用される点は、事業の後押しになることでしょう。

Chao氏は今回の規則改訂に関して、

“This historic, comprehensive update to commercial space launch and reentry licensing requirements facilitates greater growth in this industry and helps America to maintain our #1 position in the world.”
(訳:この歴史的で包括的な商業打ち上げ及び再突入の規則改訂は、民間宇宙産業のさらなる成長を後押しし、米国が業界1位の地位を維持するのに貢献するでしょう。)

と述べています。

FAAに申請書を提出してライセンスを取得することは、商業打ち上げを行う上で重要なプロセスです。しかし、何百枚に及ぶ書類を作成することで商業ロケットの開発が遅くなってしまっては市場の拡大が進みにくくなってしまいます。
民間宇宙産業の市場を拡大させていく上で、ロケットの商業打ち上げの規制緩和は重要なテーマであり、今回の改革は既存宇宙ベンチャーから歓迎されることでしょう。

日本を含めた他国でも、米国のこのような動きを今後参考にすることは想定されます。規制緩和による各国の動きにも注目です。

Virgin Orbitが早くも2回目の試験打ち上げを検討

小型ロケットの空中発射を活用して小型衛星の打ち上げに挑むVirgin Orbitが、2回目の試験打ち上げ”Launch Demo 2”の準備が順調に進んでいることを発表しました。

同社が5月27日に実施した初めての試験打ち上げは技術的な不具合が発生し失敗に終わっていますが、今回のLaunch Demo 2で使用する小型ロケットは、5月の最初の打ち上げで既に組み立ては完了しています。また、同社が開発するロケットエンジンであるNewtonThreeを総合的に評価するエンジン受け入れ試験(ATP)が、前回は2か月を要したのに対し今回は2週間で完了しており、準備は順調に進んでいるようです。

同社は先月、顧客のためのユーザーガイドも改訂し、試験飛行成功後のサービス開始もスムーズに行えるよう計画を調整しています。

同社のLaunch Demo 2までの行程計画 Credit : Virgin Orbit

またTHE WALL STREET JOURNALは、Virgin Orbitは今年中に1億5000万ドル~2億ドルの資金調達を実施し企業評価額は10億ドルに達するだろうと報道しています。

Virgin Orbitはこれまでに推定約4億ドルの費用をかけて開発を行っています。VIrgin Orbitが挑む小型ロケットの空中発射という打ち上げシステムはより柔軟性の高い打ち上げを可能にできるはずです。同社の試験飛行が無事に成功することを期待しましょう。

その他、Virgin Orbitの親会社Virgin Groupを筆頭株主とするVirgin Galacticにも動きがありました。
有人宇宙船の開発を進めるVirgin Galacticが、初めての飛行試験の最終調整に入っていることを発表しました。

Virgin Galacticの打ち上げは度々遅延していますが、日本人も数名費用を支払っています。具体的な打ち上げ日程はまだ発表されていませんが、Virgin Galacticが挑む民間人を載せた有人宇宙飛行の今後にも注目です。

Virgin Galacticが開発する有人宇宙船と母船の様子 Credit : Virgin Galactic

Astroscaleが約55億円の資金調達を発表

使えなくなった人工衛星やロケットの残骸などの宇宙ゴミ(宇宙デブリ)除去に挑む日本の宇宙ベンチャーのAstroscale(アストロスケール)は、シリーズEラウンドの資金調達によって約55億円を獲得したことを発表しました。今回の資金調達で、同社の累計獲得額は約210億円となりました。

今回の資金調達は株式会社エースタートが運用するファンド「ASエースタート1号投資事業有限責任組合」が主導し、株式会社アイネット・清水建設株式会社・ヒューリック株式会社・スパークス・イノベーション・フォー・フューチャー株式会社が運営するファンド「宇宙フロンティアファンド」も参加しました。

アストロスケール創業者兼CEOの岡田光信氏は、今回の資金調達について以下のように述べています。

創業から7年半を経て、宇宙空間におけるデブリの脅威は日々増してきており、ようやく宇宙デブリ問題の認知度が高まってきました。今回のシリーズ E は、デブリ課題解決に世界に先駆けて乗り出した当社が、デブリ除去を含む軌道上サービスの技術開発と事業化を推し進め、市場を牽引する為に必要不可欠な資金調達です。

2013年の創業以来、約1年半毎に資金調達を達成してきたAstroscaleは、現在140名の従業員を擁する日本を代表する宇宙ベンチャーとなっています。

同社は2017年11月に、小さなデブリの観測を目的とした小型衛星の”IDEA OSG 1”の軌道投入に挑みましたがソユーズ2.1bでの失敗が原因で衛星を消失してしまいました。現在は、今年度中の打ち上げを予定している大型デブリ除去実証衛星機「ELSA-d(エルサディー)」の運用に向け最終準備を進めています。

打ち上げのリベンジに挑むAstroscaleの歩みに、引き続き注目です。

Astroscaleが開発を進める試験衛星のELSA-dの様子 Credit : Astroscale

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