宙畑 Sorabatake

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月面からのサンプルリターンを目指す嫦娥5号が月面着陸に成功。【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/11/30〜12/6】

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嫦娥5号が月面への着陸に成功

12月1日、中国の月面探査機”嫦娥5号(Chang’e-5)”が、月面への軟着陸に成功したと中国国家航天局(CNSA)が発表しました。今回は、嫦娥5号の快挙を画像で紹介していきたいと思います。

打ち上げ前の嫦娥5号の様子 Credit : CCTV/framegrab

嫦娥5号は、11月24日に文昌衛星発射センターから長征5号で打ち上げられました。このミッションのゴールは、月面からのサンプルリターンです(月面から土壌や岩石のサンプルを地球に持ち帰る)。成功すれば中国は米国と旧ソ連に続く3カ国目となります。

嫦娥5号が搭載された長征5号の打ち上げの様子 Credit : CNSA/CLEP

嫦娥5号は主に4つの部分で構成されています。着陸機・上昇機・周回機・帰還カプセルの4つです。探査機は11月28日に月周回軌道へ入りました。その後着陸機と上昇機が周回機から分離し、月面に向かいました。

嫦娥5号のカメラが着陸船の下降中に撮影した月面の様子 Credit : CNSA

その後12月1日に、嫦娥5号の着陸機と離陸機は月の上空約15kmからからゆっくりと垂直降下を開始し、Ocean of Storms(嵐の大洋)北西の端に位置するMons Rümker(リュムケル山)付近に軟着陸しました。

嫦娥5号が着陸する付近の様子 Credit : Phil Stooke

嫦娥5号は着陸後、ドリルやロボットアームなど着陸機に備え付けられた器具を使い、合計2kgほどの月面のサンプルを採取しました。ドリルで2m程の穴を掘り、月面内部の物質も地球へ持ち帰る予定です。

嫦娥5号がサンプルを採取している様子 Credit : CNSA

着陸後約48時間以内に上昇機のみ月面から離陸し、12月5日に月周回軌道に待機する周回機とランデブーしドッキングを実施しました。ドッキングの様子は、こちらの動画で視聴できます。

採取した月面のサンプルは、帰還カプセルと共に12月16日に地球に到着する予定です。

嫦娥5号が軌道上の周回機とドッキングする様子 Credit : CNSA

今回のミッションは、全体を通してかなりハイスピードで実施されています。その理由の一つは、嫦娥3号や4号の着陸機と異なり、嫦娥5号の着陸機には電子機器を保護するために必要な放射性同位体ヒーターユニットなどの機器が搭載されていないからです。したがって、嫦娥5号の着陸機は摂氏マイナス190度となる月の夜に耐えることができないため、地球時間で14日間のうちにサンプルを採取するミッションの計画となっています。

嫦娥5号のバックアップ機として、嫦娥6号も同時期に開発されています。嫦娥5号にトラブルが起きなければ、嫦娥6号は2023年頃に月の南極点への着陸ミッションに向けて再利用されることになります。

まずは、嫦娥5号が無事に地球に帰還できることに期待しましょう。
そして、宇宙強国として野心的な試みを続ける今後の中国の宇宙開発に、引き続き注目です。

Space Perspectiveが資金調達に成功

成層圏気球による模擬宇宙旅行事業に取り組んでいるSpace Perspectiveが、シードラウンドの資金調達で700万ドルを獲得したことを発表しました。

今回の資金調達のリードインベスターは、Prime Movers LabとBase Venturesです。その他、Central Florida Tech Fund・1517 Fund・Schox・E2MC Ventures・作家のTony Robbinsといった多数の投資家が本ラウンドに参加しました。

Prime Movers Labは、先日SPAC方式を活用して株式市場への上場を果たしたMomentusの主要投資家でもあります。(参考記事:小型衛星向けの推進機器を手掛けるMomentusが、特別買収目的会社を活用して来年初頭にNASDAQに上場へ【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/10/05〜10/11】

Space Perspectiveの取締役でもある、Prime Movers LabのAnton Brevde氏は、今回の資金調達について以下のコメントを出しています。

We are big believers in the future space economy and space tourism is a segment we have been tracking closely. It’s clear that there is massive consumer demand to explore this final frontier and we believe seeing Earth from the edge of space will have a profound impact on those who experience it. What attracted us to Jane and Taber’s vision and approach was the safety, accessibility, and tranquility of the Space Perspective experience.
(訳:私たちは将来の宇宙ビジネスに大きな期待を寄せており、商業宇宙旅行分野は注意深く注目してきた分野です。宇宙という最後のフロンティアを探検したいという消費者のニーズは明らかであり、宇宙の端から地球を見る体験は人々に大きな影響を与えると信じています。創業メンバーのJane氏(Co-CEO)とTaber氏(Co-CEO)のビジョンと事業アイデアに惹かれたのは、Space Perspectiveの体験の安全性やアクセスの容易さでした。)

Space Perspectiveは、加圧カプセルを搭載した高性能な成層圏気球であるSpaceship Neptuneを用いて、パイロットと乗客を成層圏まで安全に飛ばして往復する事業を展開します。Spaceship Neptuneが提供する快適な6時間の飛行は、成層圏から地球を見る体験を人々に提供します。

同社初の試験気球「Neptune 1」は、2021年第1四半期末頃にNASAのケネディ宇宙センターから飛行予定です。Neptune 1では、クルーは搭乗せず加圧も行わないカプセルを用いた実験となる予定です。この試験飛行は、2024年を目標としている最初の商業飛行に向けた第一歩となるでしょう。最初の商業飛行チケットは2021年初頭に発売されるとのことです。

成層圏気球に関するプロフェッショナルによって構成されているSpace Perspectiveの今後の歩みに注目です。

打ち上げられるSpaceship Neptuneのイメージ Credit : Space Perspective

Virgin Galacticが宇宙船のパイロットスーツを公開

民間宇宙旅行事業を展開するVirgin Galacticが、Under Armourと共同で開発した、宇宙船のパイロットスーツを公開しました。

Virgin Galacticが昨年公開した乗客用の宇宙服と色とデザインは概ね同一で重さは約2.2ポンド(1kg)で、ニット生地となっています。パイロットスーツは、Virgin Galacticのパイロット隊の8人のメンバーのオーダーメイド仕様となっており、宇宙船のSpaceShipTwo飛行中に安全かつ快適に過ごせるように設計されているとのことです。

Under Armourの製造イノベーション部長のRandall Harward氏は、今回の発表について

A pilot’s flight suit has been refined over the decades to embody a certain undeniable look and function, but they also have to perform beyond expectations. Our goal was to build a suit that leaves a pilot – like any athlete – feeling confident and with zero distractions during a critical moment of performance. It’s been a fascinating journey.
(訳:パイロットスーツは何十年にもわたって洗練され、非の打ち所がない外観と機能を具現化してきましたが、同時に期待以上の性能も求められています。私たちの目標は、パイロットが他のアスリートと同じように、自信を持ち重要な瞬間に気が散ることのないスーツを作ることでした。それはとても魅力的な取り組みでした。)

とコメントしています。

いよいよ目前にせまった商業宇宙旅行が楽しみです。

Virgin GalacticのチーフパイロットのDave Mackay氏が着こなすパイロットスーツ Credit : Virgin Galactic

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