宙畑 Sorabatake

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ispaceが月面サンプル取引プログラムに採択。宇宙資源ビジネスの後押しとなるか【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/11/30〜12/6】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

ispaceが欧州支社と同時にNASAの月面サンプル採取プログラムに採択

NASAは、月面で採取した月のレゴリス(月面の砂)の販売に関する商取引プログラムに4企業を選出しました。採択にあたりNASAが支払う金額は総額で25001ドルとのことです。

採択されたのは、以下の4企業です。
Lunar Outpost
ispace Japan
・ispace Europe
Masten Space Systems

採択された4企業は、月面の任意の場所から50〜500g程度の月面レゴリスを採取し、その後地球に持ち帰ります。月面での採取は、各社が主導で行い地球帰還後の回収作業はNASAが実施予定です。

4企業は、月面レゴリスを地球に持ち帰った後、採取場所を特定するデータとともに月面レゴリスの所有権をNASAに譲渡します。

採択された4企業の詳細 Credit : NASAのプレスリリースを参考に宙畑が作成 Source : https://www.nasa.gov/press-release/nasa-selects-companies-to-collect-lunar-resources-for-artemis-demonstrations

NASAは民間企業が月(将来は火星)に行き試料を収集した後に、試料を売却するというビジネスモデルを確立しようとしています。

今回のような商取引プログラムにおけるNASAの役割は、システム開発自体の資金を負担するのではなく、民間企業の事業に対して顧客として料金を支払うものです。

今回選定された4企業は、独自の資金で月面着陸船を手配しているため、NASAは月面着陸船の開発費を支払う必要はありません。NASAは月で収集された試料の料金だけを支払うというモデルとなっています。

今回の採択にあたり、株式会社ispace Founder兼CEOの袴田武史氏は以下のコメントを出しています。

NASAの商取引プログラムに採択されたことは大変嬉しいですし、このプログラム自体が人類にとって歴史的な瞬間だと考えています。ispaceはグローバルに事業を展開しており、今回日本とルクセンブルクが連携して、NASAのプログラムに採択されたことは、今後宇宙開発が一つの国だけではなく、他国と連携して実現してくことを体現しているのではないかと感じます。宇宙産業だけでなく、地球上のすべての産業にとって大きな転換点となり、地球経済の発展に貢献する月面経済の始まりになると考えています。

ispaceをはじめとする民間企業が、深宇宙探査の開発にどのように貢献していくのか、どのようなビジネスを確立していくのか今後も注目です。

ispaceのHAKUTO-Rミッションで使用する着陸船のイメージ画像 Credit : ispace

NTTデータがICEYEと業務提携を締結

株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)は、フィンランドの小型合成開口レーダ(SAR)衛星事業を展開するベンチャー企業のICEYEとの業務提携を締結したことを発表しました。

これに伴い、12月4日よりNTTデータは新たに「全天候型地図情報提供サービス」を開始しました。

ICEYEを活用した3D地図(雲仙普賢岳 平成新山) Credit : ICEYE/NTTデータ

NTTデータは2014年から、光学衛星画像を利用した世界最高精度の全世界デジタル3D地図「AW3D®全世界デジタル3D地図(以下:AW3D)」を世界130カ国以上へ提供してきました。

しかし、光学衛星画像だと雲や煙がある場合に地表の画像撮影が出来ません。

新しいサービスとなる”全天候型地図情報提供サービス”では、全天候下で全世界を対象として地図情報を抽出して提供します。天候に依存せずに地形や土地利用等の地図情報が取得できるため、インフラの設備管理や自然災害の監視、土地利用状況の把握などに活用が期待されます。

今後NTTデータでは、衛星画像ソリューションビジネスを拡大し、2025年度末までに売り上げを100億円に拡大する予定のようです。衛星データは、高精度にデータが取れていても使いやすいデータに加工することが必要です。NTTデータのように画像解析技術を活かしたビジネスにも目が離せません。

レーダー衛星画像(左:SPOTLIGHT HIGH 0.5m解像度 雲仙普賢岳砂防ダム、右:STRIPMAP 3m解像度 三宅島) Credit : ICEYE/NTTデータ

はやぶさ2 小惑星リュウグウのサンプルを採取したカプセルの回収に成功

最後に、はやぶさ2のトピックです。

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月6日、小惑星探査機”はやぶさ2”カプセルを豪州ウーメラ立入制限区域内にて回収したことを発表しました。

12月7日に現地本部において、回収したカプセル本体から小惑星リュウグウのサンプル由来と考えられるガスの採取作業を実施するとのことです。

また、12月4日に実施したカプセル回収前の記者会見では、はやぶさ2のプロジェクトチームで若い人材を多く起用した狙いについて、JAXA宇宙科学研究所長の國中均教授は「はやぶさ2プロジェクトを教育の場として経験を積ませて、MMXやDESTINY+といった深宇宙探査を実行していくための人材配置」と明かしました。

さらに國中教授は「JAXAの本来の目的は、ものを作ること。プロジェクトを立ち上げるまでの審査をどれだけこなしてきたかがエンジニアにとっては価値になりますが、運用の現場を知らなければ(宇宙機を)作れません」「はやぶさ2で経験を積んだ若手エンジニアがJAXAの今後のプロジェクトに貢献してくれるのを期待しています」と今後のJAXAの深宇宙探査に対する期待を語っています。

現在、JAXAは民間企業との共創に力をいれています。民間と共創してJAXAが行う宇宙開発もますます発展していくことでしょう。

帰還したはやぶさ2カプセルの様子 Credit : JAXA

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