日本発ベンチャー・Synspective 衛星の打ち上げとサービスリリースで事業を加速【週刊宇宙ビジネスニュース 2020/12/14〜12/20】
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OneWeb 新体制への移行後初の衛星打ち上げに成功
衛星通信コンステレーションの構築を目指すOneWebが36機の打ち上げおよび軌道投入に成功したことを発表しました。
同社は、ソフトバンクグループをはじめ、ヴァージングループやエアバス、コカ・コーラなど大手グローバル企業が出資していたことで注目を集めていましたが、Covid-19のあおりを受けて2020年3月に破産を申請。その後7月に英国政府とインドの大手通信企業Bharti Globalに買収され、事業を再開したことが報道されていました。
今後は、2021年には英国、アラスカ、北ヨーロッパ、グリーンランド、アイスランド、北極海、カナダ向け、2022年には世界でサービスの提供を開始する計画です。
日本発ベンチャー・Synspective 初の衛星を打ち上げ事業化へ前進
実証衛星StriX-αの軌道投入に成功
衛星解析によるソリューションの提供を目指すSynspective(シンスペクティブ)は、12月15日に同社初の実証機である小型SAR衛星「StriX-α」の軌道投入に成功したことを発表しました。
Synspectiveは2018年創業の宇宙スタートアップ企業。内閣府が主催する国家プロジェクト「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」において、慶應義塾大学の白坂成功教授、東京大学の中須賀真一教授らが推進してきた小型SAR衛星開発プロジェクトを応用し、事業化すべく設立されました。累計の資金調達額は、109.1億円に上ります。
今回打ち上げられたStriX-αは、従来の大型SAR衛星の約10分の1である100kg級の衛星で、地上分解能は1〜3m、観測幅は10〜30kmです。打ち上げには、Rocket LabのElectronロケットが利用されました。
代表取締役CEOの新井元行氏は、「今回打ち上げるStriX-αにより、Synspectiveは自社衛星とそのデータ処理の技術実証が可能になります。30機のコンステレーション構築のための第一歩であり、並走するソリューション開発と併せて、いよいよ本格的な事業拡大が始まります」とコメントしています。
今後は、StriX-αの観測およびデータの取得を含め、数カ月かけて機能の実証が行われます。また、Synspectiveは2021年に2号機となる実証衛星「StriX-β」、2022年までに商用衛星4機の打ち上げを予定しています。
水被害を予測するサブスクリプション型サービスをリリース
さらにSynspectiveは12月11日に、災害時の浸水被害を予測するサービス「Flood Damage Assessment Solution」の提供を開始しました。
Flood Damage Assessment Solutionは、洪水発生時に被害状況を迅速に判断する必要がある保険や金融業界、政府向けにサブスクリプション型サービスとしてWeb上で提供されます。衛星データについて専門的な知識を持っていなくても、直感的に解析結果を理解できるようUI/UX構築にも力を入れたとのことです。
Flood Damage Assessment Solutionは、洪水発生時に被害状況を迅速に判断する必要がある保険や金融業界、政府向けにサブスクリプション型サービスとしてWeb上で提供されます。衛星データについて専門的な知識を持っていなくても、直感的に解析結果を理解できるようUI/UX構築にも力を入れたとのことです。
同社は、9月にも地盤変動を分析するサブスクリプション型サービス「Land Displacement Monitoring」をリリースしています。
将来的には、StriXシリーズの衛星が撮影したデータをソリューションに用いる予定で、実現すればより高頻度のモニタリングが可能になります。
Synspectiveは、衛星の製造から、画像の撮影、ソリューションまでをワンストップで提供しています。衛星データを活用したソリューションを提供している企業は、いくつかありますが、Synspectiveの場合は自社で衛星を保有して撮影した方がコストを抑えられると考えているようです。
創業からわずか2年で衛星の打ち上げとサービス提供を実現させたSynspective。難しいと言われているSAR衛星の小型化に挑戦したStriX-αの実証結果に注目が集まるのではないでしょうか。
ANYWAVESが小型衛星用のリフレクトアレーアンテナの技術実証に選出
フランス国立宇宙研究センター(Centre national d’études spatiales 以下CNES)は、ANYWAVESを小型衛星用のリフレクトアレーアンテナの技術実証を請け負う企業として選出しました。
宙畑メモ リフレクトアレーアンテナ
鏡面を平面化する展開構造を採用したアンテナをリフレクトアレーアンテナと呼びます。衛星に搭載されるパラボラアンテナは展開構造が複雑になりますが、リフレクトアレーアンテナ技術を用いることで簡単化することができます。
同プロジェクトでは、衛星や探査機との通信に用いられることが多いXバンドとKaバンドに対応するアンテナを開発する予定です。CNESは太陽系ミッションや低軌道の商用アプリケーションに活用していきたい考えです。リフレクトアレーアンテナ技術は、NASAの火星探査プログラム「マーズキューブ・ワン」で打ち上げられたキューブサット「MarCO-A」および「MarCO-B」にも採用されています。
ANYWAVESは、電磁気学とマイクロ波の博士号を持つエンジニアのニコラス・カーペット(Nicolas CAPET)氏が2017年に創業したスタートアップ企業です。
衛星コンステレーション用の小型衛星の製造を行っていて、すでに30台以上のアンテナを販売した実績があります。同社のアンテナは、3Dプリンターを活用して製造されていることでも注目を集めています。
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参考
OneWeb’s Successful Launch, Paves the Way for Commercial Services
「自社初の小型SAR衛星「Strix-α」 軌道投入に成功」
衛星データビジネスの宇宙スタートアップ企業Synspective衛星データソリューションサービス「Flood Damage Assessment Solution」を発表
自社初の衛星データソリューション「Land Displacement Monitoring」を発表
CNES Selects Anywaves For Reflectarray Antenna For Smallsats Demo
How ANYWAVES is developing small satellite antennas using ceramic AM