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月面の重力を弾道飛行で再現する試験をNASAとBlue Originが発表【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/03/08〜03/14】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

NASAがBlue Originと弾道打上げで月面重力を模擬する試験を実施する契約を発表

NASAが、再利用有人ロケットを開発するBlue Originと、月面での低重力を模擬するための弾道飛行試験及び技術開発に関する契約を締結しました。

NASAは、2024年に予定している有人月面ミッションのアルテミス計画に向けて、様々な準備を実施しています。重力がほとんどない微小重力下であれば、すでに国際宇宙ステーション(ISS)や航空機の弾道飛行によって環境試験を行うことは可能でしたが、月面や火星のような低重力環境を再現することは大変難しい状況でした。

今回の契約は、NASAの宇宙技術ミッション局(STMD)が資金を提供をしている技術実証プログラム「Flight Opportunities」が、Blue Originの再利用有人ロケットNew Shepardに技術投資をしており、改良版のNew Shepardの打ち上げは2022年を予定しています。

今回、New Shepardが新規に開発するカプセルには、1分間に11回転し、月面の重力環境を2分以上再現可能な遠心分離機が搭載される予定です。

Flight OpportunitiesのProgram Executivesの一人であるChristopher Baker氏は、今回の契約について以下のコメントを出しています。

One of the constant challenges with living and working in space is reduced gravity. Many systems designed for use on Earth simply do not work the same elsewhere. NASA is pleased to be among the first customers to take advantage of this new capability.
(訳:宇宙開発において常に課題となるのは、低重力です。地球上で使用するために設計されたシステムの多くは、宇宙では同じようには機能しません。NASAは、今回の新しい機能を利用する最初の顧客の1つになれたことを嬉しく思います。)

月面の低重力を模擬できる環境を作ることができれば、月探査だけではなく、将来の火星探査も想定して試験が行うことができるようになります。低重力環境での試験を行得ることによって、今後の宇宙開発がより行いやすくなるのではないでしょうか?

テキサス州の射場から打ちあがるNew Shepard NS-14の様子 Credit : Blue Origin

Seraphim Capitalが、2021年のSpaceTech Ecosystem Mapを公開

宇宙ベンチャーに特化した投資を行っている英国のVenture CapitalであるSeraphim Capitalが、2021年度のSpaceTech Ecosystem Mapを公開しました。資料はこちらからダウンロードできます。

日本の宇宙ベンチャーでは、株式会社Infostellarインターステラテクノロジズ株式会社株式会社Axelspace株式会社QPS研究所株式会社Synspective株式会社ispace株式会社アストロスケールホールディングスの7社が掲載されています。

SpaceTech Ecosystem Mapには、Seraphim Capitalが関わっている全ての企業を掲載しているわけでなく、宇宙産業に大きなインパクトを残すと判断した企業が、以下の分類で掲載されています。

  • 【宇宙産業における上流部門(製造)】
  1. ・Build
    ・Launch
    ・Data
  •  【宇宙産業における下流部門(利用)】
  1. ・Downlink
    ・Analyse
    ・Product
  • 【その他】
  1. ・Beyond Earth 
SpaceTech Ecosystem Map 2021 Credit : Seraphim Capital

今回のSpaceTech Ecosystem Mapには、32カ国・300社以上の企業が掲載されており、これまでで最も多様性に富んだマップとなっています。昨年同様、米国・中国・英国・ドイツの企業の掲載数が多くを占めていますが、リトアニアとロシアの企業が今年初めて加わりました。今後、新興国の宇宙ベンチャーも増えてくると期待されます。

また、Launch(打ち上げ)のカテゴリーの中に、【Space Tugs】という分野が追加されています。これは、MomentusD-Orbitをはじめとする、人工衛星のラストワンマイル輸送に大きな可能性があるとSeraphim Capitalは考えているからのようです。

また、Data(衛星・ドローンデータ)のカテゴリーの中で、Starlink・BlackSky・PredSARが記載されています、これらは、正確には子会社もしくは企業における一部門に過ぎませんが、業界に大きなインパクトを残していることから個別に記載されています。

2021年、どのような動きがあり、来年以降、このレポートにどんな企業が掲載されるのか、日本の宇宙ベンチャー企業の数が増えていくか楽しみです。

中国が新型ロケットの打ち上げに成功

中国航天科技集団(CASC)は、中国の新型ロケット長征7Aを海南島の文昌衛星発射場から打ち上げ、成功したことを発表しました。長征7Aは、1997年以降、25回打ち上げを成功している長征3Bの改良型にあたります。

長征7Aは、長征3Bの特徴を引き継ぎながら改良が加えられていますが、一番の特徴は、燃料にケロシンを使用していることです。長征7Aは、全長60.1m・直径3.35mの3段式液体燃料ロケットで、最大7トンのペイロードを地球静止軌道(GTO)に投入可能です。今後、月面や火星などの深宇宙探査のほか、有人打ち上げも長征7Aが担うと期待されています。

中国の宇宙開発を1960年以降支えてきた長征2号シリーズ・長征3号シリーズ・長征4号シリーズは、人体に有毒なUDMH(非対称ジメチルヒドラジン)燃料を使用していましたが、これを利用するには、より安全性を確保するのに費用が掛かってしまうため、現在中国は有毒な燃料を使わない期待の開発を進めています。

今回の成功で、超大型ロケットの長征5号・小型ロケットの長征6号・再利用ロケットの長征8号と、ヒドラジンを使用しないロケットのラインナップもほぼ揃ったことになります。

今回長征7Aが打ち上げた衛星は、中国空間技術研究院(CAST)が開発した技術検証衛星”Shiyan-9”です。軌道上の実証実験に使用される以上の情報は公開されていません。

今後も中国独自の宇宙ステーションの開発や、商用の打上げミッションも計画されており、引き続き中国の宇宙開発に目が離せません。

打ち上げられる長征7Aの様子 Credit : CASC

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