宙畑 Sorabatake

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技術者集団Masten Space SystemsがNASAの月面着陸船の開発へ!【週刊宇宙ビジネスニュース 4/6〜4/12】

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Masten Space SystemsがNASAの月面着陸船の契約を獲得!

NASAは、商業月面ペイロードサービス(CLPS)プログラムで使用する月面着陸船の開発企業を、Masten Space Systemsに決定したことを4月8日に発表しました。

CLPSは、NASAが計画するアルテミス計画の一環として、NASAが民間企業の開発をサポートし、2024年の有人月面着陸に先立ち実験器具や貨物を月面に送り込むプロジェクトです。

Masten Space SysemsがNASA CLPSに採択 Credit : Masten Space Sysems

宙畑メモ
「アルテミス計画」とは、NASAが2024年までに再び月面に人類を送る月面開発計画の名称です。アルテミスは月の女神で、アポロの双子であることが命名の由来です。

本計画の目的は月面に人を送るだけではなく、月とその周囲に長期にわたり人間を滞在させることで、火星の探査ミッションへの準備を行う目的もあります。月の無人周回飛行・月の有人周回飛行を経て、男女2名の宇宙飛行士の月面着陸を予定しています。

まだ決定ではありませんが、新型コロナウイルス(COVIC-19)の影響の遅延により、2024年の期限に遅れが出る可能性が懸念されています。

アルテミス計画の詳細については、こちらの記事をご覧ください。

Masten Space Sysemsは新興の宇宙ベンチャーではなく、創業は2004年まで遡ります。同社は2009年のLunar Lander Challenge X Prizeで賞金100万ドルを獲得して注目を集めました。その後地道に開発を続け今回の契約獲得に至りました。

今回の契約で、Masten Space SysemsはNASAから7590万ドル相当のタスクオーダーを獲得しました。このタスクオーダーには、

  • 9つのペイロードの搭載
    ・ペイロードを載せたロケットの打上げ
    ・月面への着陸
    ・着陸後最低12日間の運用

などが含まれており、Masten Space Sysemsには2022年12月までに、同社の着陸機「XL-1」に搭載された9つの科学技術実証ペイロードを南極付近の月面に届けることが求められています。

合計で14社がCLPSの候補に選ばれていた中、SpaceXやBlue Originなどを抑えて、社員数十人のMasten Space Systemsが選ばれたのは技術力が最高基準であることを表していると言えるでしょう。

4社から構成されるThe Draper Teamの担当内訳 Credit : The Draper Team

また、今回の14社の候補のうちの一社であったDraperは、4社合同で開発を進めておりその4社の一角として日本の宇宙ベンチャーのispaceが関わっていました。Draperが採択された際は、ispaceが月着陸船の設計とミッション運用、高頻度のペイロード輸送サービスを担う予定でした。

Masten Space Sysems創業者兼CTOのDavid Masten氏は、今回の契約獲得について以下のコメントを出しています。

Masten’s XL-1 lunar lander is built on over a decade of experience in vertical takeoff and vertical landing technology (VTVL) with a focus on reusability. This experience has helped us develop the enabling technology of entry descent and landing that will ensure precise and safe landings on other celestial bodies.

(訳:Masten社の月面着陸機XL-1は、再利用性に焦点を当てた垂直離着陸技術(VTVL)の10年以上の経験に基づいています。この経験は、他の天体への正確且つ安全な降下と着陸の技術開発に役立っています。)

今回の契約を経て、更なる技術獲得に挑むMasten Space Systemsからは目が離せません。

月面着陸船のイメージ図 Credit : Masten Space Systems

長征3Bロケットが打ち上げに失敗

4月9日に西昌宇宙センターから打ち上げた長征3Bロケットが打ち上げに失敗しました。今回の打ち上げ失敗は、3月の長征7Aロケットに続いて中国の今年2回目の失敗となりました。

打ち上げ直後は順調に見えましたが、ロケットの第三段に異常が見られたとのことで、ペイロードである衛星を破壊する結果となってしまいました。今回の長征3Bロケットには、インドネシアの企業が開発した次世代通信衛星「Nusantara-2(PalaPa-N1)」が搭載されていました。

2018年の長征3Bの打ち上げの様子 Credit : CGWIC

今回の長征3Bロケットに搭載されていた次世代通信衛星「Nusantara-2(PalaPa-N1)」は、中国の衛星メーカーであるChina Great Wall Industry Corp(CGWIC)が、インドネシアのPasifik Satelit Nusantara とIndosat Ooredooがつくった合弁会社に納品した衛星でした。約5,550kgのPalaPa-N1には、20個のCバンド中継器と9.5Gbpsの高速Kuバンドペイロードが搭載されていました。

PalaPa-N1は、PalaPa-Dの後継機で、Palapa-Dの打ち上げの際にも長征3Bロケットの第三段でトラブルを起こし、衛星を予定よりも低い軌道での放出となってしまっていました。この時は、Palapa-Dは衛星自身の燃料で予定の軌道にたどり着くことができましたが、その分、衛星寿命を15年から約10年に縮めてしまいました。

PalaPa-N1は中国が達成した数少ない商業衛星輸出の一つであったことから、今回の失敗は残念でした。Indosat Ooredooによると、インドネシアのMedanと Surabayaに既にPalaPa-N1のために基地局が建設済みであり、後継機のリベンジが期待されます。

2019年に軌道投入に成功した打ち上げ数の国別内訳 Credit : Bryce Space and Technologyの2019 Orbital Launches Year in Review

2019年度に軌道投入に成功したロケット打ち上げ数は、米国を抜いて中国が世界1位でした。今年に入って早くも2回の軌道投入打ち上げに成功した中国。宇宙強国として、今後の動向に注目していきましょう。

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