宙畑 Sorabatake

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中国の測位衛星システムの中核が完成!【週刊宇宙ビジネスニュース 12/16〜12/22】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

中国の衛星測位システムの基盤が完成

中国の宇宙機関である中国国家航天局が、12月16日に中国南西部の西昌宇宙センターから自国の測位衛星であるBeidou(航法測位衛星北斗)2機を打ち上げて、軌道投入に成功しました。

GNSS(衛星測位システム)というとアメリカのGPS・欧州のGalileoなどが有名ですが、中国も独自の衛星測位システムであるBDS(北斗グローバルシステム)を保有しています。BDSは、2018年11月にGPSを抜いて世界で最も多く稼働している測位衛星となりました。現在BDSは、バックアップが5機・試運転中が9機・稼働中が35機です。(GPSが31機・Galileoが22機。)

BDSのシステム全体の概観図 Credit : BDS

今回のBeidou衛星は重さ1014kgで寸法が2.25 x 1.0 x 1.22m、平均高度21,800kmで傾斜角55度の軌道で地球を周回しています。

Beidou-52とBeidou-53の軌道投入成功で、第3世代のBDS衛星がMEO(中高度軌道)で24機稼働していることになり、BDSの中核ネットワークの構築が完了したことになります。

今回の打ち上げ成功を受けて、BDSの設計主任であるYang Changfeng氏は、
「BDSは現在、グローバルにサービスを展開するための能力を手に入れました。今後、世界中のユーザーに優れた衛星測位サービスを提供していくことが可能です。」と述べました。

また、中国が2019年に軌道投入した回数が30回となり、同国は今年最も多く軌道投入に成功した国となりました。この事実は、中国の宇宙開発力の高さを物語っています。

中国が、自国の国家安全保障・経済のニーズに対してのみならず、重要な宇宙インフラとして自ら衛星測位サービスを実装し世界中のユーザーに提供することは、中国が世界の宇宙産業の中で大きな影響を持っていることを如実に表しています。

軍事技術として開発された衛星測位サービスがこのような広がりを見せていることはとても素晴らしいことです。2020年度中に更に静止衛星を数機打ち上げ、システムが本格的に完成するBDSに今後も注目です。

長征3Bロケットで打ち上げられるBeidou衛星の様子 Credit : BDS

Rocket Labが新しい射点の建設を発表

小型ロケットベンチャーのRocket Labは12月18日に、同社が持つニュージーランドの射場で2番目の射点(LC1-Pad B)の建設を開始したことを発表しました。この射点は、2020年後半からの稼働を目指しています。

新しい射点を建設する理由は、小型ロケット打ち上げの頻度の増加に対応するためのようです。同社は、2019年にElectronロケットの打ち上げを6回実施しており、2020年度には月に1回の打ち上げを目指しています。

Rocket Lab CEOの Peter Beck氏は、「新しい射点が稼働することで、毎週1回の頻度の打ち上げを可能にさせる予定です。これは、私たちが常に目指してきた最終的な目標でもあります。」と述べました。

射点が2つに増えることは、同社が安定した打ち上げサービスを提供することを意味します。1つの射点で再使用するロケットの整備や射点自体のメンテナンスを行い、もう片方の射点で小型ロケットを打ち上げることが可能となるのです。

また、新しい射点は、同社が12月12日に正式にオープンしたバージニア州ワロップス島の射場(LC2)の設計に基づいており、更にいくつかの機能の追加をする予定とのことです。

ロケット本体のみでなく、射点の拡充にも取り組んでいるRocket Labからは、週1回という頻度での小型ロケット打ち上げに対する本気度が垣間見えます。宇宙産業のボトルネックである輸送システムを解決しようとするRocket Labに引き続き注目です!

同社がニュージーランドマヒア半島に保有する射場のイメージ図。
(中央奥に位置するのが新しい射点のLC1-Pad B) Credit : Rocket Lab

HawkEye 360がFCCから衛星打ち上げの承認を取得

地上から発信されている電波の発信源を特定するpathfinder衛星の運用というユニークな事業に取り組んでいる宇宙ベンチャーのHawkEye 360が、FCC(連邦通信委員会)から、15機の追加の衛星を打ち上げて運用するためことを承認されました。これによりHawkEye 360​​は、15年間で最大80機の衛星を打ち上げることが可能となりました。(但し、軌道上で稼働させることが出来る衛星の最大数は15機。)

HawkEye 360​​は、現在軌道上で3機のpathfinder衛星を運用中で、現在、トロント大学の宇宙飛行研究所にて15機のpathfinder衛星が製造されている最中です。 FCCは、最初の3つの衛星は実験ライセンスの下で承認されたため、今回の追加の打ち上げの承認を得た15機には含まないことを述べました。

これによりHawkEye 360は、3つのpathfinder衛星からなる衛星コンステレーション網を6つ運用可能となりました。同社としてコンステレーション網の数が6つというのははまだまだ足りないようですが、コンステレーション網の調整にもコストがかかります。よって、実績を作るということでまずは18機体制での運用を目指すようです。

HawkEye 360​​のCOOであるRob Rainhart氏は、HawkEye 360​​の次の3つのpathfinder衛星は、インドのPSLVロケットで2020年に打ち上げられる予定であることを述べました。現在製造中の15機のpathfinder衛星はすべて、同社の最初の3つの衛星よりも多くの電力と能力を備えているとのことです。

HawkEye 360​​は、3機の衛星からなるコンステレーション網を用いて、レーダー・モバイル端末・衛星地上局、その他の送信機からの信号を検出します。

2018年12月に打ち上げられた、同社の最初の3機のpathfinder衛星は、船舶観測に焦点を当てていました。(同社の船舶観測についての詳細はこちらから。)しかしHawkEye 360は海事だけでなく、防衛やその他の分野での事業を計画しているようです。これまでに1億ドル以上の資金調達に成功しており、アメリカ国家偵察局(NRO)から研究契約を勝ち取っているHawkEye 360に、今後も注目です!

また、小型衛星については、デンマークの衛星製造メーカーであるGomSpaceと米国の宇宙大手ロッキードマーチンが、英国の宇宙ベンチャーのOrbital Micro Systems(OMS)に対して、カスタマイズされた6Uの小型衛星を提供することに同意したいうニュースもありました。この契約はおよそ17M SEK(約2億円)の価値があるそうです。

ロッキードマーチンは、GomSpaceがOMSに対して小型衛星プラットフォームの設計と財政的な支援を行い、GomSpaceは2020年末までに6Uの小型衛星をOMSに納品し、2021年にOMSが軌道投入する予定となっています。

これまでに多くの衛星を打ち上げてきた宇宙大手企業と実績のある衛星製造メーカーが手を組んで、宇宙ベンチャーを後押しするというのは新しいスタイルです。今後もこのようなコラボレーションが増えてくるかもしれません。

衛星コンステレーションを活用して電波の発信元を特定する様子のイメージ図 Credit : HawkEye 360

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China nears global coverage with the latest launch of Beidou-3M satellites

BDS公式サイト

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FCC approves HawkEye 360 application for 15 satellites

HawkEye 360 Awarded Study Contract by the National Reconnaissance Office

HawkEye 360 公式サイト

GomSpace, Lockheed Martin Space and Orbital Micro Systems to Combine Expertise for Smallsat Project