宙畑 Sorabatake

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スターライナーが帰還成功。ボーイングが失ったものと手にしたものは【週刊宇宙ビジネスニュース 12/16〜12/22】

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ボーイング社が有人宇宙船・スターライナーの実験飛行を実施

スターライナーが地球帰還に成功

12月23日、有人宇宙船・CST-100 Starliner(以下、スターライナー)(愛称Calypso)がニューメキシコ州の試験場への着陸に成功しました。
なお、意外と思われるかもしれませんが、アメリカが陸域に宇宙船を着陸させたのは(スペースシャトルなどを除くと)初めてのこととなります。

スターライナーとは、カプセル型の有人宇宙船です。2011年にスペースシャトルが退役して以来、ISSへ宇宙飛行士を運ぶことができるのは、ロスコスモスのソユーズのみとなりました。ソユーズの座席も高騰が続く中、NASAは米国独自で再び有人宇宙飛行を可能にしようと商業クループログラムを発足させ、ボーイング社とSpaceX社の2社に、有人宇宙船の開発および製造を依頼したのです。

スターライナーは20日夜(日本時間)にAtlasⅤ(アトラス5)に搭載されて打ち上げられました。有人宇宙船ですが、今回は無人での試験飛行です。ロケットからの分離までは順調で、ライブストリームでは管制室で喜びあうスタッフの姿も伺えましたが、軌道投入に失敗。当初予定されていたISSへのドッキングを断念しました。

軌道投入失敗の原因は、タイマーの誤作動

NASAの発表によると、軌道投入失敗の原因はスターライナーに搭載されていたタイマーの誤作動。計画外のタイミングで推進剤を異常に消費してしまったことにより、ISSに到達するための軌道に投入することができなかったのです。

これに対して、商業クループログラムの副マネージャー スティーブ・スティッチ氏は「(仮に軌道投入に成功していても)ISS到達に必要な推進剤をすでに使い果たしていた」と説明しています。

長官のブライデン・スタイン氏は「宇宙飛行士が搭乗していればミッション失敗は防ぐことができた」と話していますが、自動操縦システムはスターライナーが備える強みの一つでした。

なお、タイマーが正常に動作しなかった原因の詳細は現在も調査中とのことです。

ISSへのドッキングは断念したもの、試験は続行

軌道投入の失敗が大きく報道されているスターライナーですが、帰還までの間に姿勢制御や太陽光パネルの活用、搭乗員用のモジュール環境の維持に成功するなどの成果も残しています。また、熱などの内部環境を維持した状態で地上への着陸に成功した(かつ、目標地点から1km範囲内と非常に近いところに着地することに成功した)ことも特筆すべき成果の一つといえるでしょう。
目標地点近くに着陸できると、有人宇宙船の回収がスムーズに行くため、重要なポイントとなります。

Starliner Environmental Cover Credit : NASA

下落をたどる株価に追い討ちをかけたミッション失敗

ボーイング社の株価の変動

しかしながら、ISSへのドッキング断念を受けて、ボーイング社の株価は急落。市場価値としてはおよそ30億ドルの損失となりました。

同社の旅客機「ボーイング737 MAX8」による、ライオン・エア610便墜落事故およびエチオピア航空302便墜落事故を受けて、株価は低迷していました。以来、各航空会社からは737 MAX8の運休延期や発注契約の解除のアナウンスが続き、2020年1月には生産の一時停止に追い込まれる事態となりました。

今回のスターライナーのISSへのドッキング断念はボーイング社にとって、経営不振にまでは陥らずとも2件の事故の追い討ちをかける形で痛手となったのではないでしょうか。

立て直しを図るボーイング社の展望はいかに

受注当初からは大幅な遅れを取りながらも、スケジュール上では2020年前半にアメリカ人宇宙飛行士3名を乗せて行う有人飛行試験、さらに2020年後半には、アメリカ人、フランス人、ロシア人の計4名が搭乗する実用飛行を行う予定でした。

地球帰還などいくつかのミッションは達成しており、NASAとボーイング社はISSへのドッキングのための試験飛行を行わずともISSへの有人ミッションを遂行できると言っているようですが、今回のタイマー誤作動の原因調査の進行によっては、遅れが出る可能性も否定できません。今後のスケジュールの発表は、米国独自の有人宇宙飛行の再達成を追ううえで大きなキーワードとなるでしょう。

さらにもう一つの大きなキーワードは、NASAの商業クループログラムに共に参加しているSpaceX社の動きです。各種試験を進めているSpaceX社は、2020年の早い時期に有人飛行試験を実施する意向を示していて、その成果にも非常に大きな期待が寄せられています。

NASA、月・火星における長期ミッションを見据えたヘルスケアプロジェクトを支援

NASAは12月20日に、月・火星における長期ミッションを見据えた宇宙飛行士のヘルスケアおよびパフォーマンス向上に関する研究プロジェクトの提案におよそ200万ドルを授与したことを発表しました。

今回選定されたのは、テキサス大学サウスウエスト医療センターとマサチューセッツ総合病院による研究プロジェクト2件です。

テキサス大学サウスウエスト医療センターの研究は、循環器に宇宙空間滞在が影響を与える期間を特定するというもので、アテローム動脈硬化症の早期発見にも役立てられます。

また、マサチューセッツ総合病院ヒューマンパフォーマンス研究所の研究は、将来の長期ミッションにおける宇宙飛行士の問題解決力の開発に関するものです。通常時と緊急時それぞれの場合において、それぞれ個人と複数人のチームどちらで取り組むのが効率的なのか検討するのに役立てられます。

今回選定されたプログラムは、国による有人宇宙飛行プログラムはもちろんのこと、将来の民間による宇宙旅行や地上での生活にも成果が活かされる可能性が十分にあるのではないでしょうか。

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参考

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