宙畑 Sorabatake

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宇宙ベースの5G実現を目指し、Lockheed MartinとOmnispaceが協業【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/3/22/〜3/28】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

宇宙ベースの5G実現を目指し、Lockheed MartinとOmnispaceが協業

3月23日、Lockheed MartinとOmnispace(オムニスペース)は、宇宙ベースの5G通信網の開発について共同で検討する協定を締結したと発表しました。

Omnispaceは米国・ワシントンD.C.を拠点とするベンチャー企業です。5Gの通信技術を活用し、非静止軌道(NGSO)の衛星コンステレーションによる通信と、世界の主要なモバイルキャリアネットワークを組み合わせて、農業や鉱業、エネルギー、海運、物流産業向けにグローバルネットワークの提供を目指しています。

衛星のイメージ Credit : Lockheed Martin・Omnispace

検討中のサービスについて、Lockheed Martin Spaceの副社長であるRick Ambrose(リック・アンブローズ)氏は、「複数のデバイスを設置せずに、ユーザーが衛星通信と地上のネットワークをシームレスに移行できるようするというビジョンをOmnispaceと共有している」「最終的には、どこでも使える低遅延のネットワークをエンドユーザーに提供する」と説明しています。

Omnispaceは法人・IoTユースケースに向けての通信提供を目指しており、Lockheed Martinは長年、米軍や政府を顧客としてサービス提供をしてきている企業です。両者が提携することで、両者の顧客に向けて幅広い層へのサービス提供を可能にします。

また、衛星製造関連技術や大規模・複雑なシステム開発を得意とするLockheed Martinとの提携で、技術的な課題の解決に向けても大きな一歩となりそうです。

NICTが衛星-地上局間の光通信技術実験を実施

国立研究開発法人情報通信研究機構(以下NICT)は、ドイツ・シュトゥットガルト大学の衛星に搭載されたドイツ航空宇宙センター(DLR)の小型衛星搭載光通信機器「OSIRISv1」とNICTの光地上局に設置された新規開発の精追尾付き光学系との間で、通信実験を行いダウンリンク光の受信に成功したことを発表しました。

宙畑メモ 宇宙光通信
衛星間、衛星と地上局間を光で通信しようとする研究が行われています。大容量通信の実現が期待されていますが、小型・軽量化や捕捉追尾指向技術の確立などの課題があります。

NICTは通信衛星の高度化のため、光通信技術の研究開発を進めています。2014年から2016年にかけて、小型光通信トランスポンダ(SOTA)と日本および各国の光地上局間の光通信実験を行いました。

さらに、2022年度に打ち上げ予定の技術試験衛星9号機(ETS-9)には、超高速先進光通信機器「HICALI」が搭載され、静止軌道と地上間で上り・下り10Gbps級の光衛星通信を実証することが計画されています。

宙畑メモ
JAXAとNICTが共同で開発し、2008年に打ち上げられた超高速インターネット通信衛星「きずな(WINDS)」の伝送速度は3.2Gbpsで、当時世界最高速でした。
参考:「きずな」で世界最高速3.2Gbpsの衛星伝送に成功

1m望遠鏡の光地上局 Credit : NICT

今回の通信実験で使用された精追尾付き光学系は、ETS-9に搭載されるHICALIの実験の際にも使用される予定で、先行的に精追尾制御の機能が確認されたことになります。

また、大気のゆらぎが宇宙光通信に与える影響をモデル化して軽減するために、計測装置がNICTの光地上局に設置され、初期試験が同時に実施されたほか、小型で低コストな光地上局の実現を目指し、市販の開口径20cm望遠鏡で構成した簡易型光地上局の通信実験が行われました。

今後光通信技術は、打ち上げ機数の増大が見込まれているハイスループット衛星(HTS)と併せて利用が拡大するのではないかと考えられます。大容量の通信が実現されることで、どのようなビジネスが生まれるかにも注目していきたいと思います。

GSaaSスタートアップのLeafSpaceが米国拠点を開設

3月24日、地上局のシェアリングサービスを展開する、イタリアのスタートアップ企業・LeafSpaceが米国にオフィスを開設すると発表しました。

創業当初はヨーロッパを中心に地上局を建設していましたが、2021年1月に資金調達を行い、新たにスリランカとカナダ、オーストラリアに地上局を構築する計画を発表していました。

プレスリリースで、CEO兼共同創業者のJonata Puglia(ジョナータ・プリア)氏は、「小型衛星産業の爆発的な成長に伴い、この(地上局)分野も急激に成長しており、GSaaSソリューションの需要は今後も拡大すると予想しています」とコメントしています。

米国においては、RBC Signalsが地上局のシェアリングサービス事業を行っています。現在のところは、LeafSpaceとRBC Signalsのサービスラインナップや注力領域が異なりますが、米国市場での動向がGSaaSサービス企業の成長に影響を及ぼすかもしれません。

今週の週間宇宙ビジネスニュース

参考

Lockheed Martin And Omnispace Explore Space-Based 5G Global Network

Lockheed Martin signs agreement with Omnispace to explore 5G in space

小型衛星を用いた光衛星通信の日独国際共同実験に成功

Leading Ground Segment As-A-Service Provider Leaf Space Announces U.S. Expansion

Italy’s Leaf Space to establish U.S. office