衛星で農作物の生育状況を把握!農業分野で利用が進む「植生指数時系列情報」の使い方
衛星データを利用することで、東京に居ながら北海道や沖縄といった離れた地域の植物の育ち具合が分かるって知っていますか?人間の目では見えない「植生指数」が教えてくれます。 ここでは、植生指数の基本から、Tellusでの植生指数データの利用方法までを解説します。
現在、Tellus Marketでの「植生指数時系列情報」の販売は終了しております。
衛星リモートセンシングビジネス専門会社である株式会社ビジョンテックは、衛星データを用いて、特に農業分野に利用できるデータ解析やサービスの提供などの多様なビジネスを展開しています。
近年話題に上がることが多い農業分野のICTツールとして、当社はオリジナル農業情報サービス「AgriLookⓇ(アグリルック)」を提供しています。
このサービスでは、衛星データと気象データを複合利用することで、広域の農作物の生育状況をモニタリングし、効率的に高品質な農作物の生産の手助けをします。
当社は、Tellusマーケットで日本全国の「植生指数時系列情報」を提供しています。
植生指数時系列情報は、8日間の衛星データから植生指数(NDVI)を作成し、さらに独自のNRFフィルタ(ノイズ除去フィルタ)を用いて雲の影響を除去した全国250mメッシュのデータです。
この植生指数データからは、農作物の生育状況や土地利用の変化などが分かります。そのため、農業情報サービス「AgriLookⓇ」などで利用されているデータですが、農業分野以外でも様々な用途が考えられるので、分野を問わず是非ご利用ください。
利用の可能性について、詳しくは4章をご覧ください。
1.植生指数とは
「植生指数」は植生による地表面の被覆割合(植被率)と活性度に比例する指標で、代表的な植生指数がNDVI(正規化植生指数:Normalized Difference Vegetation Index)です。
NDVIは以下の式で表され、以降のこの記事での「植生指数」はNDVIを指します。
NDVI = (NIR-R) / (NIR+R)
NIR : 近赤外域の反射率
R : 可視赤色域の反射率
NDVIは [ -1.0 ~ 1.0 ]で表現され、植被率や植生の活性度をよく表します。
森林(温帯林や熱帯雨林)、出穂期の水田などは植被率・活性度が高く、NDVIは0.7や0.8以上の高い値を示します。
逆に、アスファルトや建物などの人口構造物はNDVIは低い値(ゼロに近い)を示し、
雲・水域・雪原地帯については、負の値を示すこともあります。
NDVIはリモートセンシングの分野では古くから利用されており、農作物の生育状況の把握や、耕作地や森林の状況把握、土地利用の把握など幅広い分野で役立っています。
2.Tellusで利用できる「植生指数時系列情報」の紹介
衛星データから得られるNDVIを時系列的に扱う際、最も障害となるのが雲の影響(ノイズ)です。
雲のある場所ではNDVIは低くなり、植生の生育状況を判断する際、誤判定の原因となります。雲の影響がない快晴日は全国平均で年間30日程度ですので、雲の影響は無視できるものではありません。
当社では独自に開発したNRF(Noise Reduction Filter)を用いて雲の影響を低減しています。植生指数時系列情報では過去年のNDVIも提供していますので、NDVIの1年間の経時変化を見るだけでなく、多年度・同時期でNDVIの差異を確認することも可能です。
植生指数時系列情報には、指定地点にその地点を含む3次メッシュ(1kmメッシュ)内の16地点を加えた、計17地点の下記データが含まれます。
・緯度経度
・NDVI(1年分:8日毎の46データ)
3.Tellusでの使い方
植生指数時系列情報を利用するには、最初にTellusマーケットで「植生指数時系列情報」の購入申請を行います。
現在、Tellus Marketでの「植生指数時系列情報」の販売は終了しております。
マーケットトークン発行APIを実行するには、APIアクセストークンが必要です。 APIアクセストークンはダッシュボードの「開発環境」から発行することができます。
APIリクエストを行う場合、まず、マーケットトークンを発行します。
import requests, datetime, json
TOKEN = 'ダッシュボードでAPIアクセストークンを発行しここに貼り付けます'
product_id = '植生指数時系列情報APIの商品ID'
expires_at = (datetime.datetime.now(datetime.timezone(datetime.timedelta(hours=+9))) + datetime.timedelta(minutes=30)).isoformat()
def get_market_token(payload={}):
url = 'https://sdk.tellusxdp.com/api/manager/v2/auth/token/'
headers = {
'Authorization': 'Bearer ' + TOKEN,
'Content-type': 'application/json' }
r = requests.post(url, headers=headers, data=json.dumps(payload))
if r.status_code is not 200:
raise ValueError('status error({}).'.format(r.status_code))
return json.loads(r.content)
ret = get_market_token({'product_id': product_id, 'expires_at':expires_at})
print('token api result : {}'.format(ret))
次に発行したマーケットトークンを利用して、APIリクエストを行います。
以下のプログラム例は、取得したデータ1地点・1年分のNDVIを1行として、CSV形式で画面に出力しています。
PATH = '/API/php/getMeshNdvi.php'
def exec_api(url, token, payload={}):
headers = {
'Authorization': 'Bearer ' + token
}
r = requests.get(url, headers=headers, params=payload)
return r.content
executed = exec_api(ret['base_url'] + PATH, ret['token'], {
'lat': 37.903973371080546,
'lon': 139.3545770645142,
'year': 2020
})
jsondata = json.loads(executed)
datasets = jsondata['NdviDatasets']
csv_label = 'Latitude, Longitude'
csv_value = '';
for ndvidatas in datasets:
csv_value = ndvidatas['Latitude'] + ', ' + ndvidatas['Longitude']
for ndvi in ndvidatas['NdviDatas']:
csv_value += ', ' + str(ndvi['Ndvi'])
if csv_label is not None:
csv_label += ', ' + ndvi['Date']
if csv_label is not None:
print(csv_label)
csv_label = None
print(csv_value)
出力されたデータをコピーしてExcel等でグラフとして表示すれば、1年間のNDVIの経時変化を把握できます。
4.利用の可能性
時系列のNDVIには、どのような活用法があるでしょうか。例えば、以下のような活用が考えられます。
・農作物の生育状況把握
農業情報サービス「AgriLookⓇ」で利用しているように、NDVIは農作物の生育状況に深い関係性を持ちます。
当該年のデータと過去年のデータを比較することにより、農作物の生育状況の把握、追肥や刈取り時期の予測などの活用が考えられます。
また、植生の種類によってNDVIの時系列変化(トレンド)に特徴がありますので、田畑や樹林地の植生の種類を推定することもできるかも知れません。
・土地利用の把握
農地だった場所が、大型のショッピングモールや駐車場になっていた場合、NDVIは農地だった時と比較して、ほとんどの場合、低い値を示し続けます。このようなNDVIの変化を、土地利用の把握に活用できるかも知れません。
・森林域変化の把握
森林域において火災や伐採、土砂崩れなどにより樹木が無くなった場合、NDVIは、周辺の森林域とは異なる値を示します。このような変化は、森林面積の把握や、災害地の推定などに活用できるかも知れません。
・水域変化の把握
NDVIは水域では低い値を示すことがわかっています。この特性を生かし、台風や豪雨による、河川の「氾濫」「越水」「洪水」などの状況把握に役立ちます。また、水域同様に積雪でも低い値を示すため、積雪や雪崩後の変化を把握する事にも活用できるかも知れません。
5.まとめ
農作物の生育状況を調べるには、これまで目視で農作物の様子を判断しなくてはいけませんでした。広大な農地を定期的に観測できる人工衛星のデータを使うことで、水を撒くタイミングや刈取り時期の判断を効率的に計画することができ、農業分野で植生指数の利用は進んでいます。
ビジョンテック独自のNRFにより、衛星データの課題である雲にも対応している「植生指数時系列情報」を利用することで農業分野以外での利用用途も期待できます。
現在、Tellus Marketでの「植生指数時系列情報」の販売は終了しております。
★Tellusの利用登録はこちらから
■ビジョンテックHP
http://www.vti.co.jp/
■AgriLookⓇの紹介ページURL(ビジョンテックHP内)
http://www.vti.co.jp/agrilook.html