「簡単かつ効果的に衛星データを活用できる環境を目指して」 Ridge-i が衛星データに映る影を削除する技術で特許を取得
Ridge-iが、衛星データに映り込む影などを取り除き、衛星データの取扱いの効率化に寄与する画像処理技術の特許を取得したと発表。その内容と今後の展望について、担当者にもお話も伺いました。
AI・ディープラーニング技術のコンサルティングと開発を行う株式会社Ridge-iが、衛星データに映り込む影などを取り除き、衛星データの取扱いの効率化に寄与する画像処理技術の特許を取得したと発表しました。同社は2023年4月26日に、東京証券取引所グロース市場に新規上場しています。
地球観測衛星が撮影した衛星データには、雲や影などのノイズが入っており、人による目視での確認(判読)や画像解析処理において問題になることがあります。
そこでRidge-i社が開発したのが、衛星画像内の影を検出し、その部分を他の色調と同等なものに変換することで、影がない状態の画像を生成するという技術です。
この技術により、衛星データの中で建造物などの影で見えづらくなっている箇所の色みを再現し、重要な情報が画像からより明確に確認しやすくなるとしています。
開発者に聞いた、お客様のニーズと今後の展望
実際にどのようなお客さまからの要望があったのか、また、技術的なポイントについてRidge-i社の畠山さんに話を伺いました。
Q1.影除去の技術はどのような衛星データ利用を検討しているお客さんから声がよく上がっていましたか? またこの技術により、どのようなユースケースでの利便性がより上がると考えられますか?
A.日常的に目視で判読を行っている方とのディスカッションを通じて、重要な気づきがあり技術実証まで至ったことがきっかけでした。
日常的に目視判読される方は、影以外の部分と影で目の焦点などを切り替える必要があり、負担が大きくなっている可能性があります。
この技術に関心を持っていただいているお客様のうち、衛星画像を用いた地図の更新という文脈では、都市部での道路・建物新設確認の効率化が考えられます。
Q2.影の検出について、特に注目すべき技術的なポイントを教えてください。
A.ポイントとしては、「影の検出」と「影の除去」の2つに分かれている点です。特に影の除去(影と影以外の部分のヒストグラム調整)については、単純な二値化(大津の二値化など)では十分な結果が得られないため、衛星データのドメイン知識を取り入れたオリジナルアルゴリズムを開発しました。
Q3.今後の衛星データ利活用をより使いやすくする取り組みについて、今後の展望や衛星データ利用における現時点で考えている、乗り越えたい課題を教えてください。
A.機械学習やディープラーニングのモデルの発展は加速化されており、多くの方が簡単にモデルを構築できる世界が広がっていると思います。Ridge-iではこれまでの衛星データ解析技術で得た経験と、機械学習・ディープラーニングの知見を組み合わせて、様々な状況に対応できる衛星解析技術を提供していきたいと思っています。
現在の課題として、
①実際に利用する衛星画像は多くのノイズが含まれているため、AIモデルの性能が低下する可能性があること
②実際の現場で使用しやすいようなアプリ開発の必要性
の2点が挙げられます。
現在、①についてはドメインに特化した前処理技術の適用について取り組んでいます。②は協力企業や衛星データプラットフォーム「Tellus」などとの連携を強化しながら、使いやすいプラットフォームの開発に取り組むことで、衛星データの収集から前処理、解析、可視化までの一連の流れをシームレスに行えるようにし、ユーザーが簡単かつ効果的に衛星データを活用できる環境を提供することを目指しています。
衛星データ利用が当たり前になる今後への期待
Ridge-i社の畠山さんの言葉にあった、様々な状況に対応できる衛星解析技術は、Planet Labs社1社だけでも200機の衛星を運用し毎日30TBのデータが蓄積されるなど、衛星データの量が増え続ける今日においてより重要なものとなるでしょう。
衛星データの利活用事例だけではなく、衛星データを扱うためのインフラともいえる技術の進化に今後も注目です。