JAXAによる企業や大学への資金供給機能強化、運営人材の確保がハードルに【宇宙ビジネスニュース】
【2023年11月6日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
10月31日、政府はJAXAに10年間の「宇宙戦略基金」を設け、総額1兆円規模の支援を行う方針を固めたことが報じられました。
6月に改訂された宇宙基本計画では、JAXAの資金供給機能の強化が盛り込まれ、政府と連携してJAXAが大学や民間企業に資金を供給する取り組みが検討されていました。
宙畑メモ JAXAの資金供給機能の強化(宇宙基本計画より抜粋)
欧米の宇宙開発機関が、シーズ研究を担う大学や民間事業者、また、商業化を図る民間事業者の技術開発に向けて、資金供給機能を有していることを踏まえ、JAXA の戦略的かつ弾力的な資金供給機能を強化する。これにより、JAXA を、産学官・国内外における技術開発・実証、人材、技術情報等における結節点として活用し、産学官の日本の総力を結集することで、宇宙技術戦略に従って、商業化支援、フロンティア開拓、先端・基盤技術開発などの強化に取り組む。
このJAXAの資金供給機能の強化について、9月29日に開催された定例記者会見でJAXAの山川宏理事長は、「技術の目利きとしての役割をJAXAは求められているのだと思っています」と話しました。
一方、資金供給機能の強化に向けては、課題も見えてきています。山川理事長は、すでに実施が始まっている民間企業への出資を例に挙げて説明しました。
「すでに実施している出資機能の方でも、我々としては相当苦労しました。なぜなら、出資の経験がないからです。我々も相当に勉強し、外部の方にご示唆をいただきながら進めているという状況です」
「もし(資金供給機能の)法案と予算が通れば、資金供給機能についてもおそらく(出資機能と)同じように、外部から十分に教えていただいたうえで、取り組んでいく必要があると思っています。そういった意味で、人材の確保は極めて重要です。外部にアドバイスをいただくだけでは、やはり回っていかないと思いますので。人材をいかに確保していくかというのは極めて大きな問題だと私は思っております」
資金供給機能の強化をめぐっては、運用の体制にも世間からの注目が集まりそうです。