宙畑 Sorabatake

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スカパーJSAT発ベンチャーOribital Lasers、レーザーで挑む「スペースデブリ除去」と「高精度な地表面情報取得」の2つの新事業

2024年1月30日、スカパーJSAT株式会社は、社内発スタートアップとしてOribital Lasersの設立を発表。その事業概要と、同社の強みをまとめました。

世界初!レーザー技術によるスペースデブリ除去衛星実現に期待

2024年1月30日、スカパーJSAT株式会社は、社内発スタートアップとしてOribital Lasersの設立を発表しました。同社は、理化学研究所、JAXA、名古屋大学、九州大学との連携により、レーザー照射を用いてスペースデブリを除去する衛星の設計・開発に今後着手し、2026 年のサービス提供を目指すとのことです。この技術を持った衛星が実現すれば、世界初の取り組みとなります。

スカパーJSAT初のスタートアップとして、Oribital Lasers社を設立したと発表

Orbital Lasersが展開する2つの事業「スペースデブリ除去事業」「衛星LiDAR事業」

Oribital Lasersでは、「スペースデブリ除去事業」「衛星LiDAR事業」の2つの事業を柱に宇宙事業を展開します。

スペースデブリ除去事業

ADRミッションのシナリオ(前段階となるDTB事業では、衛星の回転を止める(Detumbiling)ためのレーザペイロードの提供を目指しています) Credit : Orbital Lasers

スペースデブリ除去事業は、DTB(Detumbling)事業とADR(Active Debris Removal)事業に分かれます。

まず、DTBとは、不安定なスペースデブリにレーザーを照射することで、その回転を止めるというものです。スペースデブリは、寿命を迎えて活動を停止したロケットや衛星、デブリ同士の衝突によって発生した破片などで、制御不能のまま、軌道を周回しています。また、それまでに蓄積した外乱によって、姿勢も止まっているのではなく、複雑な回転運動をしています。

レーザーでデブリ除去するには、デブリの軌道を変更(Deorbit)させる前に、まずこの回転運動を停止(Detumbling)する必要があるのです。この事業は、2025年頃を目途に、レーザーペイロードを開発し、他のデブリ除去サービス事業者に提供することを目指しています。

もう一方のADR事業では、2029年度までに、自社で衛星を開発し、レーザー技術を用いて、デブリ除去サービスを提供することを目指すとのことです。

衛星LiDAR事業

衛星LiDAR事業は、地表面の高さを計測するサービスです。サービス提供時期は未定のようですが、LiDARによる計測精度の高さを生かし、高精度な3Dマップの提供を見込んでいます。衛星LiDARとは、レーザーを地表面に向けて照射し、その反射光が返ってくるまでの時間を計測するセンサです。光の速度は決まっているため、その時間を基に、地表にある反射物までの距離(高度)を測ることができます。

Orbital Lasersの強みは、レーザー×宇宙技術

Orbital Lasersはレーザーアブレーションという技術を用いて、衛星に推力を与え、デブリを除去する方法を開発しています。レーザーを照射すると、当たった表面の物質がプラズマ化され、推力(反力)が発生するという仕組みです。他のデブリ除去技術もある中、この手法には、以下の利点があり、採用を決めたとのことでした。

高い安全性:レーザーは物理接触がなく、距離をとれるため、デブリと衝突する可能性が低い
回転物体への適応:複雑な運動をするスペースデブリを、適切にレーザー照射することで停止できる
高い経済性:レーザー照射で推力が得られるため、衛星側に余分な燃料を搭載する必要がない

また、このレーザー開発で課題となっていたのが、レーザーのエネルギー効率の向上とのこと。宇宙空間では電力リソースが限られるため、大出力を得るために過剰な電力を使用することはできません。

これまで開発された宇宙用パルスレーザーセンサとしては10MW台だったところ、今回は100MWと比較的大出力のものを開発できたことから、会社設立の決め手になったと述べられていました。このレーザーを用いた場合、シミュレーション結果から、約3tの重量があるロケット上段の運動も停止できるそうで、巨大なスペースデブリの除去にも適用が期待されます。

デブリ除去レーザーのスペック(これまでの宇宙用レーザーと比べて、10倍くらいの出力が得られることが強み)

宇宙の持続的な利用のためには

近年、スペースデブリの問題が深刻になっています。軌道上では、不要となった衛星や部品、衝突した人工物の破片が加速度的に増えており、mm単位の小さな破片だと1億個以上あると推定されているそうです。宇宙を今後も持続的に利用していくために、一刻も早い解決が望まれています。

そのような中、Orbital Lasersは、持続可能な宇宙環境維持を掲げ、今回のレーザー技術によるデブリ除去サービスに辿り着いたそうです。今後も、同社をはじめ、スペースデブリ除去の事業者がどんなサービスを展開していくのか、注目していきたいと思います。

参考

スカパーJSAT発スタートアップ 「株式会社Orbital Lasers」設立のお知らせ 民間企業で世界初の商用利用をめざして、レーザーによる スペースデブリ除去事業・高精度な地表面情報を提供する衛星ライダー事業開始