Starlinkをバックホール回線として使った通信ソリューションをトンネル坑内で本格導入【宇宙ビジネスニュース】
【2024年7月29日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。
7月25日、鉄道・運輸機構、清水建設、KDDIの3社は、清水建設が建設中の北海道新幹線 渡島トンネルにてStarlinkをバックホール回線として活用した通信ソリューション「Satellite Mobile Link」をトンネル坑内で活用し、4G LTEの通信エリア化を実現したことを発表しました。
KDDIによると、Satellite Mobile Linkでトンネル坑内の工事現場に通信環境を構築した事例は、国内初です。
これまでトンネル坑内の通信環境はWi-Fi機器で構築されていました。しかし、大型の工事機械による遮蔽影響で通信エリアが数十メートル程度と狭いことや、長いトンネル坑内全体をカバーしようとすると、必要な機器数が多くなり、設置・メンテナンス作業が煩雑になるといった課題があったそう。
また、掘削作業での発破(爆薬を仕掛けて岩石などを爆破すること)による影響を避けるため、アンテナ設備などの設置場所には制限があり、トンネル掘削の最先端である切羽から200メートルの範囲には通信環境を構築することができませんでした。そのため、機器を扱う現場からの緊急連絡や労務管理の効率化やDX化などに課題がありました。
そこで鉄道・運輸機構、清水建設、KDDIの3社は、2022年12月に、Satellite Mobile Linkで渡島トンネル坑外の工事現場の通信エリア化を行い、労務・安全管理や情報伝達の効率化・即時性を実現していました。
しかしながら、工事現場の最前線であるトンネル坑内のセルラー通信のエリア化ができておらず、特に重大事故の発生リスクが高い切羽で外部への緊急連絡がすぐにできないことや、切羽掘削面の確認を坑外と行うために、移動環境が悪い工事中の坑内を往復する必要があるなどの課題があったそう。
そこで、今回、先行してトンネル坑外の通信エリア化に使用した設備から、光ケーブルにて4G LTEのアンテナをトンネル坑内に延伸し、通信環境を構築しています。
KDDIによると、Satellite Mobile Linkによるトンネル坑内対策は、Wi-Fiによるエリア化と比較し、設置機器数が非常に少なく、設置コストを1/3程度に抑えられることや、保守メンテナンス性が高いことが評価され、このたび、本格導入に至ったということです。