【ニコン、清水建設、三菱重工業が採択】宇宙戦略基金、技術開発テーマの採択結果の掲載始まる
宇宙戦略基金における技術開発テーマの採択結果の掲載が始まりました。今回発表された技術開発テーマではニコン、清水建設、三菱重工業の3社が採択されています
2024年10月25日、宇宙戦略基金のHPで技術開発テーマ「宇宙輸送機の革新的な軽量・高性能化及びコスト低減技術」のなかでも「宇宙用途に適用可能な精密部品を対象とした金属3D積層に係る装置開発及び基盤技術開発」「ロケット用大型構造部品を対象とした金属3D積層に係る基盤技術開発」の2つの技術開発における採択結果が公表されました。
本テーマは8月30日に公募が締め切られ、9月上旬から9月中旬に書面審査、9月下旬から10月上旬にヒアリングがあり、審査結果の通知・発表は10月頃となっており、迅速に審査が行われ、採択されたことがうかがえます。
発表された当該技術開発テーマの大きな目標は「大型タンク部品等のロケット用大型構造部品の短期間製造を可能とする大型の金属3D積層技術を確立することを通じて、金属 3D 積層技術の精密形状・大型対応等を実現することで、部品等の製造期間及びコストを、従来のロケット製造と比較して、1/2以下とする」と掲げられ、今回発表された技術開発テーマはその一部となっています。
それぞれの採択結果は以下の通りです。
宇宙用途に適用可能な精密部品を対象とした金属3D積層に係る装置開発及び基盤技術開発
「宇宙用途に適用可能な精密部品を対象とした金属3D積層に係る装置開発及び基盤技術開発」は、宇宙用途に適用可能な、大型エンジン用部品などの精密部品を安定的かつ高品質に製造可能を目指した金属3D積層造形装置及び造形プロセス・積層手法等に係る基盤技術開発で、精密部品の例としては噴射器やノズルカートが挙げられていました。
本テーマで採択されたのは株式会社ニコンで技術開発課題の名称は「将来ロケットへ搭載可能な大型精密部品への金属3D積層技術の確立」となっています。
ロケット用大型構造部品を対象とした金属3D積層に係る基盤技術開発
「ロケット用大型構造部品を対象とした金属3D積層に係る基盤技術開発」とは、大型タンク部品の短期間製造を可能とする金属3D積層技術の確立を目指したもので、数値目標としては直径 5.2[m]、全長 8.8[m]以上、板厚 2〜3[mm]の円筒形状およびドーム形状の構造物を最大速度 1.0〜2.0[kg/h]で積層可能なアルミ合金が挙げられていました。
本テーマでは清水建設が「金属3D積層によるロケット用大型液体推進薬タンクの製造技術開発」、三菱重工業が「WAAM(Wire-Arc Additive Manufacturing)を用いた軽量かつ低コストな大型極低温推進薬タンクの製造技術研究」という技術開発課題の名称で採択されています。
IAC 2024で見た、海外からの宇宙戦略基金に集まる注目
今後も宇宙戦略基金の技術開発テーマの採択結果が続々と発表されるでしょう。引き続き、宙畑では採択結果の更新を以下のスプレッドシート内で行っていきます。
※本データは簡易版となっており、支援年数やその他目的と合わせてまとめたスプレッドシートを閲覧したい方は宙畑の問い合わせフォームからご連絡をいただけますと幸いです。
ちなみに、先週イタリア・ミラノで行われたIAC(国際宇宙会議)では、宇宙戦略基金のプログラムディレクター(PD)を務めるSPACETIDEの代表理事兼CEOの石田真康さんがESAの展示ブースで行われたセッションで登壇されており、宇宙戦略基金や日本の投資事情を紹介。各地域を代表するパネリストの方と議論が交わされていました。
その際、宇宙戦略基金については、石田さんに対して宇宙戦略基金における海外とのパートナーシップの可能性について質問が投げかけられるなど、海外から宇宙戦略基金への注目度の高さを感じる場面もありました。
日本だけではなく、海外からも注目が集まる宇宙戦略基金は今後日本の宇宙開発、そして宇宙産業にどのようなインパクトを与えるのか、宙畑としても引き続き注目し、読者の皆様に紹介してまいります。