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米Muon Spaceが山火事監視衛星の初画像を公開。「日本はアジア太平洋地域進出の重要拠点」社長が熱視線【宇宙ビジネスニュース】

【2025年7月28日配信】一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを宙畑編集部員がわかりやすく解説します。

米国のMuon Spaceは6月26日、山火事への対応を目的とした衛星「Firesat Protoflight」のファーストライトを公開しました。

FireSat Protoflightが捉えたオーストラリア・シドニー。植生、工業地帯による都市ヒートアイランド現象が起きている様子、稼働中の空港滑走路、水温の変化など、異なる特徴が表れています。 Credit : Muon Space
FireSat Protoflightが捉えたハワイのキラウエア火山。火口内の溶岩や周辺地域の高温エリアが検出されています。 Credit : Muon Space

Muon Spaceは、非営利団体Earth Fire Allianceとの協力のもと、山火事への対応に特化したFiresatコンステレーションの構築を進めています。今回ファーストライトが公開されたFiresat Protoflightは、Firesatコンステレーションのプロトタイプにあたり、3月にSpaceXのライドシェアミッション「Transporter-13」で打ち上げられました。

Firesatは、可視光から長波赤外まで6つのバンドを同時に観測できる多波長赤外線センサを搭載しており、広範囲を高精度かつ高解像度(地上50m分解能、観測幅1,500km)でモニタリングできます。これにより、5m四方の小規模な火災から大規模な森林火災まで幅広く検知できるといいます。

Muon Spaceは、2026年に3機のFiresatを打ち上げ、2030年までにコンステレーションの運用体制を整える計画です。

シリーズBラウンドで総額で1.46億円を調達

Muon Spaceは地球低軌道(LEO)衛星コンステレーションの設計、製造、運用を手がけるスタートアップ企業で、2021年に設立されました。共同創業者兼CEOのジョニー・ダイアー(Jonny Dyer)氏は、かつてのGoogleの子会社で衛星事業を行っていたTerra Bellaでチーフエンジニアを務めていた経歴がある人物です。

6月12日には、Muon SpaceはシリーズB追加ラウンドを実施し、総額で1億4,600万ドル(約211億円相当)を調達したことを発表しました。調達した資金は、衛星の量産体制の構築などに充てるということです。

さらに、Muon Spaceは、固体推進型ホールスラスタの研究や開発を行う米国のスタートアップ企業Starlight Enginesを買収したことも発表しました。Starlight Enginesのスラスタは、亜鉛を使った推進剤を採用することで、高圧の流体管理が不要になり、低コスト化と安全性の向上を実現しています。

複数の衛星コンステレーションを構築中

Muon SpaceはFiresaだけでなく、複数の衛星コンステレーションの構築を進めています。グレッグ・スミリン(Greg Smirin)社長に、同社の強みをうかがいました。

Muon Spaceの強みは、他社ではなかなか実現できないほど短期間で、完全に統合されたミッション最適化型の衛星を提供できる点です。独自の垂直統合型プラットフォーム「Muon Halo™」により、顧客は自分たちのミッションに特化した高性能な衛星を利用でき、汎用バスに合わせて設計を妥協したり、顧客側でハードウェアを構築・運用する負担を負ったりする必要がありません。

Haloはハードウェア、ソフトウェア、運用を一体化したソリューションで、計画(MuSim)、製造(MuSat)、運用(MuDash)までを統合した仕組みを持っています。これにより、打ち上げまでの時間を短縮し、初期段階でリスクを軽減し、衛星のライフサイクル全体を通して真の意味でのミッション最適化を実現しています。このアプローチにより、商業顧客でも政府機関でも、迅速に展開し大規模化できる点が大きな特徴です。

現在、Muon Spaceは複数の衛星コンステレーションを展開しており、以下のようなプロジェクトがあります。

・世界規模での山火事モニタリングを目的とした「FireSat」(Earth Fire Alliance、Googleらと連携)
・農業、AI、防災・安全保障用途の「VanZyl」(Hydrosatと提携)
・国家安全保障向けの「Vindlér」(SNCと共同開発)
・米国国防総省(DoD)や他の政府機関向けの環境監視・ISR(情報・監視・偵察)ミッション

Muon Spaceは、優秀な人材、迅速な設計から展開までのプロセス、そして価値の高いセンシングミッションに特化した強みを活かし、競争の激しい市場の中で際立った存在となっています。

また、日本の宇宙産業について聞くと、このような回答がありました。

日本は当社の長期戦略における重要な拠点です。日本は、技術革新と政府の強いコミットメントを組み合わせた世界有数の高度な宇宙市場の一つであり、1兆円の宇宙戦略基金や産業規模の倍増計画がその証拠です。当社のHaloプラットフォームの能力と、日本の気候科学、災害管理、精密製造におけるリーダーシップとの間で、大きなシナジーを見出しています。

当社の迅速な衛星コンステレーション展開能力は、日本の環境監視や商業宇宙目標を支援する可能性があります。さらに、日本はアジア太平洋地域への理想的なゲートウェイとして機能し、2030年までに地球観測価値の最大のシェアを獲得すると予想されています。急速に進化する宇宙産業と強い商業的勢いを背景に、当社の衛星コンステレーションが市場における多様な高影響力アプリケーションを支援する大きな機会があると考えています。

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参考

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