宙畑 Sorabatake

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アストロスケール、衛星給油口接続システムを本田技術研究所との共同開発を発表

2025年5月30日、アストロスケールと本田技術研究所は、軌道上サービスの一つである衛星への燃料補給の実現に向け、給油口接続システムを共同開発すると発表しました。

2025年5月30日、アストロスケールホールディングスの子会社アストロスケールと本田技術研究所(以下、Honda)は、軌道上サービスの一つである衛星への燃料補給の実現に向け、給油口接続システムを共同開発すると発表しました。

アストロスケールが長年培ってきたRPOD(ランデブ・近傍運用・ドッキング)技術と、Hondaの高精度なロボティクス技術を組み合わせることで、軌道上での衛星燃料補給という新たなサービスが実現に向けて動き始めました。

この取り組みは、内閣府主導の「経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)」の一環として採択されていて、国家戦略に基づいた宇宙インフラ整備の中核と位置付けられています。実証ミッションは、2029年頃に宇宙の低軌道での実施が予定されています。

“地上の強み”が、宇宙を支える基盤になる時代へ

Hondaはこれまで、輸送用機器やロボティクス分野において長年にわたる開発実績と知見があります。こうした地上産業で培われた技術が、宇宙空間という過酷な環境においても活用されようとしていて、今回の給油口接続システムの共同開発はその象徴的な取り組みと言えます。

アストロスケールが担う、宇宙機の接近・ドッキングといった繊細なオペレーション技術に、Hondaが開発を主導する燃料供給口の接続インフラを組み合わせることで、両社は今後、軌道上での燃料補給を可能にする給油口接続システムの開発に取り組みます。

スペースサステナビリティを支える“循環型宇宙経済”の第一歩

地球低軌道(LEO)は現在、稼働中の人工衛星に加え、数万個にのぼるスペースデブリによって混雑が深刻化しています。ESA(欧州宇宙機関)の「Space Environment Report 2024」によると、2024年時点で直径10cm以上の破片だけで約3万5千個が追跡されており、1mm〜数cmの“見えない危険”も含めれば、その数は数百万個に達すると見られています。

こうした過密状態が続けば、衛星の運用リスクが増大するだけでなく、衝突による連鎖的な破壊(ケスラーシンドローム)のリスクも高まります。これに対応するためには、使い捨て型の衛星運用からの脱却が不可欠です。燃料補給のような軌道上サービスは、衛星の寿命を延ばし、打ち上げ回数や新規衛星の製造数を抑制することで、結果的に軌道の混雑緩和と環境負荷の軽減につながるため、宇宙の持続可能性を実現するための重要な手段となります。

アストロスケールはReduce(削減)、Reuse(再利用)、Repair(修理)、Refuel(補給)、Remove(除去)という5Rを柱にしたといった循環型経済を宇宙空間で実現することが重要であるとしています。

すべてのサービスが実用化する時期はまだ明らかになっていないものの、軌道上での燃料補給という未来の常識が、いま確実に形になり始めています。その実現が、今から待ち遠しいですね。

【参考】
アストロスケール、衛星給油口接続システムを本田技術研究所と共同開発
K Program 経済安全保障重要技術育成プログラム(JST)|課題情報
アストロスケールジャパン、宇宙燃料補給技術の開発に選定