ボーイング、アメリカ宇宙軍より総額28億ドル(約4,000億円)の契約を獲得。核指揮・統制・通信システムを宇宙から支えるための戦略通信衛星の開発
2025年7月3日、アメリカ航空宇宙大手のボーイングは、アメリカ宇宙軍より総額28億ドル(約4,000億円)の契約を獲得したと発表。その契約の概要と狙いを簡潔に紹介します。
2025年7月3日、アメリカ航空宇宙大手のボーイングは、アメリカ宇宙軍より総額28億ドル(約4,000億円)の契約を獲得したと発表しました。これは進化型戦略衛星通信(ESS:Evolved Strategic Satellite Communications)プログラムの一環として、核指揮・統制・通信(NC3:nuclear command, control and communications)システムを宇宙から支えるための戦略通信衛星2機(ESS衛星)の開発・製造に関するもので、さらに2機追加する契約もオプションで含まれているようです。
ESSは、アメリカ大統領や統合戦略部隊に向け、常時接続可能で保護された、衛星からの通信能力を提供することを目的とした、国家的プロジェクトです。
アメリカ宇宙軍の軍事通信および測位・航法・タイミング部門のプログラム責任者、コーデル・デラペナ氏は、「現在は、抑止力によって平和を維持するために、アメリカの宇宙技術を前進させる重要な時期です。戦略的通信は、敵の妨害にも耐えうる保護性能、電力、そして常に接続可能な能力が求められます。この衛星は、刷新されたNC3体制の一部として、宇宙から確実な通信を提供します。」と、国家の安全保障を支える重要性を述べました。
ESS衛星は、すでに軌道上にある戦略通信衛星と比較して、容量や状況に応じた柔軟性、信頼性、そして耐妨害性の面で大幅な性能向上が期待されています。
ボーイングは2020年からアメリカ宇宙軍と共に、技術の成熟化とリスク低減に取り組んでおり、今回のESS衛星は、地球から約22,000マイル(約35,700km)の静止軌道に展開され、世界中の戦略任務に関わる部隊へ途切れのない通信の提供が計画されています。
通信には高度に保護された波形と、アメリカ防総省と共同で開発した機密技術が用いられることになっています。
同社の副社長で宇宙・情報・兵器システム部門のジェネラルマネジャー、ケイ・シアーズ氏は
「アメリカには、確実に機能し、最高水準の防御力と性能を備えた国家安全保障のための通信システムが必要です。私たちは、進化する脅威環境に対応するため、信頼性の高い通信を提供できる革新的なシステムを設計しました。」
とコメントしています。
また、同じくボーイングの副社長である宇宙ミッションシステム部門ミシェル・パーカー氏は
「この契約獲得は、当社がこれまで行ってきた技術投資と革新の成果を示すものです。私たちは生産能力を拡大し、人材を強化し、即座に製造を開始できる体制を整えました。この重要な能力を、国家の戦略的ニーズに応える形で確実に提供します。」
と強調しました。
ボーイングは、2031年までに最初の衛星を納入する見通しであり、今後もアメリカの宇宙防衛戦略における重要な役割を担っていくと考えられます。
【参考】
・News Releases | Boeing Newsroom
・Boeing secures $2.8 billion US satellite contract | Reuters
・$2.8B Space Force Deal Kicks Off $12B ESS Program with Boeing at the Helm – Flight Plan