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宇宙デブリ化防止装置「HORN」を開発するBULLが、IAC期間にArianespaceとXDLINX Space Labsとのそれぞれの進捗を発表【宇宙ビジネスニュース】

宇宙デブリ低減技術「HORN」を開発するBULLは、世界最大級の宇宙カンファレンス「IAC」で、ArianespaceとXDLINX Space Labsとの進捗をそれぞれ発表しました。その概要を紹介します。

宇宙デブリ低減技術「HORN」を開発するBULLは、2025年9月29日から10月3日にかけて国際宇宙航行連盟(IAF)が主催する世界最大級の宇宙カンファレンスイベント「国際宇宙会議(IAC)」において、国際的な2つの進展を発表しました。欧州のArianespaceとの協力深化と、インドのXDLINX Space Labsとの戦略的連携に関するMOUの締結です。

BULLは、ロケットや人工衛星に搭載して、宇宙デブリの発生を防止する装置「HORN」を開発している日本の宇宙スタートアップです。ロケットや衛星がミッションを終えて運用を終了した後、扇状の構造物を展開し、大気抵抗によるブレーキ力を用いて搭載先の宇宙機を減速。その結果、対象の宇宙機が軌道上から離れ、大気圏で燃え尽きるという仕組みです。

宇宙デブリ化防止装置の概要(ロケットの場合) Credit : BULL

Arianespaceは、欧州宇宙機関ESAが製造主契約者Arianeグループとともに開発した欧州の基幹ロケットAriane 6を運用している企業で、創業以来45年間で150を超える世界の官民の顧客との契約のもと、1100機を超える衛星を打上げた実績があります。

また、XDLINX Space Labsは、設計、サプライチェーン、構築、統合、宇宙適格化からミッション運用まで、一気通貫した小型衛星ミッションを顧客のニーズに応じて提供する企業です。すでにグローバルインテリジェンス、監視、偵察(ISR)ミッション向けにペイロードを備えた衛星を提供しており、400以上の衛星を打ち上げている実績があります。

それでは、各社とどのような進捗があったのか、以下で紹介します。

Arianespaceと宇宙デブリ低減に向けた協力を加速

BULLは、Arianespaceと、HORNをAriane 6ロケットに搭載するための実現可能性検討が完了し、2027年以降の飛行実証を目指す段階へ進むことに合意しました。

両社は2024年にMOUを締結し、HORNを複数衛星打ち上げ用のデュアル・ローンチ・システム(DLS)に実装できるかを検討しており、その結果、有効であることが示されたとのこと。今回の合意により、BULLにとってはHORNの宇宙実証が行われることが明確になり、ArianespaceにとってはAriane 6ロケットが持続可能な宇宙利用に貢献するロケットとなる重要なミッションとして注目されることでしょう。

IAC 2025で展示されていたHORNの模型

本リリースについて、BULLのCEOである宇藤恭士さんは以下のようにコメントしています。

「「惑星間の行き来を『当たり前』にする」というビジョンのもと、BULLは日本から世界へ向けて、宇宙利用の新しい常識を築く挑戦を続けています。このたび、欧州を代表する世界的企業であるArianespace社との協業をさらに前進させ、当社の宇宙デブリ低減装置 HORN を Ariane 6 ロケットに 実際に適用することを視野に、その実現可能性を確認する取り組み を進めることは、宇宙環境の持続性を高めるうえで極めて意義深い一歩です。BULLは今後も、日本および欧州を基点とした国際的な連携を深め、持続可能な宇宙開発への貢献を着実に進めてまいります。」

また、ArianespaceのCEOであるDavid Cavaillolès氏も以下のようにコメントしています。

「宇宙輸送をリードする立場として、当社はこれまで責任ある宇宙利用を目指してきました。BULL は宇宙デブリ低減の解決策を提供する先駆的な企業であり、今回の革新的な協力は、この重要な課題に私たちが真摯に取り組んでいる姿勢をあらわすものと考えます。持続可能な宇宙活動への貢献は当社の最優先事項のひとつであり、新しい解決策を後押しすることが、持続可能な未来へつながると強く信じています。」

XDLINX Space Labsと人工衛星向け宇宙デブリ発生防止・戦略的連携に向けたMoUを締結

また、BULLは、XDLINX Space Labsと人工衛星向け宇宙デブリ発生防止・戦略的連携に向けたMoUを締結しました。この連携では、XDLINXの衛星にHORNを搭載して軌道上実証を行い、将来的には同社の衛星プラットフォームにHORNを統合することを目指しているとのこと。この取り組みにより、ロケットだけではなく衛星ミッションにおいてもデブリ発生防止技術の実証・実装が進むこととなります。

IAC 2025で展示されていたHORNの模型。手前にある立方体の模型が人工衛星用

XDLINXのCEOであるGandupalli氏は「BULLのPMD装置は革新的なソリューションであり、安全で持続可能な宇宙システムの実現に向けて共に取り組めることを嬉しく思う」とコメントしています。すでに400を超える衛星を開発して打ち上げている実績がある同社の衛星プラットフォームにHORNが統合されることは、Arianespaceとの宇宙実証と同様にBULLの国際的な存在感を高める大きな一歩となるでしょう。

本リリースについてBULLのCEOである宇藤恭士さんは以下のようにコメントしています。

「BULLは、日本発のスタートアップとして世界の宇宙産業に新しい“当たり前”を創り出すことを使命としています。この度のXDLINX社との連携は、宇宙産業の持続可能性を高めるうえで大変に意義深いものです。XDLINX社が開発を進める人工衛星に対し、BULLのPost Mission Disposal(PMD)技術を適用することで、役割を終えた衛星が新たなデブリとならない未来を現実のものにしてまいります。BULLは、これまでに築いてきた日本及び欧州に加え、新たにインドとのネットワークを活かし、グローバルな協力体制のもとで事業を推進します。」