宙畑 Sorabatake

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宇宙の技術で医療が変わる? JAXA発スタートアップのツインカプセラが断熱保冷技術を検体集配に活用【宇宙ビジネスニュース】

大気圏再突入技術を医療へ。JAXA発ツインカプセラが宅配便を活用した検体集配を本格化。HTVで培われた保冷技術により、安価で高品質な全国輸送を可能にします。

2026年1月21日、JAXA発スタートアップ(JAXAの技術や知見をもとに発足)であるツインカプセラは検体(血液などの検査用サンプル)検査事業を手がけるCoordinate Labと連携して、新たなサービス提供を開始したことを発表しました。

ツインカプセラは、「大気圏再突入技術」を核としたHTV搭載小型回収カプセルで培われた断熱保冷技術の社会実装を目指すJAXAスタートアップです。2018年11月、JAXAは国際宇宙ステーションでの実験で生成したタンパク質結晶を4℃に維持した状態で回収することに成功しました。大気圏突入時の過酷な熱環境からサンプルを守り、回収までの5.6日間において、温度変化を0.3℃に抑えた実績は、同社の高い技術力を支えています。

宙畑メモ:HTV搭載小型回収カプセルとは
国際宇宙ステーション(ISS)から実験サンプルなどを地球に持ち帰るためにJAXAが開発したカプセル。大気圏に再突入する際、カプセル表面は数千度の高温にさらされるが、内部は4℃などの低温に保つ必要がある。この極限環境を耐え抜くために開発された断熱保冷構造(魔法瓶のような真空断熱構造と特殊な断熱材の組み合わせ)が、今回のツインカプセラの製品の基礎技術となっている。

HTV搭載小型回収カプセルのミッション概要 Credit : ツインカプセラ

両社は、ツインカプセラが持つ電源不要で温度を一定に保つ保冷技術とCoordinate Labの検体集配における運用ノウハウをもとに「ワンストップ検体集配サービス」を展開しています。さらに、保冷管理の手間が不要な側面を生かし、通常のトラックによる国内大手宅配便サービスに組み込まれることとなりました。

これにより、従来はコストや温度管理に課題があった検体輸送において、全国規模でリーズナブルかつ高品質な検体集配サービスが実現されると期待されます。

Credit : ツインカプセラ

もともとツインカプセラは、この断熱保冷技術を地上のビジネスに活かすことを目指し、電源不要で長時間・厳格な温度管理が可能な保冷容器の開発・製造を行っていました。2023年10月には同技術を活用した断熱保冷容器の試作品を発表し、検体や医薬品の個別保冷輸送などのサービス創出に取り組んでいます。

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今回、ツインカプセラの超断熱保冷容器「BAMBOO SHELLter(バンブーシェルター)」を活用した検体集配サービスにおいて、大手宅配便ネットワークの利用が本格的に可能となりました。

これまでは、一部の区間等での活用に留まっていましたが、輸送条件の調整が完了したことで、全国規模での「宅配便活用」が実現しました。

このサービスにより、以下のようなメリットが期待されます。
・全国への輸送実現とコストダウン
容器自体が高い断熱性能を持つため、配送側での保冷管理が不要となり、通常のトラックによる大手宅配網を活用できます。これにより、地方の医療機関から都市部の検査ラボまで、安価かつ迅速に検体を輸送可能になります。

・人手不足の解消大手宅配便のシステムを活用することで、集荷手続きを効率化し、医療業界の人手不足を解消します。(従来、検査会社のスタッフが巡回して集荷)

多施設共同研究での検体集配のイメージ

両社の代表は、以下のようにコメントしています。

ツインカプセラ 代表取締役/CEO 宮崎和宏氏
「大手宅配便サービスの活用によって、株式会社Coordinate Lab様と進めてきたBAMBOO SHELLterを用いたワンストップ検体集配サービスを、より利便性の高いものにアップグレードできることを大変嬉しく思います。BAMBOO SHELLterの特長を最大限活かしたサービスが広く普及することで、バイオメディカル分野等の研究者や医療関係者の皆様が推進されている重要な研究や臨床試験等の進展に貢献できることを願っております。」

Coordinate Lab 代表取締役 篠原賢一氏
「昨年頃より、検査センター業界では人手不足が深刻化し、検体集配業務に支障をきたす事例が発生しております。この『BAMBOO SHELLter』を活用した効率的な集配サービスを全国に広めることで、検査業界全体の課題解決に貢献できればと考えております。」

今後は、全国を対象として本格的なサービス提供を行う予定です。多施設共同研究を行う医師や検査開発ベンチャー、臨床検査事業者などを主な利用者として想定しており、それぞれのニーズに合わせた集配計画の提案を行っていくとしています。

今回の事例は、宇宙のコア技術である「大気圏再突入技術」が、医療・検体輸送という私たちの暮らしの課題解決に結びついたモデルケースと言えるでしょう。また、シード期のツインカプセラが、医療・物流の課題(品質・人手不足・コスト削減)に向き合い、自社技術と大手物流網を組み合わせた拡張性のあるビジネスモデルを構築している点も非常に興味深いです。

今回の事例のように、宇宙の技術が私たちの身近な暮らしを変える事例がどんどん生まれることで、宇宙ビジネスの裾野が拡大することが期待されます。

参考記事
宇宙技術×全国宅配網で検体輸送が進化 ツインカプセラとCoordinate Lab、検体集配に大手宅配便サービスを組み込み本格展開へ

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