宙畑 Sorabatake

宇宙政策

「宇宙天気予報でユニコーンを目指す!」現場の悩みを革新的なAIで解決へ【S-Booster2024最終選抜会】

2025年1月16日に開催された「S-booster2024」最終選考会の内容をお伝えします。現場の課題にフォーカスした、実用的なビジネスアイデアが勢ぞろいしました。

宇宙を活用したビジネスアイデアコンテスト「S-Booster」は、内閣府宇宙開発戦略推進事務局が運営するという政策としては珍しいものでした。

2017年に第1回が開催され、昨年度に開催されたS-Booster 2024の最終選抜会を持って、内閣府宇宙開発戦略推進事務局が政策として推進するものではなくなり、民間企業が運営機関として携わることになっています。

(2026年1月追記)S-BoosterはSPACETIDEに承継されることが発表されました。

本記事では、S-booster2024の最終選抜会の内容を、受賞結果や宙畑編集部が気になったポイントと合わせてまとめてご紹介します。S-Boosterの面白いポイントは、公募開始後、第1・第2選抜を通過したファイナリストが、各業界の有識者(メンター)から指導を受け、プロジェクトの中身、当日の最終選抜会のプレゼンテーションの完成度を高めていくという点です。

Credit : 内閣府

宇宙ビジネスという未知の領域におけるビジネスアイデアが「革新性、社会発展性、実現・収益性(Innovation, Social Potential, Profitability)」という3つの観点で評価され、毎回素晴らしいアイデアが最終選抜会で発表されるのは非常に見ごたえがあります。ちなみに、賞金は各スポンサーや審査員から様々な賞が企画され、最優秀賞には賞金1000万円が授与されます。

(1)S-Booster 2024の概要

S-Booster 2024の審査員には、内閣府やJAXA、NEDOといった政府・研究機関、ソニーや横河電機といったスポンサー企業、そしてGISTDAやOneGlobalVentureなどのアジア・オセアニア地域の出席者が招かれていました。会場では、登壇者の事業にかける熱意が溢れ、審査員からも鋭い質問が飛び交いました。

<最終選抜会概要>

日時 2025年1月16日(木)
会場 日本橋三井ホール(オンライン配信もあり)
概要 国内およびアジア・オセアニア地域の宇宙ビジネスアイデアコンテスト。
優秀なアイデアは専門家にメンタリングを受け、最終選抜会では投資家の前で発表することができます。ビジネスマッチングの機会と事業化に向けた賞金が得られます。
動画配信
各賞の紹介
(最優秀賞1000万円を筆頭に、審査員特別賞、アジア・オセアニア賞..と続きます)
特別審査員のご紹介
(他にもスポンサー企業や政府・研究機関からの審査員も多く参加されていました) Credit : S-booster2024

(2)S- Booster 2024の結果

S-booster2024で表彰されたチームの一覧を示します。

最優秀賞は、Space Weather Companyが選考され、ANAホールディングス賞とスカパーJSAT賞も複数同時受賞されていました。他にもUMIAILEやuAlpha, Team UKKなど、多くのチームが受賞されていました。S-boosterには非常に多くの賞があり、多くのチームに受賞の機会が与えられている点も魅力の一つだなと感じます。

表彰 賞金/権利 選考チーム アイデア
最優秀賞 1000万円 Space Weather Company 宇宙天気予報AIによるデブリ衝突回避の実現
特別審査員賞 100万円 UMIAILE 小型無人ボートによる『海の見える化』サービス”UMIAILE”
アジア・オセアニア賞 100万円 uAlpha はるか宇宙への旅を支えるマイクロソリューション
ANAホールディングス賞 50万円 Space Weather Company 宇宙天気予報AIによるデブリ衝突回避の実現
スカパーJSAT賞 50万円 同上 同上
ソニーグループ賞 50万円 Team UKK AI駆動型CubeSat開発プラットフォーム:宇宙開発の民主化を目指して
大正製薬賞 50万円 株式会社UBeing umaiNa(ウマイナ)宇宙・地上で食体験を劇的に向上させる
Honda R&D賞 50万円 同上 同上
三井物産賞 50万円 横河スペースマニュファクチャリング推進チーム 半導体スペースマニュファクチュアリング
横河電機賞 50万円 In-Spector In-Spector搭載:Hyperspectral Image Processing ライブラリ
JAXA賞 JAXAによる支援 Team UKK AI駆動型CubeSat開発プラットフォーム:宇宙開発の民主化を目指して
NEDO賞 NEDOによる支援 In-Spector In-Spector搭載:Hyperspectral Image Processing ライブラリ
S-booster2024表彰の様子
(多くのチームが受賞されていました。おめでとうございます!)

(3)S-Booster 2024の受賞チームのアイデア紹介

それでは、最優秀賞を筆頭に、受賞されたチームをご紹介していきます。
また、いくつか個別にインタビューさせていただきましたので、よろしければご覧ください。

1.Space Weather Company「宇宙天気予報AIによるデブリ衝突回避の実現」

チーム名 Space Weather Company
表彰 最優秀賞、ANAホールディングス賞、スカパーJSAT賞
アイデア 宇宙天気予報AIによるデブリ衝突回避の実現
概要 宇宙天気予報AIとデブリ観測レーダー衛星衝突回避と運用者の負担軽減を実現
紹介動画 No116_宇宙天気予報AIによるデブリ衝突回避の実現
受賞理由(最優秀賞) 難しい太陽フレアの予測技術を実現されており、なにより「ユニコーンを目指す」という強い思いに審査員一同衝撃を受けたため。
受賞理由
(ANAホールディングス賞)
デブリの衝突回避は、「空(宇宙)の安全を守る」というグループの理念にぴったりだったため。
受賞理由
(スカパーJSAT賞)
衛星の運用現場での課題に焦点があてられていたため。特に、太陽フレアによって大気が変化し、軌道にどのような影響があるのかを予測できることは非常に有意義。
Space Weather Company

アイデア詳細

Space Weather Companyは、宇宙天気予報AIとデブリ観測レーダーを開発することにより「人工衛星のデブリ衝突回避」の事業化を目指しています。

近年、人工衛星の打ち上げ数の増加に伴って、デブリ衝突のリスクが急速に拡大しています。それに伴い、デブリ運用者は衝突回避のために、頻発するデブリ衝突アラートに注意し、詳細な軌道解析を行う必要があり、業務負担が増加しています。更に、低軌道では太陽活動で突発的に大気抵抗が増加し、予期せず衛星が落下するリスクが問題視されています。

デブリ増加に伴う衝突リスクは急増しており、3年後には約40倍となる見込み
太陽フレアによって大気抵抗が増加し、衛星落下の被害も出ている

これらの深刻な課題を解決するために、Space Weather Companyは、宇宙天気予報とAI技術を駆使して、軌道変化と大気抵抗を高精度に予測するサービスを提供します。

運用負担軽減と衛星落下防止という課題を、「宇宙天気予報✖︎AI」で解決

大気抵抗の変化は、太陽・宇宙空間・地球大気が相互干渉する、複雑なメカニズムで発生します。従来は、地球近傍のデータから静的なモデルを使って予測するため、太陽活動が活発になると大きな予測誤差が発生します。Space Weather Companyは太陽に関する膨大なデータを機械学習させるAIシミュレーターを開発しており、精度よく軌道・大気抵抗を予測することができます。

太陽に関する膨大なデータから軌道・大気抵抗の変化を予測
宇宙天気予報シミュレーターのイメージ

独自のAIによって得られる効果は非常に大きいです。毎日300回以上も発生していたデブリ衝突アラートは、3日に1回に削減されます。また、7日先までの軌道データを、従来の1000倍の精度で予測することが可能となります。

独自のAIによって創出可能な効果は大きい

更に、高精度な機械学習データを収集するために、これまで検出できなかった微小デブリ(1cm~10cmサイズ)を観測するレーダーを独自開発する予定です。

微小デブリを観測するレーダーを独自開発

防衛省とは2年前から安全保障に関する取り組みを進めており、JAXAや民間企業ともパートナーシップを広げることを視野に入れています。更に、アルテミス計画に沿って、2030年代に磁気嵐による通信障害回避サービスや月面での放射線被曝を回避するサービスの提供を目指しています。

ステークホルダーのイメージ

市場予測としては、軌道分析と微小デブリ事業で10億と97億円を見込んでいます。中長期的には、8兆円の宇宙通信領域で、磁気嵐による通信障害回避サービスにより、400億円のシェアをとり、ユニコーン企業となることを目指しています。

市場規模の試算
Credit : Sbooster2024

審査員とのQ&A(一部抜粋)

※Q:質問、A:回答、C:コメント(アドバイス)

Q:レーダーが実用化したら、収支計画上では黒字化するのでしょうか?(もしレーザーがなければ、黒字化しないのか?)太陽フレアによる軌道解析が実現すれば、それだけでも有用に思います。
A:AIは技術の差別化が難しく、独自のデータを持つことが重要です。我々はユニコーンを目指したいので、そこ(レーダー技術の獲得)を狙っていきたいです。

Q:地球の大気モデルの精度向上のために、モデルもリアルタイム更新されるのでしょうか?
A:大気予測については、軌道情報を見て、非常に難しい中緯度対流の予測にもアプローチしていきます。

Q:微小なデブリの発見のために、レーダーとしてどれくらいのカバレッジを設けるのでしょうか?
A:デブリ観測分野のパイオニアである、京都大学生存圏研究所と研究協力をしています。そちらとは、3GHzのデータと干渉計、イメージング技術を用いて実現しようとしています。国内ではカバレッジ不足のため、友好国と連携してレーダーを広げることが必須と考えています。国の機関やJAXAにもご協力をお願いしたいところです。

宙畑インタビュー

Q:宇宙天気予報のシミュレーター開発は、いつごろから始められたのでしょうか?
A:開発は10年以上前から、5~6年前には技術立証されています。その技術をビジネス向けに開発してきました。

Q:今後の事業化に向けて、どのように進めていかれる予定でしょうか?
A:今後は、NICTや京都大学と連携しつつ、自社の独自技術との棲み分けを進めながら、共同開発を進めていきます。AIアルゴリズムは非常に真似されやすいので、ブラックボックス化する戦略で考えています。

Q:ビジネスに取り組まれる上で、普段から意識されている課題はございますでしょうか?
A:我々の取り組んでいる領域は、JAXAやNICTと非常に分散している現状があります。アメリカでのコンソーシアムのように、多くの関係者を束ねて、産官学連携のコミュニティを作っていきたいです。

さらに、日本の大学の基礎研究には予算が足りていない実情があります。我々含め、民間企業が稼いだお金を、基礎研究・研究者の仲間たちに流して、日本の科学技術の発展に貢献していきたいです。

Q:S-Booster2024に出場されたきっかけについて教えていただけますか?
A:S-Boosterの参加意義としては、2つあります。1つ目として、多くの国が宇宙開発に参入する中、持続可能な宇宙を守るためには、今のタイミングしかないと考えたからです。2つ目として、(上述の通り)自分たちがこの取り組みののろしをあげて、多くの関係者に周知して、束ねていきたいと考えたからです。

Q:レーダーは自社で開発されていく方針なのでしょうか?
A:自社で開発をします。微小デブリが地球から観測できるように、まずは国内に1つ設置したいです。LeoLabsがやっているような、フェーズドアレイ型のアンテナを想定しており、(カバレッジを広げるためにも、)友好国のような普及しやすい国々に展開していきたいと考えております。

2.UMIAILE「小型無人ボートによる『海の見える化』サービス」

チーム名 UMIAILE
表彰 審査員特別賞
アイデア 小型無人ボートによる『海の見える化』サービス”UMIAILE”
概要 独自のASVと海洋情報プラットフォームを用いて、海洋観測を革新する。
紹介動画 No.136_”UMIAILE”
受賞理由
(審査員特別賞)
海洋観測はチャレンジングである。同社の技術は、防災分野に対する社会的影響が大きいので、今後の活躍に期待したい。
UMIAILE

アイデア詳細

UMIAILEは、海洋観測に課題を抱える政府機関や企業へ『海の見える化』の価値を提供します。
提供するサービスでは独自のASV(Autonomous Surface Vehicles)を用いて、海洋情報を高頻度・高密度かつ定量的に観測・蓄積することで、海洋観測を革新します。

海の見える化とは、これまで観測されていなかった海洋データを観測し、社会課題の解決に繋げることです。これまでの海洋観測には、人や船のリソースが不足、コストが高額といった多くの課題がありました。

海の見える化とは?
人・船・コストという3つの課題あり

UMIAILEは、独自のASVと呼ばれる小型無人ボートとデータプラットフォームで海洋観測分野に変革をもたらします。

独自のASVとデータプラットフォームで海洋観測分野に変革をもたらす

開発しているASVは、水中翼を使って高効率で動作する特徴を持っています。UMIAILEの強みは、小型で速いという点です。3m未満の船体で3knot以上のスピードを実現できるため、競合優位性があります。

UMIAILEの提供するASVの仕様(過酷な環境でも動作が可能であり、法的な制約が少ない)
法的制約が少ない小型の船舶で、高速移動ができるものを目指す

ASVでの海洋観測にあたって2つの課題があります。1つ目が海洋上での自己位置推定、2つ目が洋上での通信インフラが整備されていない点です。これらの課題に対して宇宙の技術を活用することを考えています。みちびき補強信号による高精度測位とVDES衛星によって他の船舶や衛星、陸上との相互通信を実現させます。

海洋✖︎宇宙✖︎DXで様々な海洋情報を把握できる

来たる南海トラフ地震を見据えて、日本海溝における地殻変動を、海底にある観測装置を用いて直接観測することを目指しています。これまで年1〜2回だった観測頻度を毎月1回以上に向上させます。

日本海溝における地殻変動を、海底にある観測装置を用いて直接観測

さらに、ASVについては、来年のサービス提供を見据えており、相模湾でのプロトタイプ試験などを進めているそうです。

相模湾でのプロトタイプ試験

ASVのマーケットとしては、2030年には1000億米ドルへの成長を見込んでいます。事業計画としては、ASVのPoCを経て、来年には観測サービス提供開始、2030年にはデータプラットフォームの実現、2035年には全世界に1900台のASVの出荷を目指しています。

売上予測(防災分野、B2Bにおける需要拡大が著しい)

審査員とのQ&A(一部抜粋)

Q:300億円売上を目指すにあたって、災害対応でどのようにマネタイズするのでしょうか?
A:安全保障が大きいです。海上保安やJAMSTECで防災・ASVの実績を積むことは重要ですので、まずは地殻変動観測にフォーカスしていきたいです。また、海洋監視について、警備サービス会社であるセコムのように、有事の際に動くものと、平時に動くものがあります。このような棲み分けが可能ではないかと思っています。平時の時のマネタイズは十分可能だと考えています。

Q:機体の群制御をどのようにしていくのでしょうか?
A:(開発が活発な)空中のドローンの知見を活かしつつ、今後開発していきます。

Q:VDES衛星とどのようにコラボレーションするのでしょうか?
A:Starlinkのように、省電力かつ双方向通信を可能にしていきたいです。

Q:VDES通信装置を船舶に乗せるのでしょうか? 
A:はい、軌道上と海洋上の両方でコンステレーションを目指していきたいです。

Q:ASVはどれくらいの期間で運用可能でしょうか?
A:顧客のニーズによります。例えば、ミッションとしてバッテリをどの程度載せるかなど

3.uAlpha「はるか宇宙への旅を支えるマイクロソリューション」

チーム名 uAlpha
表彰 審査員特別賞
アイデア はるか宇宙への旅を支えるマイクロソリューション
概要 栄養価の高い微細藻類株で地球の循環経済に貢献しつつ、
宇宙ミッションの持続可能な食料源を生み出す。
紹介動画 No.21_uAlpha
受賞理由
(審査員特別賞)
宇宙船地球号は非常に危険に晒されているので、栄養の価値やリソースの枯渇に目を向けた本アイデアには非常に価値がある。これから惑星間の活動に伴ってより重要になっていく。
uAlpha

uAlphaは、成長が早く、栄養価が非常に高いことで知られるクロレラに注目し、食品廃棄物を栄養価の高い資源に変える革新的技術を開発しています。また、宇宙飛行士に必須栄養素を届けるために、このクロレラを持続可能な食料源とすることを目指しています。

宙畑メモ:クロレラとは
淡水に生息する栄養価の高い緑藻で、ビタミンやミネラル、タンパク質を豊富に含み、健康食品として利用されています。

2024年の8月に人類は地球の資源を使い果たしており、全てを賄うには、1.75個分の地球が必要となっているそうです。アルテミス計画を始め、宇宙探査活動はより積極的に進んでいくことが予想され、リソースが限られる月面基地での生活では、特に食料提供の課題が浮上してきます。

2024年時点で、地球のリソース上では、1.75個分がないと、足りないことが分かっている

将来の月面基地での食料提供を実現するために、uAlphaでは、クロレラに着目しました。クロレラの特徴として、「高タンパク質、高栄養・抗酸化性、成長因子(体の修復を助ける)」があり、非常に栄養価の高いスーパーフードです。

クロレラを宇宙食へ

uAlphaでは、機構・エネルギー・メンテナンスに無駄が出ない栽培システムを開発しています。同システムは、独自の気体交換膜を有しており、光合成によってCO2をO2へ交換することができます。さらに、この栽培システムを水再生システムと連携ができれば、水を再利用しながら持続的に食料を提供することが可能です。

機構・エネルギ・メンテナンスに無駄が出ない栽培システムを提供

宇宙飛行士の食事は、輸送コストも考慮すると、1日あたり最大4500米ドルと非常に高額です。一方で、この栽培システムでは、1回の輸送コストで済み、ライフタイムで580万米ドルを削減することできると試算されています。

高価な宇宙飛行士の食費について、大きく削減することが可能

現在、NIA(National Inovation Agency)と食品栽培装置の試作を実施したり、WIPOと連携して特許取得を開始したりと、多くの機関との連携と技術力の蓄積を進めています。

政府機関や投資団体との連携、論文・特許で技術力を蓄えている

同チームは、2026年にスーパーフード事業での最初の顧客を得て、2030年には月面基地でのサービス展開を目指すと話します。まずは、地球のビジネスを進めて、アルテミス計画に沿って、宇宙のビジネスとの両輪で進めていくようです。

事業計画(2030年には月面拠点でのサービス提供を見据える)

審査員とのQ&A(一部抜粋)

Q:本ソリューションは何か特別なものなのでしょうか?また、競合と比べてのアドバンテージを教えてください。
A:タイで製造することでコストが低く、微小重力環境に活用できるように開発中です。アドバンテージとしては2点あり、1点目としてこの廃棄管理システムをタイで導入しようとしています。2点目として、クロレラは宇宙飛行士の食物として登録済みであり、その成長因子によって、宇宙飛行士の筋肉低下などを防ぐことができます。

Q:商業化のために必要なことは何なのでしょうか?
A:収益としては、地上と宇宙分野で分けています。宇宙産業への早期参入は難しいと考えており、現在は廃棄管理システムでタイ企業との連携を進めています。売上として、スーパーフード市場では各年10%、廃棄管理システムでは各年5%の成長を見込んでいます。

Q:自己資金で運営されていますが、追加の資金調達を計画しているのでしょうか?
A:宇宙環境への適用にあたって、資金調達は非常に助かります。現状としては、廃棄物管理のシステムの販売を通して、タイの企業から投資資金を得ています。

4.Team UKK「AI駆動型CubeSat開発プラットフォーム:宇宙開発の民主化を目指して」

チーム名 Team UKK
表彰 ソニーグループ賞、JAXA賞
アイデア AI駆動型CubeSat開発プラットフォーム:宇宙開発の民主化を目指して
概要 AI技術を活用したCubeSat(小型人工衛星)開発プラットフォームを提供することで、教育機関や中小企業が低コストで宇宙ミッションに参加できるようにする
紹介動画 No 164_AI駆動型CubeSat開発プラットフォーム
受賞理由
(ソニーグループ賞)
宇宙でのAIの活用について、将来性を非常に感じたため。
受賞理由
(JAXA賞)
手続きの煩雑さなどリアルな課題に目を向け、AIで誰でもこの課題解決できるようにするという点に共感した。JAXAとしても同じ課題を持っており、一緒に仕事をしていきたいと思ったため。
Team UKK

Team UKKは、AI技術を活用したCubeSat開発プラットフォームを提案し、宇宙開発の民主化を目指しています。このプラットフォームを通して、教育機関や中小企業が低コストで宇宙ミッションに参加できる環境を提供します。

宇宙業界には、要件定義や法律、試験など分かりにくい点が多く、「民主化」がなされていません。「民主化」とは、「持続可能性があること」、「定義が統一されていること」、「誰でもできること」の3点だとTeam UKKは考えています。

宇宙業界には、要件定義をはじめ、多くの障壁がある
宇宙における情報が「民主化」されていない点に着目

学生の衛星開発では2年ほどでメンバーの入れ替えが起きるため、技術継承が行き届いていない点があります。また、要件定義や手続きにおいても、会社や団体によって定義はまちまちという現状があります。

学生の入れ替えが早く、技術継承がうまくいかない課題がある
組織によっての定義に違い、申請の手続きが煩雑

そこで、Team UKKは、AIによる技術資料の生成をソリューションとして提案しています。チャットや会議のデータを活用し、衛星開発における負担を軽減します。衛星開発の現場としても、やはり技術資料の負担軽減を強く望まれているそうです。

AIによって技術資料作成を効率化!
衛星開発では幅広い書類作成があり、負担が重い

将来的には、AI開発の経験をもとに、CubeSat開発プラットフォームとして、開発から運用まで全てフォローするシステムを展開予定です。また、学生側の声として、「自分一人で考えて衛星開発することは難しい」、企業側の声として、「煩雑な作業はAIに任せたい」、「部品や試験の情報が足りない」とあがっており、現場からの多くの需要が期待されます。

DBや生成AIを活用した統合プラットフォームによって、文書作成を支援

更に、Team UKKは、宇宙とAIに強い学生を中心としており、賞金を元に学内ベンチャー立ち上げを目指しています。発表の最後でも、JAXAやソニーをはじめ、多くの登壇者との間で、衛星開発のノウハウやAI利活用での連携を熱望されていました。

審査員とのQ&A(一部抜粋)

Q:膨大なテキストデータがあって、基盤となるモデルが構築されています。宇宙関係はまだ量が少なく、ハルシネーション(偽情報をあたかも事実のように出力すること)が起き得ると思っています。このソリューションではそれを防ぎ、高い精度を実現されるのでしょうか?
A:精度の問題は、RAG*1かMCP*2と呼ばれる手法で対応予定です。前者は事前データをもとにベクトルデータで調整する必要があり、後者で対応予定です。具体的には、MCPの対話形式を採用しており、技術文書作成まで実証することができています。

Q:NEDOにできること、この課題に共感する仲間づくりはどうされるのでしょうか?
A:学生がAIを積極的に活用している現状があって、学生の衛星開発には需要があると考えています。
C:ビジネスはグローバルに展開されるので、海外にも目を向けると良いと思います。


*1RAG:Retrieval Augmented Generation
生成AIに外部情報を連携させて回答を生成する技術のこと。大規模言語モデル(LLM)に外部情報の検索機能を持たせることで、精度を向上させます。

*2MCP:Model Context Protocol
Anthropicが提案するオープン標準で、AIとデータソースやツールを安全かつ効率的に接続できるようにするプロトコルです。MCPは、クライアント(AI)とサーバー(データソース)のアーキテクチャを採用し、AIがデータベースや外部APIなどに安全にアクセスできることを目的としています。これにより、AIツールの応答精度向上やデータ漏洩リスクの低減が図れます。

宙畑インタビュー

Q:今回のアイデアは、普段の衛星開発で感じる課題から生まれたのでしょうか?
A:はい、高専で衛星開発している中で、専門用語が多く難しいなと感じるところが多かったことがきっかけですね。宙畑さんも詳しく解説されている記事もたくさんあると思いますし、そこも活用できればいいなと思い始めました。

Q:今後は、色々な関係者と連携しつつ、ベンチャーを目指していかれるのでしょうか?
A:(最後のスライドでご紹介したように)我々、学内ベンチャーを目指しており、基礎技術・情報収集を進めていきたいです。
C:学生さんだけでなく、色んな衛星メーカー・企業さんにも需要があると思いますので、サービス展開されることを期待しております。

5.Team UBeing「umaiNa(ウマイナ)宇宙・地上で食体験を劇的に向上させる」

チーム名 Team UBeing
表彰 大正製薬賞、Honda R&D賞
アイデア umaiNa(ウマイナ)宇宙・地上で食体験を劇的に向上させる
概要 味覚調整デバイスで、宇宙滞在者や減塩が必要な方々に健康と食の楽しみを提供
紹介動画 No.16_umaiNa(ウマイナ) 宇宙・地上での食体験を劇的に向上させる
受賞理由
(大正製薬賞)
「宇宙と地上を繋ぐ健康と美を目指すヘルスケア事業」というテーマに一番合致していた。減塩という点は宇宙空間でもニーズを期待
受賞理由
(Honda R&D賞)
Hondaの注目する「味覚の転送技術」にもつなげられると、
今後の発展性に期待した

Team UBing

アイデア詳細

UBeingが開発する「umaiNa(ウマイナ)」は、経皮電気刺激により味覚を調整するデバイスで、宇宙滞在者や減塩が必要な方々に健康と食の楽しみを提供することを目指しています。

顎に設置するデバイスで味覚を向上させる

CEOの福島さんは現職の医師であり、実際に減塩食で苦しむ患者さんに向き合った原体験を起点として、Think SPACE LIFEに参加し、宇宙生活の課題に着目したことが本ビジネス発足のきっかけとなっています。

宇宙飛行士の味覚や塩分摂取など多くの課題があります。実際に、日本・米国の宇宙飛行士やフライトサージャン(医師)にニーズをヒヤリングして確信を得たそうです。

宇宙で尿路結石になると、治療が難しく、予防が重要視されています。更に、今後は一般滞在者の長期滞在が予想されるため、その重要性は増しています。一方で、地上でも塩分摂取は大きな健康課題となっており、美味しさを実現しつつ、減塩することは非常に重要です。

そこで、その解決策としてumaiNaというデバイスを提案しています。顎に装着し、皮膚を電気刺激することで味覚を補強します。ガイドラインの20%の電流量とするなど、安全性にも配慮しています。

減塩の味噌汁で試したところ、通常と同じ塩味と旨味のレベルまでになったと社内アンケートが得られたり、医療・介護施設でも試してもらい、好評をいただいたりと成果が出ているようです。現時点で100回程度の使用では全く問題なく、継続して安全検証していく予定とのことです。

また、医療機関とは共同研究を進め、製造企業とは試作・量産設計を進めたり、食品企業とはサンプル品による実証を進めたりと、幅広く連携されています。更に、世界初の研究成果として脳卒中患者でも塩味の増強を確認できたなど着実に成果が出ており、宇宙分野への拡張として、重力変化環境下での実験準備も進めているそうです。

競合他社に比べ、味の継続性と医学エビデンスにおいて強みを持っています。ビジネスモデルとしては、umaiNaのリース・使い捨てや宇宙食の生活支援や試作を考えています。今後拡大する宇宙市場、そして多くの疾患者を抱える地上での市場において、十分な需要が見込まれています。減塩食と高齢介護食の市場では、現在それぞれ1300億円、1.4兆円から更に拡大が見込まれています。ビジネスプランとして、今年度中にマスク型の販売を皮切りに、IoT化、宇宙領域の進出を見据えています。

審査員とのQ&A(一部抜粋)

※Q:質問、A:回答、C:コメント(アドバイス)

Q:減塩に焦点を当てると、カトラリー型(スプーンやフォーク)にした方がいいと思います。なぜあごに装着するものにしたのでしょうか?
A:カトラリー型は使いやすいですが、味の変化に大きな問題があります。味の変化は食べる瞬間のみです。我々は継続的に刺激する点で、それを改善します。実際にカトラリー型も試してみましたが、こちらがよいと判断しました。宇宙では、特にハンズフリーが求められると認識しています。
Q:このサービスですと、カトラリーを使わずとも味を変化させることができるのでしょうか?
A:おっしゃる通りです。両手も使いたいニーズも反映しております。

Q:一般に、塩分・甘味は慣れてくると鈍くなります。慣れに伴う影響はないのでしょうか?
A:長期使用については、市場全体として研究・実証はまだできていません。今後病院などと連携して実証していきたいです。

Q:このデバイスは、味覚を発生させるもの、あるいは増強させるものでしょうか?
A:(味が増強されるものです。)減塩の味噌汁が通常のものになるイメージです。
C:味覚を増強する方が食べている感覚に近いので、良さそうだと思います。
C:正に、協力する食品企業さんにもそのようにコメントいただいています。

宙畑インタビュー

Q:このプロジェクトはいつ頃から始められたのでしょうか?
A:2022年に立ち上げました。Think Space Lifeと呼ばれる宇宙での生活を考えるイベントに取り組んだのがチームとしての最初の一歩でした。

Q:3年くらいかけられてるんですね。今回のご発表された内容に至るには、やはりそれぐらいかかるのでしょうか?
A:今振り返ると、自身に事業経験があれば、1年もっと短くたどり着けたのではないかと思っています。病院と共同研究をスタートするには、ご理解いただくにも時間がかかるので、どうしても1〜2年はかかってしまう側面もありますね。倫理申請などの手続きにもハードルがあります。

Q:来年以降の予定についてはいかがでしょうか?
A:宇宙分野の実証も今年始めていく予定です。現在、学会での発表や医療科学大学の先生と連携して、宇宙模擬環境で実証する準備を進めています。一方で、今の宇宙戦略基金ではヘルスケア分野にまだお金を振り向けられていないので、宇宙事業に参入するためにも後押しして欲しいという思いがあります。

6.横河スペースマニュファクチャリング推進チーム「半導体スペースマニュファクチュアリング」

チーム名 横河スペースマニュファクチャリング推進チーム
表彰 三井物産賞
アイデア 半導体スペースマニュファクチュアリング
概要 半導体の宇宙製造を実現し、宇宙機の現地修理や現地製造により輸送コストを削減
紹介動画 No.144_半導体スペースマニュファクチュアリング
受賞理由
(三井物産賞)
グループとして、ISSの日本モジュールの開発に取り組んでおり、機器や利用ユーザーの開拓が重要な中で、本提案の可能性を評価した。
横河スペースマニュファクチャリング推進チーム

アイデア詳細

横河スペースマニュファクチャリングは、小型の半導体製造装置「ミニマルファブ」で半導体の宇宙製造を実現し、宇宙機の現地修理や新しい宇宙機の現地製造により輸送コスト削減を目指します。

月面開発をはじめ、宇宙機器にも半導体が非常に多く使われています。以下の図は、地球からの距離に対する輸送コストと半導体の故障リスクを示しています。より遠いほど輸送コストがかかる上、宇宙環境による故障リスクは増大していきます。そのため、宇宙での半導体製造が求められています。

一般的な半導体製造には、大きな工場とプロセス技術が求められます。具体的には、巨大な半導体装置やクリーンルームを設置できるスペース、クリーニングや積層・エッジングといった一連のプロセスを回す技術が必要です。更に、宇宙では、小型かつ微小重力で動作するものが求められます。

同チームは、小型半導体装置である「ミニマルファブ」を応用することで、宇宙空間で動作する半導体装置を提案しています。クリーンルームが不要で、小型という特徴があり、微小重力で動作する装置を目指しています。

同チームには半導体工場の建設実績とプロセス技術の2つの強みがあり、宇宙での半導体製造が実現できると話します。

ISSでの組み込みを想定しており、共通機能と安全機能の2つのモジュールに分けて、ISSの標準ラックに格納し、微小重力環境下で動作実証します。将来的には、ICや電力、MEMSなど用途毎に製造装置モジュールを分けて、ISSに結合するモジュールとすることを想定しています。

ビジネスとして、パートナーのモジュールに半導体工場を提供し、ベンダーとは半導体製造装置の開発で連携します。その他、研究機関にはR&Dサービス、半導体ユーザーにはデバイス、工場オーナーには半導体製造プラットフォームの提供を計画しています。

今後のビジネス計画として、Phase1ではISS・日本モジュールでの半導体製造装置展開、Phase2ではR&Dサービスやデバイス提供を開始し、最終的に月面でのサービス展開を見据えます。

審査員とのQ&A(一部抜粋)

Q:半導体工場の地球上と軌道上でのコスト比較をされたことはありますか?
TSMCがドイツで50億ユーロをかけて作っています。もし宇宙で10億で実現すれば、これが不要になります。コスト分析をして、宇宙にメリットがあると分かれば、本サービスが拡大されるでしょう。
A:我々は大型の半導体工場を宇宙でも立ち上げていき、半導体製造のコストを下げていきたいです。

Q:地政学的な質問です。アメリカのチップ法や戦略的なパートナーとの連携などの課題があります。地政学的にどの国とアライアンスを組む予定なのでしょうか?
A:半導体製造を主導するアメリカや欧米などを視野に入れています。まずは日本のサプライチェーンを中心に小型化技術の開発を進めていきます。

7.In-Spector「In-Spector搭載:Hyperspectral Image Processing ライブラリ」

チーム名 In-Spector
表彰 横河電機賞、NEDO賞
アイデア In-Spector搭載:Hyperspectral Image Processing ライブラリ
概要 ハイパースペクトル画像に着目し、独自のアルゴリズムとドローンでのデータ収集により、解析精度と効率を向上させ、市場創出と社会的インパクトを実現します。
紹介動画 No.153_In-Spector搭載:Hyperspectral Image Processing ライブラリ
受賞理由
(横河電機賞)
「宇宙と地上産業をテクノロジーで融合し、持続可能性に貢献するビジネスアイデア」という自社テーマに合致した
受賞理由
(NEDO賞)
カーボンニュートラルには「見ている・見られている」という観点が重要であり、本サービスはこれに役立つと感じた。
In-Spector

ハイパースペクトルセンサーは、光学やSARに続く衛星画像ビジネスの革新技術であり、NASAや民間企業が約1,400基の衛星打ち上げを計画しています。数十兆円規模の市場創出が期待される一方、解析手法や高次元データ処理の課題もあります。In-Spectorは、独自のアルゴリズムとドローンでのデータ収集により、解析精度と効率を向上させ、市場創出と社会的インパクトを実現します。

近年、異常気象によって、炭素・メタン排出の課題や食糧・水の不足に陥っています。

現在、光学・SAR衛星による衛星画像データが盛んに利用されていますが、それに続く第三波としてハイパースペクトル衛星が注目されています。ハイパースペクトル画像により可視化できなかったメタンを検知できたり、農作物の病原菌を早期発見できたりと大きな効果が期待されています。2030年までに1400機の配備が予想され、数10兆円規模の市場が期待されます。

ハイパースペクトルデータは可視光〜熱赤外線までの光の反射パターンを画像化したものです。具体的にはキューブ型の画像が285枚分(波長)得られることになります。これらの波長を組み合わせることで、見たいものを識別することになりますが、膨大の組み合わせの中から正解を見つけることは非常に困難です。

そこで、In-Spectorは波長特性ライブラリと目的に応じた波長選択AIを組みわせるサービスを提案しています。また、ハイパースペクトル画像は解像度が粗いという課題もあります。それを解決するために、高解像度のドローン画像やマルチスペクトル衛星画像と融合するライブラリの活用もソリューションに掲げています。これらの二つのソリューションからなる解析エンジン(HSI Analysis Engine)を展開する予定です。

現在、ドローンのプロトタイプ開発が完了し、2027年に解析エンジンの提供開始を目指しています。また、同時期に来ると予想される衛星コンステレーションによって、更なるサービスの拡大を見据えています。

審査員とのQ&A(一部抜粋)

Q:元データの入手方法について教えていただけますでしょうか?
A:日本ではHISUI衛星、アメリカではEMIT衛星から入手しています。
  データ入手自体は容易であり、そのデータ解析が難しいことが我々の取り組む課題です。

Q:このデータが無料で手に入らなくなるリスクはありますでしょうか?
A:その点はありません。ESAとNASAとして、今後も無料とする方針が展開されています。

Q:データ取得や解析は、量子コンピューティングの活用によってどう影響されますか?
A:ご質問の意図に理解が及びませんでした。
C:ぜひ勉強も兼ねて、To doリストに入れておいてください。
補足:量子コンピューティングは従来のコンピューターよりも飛躍的に計算能力が増すため、正にハイパースペクトル画像の波長選択のような複雑な組み合わせも簡単に解析・最適化することができると望まれるため。

Q:具体的な顧客はどのように想定されていますか?
A:農業の企業やプラント会社(ガス漏れ検知)、保険会社など、これまで可視化できなかった課題についてアプローチできると考えています。

Q:本サービスの競争力の源泉はどこにあるのでしょうか?
A:大学・産総研と連携し、HISUIなどの最新研究結果へのアクセスそして衛星画像処理の知見など

8.Nexus Transit「軌道間輸送の実現に向けたデブリ除去を支援する「カードルサット」

チーム名 Nexus Transit
表彰 NA
(宙畑ピックアップ)
アイデア 軌道間輸送の実現に向けたデブリ除去を支援する「カードルサット」
概要 推進機器を他の衛星に取り付けるカードルサットによりスペースデブリ除去を行う。将来的には軌道間輸送を担う衛星へ適用し、宇宙物流の新時代を切り拓く
紹介動画 No.78_ポストISSに向けた備蓄型燃料ターミナルと軌道間輸送機による軌道上サービス
宙畑コメント カードル技術によってデブリ除去衛星の使い捨てを防ぐことは、衛星の長寿命化、新規製造コスト削減など多くのメリットが期待できる!
Nexus Transit

Nexus Transitは、推進機器(カードル)を他の衛星に取り付けることでスペースデブリ除去を行い、将来的には軌道間輸送を担う衛星に同様のモジュールを装着して、異なる軌道間の宇宙輸送インフラを支援します。

将来的な軌道間輸送の実現を見据え、その障壁となるスペースデブリを除去することで段階的な移行を目指しています。

現在、デブリが増加し、ケスラーシンドロームと呼ばれる危機的な状況に陥るリスクは日に日に高まっています。デブリ除去を目的とする企業がその解決に取り組んでいますが、一度きりの使用という課題を抱えています。もしデブリ除去衛星を再利用することができれば、労働力の効率化や環境負荷やコストの緩和などの大きな効果が得られます。

除去衛星が制御機能のないデブリを持って再突入する際に、デブリのみを放出してしまうと、デブリが再発生するリスクがあります。また、途中でデブリ除去衛星が機能停止してしまうと、その衛星自身がデブリ化してしまいます。

そこで、Nexus Transitはリエントリー専用衛星を束ねるカードルサットを使って、その機能を受け取る役割を持たせるサービスを提案します。カードルサットはデブリが密集する軌道に待機させておき、デブリ除去衛星からデブリを捕獲網を介して受け取ります。捕獲後、リエントリー衛星はデブリと一緒にリエントリーを行います。これによって、除去衛星が複数デブリを除去するあるべき姿を目指します。

ビジネスモデルとしては、顧客をデブリ除去企業として、リエントリー衛星を使用する度に費用が発生する随時利用型を想定しています。2035年にカードルサット稼働を開始し、カードルサットを燃料ステーションとする計画もあります。また、収益予測として、デブリ除去衛星を2回再利用できた場合、40億円ほどのコスト削減効果が見込まれるそうです。

審査員とのQ&A(一部抜粋)

Q:ランデブドッキングの技術獲得はどうされるのでしょうか?
A:ランデブのような能動的な技術ではなく、受動的に受けるものです。
高度な技術は想定しておらず、デブリ除去衛星から網で受け取るというのが特徴です。

Q:カードルサットの配置イメージを教えていただけますでしょうか?
A:ステーションではなく、例えば、デブリの密集する軌道高度900kmの極軌道への配置など

Q:2030年までにビジネスを成立させる上でリスクのある部分はどちらでしょうか?
A:まず、デブリ除去がビジネスとして成立しないといけないです。次に、我々のサービスの基となるフォーメーションフライト技術が2030年までに成立するかが重要です。(それらをクリアしつつ)2035年に向けて技術をストレッチしながら進めて行きます。

Q:カードルサットにフォーメーションフライト技術という難しい技術を持たせる計画になっているが、これを実現させるためのアイデアはありますか?
A:ランデブー技術など発展的な技術は、基本的に持たせません。フォーメーションフライトはSpace-Xをはじめ技術開発に取り組んでいるので、そこをベースにしていくつもりです。

Q:衛星における発電はどうするのでしょうか?
A:(かなり図を簡略化していますが)太陽光発電を行います。

(4)S-Booster 2024の総括

最優秀賞をはじめ、発展が目覚ましいAI技術を活用したテーマが特に注目され、審査員も納得されている印象でした。早期のサービス実現が期待されます。

また、宇宙食分野で、栄養価の高いクロレラや味覚増強のためのデバイスは、目の付け所が素晴らしいテーマだと感じます。特に、宇宙に限らず私たちの身近な暮らしにも活用が期待できるので、今後の展開が非常に楽しみです!

最後に、今回の最終選抜会で発表されたアイデアは、総じて既に事業や実証レベルで進めているテーマが多く、非常に見応えのある最終選抜会でした。

(5)S-Boosterが生んだ宇宙ビジネス起業家や新しい宇宙ビジネスの種

以上、S-Booster 2024の最終選抜会の結果と宙畑の所感について紹介しました。

冒頭にも少しだけ触れた通り、S-Boosterは2025年度は内閣府の政策としての実施はなくなり、民間が主体として運営するビジネスアイデアコンテストとして生まれ変わります。

以前、S-Boosterの振り返り記事を公開した際に「S-Boosterで受賞したアイデアの約90%以上は、起業や社内起業、その他の方法で継続して話が進められている」と紹介しました。

以前の記事では、天地人という企業が活躍しているということを代表例として紹介しました。

他にも、2024年にNASAのSBIRプログラムにも採択された実績を持つGITAIもS-Booster 2018で「地球上から⽉⾯基地開発可能なテレプレゼンスロボットの実現」というアイデアを発表し、スポンサー賞(スカパーJSAT賞)を受賞しています。

このように、宇宙ビジネス企業が名をあげ活躍するきっかけを作っている事例が多いS-Boosterですが、注目すべきは企業にとどまらず、S-Boosterに参加した個人に注目しても宇宙ビジネスを盛り上げる起業家として活躍する方が多いということです。

例えば、S-Booster 2018で「地球内部のCTスキャン」というアイデアで未来コンセプト賞を受賞した大出大輔さんは当時は大手建設会社に勤めていましたが、その後宇宙ベンチャーでのCOOの経験を経て、現在はASTRO GATEという世界で初めて複数のスペースポートの企画・運営を担う会社を起業し、CEOとして活躍されています。

他にも、S-Boosterをきっかけとして起業をしたという方は少なくありません。宇宙ビジネスアイデアコンテストという場があることで、宇宙ビジネスの新しい芽が注目され、育つことを実証できた8年間だったように思います。

今後もどのようなアイデアが生まれ、羽ばたいていくのか、S-Booster 2025以降の動向に注目です。