宙畑 Sorabatake

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S-Booster 2023の応募締め切りは6月12日まで! 過去の受賞アイデアとその後まとめ_PR

内閣府主催の宇宙ビジネスアイデアコンテスト「S-Booster」の応募が6月12日までとなっています。これまでの受賞アイデアやその後をまとめました。

(1)S-Booster 2023の応募始まる

S-Boosterは、宇宙に関するビジネスアイデアを専門家と共にブラッシュアップし、事業化に繋げることを目的とする、内閣府主催の宇宙ビジネスアイデアコンテストです。
2017年から始まった本イベントですが、専門家によるメンタリングを通じてアイデアを磨き上げるという点が、通常のビジネスコンテストとの最大の違いです。

今年で6度目となる開催に際して、4月7日よりアイデアの募集が始まっています。

6月12日の応募締切後、一次選考(書類)、二次選考(ピッチ)を通過したアイデアは、専門家とのメンタリングを通じてアイデアをブラッシュアップし、最終選抜会に進みます。

最終選抜会では、投資家や大企業等の前でプレゼンを行い、優勝者には賞金1,000万円が授与されます。

S-booster ホームページ

(2)過去の受賞アイデアの今

S-Boosterのサイトには、S-booster2017~2019の受賞者への事後アンケートの結果が紹介されています。
https://s-booster.jp/movements/index.html

アンケート結果を見るとS-Boosterで受賞したアイデアの約90%以上は、起業や社内起業、その他の方法で継続して話が進められていることがわかります。

また、起業者以外で受賞したプロジェクトについて、起業予定と回答したチームが半数以上だったことも、S-Boosterが宇宙ビジネスのアイデアを発表する場で終わらず、しっかりとビジネスが育つ場となっていることを物語っています。

S-Boosterを通してさらにビジネスが加速した事例として、S-Booster2018で審査員特別賞、ANAホールディングス賞、JAL賞を受賞した「天地人」があります。

天地人は、S-Booster2018にて、降雨・日照・土地の勾配等の衛星データを用いて作物の最適な生産地を選定し、栽培サポートを行う「宇宙から見つけるポテンシャル名産地」を発表しました。衛星データを用い、宇宙と農業を繋げる新しい試みとして高い評価を受け、当該賞をトリプル受賞。
その後、別コンテストでの表彰や、有望なスタートアップとして「J-TECH STARTUP 2020」に採択されるなどした後、2019年に起業(JAXAベンチャーとして認定)。2022年にはJAXAの初の出資先として資金調達をしており、宇宙業界で大きな注目を集めるようになりました。

天地人に関する記事はこちらもご覧ください

このようにS-Boosterで受賞者となり、注目を集めることで、出資を受けやすくなり、更には従業員を集める際に大きく役立ったというアンケート結果がありました。そのほか、専門家からのメンタリングを通じたアイデアのブラッシュアップや、宇宙業界の人脈形成に役立ったなど、話題性だけでない多くのメリットを享受できたという声も多くありました。

また、昨年度から始まったSPACETIDEのアクセラレーションプログラム「AXELA」では、S-Boosterで発表されたアイデアから4社もの企業が支援を受けました。S-Boosterという公の場に出ることでより多くの支援を受けられる可能性が高まることも大きなメリットでしょう。

(3)過去の最優秀賞まとめと受賞の背景考察

では、S-Boosterではどのようなビジネスアイデアが評価されているのでしょうか。
過去の最優秀賞を獲得したアイデアの概要と課題、解決策を並べ、どのようなアイデアが評価されているかの考察(宇宙ビジネスの課題を解決するのか、宇宙システムを用いた社会的インパクトが評価されているのか……など)を行いました。

アイデアを応募される方の参考になりますと幸いです。

2022年

https://s-booster.jp/2022/finalround.html

アイデア:ハイブリッドエンジンの大量生産・販売
課題:現在主流の液体ロケットは、高い加工品質が求められるため量産が難しく、ロケット打ち上げニーズに対して供給が追いつかない。
解決策:要求される加工精度が低い無溶接のハイブリッドエンジンの大量生産・提供を実現することで供給量を増加させる。
評価理由:衛星ビジネスの根本的な課題に対するソリューションであること

2021年

https://s-booster.jp/2021/final/index.html

アイデア:IOT人工衛星通信を活用した野火早期警報発見システム
課題:森林などインターネットが繋がらない場所において、山火事などの発見が遅れ、重大な被害を被る事があった。
解決策:IOT人工衛星通信と地上のセンサーを組み合わせて、山火事の初期段階から観測することができるシステムを提供
評価理由:「森林火災」という世界的な問題に対する宇宙を用いたソリューションを提供可能にしたこと

2019年

https://s-booster.jp/2019/final/index.html

アイデア:衛星みちびきを活用した視覚障がい者向け歩行支援センスウェア
課題:視覚障がい者の方の外出の際の不便さ。周囲の状況に耳を済ませたり、白杖に感覚を集中させる必要があるなど、外出にかなりの負担がかかっていること。
解決策:衛星データが提供する正確な位置情報をもとに、足に振動で情報を与えることで、視覚障がい者の歩行支援を行うことを可能にした。それはまさに、「靴の中に仕込んだ仮想点字ブロック」
評価理由:製品の仕組みだけでなく、開発の動機となる個人的な体験や、より多くのユーザーに安価に利用してもらうためのビジネスモデルも併せて提案したこと。

2018年

https://s-booster.jp/index_2018.html

アイデア:ロケット海上打ち上げ
課題:小型衛星打上市場における供給不足
解決策:40%以上が待機状態である海洋掘削リグ(資源やエネルギーを採るために海底を掘る装置)を用い、海上打ち上げを実施できるようにすることで、衛星の打ち上げを促進させる
評価理由:今すぐ実行可能であること、インパクトが大きいこと。3年以内の事業化に加えて黒字化も視野に入れることが出来るとまで言わせた「実現可能性」。「リグが余っている今がチャンス」という絶好のタイミングな今実施することで、日本が世界の宇宙ビジネスの最前線に立てる可能性があるインパクト。

2017年

https://s-booster.jp/2017/index.html

アイデア:衛星観測を用いた航空機の飛行航路最適化
課題:観測地点の数が少ない海洋上では風の予測をすることが難しい。
解決策:周波数の変移により対象の移動速度などを観測するレーダーである「ドップラーライダー」を衛星に搭載することで、広域観測かつ高精度・高頻度な大気観測システムを確立。それによって、これまで飛行航路の最適化が難しかった海洋上での最適化を実現。航空機の燃料を1%削減することを可能にしたこと。
評価理由:ビジネスアイデアの実現性、革新性や明確な課題設定、経済効果を示したことが大きく評価された。

大賞作品の傾向

全体として重視されていると感じるのは、「実現可能性」や「アイデアが社会に影響をもたらすインパクトの大きさ」。加えて、アイデアを思いついた背景やストーリー性もかなり重視されているように感じます。

(4)過去のスポンサー賞と傾向まとめ

続いては、スポンサー賞の結果と傾向のまとめになります。

S-Boosterでは毎年数多くのスポンサー企業が協賛し、応募アイデアの中から各スポンサーが賞を授与しますが、これまでのS-Boosterではどのようなアイデアが受賞をしてきたのでしょうか。

歴代のスポンサーの中で、特に協賛回数の多いスポンサーの授与歴を見ていきましょう。
(テーマ、講評があった年にはその内容も記載しています)

・スカパーJSAT株式会社(2017年~2022年の全てでスポンサー)

2022年

テーマ:未知を、価値に
受賞アイデア:宇宙溶接を用いたパネル接合型大型ステーションモジュールの建築
講評:宇宙空間への人類の進出ならびに通信ビジネスの発展には、不可欠な技術であり、今後の宇宙ビジネスの発展に資するアイデアであるため。

2021年

テーマ:未知を、価値に
受賞アイデア:Energy Orbit(人工衛星へのレーザー送電システム)
講評:宇宙でのエネルギー供給は非常に重要な問題でありそれに対するダイレクトなソリューションであったこと、事業面でも用途としても非常に広がりをもっていること。

2019年

テーマ:月や火星で稼ごう!
受賞アイデア:デザイナーソイルを利用した宇宙農業ビジネス「宙農」(農家や企業、研究機関を繋ぐ宙農ラボを設立し、サステナブルで美味しい野菜を地球と宇宙の消費者に届ける)
講評:それ自体が小さな地球といわれるISSで、宙農ラボを実際に行い、それをライブで放送するというのも面白いと感じたから。

2018年

受賞アイデア:地球上から月面基地開発可能なテレプレゼンスロボットの実現
講評:月で人間が活動する頃には月との通信を担いたいと思っているため、非常に魅力的な提案であり、是非コラボレーションしたい。

2017年

受賞アイデア:超低高度衛星搭載ドップラーライダーによる飛行経路・高度最適化システムの構築
講評:明確な課題設定があり、課題を解決した際の経済効果を具体的に示したことと、衛星を使って課題を解決するという実現性

スカパーJSAT株式会社 まとめ

傾向として宇宙産業全体にインパクトをもたらすようなアイデア(2022年、2021年)や、スカパーJSAT株式会社の本業分野(通信、放送)とコラボレーションが期待できるアイデア(2019年[宙農をスカパーがライブ放送、2018年[月との通信を今後スカパーが行うために月の開発が必須])が賞を授与されているようです。

・ANAホールディングス株式会社(2017年~2019年の3度スポンサーとして協賛[2023年協賛決定])

2019年

テーマ:世界をつなぐ、宇宙をつなぐ、夢にあふれる未来を創造するアイデア
受賞アイデア:美肌ウェルネスツーリズム(日本において、肌にとって恵まれた環境をもつ地方の創生を目指すため、宇宙から訪日観光客に最適な旅プランを提供し、地方の観光業を活性化)
講評:ANAと親和性が高く、絶対にビジネスに結びつく提案だと感じたから。女性活躍と言う観点からも、ANAの8,000名を超えるキャビンアテンダントとのコラボレーションもしながら、開発をしていきたい。

2018年

受賞アイデア:宇宙から見つけるポテンシャル名産地
講評:これまでにない最適な形の農地と農産物の組み合わせが生まれ、それに伴い生まれるであろう航空貨物の可能性にとても魅力を感じたから。

2017年

受賞アイデア:嗅ぎ注射器 宇宙へ(宇宙船へ搭載可能なわずか50gの吸入麻酔器の開発、持ち込み)
講評:宇宙や航空機をフックにし、過疎地や発展途上国への展開が見込める

ANAホールディングス株式会社 まとめ

アイデアが実現した先に航空貨物の活用や利用が期待されるアイデアが多いと感じました。また、2019年には事業化の可能性が高そうなアイデアを選んだとコメントがあったように、実現可能性の高さを評価基準の一つとして重視しているようです。

・ソニーグループ株式会社(2022年、2021年の2度スポンサーとして協賛)

2022年

テーマ:地球を見守り、サステナブルな社会を実現するアイデア
受賞アイデア:えきくろ5.0 〜超小型液体クロマトグラフィーの進化〜
講評:斬新なアイデアと宇宙のみではなく、地上での応用が期待できるアイデア。

2021年

テーマ:「モノやコトの声なき声に耳を傾け、不都合な事態を未然に防止する事業アイデア」
受賞アイデア:”EcoSpace : IOT Satellite the Wildfire Early Warning Detection Systems(IOT人工衛星通信を活用した野火早期警報発見システム)”
講評:地球社会と人間社会は共存していかなくてはなりませんが、これを実現するためのアイデアだと感じた。

ソニーグループ株式会社まとめ

地球課題の解決、社会貢献という観点に重きを置いているアイデアが評価される傾向があります。

・株式会社本田技術研究所(2022年、2021年の2度スポンサーとして協賛)

2022年

テーマ:宇宙から得られる情報を使った地上モビリティの知能化
受賞アイデア:エッジAIが提供するあらゆる場所での安全の実現

2021年

テーマ:「宇宙から得られる情報を使った地上モビリティの知能化」
受賞アイデア:海洋資源探査を効率化するための海洋観測システムの開発
講評:ホンダは船の速いエンジンを開発して漁師を支えてきたが、今後は本アイデアのような技術が必要とされてくると感じたから。

株式会社本田技術研究所まとめ

車、バイク、船などのエンジン・ハードを作ってきた株式会社本田技術研究所にとって活用可能となりそうな、ソフトウェア面でのアイデア(エッジAIや海洋観測システム)が高く評価をされている印象を受けました。

・三井物産株式会社(2022年と2017年の2度スポンサーとして協賛)

2022年

テーマ:民間宇宙ステーションを活用した事業アイデア
受賞アイデア:民間宇宙旅行におけるトータルヘルスケアサービス

2017年

受賞アイデア:衛星測位×セキュリティ(未来に向けた安心な測位)
講評:未来に向けた安心な測位は、これからの世界に必要であり役に立つという有用性を評価

三井物産株式会社まとめ

2021年に米国民間宇宙ステーション開発事業者Axiom Space社との提携により、ISSを活用したアイデアをテーマとして抱え、それをダイレクトに表現したアイデアが2022年は表彰を受けました。

歴代スポンサー賞まとめ

総合的に見た傾向として、最優秀賞と似たような評価点も見受けられますが、大前提として実現可能性があるアイデアかどうか、将来の事業性が高いかどうかという観点に加え、各スポンサー企業の本業と相乗効果の高そうなアイデアかどうかという点が重視されているように見受けられました。

2023年のスポンサー企業は以下の通りとなっています。
各スポンサーはテーマを設定していますので、特定の企業と協業を狙っていきたいのであれば、そのスポンサーが掲げるテーマに寄り添うようなアイデアやアイデアの表現の仕方をするのもよいかもしれません。

・スカパーJSAT株式会社
テーマ:未知を、価値に。 ~「宇宙実業社」スカパーJSATとの持続可能な社会への貢献~

・ANAホールディングス株式会社
テーマ:宇宙から変える地球の旅。空の旅に新たなワクワクを

・ソニーグループ株式会社
テーマ:地球を見守り、サステナブルな社会を実現するビジネスアイデア

・株式会社本田技術研究所
テーマ:宇宙からの情報を使った知能化モビリティとそのサービス

・三井物産株式会社
テーマ:民間宇宙ステーションを活用した事業アイデア

・株式会社資生堂
テーマ:宇宙に生きるヒトの肌・身体・こころを輝かせるアイデア

・横河電機株式会社
テーマ:”持続的な地球環境(Net-zero Emissions)と豊かな人の生活(Well-Being)を両立するソリューションとは?”

・LocationMind株式会社
テーマ:レジリエンスな社会をつくるための、宇宙からの位置情報を利用したビジネスアイデア

(5)宇宙ビジネスに興味がある人はまずはエントリーから

「S-booster2023」の概要と過去の受賞アイデアやスポンサー賞の傾向についてご紹介してきました。

過去に本イベントで受賞をしたビジネスアイデアは、その後大規模な資金調達の実施や、プロジェクト化に成功するなど、多くの実績を残してきたということもあり、業界でも大きく注目されています。

宇宙ビジネスのアイデアや関心がある人は、まずはエントリーだけでもしてみるのはいかがでしょう?

S-booster2023の概要はこちら
https://s-booster.jp/2023/

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