宙畑 Sorabatake

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将来の市場規模は〇〇兆円!? 未来の注目事業が見つかる宇宙ビジネスアイデアコンテスト最終選抜会の候補者まとめ_PR

2023年11月16日(木)に開催されるS-Booster2023の最終選抜会。最終選抜会までに知っておきたいこれまでのS-Boosterの歴史と、今年選抜された14チームのアイデアを簡単に紹介します。【PR】提供:内閣府 宇宙開発戦略推進事務局

今年も「S-Booster」最終選抜会の季節がやってきました。2017年から続くS-Boosterは、アジア・オセアニア地域で「宇宙」に関わるスタートアップ、事業化を目指す人を対象としたビジネスアイデアコンテストです。

最終選抜会では、一次、二次選抜を勝ち抜き、3ヶ月間のメンタリングを終えた14チームの最終審査が行われます。最終選抜会の日時と会場については下記をご参照ください。

■最終選抜会
 日程:2023年11月16日(木) 13:00-18:30
 会場:日本橋三井ホール
 最終選抜会HP:https://s-booster.jp/2023/finalround.html
 参加URL:https://form.jotform.com/sbooster2023/registration

最終選抜会に残ったアイデア紹介前にこれまでのS-Boosterの歴史と、今年選抜された14チームのアイデアを簡単に紹介します。

(1)過去のS-Booster最終選抜会に登場した注目事業・企業

過去のS-Booster最終選抜会に残った企業は、現在も活動を継続し、各所で活躍している事例が多く見られます。

例えば、2017年の第一回S-Boosterで大賞を受賞された全日本空輸(以下、ANA)の松本紋子氏です。「超低高度衛星搭載ドップラーライダーによる飛行経路・高度最適化システムの構築」のアイデアで受賞されました。

本アイデアは、衛星観測データを活用して大気の動きを検出し、航空機の飛行航路を最適化するというものです。最適な飛行航路によって航空機の燃料を1%削減し、年間の経済効果は3,000億円以上に達すると試算され、審査員からは実現可能性と革新性を高く評価されました。現在もJAXA J-SPARCプロジェクトとしてJAXAとANA共同で事業化に向けた取り組みが進められています。

S-Booster2018で受賞した天地人も同様に活躍しています。「宇宙から見つけるポテンシャル名産地」のアイデアで審査員特別賞とスポンサー賞2つを受賞しています。

本アイデアは、衛星データを使った地形の3Dマップや、降雨・日照情報を分析し、その土地で栽培に最適な作物を見つけ出し、農業に活用するというものでした。S-Boosterで受賞後は、衛星データを活用したデータプラットフォーム「天地人コンパス」を開発しています。農業分野での栽培適地選定に加えて栽培管理、水道インフラ管理の効率化など幅広い分野で活用され、今では日本の衛星リモートセンシング技術をリードするスタートアップ企業へと成長しています。

さらに、S-Booster2021で受賞したMizLinxは、「海洋資源探査を効率化するための海洋観測システムの開発」のアイデアに取り組み、スポンサー賞を受賞しています。

本アイデアは、水中カメラなどのIoTデータや衛星データなどを活用して漁業と養殖業の効率的な操業と、持続可能な水産業の実現を目指します。海洋立国日本の実現をビジョンに掲げて、海洋観測システムの開発を進めております。2023年8月には『Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2023』世界を変える30歳未満の SCIENCE & TECHNOLOGY & LOCAL 部門にCEO 野城菜帆氏が選出されています。

上述の通り、S-Booster最終選抜会に登場したビジネスアイデアの数々が、宇宙を活用して社会課題を解決する事業を産み出しています。

次の章以降では、S-Booster2023で選抜された14チームの事業アイデアについて説明します。

(2)宙畑視点で最終選抜会に残ったアイデアを分類

まず、「宇宙」に関わるビジネスアイデアといっても、シーンや目的、用途など多岐に渡ります。

最終選抜会に選抜された14チームのアイデアについて、宙畑の視点で、大きく4つに分類して紹介します。

1.衛星データ利用
2.宇宙での生活
3.資源探査
4.衛星コンポーネント開発

前章でも過去の受賞者をご紹介したように衛星データの利用や、資源探索、衛星コンポーネントの開発などは、これまでのS-Booster最終選抜会のアイデアでも多くありました。その点、今年度の最終選抜会の特徴として、宇宙での生活を見据えたビジネスアイデアが増えています。

背景として民間宇宙旅行の登場や、現在進行しているNASA主導のアルテミス計画、その先の月軌道ゲートウェイ計画など、民間人の宇宙長期滞在や月面居住が近い将来に見えてきていることが挙げられます。そんな将来を見据えて、現在の宇宙滞在における課題解決のニーズと、ビジネスの可能性に期待が高まっているのではないでしょうか。

(3)最終選抜会に残ったアイデアの紹介と宙畑の注目ポイント

最終選抜会に選抜された注目の14チームについて、分類ごとに詳しく紹介します。

■S-Booster最終選抜会紹介
https://s-booster.jp/2023/finalround.html

《分類1:衛星データの利用》

・Team Triton:過去から現在までの衛星データ(海況情報、気象情報)を活用した、漁師の操業判断支援と養殖業の赤潮被害回避
OCEAN SOLUTION TECHNOLOGY 代表取締役社長の水上陽一氏率いるTeam Tritonは水産資源の持続的利用と水産業の成長産業化の両立による次世代の水産業実現を目指します。具体的には、衛星データとAI検索エンジンによる漁師の操業判断支援と、過去の衛星データと定点観測データによる赤潮被害の回避です。

水産業は海外での魚食需要の拡大や、スマート養殖などを背景に世界的には成長産業であるものの、日本における漁業従事者の高齢化や後継問題などの課題も顕在化しています。衛星データを活用したスマート水産業によって誰でも同じ判断ができることで、水産業への新規参入を促すことと、水産業の成長を加速させることを可能にすると考えます。

▼YouTubeのアイデア紹介動画を見る
https://youtu.be/ao22uz1l_tU

・MYAIAS:FLASHNET – Forecasting and Localised Sensing for Hazard: Networked Evacuation and Transportation
マレーシアのスタートアップ企業のAI & Automation Solutions Sdn. Bhdは、衛星データ、IoTを活用して豪雨による急激な増水や、洪水時のリアルタイムの情報提供ソリューションの展開を目指します。政府だけでなく、地方自治体や、自動車業界、保険会社など幅広い領域での利用に向けて取り組んでいます。

豪雨や異常気象はアジアだけでなく世界の問題となっており、幅広い地域で必要とされる技術だと考えます。また増水の情報だけでなく、救助活動やその先の補償など幅広い分野で活かせるソリューションであると確信しています。

▼YouTubeのアイデア紹介動画を見る
https://youtu.be/STbyV7b8WQE

・藤野 沙季:世界初!明るさレベル3以上のオーロラ予報であなたのオーロラ体験に感動を ~Aurora for All~
本アイデアは「宇宙天気予報技術により、旅行体験をより良いものに変える」を目的に、オーロラ発生の予報サービス提供を目指します。 3ヶ月前と直前の宇宙天気を予報することでオーロラ旅行において運ではなく、見える日に観に行くことを実現したいと言います。

オーロラ旅行者の諦めかけていた課題を解決するアイデアだと考えます。さらにオーロラは、プラズマ粒子を含む太陽風が要因の一つとされております。この太陽風は地球の電波障害を引き起こす原因でもあるため、今後宇宙天気予報は様々な分野で必要とされるのではないでしょうか。

・AOZORA:民間気象衛星による新気象サービスWSaaS構築
本アイデアは、顧客毎に適したデータや情報を提供する新気象サービスWSaaS(Weather Satellite as a Service)を構築し、気象の社会実装推進に取り組んでいます。具体的にはマイクロ波技術をベースとした民間気象衛星打ち上げと、AI技術を集約した独自の気象予報システムによって、WSaaSの実現を目指します。

パーソナライズ化された情報は、天気予報に関わらず社会的なニーズとして広がっていると考えています。民間企業が気象衛星の打ち上げを行い、気象予報を担う未来が来るのかもしれません。

・Spiral Blue:Enabling 3D virtual replicas of the Earth with LiDAR satellites
オーストラリアのスタートアップ企業Spiral Blueが目指すのは、LiDARを使用してアップデートされ続ける地球の3Dデジタルレプリカの開発です。デジタルレプリカによって気候変動の影響から都市開発など様々なシナリオをモデル化、シミュレーションが可能となります。

本アイデアは、環境保全や石油・ガス、鉱物探鉱、農業、防災など幅広い分野でニーズがあると考えます。また衛星コンステレーションからのデータを使用し、データが更新し続けられる点も現状の3Dモデル課題を解決するソリューションであると感じました。

《分類2:宇宙での生活》

・WholeGreen:Cosmeceutical nutritional delivery for enhanced functional performance in space
持続可能な食事の促進をミッションに掲げるWhole.社が目指すのは、宇宙環境で限られた資源を有効利用して、栄養素を最大限引き出す食事や、その他宇宙生活への応用です。独自の加工技術により、食糧生産能力が低い宇宙環境でも高品質な栄養を摂取可能とします。

本アイデアは宇宙での長期滞在を見据えた高い栄養素の摂取と、宇宙に関わらず食事の持続可能社会を実現するものと考えています。宇宙では医師の受診や治療も容易ではないため、食事と健康は一層重要になるでしょう。

▼YouTubeのアイデア紹介動画を見る
https://youtu.be/OQxnjo0QhO8

・Team LCDL:月面移住を前提とした衣類の循環利用サービス
Team LCDLは、月面の長期滞在や移住を見据え、水に頼らない衣類の洗濯方法を提供する循環利用サービスを目指しています。月面までの輸送費は1kgあたり約1億円と言われているため、生活に必要な物資の物質循環やリサイクル技術によって輸送費を低減することができます。

宇宙空間では水の利用が貴重になるため、本アイデアは宇宙滞在や月面生活の環境課題を解決するものだと考えております。また月面生活だけでなく、ISSでの生活や災害時の利用など幅広く必要とされるサービスだと感じました。

▼YouTubeのアイデア紹介動画を見る
https://youtu.be/mhpw9sS9YOI

・(株)資生堂:化粧品や医薬品でウェルネスを進化させる機能性多孔素材
株式会社 資生堂 みらい開発研究所の岡本寛史氏が目指すのは、美容成分を届けたい場所に、十分な量、安全に届けられる新たなソリューション提供です。地球上だけでなく、乾燥や紫外線の強い宇宙空間だからこそ効果的な美容が必要だと言います。

将来的には宇宙旅行、宇宙移住者向けの美容市場を作ることを目指したいと語る岡本氏の言葉が印象的でした。宇宙での利用を見据えて、私たちの美容に対する習慣の変容を促すアイデアであると考えます。

▼YouTubeのアイデア紹介動画を見る
https://youtu.be/DIVBl9VJbXk

・Team No Limits:宇宙活動をupdateする 非接触スイッチAAGI がもたらす巧緻操作の未来
非接触型スイッチ「AAGI」システムを利用して、船外活動用の宇宙服が抱える与圧制約や順応課題の解決を目標としています。さらに宇宙服の開発だけでなく、障がい者による遠隔ロボット操作支援や、遠隔コミュニケーションロボットを活用した宇宙旅行の体験提供を目指しています。

医療従事者とエンジニアからなるTeam No Limitsは、障がい者の日常動作支援と社会参加促進に取り組んでおり、本アイデアも宇宙だけでなく社会課題の解決につながるものだと考えます。

▼YouTubeのアイデア紹介動画を見る
https://youtu.be/1CRIeaoiIRQ

・KIKY:無重力空間における洗濯機
4名のチームメンバーで挑むKIKYは、無重力空間でも使用可能な洗濯機を提案しています。現在宇宙で使用される衣類が大気圏に破棄されている現状の課題解決と、将来的な宇宙旅行、宇宙での生活を見据え衣類を再利用できる「衣類のエコシステム」の構築を目指します。

Team LCDLとはまた別の課題から生まれた本アイデアですが、宇宙でも清潔な衣服を着たいという同様の着眼点は、改めて宇宙での生活を見据えた課題解決ニーズの高まりを感じます。

▼YouTubeのアイデア紹介動画を見る
https://youtu.be/u7z5rqs_v6s

・牛乳石鹸共進社株式会社:コップ一杯の水で爽快な湯あがりを提供する『YUAGARI』
いつでもどこでも心地よい清潔を提供することで心身ともに健康になれる社会をミッションに掲げる新規事業室 江越亮一氏は、宇宙でのパーソナルケア『YUAGARI』を提案します。水の使用が制限される宇宙空間で、少量の水でシャワーを浴びたような爽快感を目指しています。

宇宙での長期滞在、宇宙旅行を見据えて生活のQOLを向上させるサービスだと感じています。さらに手軽に爽快な湯上がりを実施できるのは、忙しい日々にも使えるプロダクトだと考えます。当日の最終選抜会でさらに具体的なサービス内容が伺えるのが楽しみです。

▼YouTubeのアイデア紹介動画を見る
https://youtu.be/aFxhD3kLQig

・Space Wolffia:Mars Vegetable Production System
タイ発のチームSpace Wolffiaは、Wolffiという水生植物を利用した宇宙農業システムを開発し、宇宙移住の最大の課題である食料の生産、酸素の生成、二酸化炭素の除去や廃水処理に取り組んでいます。特に火星の極限環境に適した宇宙農業システムの開発と、地球での食糧安全保障のバックアップシステム構築という2つのミッションを掲げています。

2030年半ばまでに火星で生活することを目指した壮大なミッションに興奮させられました。宇宙だけでなく、地球上での食糧危機や環境保全にも活かされるアイデアであると考えます。

▼YouTubeのアイデア紹介動画を見る
https://youtu.be/eFtP19QgAiA

《分類3:資源探査》

・Astromine:深宇宙コンステレーションを用いた小惑星資源探査およびそのデータ提供サービスのためのインフラビジネス
JAXA 宇宙科学研究所の尾崎直哉氏と、兵頭龍樹氏が取り組むアイデアは、宇宙資源を活用したい企業向けの小惑星資源探査のインフラサービスです。小惑星資源探査では、フライバイサイクラーという技術を活用し、月に1回の小惑星フライバイを実現すべく、2024年にJAXAにて実証予定となります。

惑星資源は価値が大きいもので1000兆円にもなるという市場の可能性に驚きました。2020年、「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから資源を採取し地球に帰還し大きな話題となりましたが、本アイデアによって惑星探査がさらに身近に感じられるようになるかもしれません。

▼YouTubeのアイデア紹介動画を見る
https://youtu.be/bUVk9cyqWRY

《分類4:衛星コンポーネント開発》

・SQUID3 Space:ASTRID – Rethinking Spacecraft Thermal Design and Enabling Multi-Mission & Multi-Orbit Satellite Bus
SQUID3 Spaceは、衛星コンポーネント開発を行う台湾のスタートアップ企業です。宇宙空間での持続可能な未来の実現をビジョンに掲げ、衛星の温度管理、軌道上でのメンテナンスや持続可能性の課題解決を目指します。

開発中の「ASTRID」は、衛星の温度管理をリアルタイムで行うことや、軌道上での視覚的支援を実現し、製造業者の開発費用の削減にも貢献すると言います。使用できなくなった衛星の回収課題など宇宙ゴミの問題がある中で、持続可能性を目指す本アイデアは重要だと考えます。

▼YouTubeのアイデア紹介動画を見る
https://youtu.be/gQImEM1YhLY

以上が最終選抜に選ばれた14チームのご紹介となります。選抜会での各チームの最終ピッチがますます楽しみになったのではないでしょうか。次の章では最終選抜会の概要についてご説明いたします。

(4)最終選抜会の来場参加費は無料!事前登録方法は?

最終選抜会当日の流れについてご紹介します。選抜された14チームによる約5分間の最終ピッチを実施したのち、審査結果発表と授与式が予定されています。また結果発表前には、詳しい内容は公開されていませんがスペシャルセッションも予定されているとのことです。

最終選抜会は、ビジネスマッチングの機会でもあります。宇宙ビジネスに興味がある方や投資家、新規事業やビジネス提案を検討している方は、ぜひ選抜会の現地にご参加のうえ選抜された14チームの熱い思いをお聞き逃しなく。

※参加費は無料ですが、以下のページから事前登録が必要です。
https://form.jotform.com/sbooster2023/registration