宙畑 Sorabatake

特集

宇宙資源開発のロマンとそろばん ~宇宙資源とは、市場規模、法律~

宇宙資源探査ビジネスの市場規模や、そもそも宇宙資源とはどんなものがあるのか。法律との関係や、現在活動している宇宙資源探査ベンチャーの取り組みを紹介します。

宇宙資源開発元年になると言われている2019年。月や火星、小惑星を目指す宇宙開発戦争の勢いが増す中、「宇宙資源」をいかに獲得するかに注目が集まっています。今回は宇宙資源の種類や宇宙資源探査ビジネスの市場規模を紹介します。所有権など法律との関係や、現在活動している宇宙資源探査ベンチャーの取り組みについてまとめてみました。

(1)2019年は宇宙資源開発元年!?

2018年6月27日にはやぶさ2が小惑星Ryuguへ到着してから約1年が経とうとしています。弾丸を小惑星へ打ち込み人工クレーターを作ることで、そこから内部の変質していないサンプルを持ち帰ってくる計画です。はやぶさ2が無事サンプルを地球へと持って帰ることができれば、もしくは探査機によって月の内部についての組成がわかれば、地球の起源や太陽系の惑星についての謎が明らかになると期待されています。

2019年1月、中国の無人探査機「嫦娥4号(じょうが4号)」が月の裏側への着陸に成功しました。月の裏側への着陸は、人類初の快挙です。2019年4月にはイスラエルの民間宇宙団体SpaceILが月面の着陸へ挑戦しています。結果として着陸機は制御不能に陥り墜落してしまいましたが、イスラエルにとっては月探査への大きな一歩となったことは間違いないでしょう。

(2)宇宙資源探査ビジネスの市場規模はおよそ数兆円

なぜ民間団体も莫大なお金を投資して、宇宙探査に挑むのか。それは、ただロマンのためだけではなく、小惑星をはじめとしたその他惑星には多くの「宇宙資源」が眠っているからに他なりません。だからこそ、宇宙資源を探査し、開発するベンチャー企業も世界各国で続々と立ち上がっているのです。

アメリカの月探査ベンチャーAstroboticの試算によると、月面資源探査の市場規模は2025年に2400億円、2040年には6300億円にもなると予想されています。

また、小惑星の価値を算定するAsterankによれば数十億~数兆円にも上る価値が予想される小惑星がカタログ化されています。
(このカタログによると、はやぶさ2が探査中のRyuguは3兆円もの価値があるとのこと※)

小惑星をまるごと地球へ持ち帰るのか、現地で利用するのかなど、どのようなビジネスモデルを立てるかによって市場規模の試算は大きく変わります。そのため詳細な試算は難しいのですが、おおよそ宇宙資源探査ビジネスの市場規模は数兆円程度と言われています。

Credit : NASA https://www.nasa.gov/exploration/multimedia/galleries/sev_approaches_asteroid.html

※2019年5月時点。具体的な算出方法も明らかにされていませんが、Asterankの試算は日々変動し、小惑星の質量やスペクトルなどをもとに市場価格を算出しているとのこと。Ryuguをまるごと持ってくることは今のところできないので日本の宇宙資源探査市場の規模には直結しません。

(3)宇宙資源とは~宇宙資源採掘の種類と量~

宇宙資源とは文字通り、宇宙で採掘された資源のことです。
宇宙資源ビジネスについて簡単にご紹介します。宇宙資源探査ビジネスは大きく分けて次の2パターンがあります。
①地球では取れないレアメタルなどを地球へ持ち帰るもの
②宇宙での活動に役立てるもの

①レアメタルなどを持ち帰るパターン
地球では採れにくい金属類や鉱石を豊富に持つ小惑星などの天体から地球へと持ち帰るというアイデアです。

レアメタルとは、地球上ではそもそもの存在量が少ない、まとまって採掘できない、精製するのにコストが掛かりすぎるなどの理由から、産業的な価値を持つが手に入りにくい元素を指します。

地球で採れないこのレアメタルを小惑星から持ってきてしまおう、というのがこのパターンです。

仮に直径3kmのM型と呼ばれる種類の小惑星を地球に持ち帰ることができれば、200億トンもの金属鉄を手に入れることができるとも言われています。

しかし、小惑星へ探査機を近づけ、小惑星本体あるいは一部を捕獲して地球へ安全に再突入させるというコンセプト自体の技術的難易度が非常に高いことからまだ現実性は低く、実現は少し先の話になるかもしれません。

②宇宙での活動に役立てるパターン
このパターンは比較して、より現実的な研究開発が進んでいると言えるかもしれません。月の表面での基地や実験施設の建設が始まるとそれらに必要な建材や材料は、地球から運ぶコストがかかります。そこで、国内外では月の砂(レゴリス)で作られるコンクリートやロケットの推進剤になる水を探す研究が行われています。

また、月面での低重力を活かしたロケットも検討されており、重力が小さい分エネルギーを節約できるそうです。

そのため、月面基地などでは、宇宙の活動に必要なエネルギーを「地産地消」すれば、地球から燃料や資材を安上がりに調達することができます。

2026年ごろにアメリカのNASAを始めとしてロシアやヨーロッパ、日本やカナダなどの国際協力で月周回軌道へ有人ステーションを作る計画が始まっており、2020年台中には月面着陸の計画が発表されています。月面の開発が始まる頃、もしかするとそこで使われる資源は月面で調達されたものになるかもしれません。

各天体にある可能性のある資源を表にまとめましたのでぜひご覧ください。

Credit : sorabatake

(3)所有権は? 宇宙資源探査ビジネスに関わる法律

宇宙資源の所有権はどこに帰属し、どのような法律が定められているのでしょうか?

宇宙空間及び天体の探査と利用に関する基本原則を定めた「宇宙条約」があります。その第1条では「宇宙空間の探査・利用の自由」が定められていることから、はやぶさ2やその他民間企業の探査ミッションは合法であると言えます。

一方で、第2条では、天体を含む宇宙空間に対しては、いずれの国家も領有権を主張することはできないことが定められています。そのため、小惑星そのものや月の一部の土地の所有権を主張することはできません。

しかし、この2条は領有権の主張は認めていませんが、天体に存在する資源についての言及はありません。

つまり、宇宙条約において、小惑星や月そのものの土地の所有権は認めていませんが、そこから採掘できる資源については規定されていないのです。この解釈は国際宇宙法学会がポジションペーパーで明言しているものです。

アメリカやルクセンブルグは、それぞれの国の企業の宇宙資源探査を認める立場を取る法律を制定しています。

しかし、月に関しては月条約という国際的な取り決めが存在しており、反対にそちらは企業などによる資源の所有を許していません。しかし、アメリカをはじめとした宇宙開発の先進国が署名しておらず、実質的に意味を持っていないといえるでしょう。日本も加入していません。

このような世界の動きから、様々な国の研究機関、国家機関や企業などの集まる「ハーグ宇宙資源ガバナンスワーキンググループ」が2016年に発足しました。さまざまな国や企業の利益を調整する観点から、宇宙資源開発の国際的な条約のあり方について検討していくことが目的とされています。2016年から、草案作成、パブリックコメントの募集などが行われ、引き続き議論が現在も行われています。

このような宇宙資源にまつわる法律や政策、ルールは多くのソフトロー(非拘束的合意)や宣言などによって支えられ、統一的なルール作りはまだ策定できていないというのが現状のようです。

より詳しい内容はこちらから↓

(5)日本と海外、宇宙資源探査の現状

最後に、現在立ち上がっている宇宙資源ベンチャーをいくつかご紹介します。

国内外の宇宙探査ベンチャーのビジョンや開発・事業の進捗状況について表にまとてみました。

Credit : sorabatake

(6)まとめ

宇宙資源探査の市場規模はおおよそ数兆円ということですが、3項で述べたように宇宙資源の種類は豊富でこれから見つかるものも多くあるでしょう。宇宙資源の種類によって価格などの数字は大きく変動するため、市場規模の試算は難しいようです。そして、それらの実用化に向け地上での研究が進められていて、将来の宇宙での活動には欠かせないものになると言えるでしょう。

一方、宇宙資源の所有権などについてのルール作りは、各国でまだ足並みがそろっているとは言いがたく、国際協調や各国、各企業の利権などの難しい調整や議論が続くかもしれません。

ここで取り上げたベンチャーは5社程度ですが、他にも数社ほど立ち上がっているようです。しかし、いずれも基礎的な研究や技術開発を行っている段階と言えます。

宇宙での活動が現実のものとなったとき、そこにある資源が安全・平和にやりとりされるよう、地上でのルール作りや技術開発は今の時代の喫緊の課題なのかもしれません。