衛星12000基計画! 便利さの裏側にある宇宙ゴミ対策の今【週刊宇宙ビジネスニュース 5/27〜6/2】
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SpaceX、メガコンステレーション衛星の動作を確認
SpaceXのメガコンステレーション衛星、Starlinkが地上との通信を開始しました。新たな技術を多数搭載した同衛星は、一部、うまく動作しないものもあるようですが、約60基、概ね予定通りに稼働しているようです。
各衛星は、電力供給のために太陽電池パネルが搭載されています。太陽光の反射によって、地球から観測することもできるようです。
また打ち上げて間もなく、衛星の連なりが星空に浮かぶ銀河鉄道のようだと、動画がSNSにアップされて話題になっていました。
今後この60基は少しずつ数を増やし、最終的には12000基の衛星群となって地上に通信環境を提供します。今まで通信環境の良くなかった地域にも通信を提供することができる、画期的な計画ですが、軌道上に物体が増えると問題になるのは、スペースデブリです。
一方で増え続けるスペースデブリ
スペースデブリとは、宇宙のゴミのこと。使われなくなった人工衛星やロケットの残骸が軌道上にどんどん溜まっていくと、使用中の衛星と衝突して害を及ぼすなど危険視されています。これを防ぐためには2つの方法しかありません。
(1)今あるスペースデブリを掃除すること
(2)スペースデブリをこれ以上増やさないこと
(1)については、様々な研究機関や民間企業、団体が対策のために研究開発を進めています。日本では、アストロスケールというベンチャー企業がこの技術開発を行なっています。
(2)に関しては、国際機関でスペースデブリ低減に向けたガイドラインが発表されるなど国際連携が進んでいます。このガイドラインでは、軌道上に打ち上げた衛星を25年以内に廃棄軌道(用途が多くなく、現在のところ使われていない軌道)に移動させるまたは地球に再突入することを推奨しています。
Starlinkの場合には衛星同士が衝突しないよう、近づきすぎたら軌道を変更するようにプログラムされています。
英国のSurrey Satellite Technology(SSTL)では、今週、同社の技術実証機の実験にに成功しました。実証する技術は宇宙空間でセイル(帆)を展開するというもの。軌道上で帆を展開することで、宇宙空間にわずかに存在する大気に対して衛星の空気抵抗を強めて衛星の軌道変更を促すという技術です。
先述の通り、スペースデブリの低減のためには、最低限25年以内に地球の大気圏に再突入させる必要があります。しかし、寿命が終わってから25年を待たず、なるべくはやくに再突入させることができれば、スペースデブリが運用中の衛星と衝突するなどのリスクが低くなります。今回の実証成功により、スペースデブリ低減の技術開発が一歩前進したことになります。
スピードを増す宇宙開発の光の影で、対策とルール整備を急ぐ必要
ISSの運用終了などにも関係して、特に低軌道(LEO)での宇宙利用はどんどん拡大しています。低軌道は地球に近いため、利用しやすく混み合います。
技術開発は少しずつ進捗していますが、未だスペースデブリに関する法的拘束力のあるルールはできていません。宇宙開発の進歩のスピードが日に日に増していく中、地球の環境のように取り返しのつかないことになる前に、持続可能なルールを整備し、それに追随できる技術を開発していかなければなりません。
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参考
SpaceXの輝かしい「Starlink」衛星群、天文学者には頭痛の種?|CNET
SpaceX says all 60 Starlink satellites functioning so far|SPACENEWS
SSTL Returns TechDemoSat-1 to Earth|Via Satellite
LEO commercialization studies show wide range of markets and demand|SPACENEWS