宙畑 Sorabatake

特集

2020年代のリモートセンシングの動向はいかに?「New Space Europe 2019」レポート

ルクセンブルクで開催された、宇宙ビジネスで最大級のカンファレンス「New Space Europe 2019」のレポートをお届けします。

11月13日から2日間にわたって、宇宙ビジネスのカンファレンス「New Space Europe」が今年も開催されました。開催国はベンチャー企業の誘致や関連法政策の整備を積極的に進めているルクセンブルクです。本記事では、宇宙ビジネスに注目しているみなさんに向けて、特に面白かったポイントをピックアップしてお届けします。

New Spaceの未来を握るキーパーソンが集結する2日間

今年のテーマは「Driving Momentum」

「New Space Europe」とは、毎年11月にルクセンブルクにて開催される、宇宙ビジネス分野では最大級のカンファレンスです。主催は2018年に発足したルクセンブルク宇宙局。会場には、ドイツやフランスをはじめとするヨーロッパ諸国だけでなく、アジア、北米と世界各国から“ビジネスとしての宇宙”に関心を寄せるおよそ300人が集まりました。

民間宇宙ビジネスを支える法整備は新たなステップへ

カンファレンスの初日には、ルクセンブルクの協力・人道支援大臣のポートレット・レナート氏と国際連合宇宙局(United Nation Office for Outer Space Affairs 以下、UNOOSA)・局長 シモネッタディピッポ氏が資金提供協定に署名しました。今回のように、宇宙法整備のサポートを目的にUNOOSAと国が協定を結ぶのは史上初めてのことです。

また、前日の12日にはライデン大学やルクセンブルク大学をはじめとする各国の研究機関や宇宙機関、関連企業で構成されている、ハーグ宇宙資源ガバナンスワーキンググループ(The Hague Space Resources Governance Working Group 以下、ハーグWG)が宇宙資源活動に関する国際的な枠組みのあり方を検討するためのビルディング・ブロックを発表しました。カンファレンスでは、関係者へのインタビューが行われたほか、ハーグWGに参画していた方々からは4年間の苦労と喜びが伺えました。

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2020年代、リモートセンシングの発展はいかに

そして宙畑が注目していたのは、宇宙利用拡大の要とも言える、リモートセンシングのパネルディスカッションです。

左から
Gom Space CCO LARS KROGH ALMINDE氏
株式会社アクセルスペース CBO 山崎泰教氏
Hydrosat President ROYCE DALBY氏
Nina Space Co-Founder & Director EKATERINA STAMBOLIEVA氏
Picterra CCO EROL SOYER氏
LuxSpace Head of Microsatellite SolutionsOHB HUBERT MOSER氏 Credit : Haruka Inoue

重要視される、衛星データと地上データの“組み合わせ”

モデレーターを務めたのは、デンマークに本社を構え、超小型衛星を開発しているGom SpaceのLARS KROGH ALMINDE氏です。同社はコンポーネントは世界50カ国以上に展開し、超小型衛星の成長を牽引する企業のひとつです。

最初の質問は、今後5年から10年間の間にリモートセンシングはどのような発展を遂げるかでした。

熱赤外線衛星画像の分析を得意とするスタートアップ企業・HydrosatのROYCE DALBY氏は、衛星データ単体ではソリューションとして利用することは難しく、実際には地上データなどと合わせて分析する必要があることを指摘。そのため、必要なのはこれらのデータを扱うことができるアプリケーションであると説明しました。

対象の衛星データがどれほど高解像度であったとしても、地形や降水量、気温などの情報だけでは活用場面は限られます。地上データが組み合わさってこそ、ビジネスのソリューションの一つとしてより多くの場面で活用がされるのです。

また、リモートセンシングと機械学習を活用して、山火事などの国際問題の解決に取り組むNina SpaceのEKATERINA STAMBOLIEVA氏は、災害や感染症の流行をはじめとする危機管理に活用されて行くのではないかと言及。また、国連などの組織が利用すれば、例えば特定の国の国境を越える難民をカウントすることも可能になるなど大きなインパクトを起こすことができると話しました。

Picterra EROL SOYER氏 Credit : Haruka Inoue

一方で、ネガティブな面もリモートセンシングにはあるとPicterraのEROL SOYER氏は言います。Picterra はAIを活用した衛星データとドローン画像の解析プラットフォームを運用するスイスのベンチャー企業です。

リモートセンシングの発展により、あらゆるものが監視されたり、数えられたりするようになり、地上で起こっているすべてのことに対して“見て見ぬふり”ができなくなると説明しました。しかしながら技術を上手く応用することができれば、アイデアを得ることができたり、投資にも役立てたりすることができ、ポジティブな技術として活用されることを信じていると語りSOYER氏の宇宙にかける意欲が垣間見えたように思いました。

衛星データの無料提供を宇宙ベンチャーはどう見るか

続いて、過去20年分の衛星データを無料で配布する欧州の地球観測プログラム「コペルニクス」の話題に。

アクセルスペースの山崎氏は音楽ストリーミングサービス「Spotify」やビジネスコミュニケーションツール「Slack」を例にあげて、これらのサービスは無料版があるからこそ浸透していったのだと説明し、潜在的なニーズを持つ人々が衛星データを試せる機会を政府が提供していることは有効な政策だと話しました。

数年前は、小型衛星を製造するベンチャー企業が少しずつ頭角をあらわす中で、政府が衛星画像を無料または格安で提供するのはいかがなものかと不安視する声も少なからずあったと記憶しています。それが実際は、ベンチャー企業からするとチャンスであることに驚く方もいらっしゃるのではないでしょうか。

アクセルスペース CBO 山崎泰教氏 Credit : Haruka Inoue

さらにNina SpaceのSTAMBOLIEVA氏は、企業を起こす前は衛星データに触れた経験がなく、コペルニクスで試す機会やルクセンブルクの宇宙ベンチャーを支援するプログラムがなければ今の事業は行わなかったかもしれないと言いました。

いかに衛星データの活用を定着させられるかどうかはやはり重要なポイントで、ビジネスチャンスを探す人々にいかにして衛星データに触れてもらう機会を創出できるかは、国内外の事例に注目していく必要がありそうです。

欧州の地球観測プログラム「コペルニクス」

一方で「コペルニクスにも課題はある」とルクセンブルクを拠点とする宇宙システム企業・LuxSpaceの HUBERT MOSER氏は話します。データの利用者のニーズを考えるとやはり解像度が高い画像が必要で、ヨーロッパ圏でより多くの衛星が打上げられることを期待していると言います。

Hydrosat ROYCE DALBY氏 Credit : Haruka Inoue

これに対して、HydrosatのDALBY氏は、データ分析企業にとって重要なのは膨大なデータの処理方法とそのアプリケーションを明確にすることであり、大型衛星かもしくは小型衛星かデータが何によって取得されたものなのかはあまり気にならないと言います。1日に取得できるデータはおよそ250テラバイトであることを忘れてはなりませんし、さまざまな解像度と種類のデータが集まっている点もコペルニクスの良い点だと言いました。

本セッションでは衛星メーカー、データ分析、宇宙システムと各サイドの視点も知ることができたのも非常に勉強になりました。リモートセンシング技術の発展と需要に伴い、衛星データの利活用を加速させるプラットフォームもアジャイルで開発されていくことでしょう。どのように産業に影響していくのか、これまで以上に楽しみに思います。

マッチングサービスで参加者との交流も

各セッションが面白かったのはもちろんですが、今回のカンファレンスをより意味のあるものにしたのは、参加者同士の交流を図る「B2Fair」というマッチングサービスでした。カンファレンスの数週間前から、参加者の名簿を見ることができ、あらかじめミーティングをセッティングしておくことができるのです。ネットワーキングの時間も設けられている一方で、人見知りの筆者には接点がないために話しかけにくい相手と知り合うには良い機会でした。

特に宇宙ビジネスにおいて、このような諸外国との交流の機会はとても重要です。例えば打ち上げ輸送サービスの場合は、打上げの成功率やコスト、打上げの時期が選ばれるうえでの重要な要件となり、輸送サービスの提供企業が国内か海外かはそれほど重要なポイントではありません。逆に言えば、品質の向上や低コストでのサービス提供、そのほか企業の独自の強みを発揮することができるのであれば、海外市場も狙うことができるとも言えます。最初からグローバル市場での競争に身をおかざるを得ない宇宙ビジネスをやる上で、海外進出は切り離せないキーワードです。

海外のイベントと聞くとハードルが高く感じられてしまうかもしれませんが、読者の皆さんも目を向けてみてはいかがでしょうか。

レセプションの様子 Credit : Haruka Inoue