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Swarm TechnologiesがIoTデバイスと通信を可能にする商業衛星サービスを開始【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/02/08〜02/14】

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Swarm Technologiesが商業サービスの開始を発表

超小型通信衛星を用いてIoTネットワーク構築に挑むSwarm Technologiesが、商用サービスの開始を発表しました。

Swarm Technologiesは2017年に創業したベンチャー企業で、CubeSatよりも小型(3辺が約11cm × 11cm × 2.8cm)の衛星”SpaceBEE”を軌道上に既に81機打ち上げており、その内の72機を商用機として低コストの商用通信サービスの構築に取り組んできました。
※Swarm Technologiesの衛星の軌道はこちらから閲覧可能です。

Swarm TechnologiesのIoT衛星”SpaceBEE” Credit : Swarm Technologies

Swarm Technologiesの最初の顧客となったのはニュージーランドのIoT企業のLayer X Groupです。Layer Xはこれまではデータ収集に毎月450NZ$(約3万4千円)かかっていたところ、Swarm Technologiesのサービスを利用することで15NZ$(約1100円)で済むようになったとのことです。

Layer X Groupの創業者兼CEOのBruce Trevarthan氏は、以下のコメントを出しています。

The value of data is not obvious until you start collecting a lot of it, but the cost of communications in very remote locations has been a barrier to achieving this. The low price of Swarm removes this barrier entirely, making it viable for our customers to collect increased amounts of data on a more regular basis.
(訳:大量のIoTデータを収集してみて初めて、データの価値が分かります。しかし非常に離れた場所での通信コストが事業の障壁となっていました。Swarm Technologiesの低価格により、この障壁が完全に取り払われ、当社のお客様がより定期的に大量のデータを収集することが可能になりました。)

Swarm Technologiesの展開するサービスを利用するには、まずIoTデバイスに取りつける通信モジュール”Swarm Tile”を119ドルで購入します。そして接続料としてデバイスごとに毎月5ドル支払うことでサービスを使用できます。Swarm Technologiesのネットワークに接続されているデバイスの総数は、今年中に数十万台に達すると予測されています。

同社の衛星ネットワークは、ビデオの送信やその他のデータサービスのような高速接続を提供するものではなく、GPSセンサーからの位置情報や土壌モニターからの水位など、小規模なデータ送受信用に設計されています。Swarm Technologiesは農業・海運・エネルギー・交通といった分野でIoTデバイスを提供している顧客に、毎秒1kBitの低価格通信を提供していく予定です。

Swarm Technologiesは、これまでに総額52億円の資金を調達しています。調達した資金を活用して、南極に地上局の機器を設置したり、今後衛星を約150機まで拡大する計画を立てています。

地上のIoTセンサーの情報を衛星を使って取得するIoT衛星の分野には、オーストラリアのベンチャー企業のMyriotaや、カナダのベンチャー企業のKeplerといった競合も存在しています。今後のSwarm Technologiesのサービス展開に注目です。

Swarm Technologiesが提供する通信モジュール”Swarm Tile”の様子 Credit : Swarm Technologies

XバンドとLバンドを組み合わせた高精度SAR衛星を開発するAlpha Insightsが資金調達を発表

SAR(合成開口レーダ)衛星を開発するベンチャー企業がまた一つ誕生しました。
トロントでSAR衛星の開発に取り組むSpaceAlpha Insights Corp.(以下:Alpha Insights)が、宇宙ベンチャーへの投資実績も多数持つPrime Movers Labからのシード投資を発表し、同時に取り組む事業の概要を発表しました。

Alpha Insightsは、XバンドとLバンドと異なるバンドを用いて観測する、”SAR-XL”と呼ばれる高解像度デュアルバンド合成開口レーダ(SAR)を開発しています。

Alpha Insightsは、Urthecast Corp.の保有していたSAR技術資産を引き継いでいます。Urthecastは2013年に、宇宙ステーションに取り付けられたビデオカメラで動画を撮影するサービスを行っていました。その後SAR衛星開発に乗り出していましたが、2019年にGeosys買収した後経営状態が悪化し、カナダの会社債権者整理法(CCAA)を通じて実質破産状態となっていました。Alpha Insightsの創業者兼CEOのScott Larson氏は、UrtheCastの共同創業者でもありました。

Alpha Insightsは、XバンドとLバンドを使用した分解能50cmのSAR技術と独自のAIアルゴリズムを掛け合わせることで、「雲の中や夜間だけでなく、樹木や葉の中やバイオマスの中まで画像化できる豊富なデータセットの提供」を計画していると述べています。同社は、農業・環境調査・安全保障・軍事・保険といった分野での画像データの利用を想定しています。

フィンランドのベンチャー企業のICEYEや日本の宇宙ベンチャーのSynspectiveQPS研究所などSAR衛星を開発する民間企業が多数ある中で、Alpha Insightsが複数のバンドを組み合わせて撮像を行うというユニークな技術をどのように展開していくのか楽しみです。

Alpha InsightsのSAR-XL衛星のイメージ図 Credit : Alpha Insights

衛星間を行き来するレーザー光にデータを保存する技術を開発するLyteLoopが資金調達を実施

軌道上の衛星間で超高帯域幅レーザーを照射することでデータを保存する衛星の開発に挑んでいるLyteLoopが、約42億円の資金調達を実施しました。投資家の詳細は公開されていません。

LyteLoopのサービス概要は、こちらの動画で確認できます。

LyteLoopは、地球を周回する衛星間で連続的にループさせるレーザー光を適切に変調させることでデータを保存させるコア技術を2015年から開発に着手し、2017年に特許を出願しました。

現在はその他合わせて6種の特許を取得しています。また、衛星内でデータを保存させるセル光ファイバーのコア技術も有しています。

最大250kgとなる予定の同社が開発する衛星は、静止軌道及び地球低軌道に打ち上げられる予定で、F値0.9、266nm~3400nmの波長のレーザーを衛星間で照射します。

同社は3年以内にプロトタイプの衛星3機を軌道投入させ、5年以内のサービス展開を目標としています。

今後データを保存する上でセキュリティに求める要件は更に高まっていくと予測されますが、この技術によってレーザー光でデータを保存できれば、量子暗号化を導入できるほか、高速でデータが移動するため、セキュリティーに大きなメリットがあると期待できるようです。LyteLoopの今後の技術開発に注目です。

LyteLoopが開発する光通信衛星のイメージ図 Credit : LyteLoop

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