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月周回有人拠点「ゲートウェイ」、最初のモジュールはSpaceXのFalcon Heavyが打ち上げ【週刊宇宙ビジネスニュース 2021/2/8〜2/14】

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NASA ゲートウェイの最初のモジュール打ち上げ企業にSpaceXを選定

2月10日、NASAは月周回有人拠点「ゲートウェイ」の最初のモジュールの打ち上げ委託先にSpaceXを選定したことを発表しました。打ち上げは2024年5月までに実施される予定です。

Credit : NASA

今回の契約の対象となっているのは、有人モジュール (Habitation and Logistics Outpost , 通称HALO)と、電力・推進を提供する装置(Power and Propulsion Element, 通称PPE)の打ち上げで、アルテミス計画で月面へ向かう宇宙飛行士の中継地点となります。

当初はHALOとPPEを別々に打ち上げて、軌道上でドッキングさせる計画でしたが、1回分の打ち上げコストを節約でき、輸送中にHALOに電力と推進を供給する必要がなくなることから、組み合わせた状態で打ち上げるように変更されました。

この大型構造物の打ち上げに使用されるのは、世界最大級の推進力を持つロケット・Falcon Heavyです。同機は2019年4月にサウジアラビアの通信衛星「アラブサット6A」の打ち上げを成功させたほか、NASAが進めている火星と木星の間の小惑星「プシケ」を調査する探査機の打ち上げも受注しています。

さらに、同じくNASAが開発を進める、木星の衛星エウロパの探査機「Europe Clipper」は2024年にSLSロケットで打ち上げられる計画でしたが、民間ロケットによる打ち上げに変更になり、打ち上げ手段のとしてFalcon Heavyが有力候補に挙がっています。

打ち上げ企業の発表で、より具体的になってきたゲートウェイ計画ですが、今回の発表で、打ち上げ時期が2023年から2024年に後ろ倒されたことが明らかになりました。これにより、有人月面着陸のスケジュールに影響が出ることが懸念されます。

トルコが国家宇宙プログラムを発表。2023年に月面着陸を計画

2月9日、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、2031年までの国家宇宙プログラムを発表し、その中で建国100周年にあたる2023年に月面着陸を目指す計画を明らかにしました。

エルドアン大統領のスピーチの様子 Credit : AA Photo Source : https://www.dailysabah.com/business/tech/turkey-to-land-on-moon-by-2023-erdogan

トルコの宇宙開発は、宇宙技術研究機構が推進し、これまで通信衛星や地球観測衛星を打ち上げてきています。2018年には宇宙庁を設立し、宇宙開発により注力したい姿勢を示していました。

今回発表された国家宇宙プログラムには、トルコ人宇宙飛行士による宇宙飛行や国産のハイブリットロケットの月面着陸、スペースポートの建設、衛星製造企業の設立などが盛り込まれています。

トルコは、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)と協力協定を締結しているほか、ロシアと宇宙開発に関する二国間協定を締結する用意を進めていることが報道されているため、他国とどのように協力していくか気になるところです。

政治や外交でも動きが注目されるトルコが、各国が進める月面開発に今後どのように参入してくるのか、世界の関心が集まるのではないでしょうか。

ウクライナ、地球観測衛星の打ち上げをSpaceXに委託か

2月12日、First Business TVチャンネルのインタビューで、ウクライナの副首相兼戦略産業大臣のオレグ・ウルスキー氏が、同国の地球観測衛星「Sich 2-30(2-1)」の打ち上げ企業としてSpaceXを選定し、技術調整を行っていることを明かしました。ウルスキー氏によると、Sich 2-30の打ち上げは2021年12月を予定しているとのことです。

ウクライナはソ連から独立して間もなく国立宇宙機関を設立し、地球観測衛星のSichシリーズやOkean衛星を打ち上げてきましたが、財政の悪化のためか、2011年を最後に政府による地球観測衛星の打ち上げはストップしていました。

Sich 2のイメージ Credit : Yuzhnoye SDO

ウクライナ政府は2021年1月に、2021年から2025年までの国家科学技術計画を承認したことを発表しています。この計画には、民間による宇宙開発の促進や国際協力の拡大、特にEUのイノベーションを促進する研究開発枠組み「Horizon Europe」の中で共同プロジェクトに取り組むことなどが盛り込まれています。

民間による宇宙開発が促進されるようになった背景には、国内の法改正があります。元々ウクライナでロケットの開発・製造事業を運営できるのは、国営企業に限られていましたが、法改正により民間企業の参入規制が緩和されました。

国内での宇宙技術継承のために、政府が率先して民間企業の宇宙開発の活性化を促進することはもちろん、国外の民間企業の参入も視野に入れていく必要があります。クリミア問題や東部の紛争の長期化など財源状況が厳しい中で、ウクライナ国内での技術の継承・発展のためには、国内外の民間企業の参入が増え発展していくことが重要となります。

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参考

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