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NASA アルテミスⅠの実施に向けSLSロケットの予算を30%増加【週刊宇宙ビジネスニュース 8/24〜8/30】

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NASA アルテミスⅠに向け、SLSロケットの開発費追加を示唆

8月26日、Space Launch System(以下、SLSロケット)と地上インフラ設備の開発費の引き上げたことを、有人宇宙飛行部門の準管理者を務めるKathy Lueders(キャシー・ルリーダーズ)氏がNASAの公式ブログで明らかにしました。

SLSロケットは、世界最大級のロケットの一つで、アルテミス計画では宇宙飛行士が搭乗するオリオン宇宙船を打ち上げるのに使用されます。NASAの元スペースシャトル計画部長のWayne Hail(ウェイン・ヘイル)氏のインタビューによると、SLSロケットの打ち上げ能力は、SpaceXのFalcon Heavyロケットの倍に相当するのではないかとのことです。

Credit : NASA

アルテミス計画の最初のミッションにあたる「アルテミスⅠ」は無人飛行試験を予定していて、2021年11月に実施される見込みです。

2020年4月に発表されたSLSロケットのコストベースラインは87.5億ドルでしたが、Lueders氏によると新たなコストベースラインは91億ドル。SLSロケットのプロジェクトが開始した2014年のコストベースラインは70.2億ドルであったため、当初と比較するとおよそ30%増加したことになります。コストが増額している原因は明らかになっていません。

これまでスケジュールの後ろ倒しを続けてきたSLSロケットですが、Lueders氏はCOVID-19の影響を完全に予測するのは時期尚早ですが、現時点では2021年11月の打ち上げは達成可能であるとコメントしています。

CLPS参画企業のMastenがSpaceXと打ち上げ契約を締結

8月26日、米国のMasten Space Systems(マステン・スペース・システムズ)は、月着陸船の打ち上げ契約をSpaceXと締結したことを発表しました。

Masten Space Systemsは、宇宙へのアクセスする障壁を下げることをミッションに、2004年に現CTOのDavid Masten (デビット・マステン)氏がカリフォルニア州を拠点に創業しました。

Credit : Masten Space Systems

同社は、垂直離着陸ロケットによる飛行試験環境の提供を行っています。さらに2009年には、NASAとNorthrop Grumman(ノー​​スロップ・グラマン)が開催した「Lunar Lander Challenge」で入賞しています。

宙畑メモ Lunar Lander Challenge
コンテストは、機体が90〜180秒飛行した後に、月に模様した岩やクレーターがある地形上に水平着陸すると言うものでした。日本の宇宙ベンチャー企業であるispaceが参加していたことで知られるGoogle Lunar XPRIZEと同じく、XPRIZE財団によって管理されています。

Masten Space Systemsは、Lunar Lander Challengeでの成果もあって、NASAが民間企業と連携して月面にペイロードを輸送する「商業月面輸送サービス(Commercial Lunar Payload Services、通称CLPS)」で、タスクオーダーを受ける資格を持つ企業として選出されました。

そして2020年4月に、アルテミス計画の一環として2022年12月までに月面にペイロードを輸送するタスクオーダーをNASAから受注。

月面着陸船「Masten XL-1」 Credit : Masten Space Systems

同社の着陸船「Masten XL-1」は、水が存在しているのではないかと言われている月の南極に着陸予定です。Masten XL-1には、9つの科学実証実験用と商用のペイロードを搭載する見込みで、その成果にも期待が集まるのではないでしょうか。

宇宙に関する包括的日米対話が開催

2013年から開催され、7回目となる「宇宙に関する包括的日米対話」が、8月26日に開催され、アルテミス計画を含む宇宙探査や商業宇宙活動、安全保障など幅広いテーマについて意見交換が行われました。

Credit : 外務省

議長は、外務省総合外交政策局の河邉賢裕氏と宇宙開発戦略推進事務局長の松尾剛彦氏、米国宇宙会議事務局長のスコット・ペース氏、米国安全保障会議国防政策・戦略担当上級部長のマーク・ヴァンドロフが共同で務めました。

日本からの主な出席者は、外務省、内閣府、国家安全保障局、総務省、文部科学省、経済産業省、環境省、防衛省、JAXA、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の関係者らです。また、米国の宇宙軍作戦部長であるジョン・レイモンド氏が特別参加しました。

会合の成果として発表された共同声明には、アルテミス計画に対するコミットメントの再確認や宇宙状況把握および機能保障に関する協力強化、SDGsの達成を含む地球規模の課題解決に貢献する衛星の役割の再確認などの内容が盛り込まれています。

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参考

SpaceX to Launch Masten Lunar Mission in 2022

SpaceX to launch Masten lunar lander

Masten Space Systems Will Deliver NASA and Commercial Payloads to the Lunar Surface in 2022

Eyes Forward as Artemis Missions Set to Begin Next Year

NASA Sees Cost Rising 30% on Boeing Rocket for Moon Missions

NASA increases cost estimate for SLS development

NASAはなぜSpaceXの低コストなロケットを使わずに「SLS」の独自開発に莫大な費用を投じるのか?

「宇宙に関する包括的日米対話」第7回会合の開催(結果)

共同声明 「宇宙に関する包括的日米対話」第7回会合