IHIとICEYEが地球観測衛星コンステレーション整備事業で提携、IHIは地球観測衛星網の構想にも言及
IHIと、世界最多の合成開口レーダー(SAR) 衛星コンステレーションを構築する宇宙企業ICEYEが、最大24基の合成開口レーダー(SAR)衛星による地球観測衛星コンステレーションの構築に向けた協力に合意。プレスリリースの内容とIHIが言及した地球観測衛星網の構想について紹介します。
2025年5月22日、航空・宇宙・防衛事業を展開するIHIと、世界最多の合成開口レーダー(SAR) 衛星コンステレーションを構築する宇宙企業ICEYEが、最大24基の合成開口レーダー(SAR)衛星による地球観測衛星コンステレーションの構築に向けた協力に合意し、業務提携の覚書(MOU)を締結しました。この提携は、幕張メッセで開催された防衛イベント「DSEI Japan」において発表されました。

近年、地政学的な不安定性の高まりを背景に、日本政府は安全保障能力の強化を進めています。両社は、SAR衛星コンステレーションを日本国内で共同運用するとともに、衛星の製造拠点を国内に整備する計画です。これにより、国家安全保障とレジリエンスの強化のみならず、日本の宇宙産業をより活性化し、その発展と国際競争力の強化を目指しています。
SAR衛星は、マイクロ波レーダーパルスを使用して、天候や昼夜を問わず地球表面の高解像度画像を生成することが可能です。これにより、気候変動の分析や船舶追跡を含む多様な用途で、信頼性が高く継続的な監視が可能となります。
SAR衛星について学ぶ宙畑の解説記事
SAR(合成開口レーダ)のキホン~事例、分かること、センサ、衛星、波長~
レーダーの基礎から学ぶSAR(合成開口レーダー)の原理と奇跡【SARデータ解析者への道】
今回の提携について、IHIの常務執行役員、航空・宇宙・防衛事業領域長の佐藤篤氏は「今日の世界はますます不安定化しています。日本の国家安全保障戦略は、自国の宇宙における主権能力を強化する重要性を認識すると同時に、国家の戦略的利益を共有する同盟国や同志国との協力と連携への道を拓いています。この覚書(MOU)は、今後の日本の国家安全保障において重要となる次世代の能力を実現するための第一歩です」とコメントしています。
また、ICEYEのCEOであるラファウ・モドジェフスキ氏も「ICEYEは2018年から日本との関係を築いており、今回の協力は両国の安全保障と技術的連携を強化するものです」と述べています。同社は、これまでにポーランドやブラジルなどの国々にもSAR衛星を提供しており、今回のIHIとの提携により、日本国内での衛星製造と運用を通じて、より迅速で柔軟な地球観測サービスの提供を目指しています。
二人のコメントから、世界情勢の不安定さが増しており、安全保障の強化がより求められる状況にあることが伺えます今回のIHIとICEYEの協力のように、国際的な宇宙ビジネス企業の連携が増え、国家安全保障の強化は今後も進んでいくのかもしれません。
また、IHIは「技術をもって社会の発展に貢献する」という経営理念のもと、ものづくり技術を中核とするエンジニアリング力をもって、衛星コンステレーションの整備を主導し、将来的には光学センサー、VHFデータ交換システム(VDES)、電波収集(RF)、赤外線(IR)、およびハイパースペクトルを含む複数種類の衛星を追加する構想で、陸上や海上での作戦活動に必要な目標検出および追跡能力を提供することを目指すことについてもプレスリリースで言及がありました。
さらに、2026年3月までにハイパースペクトル衛星を打ち上げ、安全保障、公共、商業顧客向けのユースケースの開発を検討していく予定とのこと。
IHIが構築する地球観測衛星コンステレーションが実現することで、観測頻度や観測できるデータの種類の向上、データへのアクセシビリティが発展することで、安全保障だけでなく、インフラの管理やその他産業のアップデートにも地球観測衛星の活用が進むむことが期待されます。
参考
地球観測衛星コンステレーション整備事業でICEYE社と協力 ~SAR衛星で世界をリードするフィンランド企業との連携により日本国内での衛星運用で安全保障に貢献~
ICEYE and IHI start cooperation to develop SAR satellite constellation in Japan