宙畑 Sorabatake

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StarcloudによるNVIDIAの最新GPUを搭載した衛星が打上げ成功。宇宙データセンターの設立を目指す【宇宙ビジネスニュース】

宇宙データセンターの実現を目指すアメリカのスタートアップStarcloudが、2025年11月にはNVIDIAの最新GPU「H100」を搭載した衛星「Starcloud-1」を打ち上げる予定を発表しました。

2025年10月15日、宇宙データセンターの実現を目指すアメリカのスタートアップ、Starcloudは、AI時代の新たな課題に挑むべく、NVIDIAの最新GPU「H100」を搭載した衛星「Starcloud-1」を打ち上げる予定を発表。実際に11月2日に当該衛星がSpaceXのファルコン9によって打上げられました。StarcloudはNVIDIAのスタートアップ支援プログラム「NVIDIA Inception」にも参加しています。

Source : https://blogs.nvidia.com/blog/starcloud/

地球上のデータセンターでは冷却に大量の水を必要としますが、宇宙では真空、かつ極低温の外部環境そのものが、無限の放熱先となります。Starcloudの衛星は、赤外線を通じて熱を宇宙空間へ放出し、水や空気を一切使わずに冷却を実現します。

また、衛星はドーンダスク軌道(全く地球の影に入らない全日照の軌道)に配備されることが計画されており、常時太陽光を受けられるため、太陽エネルギーを効率的に利用でき、蓄電池やバックアップ電源も不要となる可能性があるとのこと。こうした仕組みにより、宇宙に設置するデータセンターは、地上のデータセンターに比べてエネルギーコストを10分の1に削減できると、Starcloudは試算しています。

このデータセンターの初期用途として想定されるのは、地球観測データの解析です。例えば、農作物の種類判定や局地的な天候予測、さらには山火事の早期検知や救難信号への迅速な対応など、地上で実施していた解析を衛星上で直接行うことで、データ提供までの時間を数時間から数分に短縮できる可能性があります。

StarcloudはGoogleの「Cloud AI Accelerator」プログラムも修了しており、今後はH100上でGoogleのオープンモデル「Gemma」を軌道上で動作させ、大規模言語モデル(LLM)が宇宙で動作することを実証する予定です。将来的には、NVIDIAの次世代アーキテクチャ「Blackwell」も搭載し、AI性能をさらに10倍向上させることを目指しています。

Starcloudの創業者兼CEOであるPhilip Johnston氏は、「宇宙では、ほぼ無限に近い低コストの再生可能エネルギーを利用できます。10年後には、新しく建設されるデータセンターのほとんどが宇宙に設置されるようになるでしょう。NVIDIAのGPUは、AIの学習・微調整・推論のいずれでも最も高性能です。NVIDIA Inceptionプログラムへの参加は非常に重要でした。技術支援や専門家へのアクセス、GPUの提供など、すべてが私たちの成功を後押ししました。」とコメントしています。

エネルギー効率やAI活用の持続可能性を両立させる宇宙データセンターは、今後のAI時代の新しいインフラとして常識になっていくと考えられます。

参考記事

How Starcloud Is Bringing Data Centers to Outer Space | NVIDIA Blog

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