ESA、宇宙安全プログラムの予算を大幅拡充。惑星防衛・宇宙天気・軌道上サービスを一体推進【宇宙ビジネスニュース】
欧州が宇宙の安全確保に向けて動きを強めています。ESAが宇宙安全プログラムを30%増額し、惑星防衛など主要施策の強化に踏み出しました。
2025年11月28日、ESA(欧州宇宙機関)はCM25(2025年閣僚理事会)において、宇宙安全プログラム(Space Safety Programme)へ今後3年間で9億5,500万ユーロを拠出する方針を発表しました。今回承認された予算はESAの発表によると、当初要求額を約30%上回るとのことです。惑星防衛、宇宙天気、デブリ除去・軌道上サービスなど、主要施策すべてを賄う水準とされています。今回の発表には、欧州が宇宙安全を社会インフラとして位置づけ、自立性とレジリエンスを高める姿勢が表れています。
宙畑メモ:CM25とは
ESAに加盟する各国の担当閣僚が集まり、今後数年間の宇宙政策やプログラム予算を決定する最高意思決定の場です。数年に一度開催され、各国の拠出額や重点分野がここで合意されます。
宙畑メモ:宇宙安全プログラムとは
ESAが推進する公式プログラムで、惑星防衛、宇宙天気、デブリ除去・軌道上サービスといった宇宙由来リスクへの対策を中心に構成される枠組みです。これらの活動を通じ、ESAが自立的に宇宙を安全に利用し続けるための技術開発やサービス構築を目指しています。
ESAは欧州各国が参加する宇宙機関で、衛星開発、探査、地球観測など幅広いミッションを担っています。2025年10月には東京・日本橋にESA東京事務所を開設し、日本(JAXA)を含むアジア地域との協力強化を進めています。
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今回の予算増額により、宇宙安全プログラムにおける主要施策を継続・推進するための体制が整いました。本プログラムの三つの主要目標に対応するためのミッションを紹介します。
① 惑星防衛:日欧共同RAMSESミッションを本格化
RAMSESは、2029年に地球へ接近する小惑星アポフィスを探査するESAとJAXAの共同ミッションです。今回の予算増額により、アポフィス接近に合わせた打ち上げスケジュールを維持するための必要な体制が確保されました。RAMSESは2028年に打ち上げる必要がある、時間的制約が大きいミッションです。
宙畑メモ:アポフィスとは
2029年に地球へ極めて接近する小惑星。2021年のNASAの発表によると、アポフィスが地球に衝突する危険性はないとのことですが、貴重な惑星防衛研究対象として注目されています。
② 宇宙天気:L5(ラグランジュ点5)から常時監視するVigilを推進
太陽嵐が衛星通信や電力網に与える影響を監視する宇宙天気衛星Vigilは、L5という深宇宙から宇宙天気データを24時間365日配信する初の衛星として、ESAが計画しているミッションです。太陽嵐の早期警戒により、宇宙機や地上インフラを守るための時間を確保できます。NASAおよびNOAAによる主要観測機器の貢献が示されており、韓国・日本・インドも協力に関心を示しています。国際的な宇宙天気監視網の構築につながることが期待されます。
宙畑メモ:L5とは
L5は、太陽と地球の重力がつり合う「ラグランジュ点」と呼ばれる位置の一つで、地球から見て太陽の進行方向の約60度前方に位置します。この地点からは、地球に向かって接近する太陽嵐を横方向から観測できるため、早期警戒に適しているとされています。
③ デブリ除去・軌道上サービス:RISEとCATが前進
宇宙安全プログラム内に、静止軌道の衛星にドッキングして姿勢・軌道制御を引き継ぎ寿命延長を実現するRISEと、衛星除去に向けた標準ドッキング機構を実証するCATという技術実証ミッションが含まれています。これらのミッションは、欧州が軌道上サービスやデブリ除去といった新しい宇宙利用モデルを構築するうえで重要です。
今回の予算措置からは、宇宙安全を単発の技術課題ではなく、欧州が自立的に宇宙を利用し続けるための基盤として位置づけていることがうかがえます。宇宙環境の変化に継続的に対応するには、監視・予測・対応を含む体制を長期的に維持する必要があります。宇宙安全プログラムは、そうした基盤整備を担う枠組みとして、欧州の宇宙政策に組み込まれています。
ESA宇宙安全責任者のホルガー・クラッグ氏は次のように述べ、宇宙安全を長期的な戦略領域として扱う姿勢を示しました。
「今後数年間にわたる非常に強力な資金提供は、地政学的不確実性が続く中で、加盟国が宇宙安全における欧州の自立性に真剣に取り組んでいることを示す力強いシグナルだ」
今回の宇宙安全プログラムの増額は、安全な宇宙利用の基盤を戦略的に整備していく欧州の姿勢を示しています。具体的な分野としては、惑星防衛や宇宙天気、軌道上サービスです。これらの分野は国際協力とも親和性が高く、日本を含む各国との連携のあり方が今後どのように展開していくのかが注目されます。
参考記事
Boost in funding expands Space Safety programme

