自然災害発生時の「より早く、より正しい情報の把握」を目指して。ゼンリン・JAXA・熊本県が連携、衛星データと地図データで建物被害推定の精度向上へ
熊本県とJAXA、ゼンリンは「人工衛星を活用した建物被害推定プログラムに関する協力覚書」を締結しました。その概要と今後への期待を紹介します。
2026年2月19日、熊本県と宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)、ゼンリンは「人工衛星を活用した建物被害推定プログラムに関する協力覚書」を締結しました。
もともと熊本県とJAXAとは、熊本県における迅速な災害対応、および2016年に発生した熊本地震の経験や教訓を全国の防災・減災体制強化につなげることを目的として、2025年1月17日に「人工衛星を活用した建物被害推定プログラムに関する協定」を締結していました。
その際に、熊本県は県内市町村が保有する約15万件の「平成28年熊本地震における住家被害認定調査の判定情報」をJAXAに提供。JAXAは、その情報をもとに災害前後の衛星データを比較・分析すること(衛星データで被害があったと想定される場所と実際に被害があった場所の照らし合わせ)で、建物被害の早期推定や迅速な救助活動等につなげるための建物被害推定プログラムの研究開発に取り組んでいました。
今回の発表は、その座組に新たにゼンリンが加わった形となります。ゼンリンは、住宅地図の作成や世界初のGPS カーナビゲーションシステム専用ソフトの開発など、さまざまな地理空間情報の活用に関するサービスの開発・提供を行っている企業です。
本記事では、ゼンリンのどのようなサービスが衛星データを活用した建物被害推定プログラムの向上につながるのか、紹介します。
(1)衛星データから住所は分からない、不完全な住所データから緯度経度が分からない
リリースには「ゼンリンが保有する過去から現在までの詳細な地理空間情報を活用することで、プログラムの精度向上に貢献できる」と記載があります。
精度向上を行う上で、上述した熊本県が提供した15万件のうち、約6万件(約40%)のデータが住所のみで位置特定が困難だったということでした。
人工衛星から撮影された画像を使って「どの建物が壊れているか」を判定するには、解析結果を現実の住所や建物と紐付ける必要があります。
その点、衛星画像は宇宙から地表面を捉える位置情報付きのデータなのですが、住所が特定できるわけではありません。解析の結果は「この緯度・経度の地点に変化がある」という座標データとして出力されます。しかしながら、(リリースから詳細は不明ですが)今回熊本県から提供されたような行政の被害調査データは住所データであり、住所表記のゆれや誤り(誤字、脱字、入力不備、古い番地情報……など)がある場合は正確な座標と照らし合わせられないデータとなり、緯度・経度情報に変換できないものも少なくなかったことが想定されます。
今回の提携によってZENRIN Maps APIを介してゼンリンの高度時空間データベース(更新頻度も一定ある地理空間データベース)と連携し、住所表記のゆれ等を正規化することに加え、正確な緯度・経度を付与することで実現が可能だとリリースでは記されていました。
(2)精度の高いデータの分析で「より早く、より正しい情報把握」の実現
衛星データの解析による被害推定の迅速化は、熊本県のような地方自治体の課題解決に資することはもちろんのこと、近年では損害保険の支払い迅速化という観点でも保険会社の課題を解決する利用事例として話題となることが増えています。
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いずれも、人が見回りに行かずとも、優先的に救助すべき被害が大きいエリア(状況に応じては見回りに行くことすらも危険な場合があるエリア)を衛星データから把握することができるという、衛星データならではのメリットを活かした活用事例です。
一方で、衛星データの解析だけでは100%の正誤判定ができることはないため、できる限りその精度を上げることが重要です。その点、日本にはゼンリンのような、衛星データの精度向上を実現できる非常に詳細な地図データや高度な時空間のデータベースを保有する企業があります。
より早く、より正しい被害情報を把握できるシステムの構築を通じて、私たちの安全・安心な暮らしが今後も守られることを期待したい提携発表でした。

