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アクセルスペースの次世代衛星「GRUS-3」にニコンの望遠鏡搭載。観測能力を強化へ【宇宙ビジネスニュース】

アクセルスペースの次世代地球観測衛星「GRUS-3」7機が、7月7日に打ち上げられました。GRUS-3には、ニコンが開発した望遠鏡が搭載されています。

アクセルスペースの次世代地球観測衛星「GRUS-3」7機が、7月7日に米国ヴァンデンバーグ宇宙軍基地からSpaceXのFalcon 9ロケットで打ち上げられました。7月10日には、クリティカル運用が正常に完了したことが報告されています。

GRUS-3には、ニコンが開発した望遠鏡が搭載されています。7機の投入によって、アクセルスペースは地球観測データ提供事業「AxelGlobe」の観測体制を強化し、同一地点を1日1回観測できる体制の構築を目指します。

GRUS-3、7機体制で観測頻度と画質を向上

GRUS-3は、光学センサを搭載した小型の地球観測衛星です。アクセルスペースは、地球観測データ提供事業「AxelGlobe」において、2018年と2021年に打ち上げた「GRUS-1」5機を運用してきました。今回、新たにGRUS-3を7機打ち上げることで、同社の衛星コンステレーションを拡張します。

GRUS-3の特徴は、より高頻度、広範囲、高精細に観測ができることです。地上分解能は2.2mで、1機あたり観測幅28.3km、最長観測距離1,356kmの画像を撮影できます。また、7機体制によって、北緯25度以上の地点では、地球上の同一地点を1日1回観測することが可能になります。

観測性能の向上には、搭載するイメージセンサの更新も関わっています。記者会見でアクセルスペースの代表取締役・中村友哉さんは、GRUS-3では望遠鏡自体はGRUS-1と同じ構成である一方、イメージセンサを高性能なものに変更したことで、分解能が向上し、見た目を含めて画質の向上が見込めると説明しました。

また、GRUS-3では新たな観測バンド「コースタルブルー」が追加されました。コースタルブルーは沿岸部の観測に用いられる波長帯で、水深の推定や藻場の把握などへの活用が想定されています。中村さんは、コースタルブルーについて、ブルーカーボンや沿岸域の海底地形把握といった新たな事業領域を開拓するために選択したものだと説明しました。

なお、7機を並行して開発・製造することは同社にとって大きな挑戦でした。複数機を製造する際には個体差が生じるため、製造や試験の工程をどう管理するかが課題になったといいます。

GRUS-3の7機はFalcon 9ロケットの1回の打ち上げにすべて搭載され、打ち上げ後に軌道上で位置を調整します。中村さんによると、7機は軌道上でおおむね均等に配置される想定で、これによって同一地点を1日1回撮影できる体制を実現します。

ニコンの宇宙との関わり

地球観測衛星にとって望遠鏡は、観測性能を決める中核機器の一つです。GRUS-3には、ニコンが開発した特注の望遠鏡が搭載されます。この望遠鏡は、ニコンが長年培ってきた光利用技術や精密技術、宇宙望遠鏡開発のノウハウを活用したものです。アクセルスペースが開発したイメージセンサユニットと組み合わせることで、小型衛星に収まる構造でありながら、高精細な画像を安定した品質で取得できるとしています。

ニコンとアクセルスペースの関係は、GRUS-3から始まったものではありません。ニコンの望遠鏡は、2018年12月に打ち上げられたGRUS-1の初号機をはじめ、2021年3月に打ち上げられた追加4機にも採用されてきました。記者会見で中村さんは、日本国内で本格的に衛星搭載用の光学系を開発できるプレイヤーは限られているとした上で、複数の候補と話す中で、ニコンと一緒に開発を進めることに確信を持てたことが協議のきっかけになったと説明しました。

ニコンは、カメラメーカーとして知られていますが、宇宙分野との関わりも長く持っている企業です。創業直後から天体観測用の望遠鏡を手がけ、1931年には東京科学博物館に20cm屈折望遠鏡を納入しました。同社によると、これは天体望遠鏡国産化第1号とされています。また、1971年にはNASA仕様の「ニコンフォトミック FTN」とNIKKORレンズがアポロ15号に搭載されました。その後も、赤外線天文衛星「あかり」や地球観測衛星「だいち」など、人工衛星向けの望遠鏡を開発してきました。

近年も、ニコンの宇宙関連の取り組みは複数の事業領域に広がっています。カメラ関連では、NASAのアルテミスⅡでD5とZ9がクルーの手持ちカメラとして使われ、今後はZ9が有人月面探査で使用される予定です。ヘルスケア事業では、ISSで生きた細胞を長期観察する研究に細胞観察装置が使われる予定です。さらに、金属3Dプリンターは航空宇宙分野の部品製造に関わり、JAXAの宇宙戦略基金事業にも採択されています。

GRUS向け望遠鏡は、直径300mm、長さ600mmのコンパクトな構造です。ニコンは、カメラ開発などで培ってきた光学設計技術や、レンズ・ミラーの加工技術、光学性能の測定技術に加え、宇宙環境に耐えるための設計技術、品質保証、環境試験技術を組み合わせて開発しました。打ち上げ時の振動では瞬間的に最大700Gの負荷がかかる場合があり、軌道上では太陽光の当たり方によって望遠鏡の温度が最大70度変化することもあります。さらに、宇宙空間は真空のため、部品に含まれる水分が蒸発し、部品の変形や光学性能に影響を与える場合があります。打ち上げ後に修理できない宇宙機器では、地上で打ち上げ時や宇宙環境を想定した試験を行い、その前後で光学性能が維持されるかを確認することが重要になります。

ニコンの代表取締役 兼 社長執行役員 CEO大村泰弘さんは、宇宙開発やアクセルスペースとの協業について期待を述べました。

「(ニコンは)創業時から、地球から宇宙を見るところから始まり、カメラを宇宙に持っていき、さらに宇宙で光学機器を使う取り組みも進めてきました。宇宙における機器の取り扱いについては、かなりノウハウがあると思っています。アルテミス計画で月面に行く動きもあり、ビジネスチャンスは広がっていくと考えています。今後、アクセルスペースさんとの協業にも期待しています」

7機追加で収益貢献にも期待

アクセルスペースは、GRUS-3の商用利用開始を前に、画像データの利用に関心を示す企業との間で意向証明書、いわゆるLOIを締結しています。記者会見で同社のセールス&マーケティンググループ・グループリーダー 横井健斗さんは、現時点で日本を含む世界各地の25社以上とLOIを締結していると説明しました。地域別では、日本を含むアジア太平洋地域が半分以上を占める一方、顧客は世界各地に広がっています。

LOIを締結した企業からは、GRUS-3の観測によって、継続的な監視体制を構築しやすくなることへの期待が寄せられています。また、画像取得の経済性に対する関心も高く、アクセルスペースの衛星画像だけでなく、他のデータと組み合わせた利用も想定されているということです。

用途としては、これまで衛星データが使われてきた農業、インフラ管理、森林監視に加え、環境やサステナビリティ分野での利用が広がりつつあります。特に新興国を中心とした南米では、環境モニタリングやカーボンクレジット算出への期待があるといいます。GRUS-3は、農地、森林、国土といった広いエリアを継続的に観測する用途に適しており、民間市場の幅広い分野での活用が想定されています。

具体的な用途の一つが、露天掘り鉱山のモニタリングです。新興国では、違法な森林伐採や、それに伴って開拓される鉱山を監視したいという需要が高まっています。鉱山は遠隔地にあり、人が立ち入りにくい場合も多いため、衛星データによる広域監視が有効な手段になります。GRUS-3の観測によって、こうした変化の早期発見につなげることが期待されています。

もう一つが、沿岸域における藻場分布の把握です。藻場やマングローブなどが吸収する二酸化炭素「ブルーカーボン」は、カーボンクレジット算出の観点からも関心が高まっています。GRUS-3ではコースタルブルーの追加により、森林など陸上の植物だけでなく、沿岸域の水中にある藻場の観測精度を高めることが見込まれています。

中村さんは、これまでの5機では短期間に一定広域のモニタリングを完結させなければいけないケースにおいて、十分に撮影しきれないケースがあったことも説明した上で、「7機の増機は非常に重要でして、より多くのニーズに応えることができるようになりますので、これまで以上に大きく収益に貢献するものと認識しております」と意気込みました。

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参考

次世代地球観測衛星「GRUS-3」7機にニコンの望遠鏡を搭載