宙畑 Sorabatake

ビジネス事例

「業界が長らく解けなかった課題を最先端の技術が解決できる」NEDO懸賞金活用型プログラム”NEDO Challenge, Satellite Data –農林水産業を衛星データでアップデート!-“最終選考会イベントレポート_PR

2026年7月15日、懸賞金活用型プログラム「NEDO懸賞金活用型プログラム"NEDO Challenge, Satellite Data –農林水産業を衛星データでアップデート!-"」の最終選考会が開催されました。その模様を受賞結果や公表内容、次の公募テーマまでまとめてご紹介します。

2026年7月15日、シティホール&ギャラリー五反田で経済産業省からの交付金により、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施する懸賞金活用型プログラム「NEDO懸賞金活用型プログラム”NEDO Challenge, Satellite Data –農林水産業を衛星データでアップデート!-“」の最終選考会&表彰式が開催されました。

宙畑メモ:【NEDO Challenge, Satellite Data –農林水産業を衛星データでアップデート!-とは】
経済産業省からの交付金により、NEDOが実施する懸賞金活用型プログラム。農林水産分野に係る課題の解決を、衛星データ等を活用することで、より効果的に実現する技術を収集・分析し、将来の共同研究等に繋がる技術シーズを発掘する公募コンテストになっている。懸賞金の総額は最大3800万円。2025年5月16日から7月31日まで提案が募集され、59の応募がありました。

今、日本の農林水産業は多くの課題に直面しています。気候変動による生産環境の変化や、人口減少や高齢化による担い手不足など農林水産業を取り巻く状況は、残念ながら良好とは言えません。

本プログラムは、衛星や各種センサ等で得られたデータを活用し、生産性の向上や付加価値の向上、持続的な食料システムの構築など農林水産業の課題解決を目指すものです。希望者には衛星データプラットフォーム「Tellus」の開発環境や「WAGRI」のデータ提供が無償で行われるなどの支援もあるほか、法人・個人・グループを問わず応募可能なため、大企業やスタートアップなど、垣根を越えたチャレンジができるのが本プログラムの強みでもあります。

今年度の募集テーマは「生産現場の課題解決に資する技術開発」「資源の管理・監視および物流の高度化に資する技術開発」の2つ。宇宙業界関係者に限らない企業や個人によって構成された計11チームが会場に集まり、それぞれ独創的なビジネスアイデアや新たな技術シーズをプレゼンしました。

また、会場では本プログラムと連携した「衛星データ活用アワード 2025-2026」の表彰式や、関係者同士のネットワーキングも実施されました。本アワードのプラチナ協賛は農林中央金庫でした。

今回は宙畑編集部が会場の様子をレポートし、感じたことをお伝えします。今回の最終選考会の様子はYouTubeでアーカイブ視聴も可能です。ぜひ本記事と合わせてご覧ください。

(1)会場には思わぬスペシャルゲスト、村上 信五さんも登場

イベントは主催者あいさつからスタートしました。登壇したのは国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構理事 増田 進さん。

増田さんはコンテストに関わった方々に感謝を伝え、「前回は環境とエネルギーをテーマとして開催しましたが、受賞者全員が既にサービス化を実現、または実現見込みである」と前回のプログラム受賞者が事業化を進めていることに触れ、「本選考会が参加者相互、ならびに視聴者の皆さまとの協業、あるいは投資など事業化を加速する機会となることをおおいに期待しています」とコメントしました。

続けて、経済産業省 製造産業局 宇宙産業課長 高濱 航さんから参加者への激励が行われ、審査に入る前にサプライズスペシャルゲストによるオープニングセッションの案内がありました。

登壇したのは、本プログラムのアンバサダーを務め、アイドルグループ「SUPER EIGHT」のメンバーでもある村上 信五さん。超超ビッグネームの登場で、大きな拍手で迎え入れられました。

村上さんは芸能活動をしながら、農業スタートアップ企業「ノウタス」での事業開発や、ブドウの品種ブランディング、観光やイベントを通じた町おこしなど、多様な農業ビジネス参画に挑戦しています。村上さんは自身が農業に興味を持ったきっかけや、さまざまな大学教授と連携されていること、また、衛星データへの期待を語り、自身が携わるブドウ畑への活用可能性など、10分間たっぷりとお話いただきました。

ビジネス的見地からの切れ味あるコメントは、普段の芸能活動の姿とはまた違った印象を受けました。衛星データが村上さんの今後の活動に役立つことを願ってやみません。

また、会場では村上さんと選考参加者との記念撮影も行われました。参加者のぎこちない笑顔に、村上さんも見かねて「空気カッチカチやないですか」とツッコまれ、会場の緊張した雰囲気を解きほぐしていただきました。

(2)テーマ1:「生産現場の課題解決に資する技術開発」のプレゼン審査

続いて、テーマ1「生産現場の課題解決に資する技術開発」のプレゼン審査に移りました。登壇チームは全5チームです。

1位は1,000万円、2位は500万円、3位は300万円、審査委員特別賞は100万円となっています。プレゼンの時間は10分間、質疑応答は8分間です。

テーマ1の審査委員は以下の7名でした。

・Beyond Next Ventures株式会社 投資部 パートナー 有馬 暁澄さん
・農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境研究部門 土壌環境管理研究領域 農業環境情報グループ グループ長 石塚 直樹さん
・一般社団法人漁業情報サービスセンター 技術参与 斎藤 克弥さん 
・鹿児島大学 農学部 教授 寺岡 行雄さん 
・国立大学法人 北海道大学 理事・副学長 野口 伸さん
・株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部 アーバンイノベーションコンサルティング部 エキスパートコンサル 八亀 彰吾さん
・国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA) 第一宇宙技術部門 地球観測プログラム戦略室 室長 松尾 尚子さん
(並びは会場での紹介順)

以下はテーマ1の最終選考チームの概要と、プレゼン内容の要約になります。概要は各チームが提出したものに準拠しています。

TWINZ Plus:衛星×気象データで農地ポテンシャルを可視化し、適地適作をアップデート

代表法人名:Penguin Labs合同会社  
プレゼンター(敬称略):梶本 宗義

<概要>
本提案では、「農地のポテンシャルを衛星×気象データで引き出し、適地適作をアップデートする」というコンセプトのもと、弊社が2025年1月にリリースした世界各国の気象データを活用した適正作物レコメンドサービス「TWINZ」に、新たに衛星データ(NDVI・土壌水分量等)、土壌・地形情報、2100年までの気候変動シナリオを統合した「TWINZ Plus」を開発し、科学的根拠に基づいた農地一筆単位での最適作物提案の実現を目的とする。

<プレゼン内容と質疑応答のまとめ>
近年の急激な気候変動によって、平均気候を予測して行った判断は既に現実と急激にズレ始めています。

2022年の欧州の気温は1991年〜2020年の平均比で0.87℃上昇しており、2023年の欧州ワイン生産量は前年比−10.6%になっているという具体例も挙げられました。これから平年値や作業者の勘といった従来の判断方式ではなく、将来気候や圃場ごとの土壌環境を多角的に見ることが必要と指摘し、「TWINZ Plus」で、農地評価・作物選定の意思決定までを拡張する事業展望が語られました。

収益化についてはサブスク型で運用し、個別分析と投資回収などの成果連動型で単価を上げる展望を示しました。初期ターゲットである地方自治体の市場性については、年間のSOM(到達目標市場)は約3億円、SAM(獲得可能市場)は約30億円、TAM(全体市場)は約51億円という額が示され、将来的には農地評価だけではなく、食品や金融、保険といった商材を扱い、グローバル展開含めあらゆる産業インフラの意思決定基盤となることを目指す意気込みを示しました。

質疑応答では「戦略や戦術は大正解だけど、農業の実態や研究などにも詳しいスーパーバイザーを入れるといいのでは」「もうこれでいいじゃん」といった声から「どれくらいのステップで事業規模を上げていくのか」といった今後の展開への質問が寄せられていました。

ベトナムのお米産業における持続可能な発展の実現

代表法人名:Green Carbon株式会社
プレゼンター(敬称略):横山 治生

<概要>
ベトナム稲作では、生産者が生籾(もみ)を重量で販売するため品質が価格に反映されにくいという構造的課題がある。本提案は、衛星データと現地データを統合し、栽培実態を可視化して「信用情報」として蓄積する新たな評価・流通モデルの構築を目指す。生籾の買取から精米・販売までを含むパイロットを実施し、サプライチェーンの実データを取得することで、品質に基づく適正価格の形成と調達リスクの低減を図る。将来的には、農業・金融・流通を横断する共通評価基盤として、食料安全保障と生産性向上に資するスマート農業モデルの実現を目指す。

<プレゼン内容と質疑応答のまとめ>
「生命の力で、地球を救う」をビジョンに掲げるGreen Carbon。ベトナムを戦略的注力市場に選定した理由には政府主導で「100万ha高品質米生産プロジェクト」を展開していることなど、圧倒的な展開ポテンシャルを秘めていることなどを挙げました。プログラム期間中には約5000万規模で投資を行い、農家から生籾を直接調達し精米企業に販売するといった形で市場に参入して実証を行ったことを報告しました。従来のビジネスモデルでは1haあたりの期待値がUSD1,960だったのに対し、自社のビジネスモデルでは1haあたりの期待値がUSD2,184に向上したことも合わせて伝えました。

実証で判明した「商流の不透明性」「監視・予測の困難」といった重要課題に対して、独自アプリ「Agreen」と高度な衛星解析で市場構造の課題解決に挑んだ道筋について説明。

また、「一次産業や農家さんの課題は何かテクノロジーがあれば解決するという問題ではない」といった現地農家と関わっての実感を語り、ベトナムの一次流通に対する収益を30%上昇させる目標を掲げ、農家にしっかりとインセンティブが入るように市場構造に入り込み、今後さらにビジネスモデルを高度化させていくといったビジョンを示しました。

質疑応答では、ベトナム以外での将来的な展開や、今後のシナリオや進め方などが問われました。

スマート水産養殖:分子生態情報と海洋データ統合による魚病早期検出技術の開発

代表法人名:株式会社 極洋
プレゼンター(敬称略):田原 将初

<概要>
水産養殖業において、「魚病(魚の病気)」の蔓延は、養殖魚の斃死、治療コストの増大、生産効率の低下を招き、その経済的損失は産業全体の持続性を脅かしている。本提案では、魚病発生履歴・環境DNA・衛星データをAIを用い統合解析することで、魚病の出現・増加、ひいては発生リスクを予測するモデルの構築を目指す。本事業は、従来の事後的な対処から予防的な措置への転換を図り、水産養殖業の安定的な生産基盤を確立する。

<プレゼン内容と質疑応答のまとめ>
水産、生鮮、食品、物流サービスを展開する極洋。冒頭では自社の養殖場で育てているブリの映像を見せ、細菌やウイルスなどに起因する魚病で一斉に死んでしまうことがあることを説明しました。現場からの「何千万円という被害が一瞬で出る恐怖と常に隣り合わせ」というコメントを紹介しつつ、衛星データや過去の魚病記録、環境DNAなどを機械学習させた魚病の発生予測アプリを紹介。2030年までに日本の魚病被害額約100億円を5%削減することを目標に掲げ、2027年秋のリリースを目指していることを語りました。

質疑応答では、マネタイズの将来像や、投薬などどういうアクションをユーザーが取れるのかなど具体的な使用シーンについても質問が寄せられました。

食料・飼料自給率向上および遊休農地解消のための衛星データ活用システム

代表法人名:株式会社アグリライト研究所
プレゼンター(敬称略):岩谷 潔

<概要>
衛星データと作物発育モデルを活用し、食料・飼料自給率向上と遊休農地活用を目指す営農支援システムを開発します。
本システムは、遊休農地での食用作物と飼料用作物の輪作を進める上で不可欠な、営農作業の省力化と作物品質の向上、農業機械の効率的運用を支援する各種予測情報を提供することで生産性と収益性を高め、遊休農地の効率的活用を促し、労働生産性の高い食料・飼料生産の確立と自給率の向上を目指します。

<プレゼン内容と質疑応答のまとめ>
「作付け拡大」「排水対策」「計画的運用」という現場の3つの壁を衛星データで解決し、持続可能な国産飼料用トウモロコシ生産で遊休農地を解決するアプリ「ALLMASSY」を紹介。トウモロコシの国内需要は1,520万トンと、コメ(850万トン)の約2倍なのにも関わらず、国産自給率は0.1%(1.6万トン)とほぼ全量を輸入に依存している実態を取り上げ、国産飼料用トウモロコシの現状を伝えました。生産に必要な「栽培・収穫・加工・販売」の4者をつなぐ仕組みの重要性を伝え、拠点とする山口県のモデルを紹介しながら、全国展開を見据えて遊休農地を飼料自給率向上の現場に変えていくメリットとビジョンが語られました。

質疑応答では、今後の横展開の可能性や小麦など別の作物への展開についても期待のコメントが寄せられていました。

スペーステロワール ~衛星データによるテロワール可視化技術の開発と日本ワインの高付加価値化~

代表法人名:キリンホールディングス株式会社
プレゼンター(敬称略):若林 英行

<概要>
今回開発したアプリ”スペーステロワール”は、衛星データを用いたリモートセンシング技術と、ブドウ・ワイン成分分析データ等を統合・解析することにより、品種適地評価、将来の圃場環境予測、農地間比較など「土地の個性=テロワール」を見える化するインターフェースです。
この技術で自治体・ワイナリー・農家が目指すワイン造りと経営判断の支援、さらには地域産業・日本ワイン市場の活性化と新価値創出の貢献を目指します。またワイン市場に限らない展開先や認証制度化も模索します。

<プレゼン内容と質疑応答のまとめ>
衛星データと成分データ、生成AIでワインの土地の個性(=テロワール)を可視化して栽培・収穫に伴走する新サービス「スペーステロワール」の紹介。キリングループの事業の源泉は植物原料である、という動機の説明から始まり、自分の畑に最適なブドウ品種の植え替えや、事業拡大に向けた新たな遊休農地といった農家の課題を解決する道しるべとして活躍する意気込みを示しました。キリングループの事業・研究リソースを活かし農家の課題である「理想のワイン造り」「経営のための省力化・効率化」に寄り添いながら、2026年に1県に試験導入、2027年にローンチ、2030年には認証制度を通じた日本ワイン支援ビジネスを見据えていることなどを発表しました。

質疑応答ではアイデアへの評価や成分分析と現地調査の紐づけの優位性などについてコメントが寄せられていました。

(3)テーマ2:「資源の管理・監視および物流の高度化に資する技術開発」のプレゼン審査

休憩を挟んで、テーマ2「資源の管理・監視および物流の高度化に資する技術開発」のプレゼン審査に移りました。登壇チームは全6チームです。

テーマ1と同じく、1位は1,000万円、2位は500万円、3位は300万円、審査委員特別賞は100万円となっています。プレゼンの時間は10分間、質疑応答は8分間です。

テーマ2の審査委員は以下の7名でした。

・一般財団法人 リモート・センシング技術センター ソリューション事業部 事業戦略課 課長 荒井 頼子さん
・国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA) 第一宇宙技術部門 地球観測研究センター 主幹研究開発員 大吉 慶さん
・エスファクトリー代表 尾崎 典明さん 
・国立大学法人 東京大学  システム創生学専攻 准教授 柴崎 隆一さん 
・国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 主任研究員 鷹尾 元さん
・株式会社UnlocX 代表取締役 CEO 田中 宏隆さん
・一般社団法人 SPACETIDE 代表理事 兼 CEO 石田 真康さん

以下はテーマ2の最終選考チームの概要と、プレゼン内容の要約になります。概要は各チームが提出したものに準拠しています。

衛星データを起点とした竹資源のサプライチェーン構築

代表法人名:スターフィールド株式会社
プレゼンター(敬称略):河田 涼士

<概要>
拡大する放置竹林は農地や森林を侵食し、私たちの生活や生態系に深刻な影響を与える全国的課題です。本提案は衛星データを用いて高精度な竹林分布図を作成し、農地・森林等のGIS情報と統合することでリスク評価や伐採適地を提示します。さらに伐採後の竹を循環利用し、地域産業復興と環境保全の両立を目指します。
衛星データから始まる竹資源サプライチェーンを構築し、産官学と連携しながら持続可能な未来を切り開きます。

<プレゼン内容と質疑応答のまとめ>
竹は食料や燃料、資材として管理され、地域に密着した資源ですが、輸入品の増加や里山の過疎化で放置竹林が増加している課題を指摘しました。それは、データ不足などによる放置竹林の実態管理の難しさで対応ができていない現状が挙げられます。放置竹林は土砂災害や害獣被害、生態系や景観の破壊、オゾン生成による大気汚染などさまざまな問題をもたらし、過去10年の試算では土砂災害被害で約136億円、害獣被害で約446億円というデータが出ており、事態は深刻化しています。

そこで、スターフィールドは群馬県での調査を例に、衛星データを活用して実態把握をスムーズ化する「たけナビ」を発表しました。従来の方法と比べ1/25~1/35の低コストで運用できる優位性や竹資源の事業化展望を示し、売上目標は8000万〜1億2000万規模と語りました。1年後には実用的なサービスの確立、2年後以降は全国・海外展開を目指すなど今後のステップについても示されました。

質疑応答では計測に使う衛星データが使用できなくなった場合のリスクマネジメントや、事業として出口戦略などの質問が寄せられました。なぜとりわけ竹に情熱を注いだのかという質問には、河田さんが竹林へタケノコの収穫に訪れたときの景色が素晴らしかったからなどといった動機が説明されました。

価格予測と需給リスクを見える化する農産物サプライチェーンAI ダッシュボード~衛星x 気象x 市場データで生産・流通を最適化し、価格平準化と食品ロスを削減~

代表法人名:株式会社ファームシップ
プレゼンター(敬称略):宇佐美 由久

<概要>
従来WAGRIで提供してきた農産物価格予測APIを基に、衛星データを加えてAIで予測精度を高めるとともに、各種リスク指標を提供するサービスの提案。生育状況、土壌水分、冠水、日照不足、高温リスクなどの衛星指標により、従来捉えにくかった異常気象、作況急変、供給不足、品質低下、物流遅延などの兆候を可視化する。
品目・地域別の価格予測とリスク指標をわかりやすく提示し、バリューチェーン全体の意思決定を支援することで、流通安定化、価格平準化、食品ロス削減、災害時の食料供給強化に貢献する基盤サービスを目指す。

<プレゼン内容と質疑応答のまとめ>
野菜をスーパーやコンビニに届ける事業を営むファームシップ。その中で、生産した野菜の23%が出荷されずに廃棄されているというフードロスの問題を指摘。野菜の卸売価格が安くなると受注が減ってしまうという構造的な課題から、衛星データで卸売価格予測精度を向上&何をすべきかの行動提案も含めた新サービスを発表しました。工場でのシミュレーションでは従来10%超の廃棄率を開発環境において2%以下に削減できた実績も語られました。年度内には全国主要市場への展開、来年度にはサービスを主要野菜15品目へ拡大することなど将来に向けた事業展望も示されました。

質疑応答では予測スパンや露地野菜への拡張性、マネタイズの展望などの質問が寄せられました。

林業の現場負担を減らす衛星データ基盤 — 森林監視から需給予測・輸出入判断まで —

代表法人名:株式会社SenseField
プレゼンター(敬称略):東出 泰治

<概要>
本提案は、衛星データを活用し、林業における現場確認や需給判断の負担を減らすためのデータ基盤である。森林側では、SAR衛星画像から伐採・開発・転用などの変化候補を抽出し、現地確認の優先順位づけを支援する。
物流側では、原木市場の衛星画像からストック量や増減傾向を推定し、需給予測や輸出入判断に活用する。これらを継続的に蓄積し、森林管理と木材流通の判断を高度化する。

<プレゼン内容と質疑応答のまとめ>
自社の自動運転向けセンシング技術アセットに衛星データを組み合わせた、森林管理や木材流通など林業の現場負担を減らすサービスの発表。森林管理の現場の現地調査のコスト問題や、取引市場の在庫が不透明ななかで需給のぶれを予測することなど、森林の監視と木材流通の可視化をテーマとしていました。森林側と市場側を同じデータ基盤で観測することで実態把握に役立つことなどを説明し、将来的にはデータ基盤統合を経て海外展開も視野に入れることも伝えられました。

質疑応答では、原木市場に着目した理由や、自治体の業務に即したアウトプットの形などの質問が寄せられました。

水稲栽培に関わる全ての人のための「ものさし」の開発

代表法人名:三菱電機ソフトウェア株式会社
プレゼンター(敬称略):鳥井 健司

<概要>
「令和の米騒動」と言われたコメの需給バランスの崩れを発端に、コメの見える化が求められています。
そこで、衛星画像により全国約1600万筆の水田を一律に解析し、日本の水稲の現況をタイムリーに把握するとともに、気象データを組み合わせた予測を行うことで、生産・管理・研究・流通・販売、全ての水稲関係者に対して各種判断の基準となるコメの今を測る「ものさし」のように、客観的な解析結果を提供するサービスを提案します。

<プレゼン内容と質疑応答のまとめ>
昨今に起こったコメの価格高騰による市場混乱(=令和の米騒動問題)を例に挙げ、いつでも正しく測れてみんな(行政、生産者、消費者など)で使える、実態把握と不安解消に役立つ「ものさし」が必要なのではといった提案からスタート。短期・中期・長期の意思統一に役立ち、日本全国の圃場を高頻度で同じ方法で測ることができる衛星を用いた精密農業による水稲資源最適化ワークフロー「SPARROW」を発表しました。現在の実証段階から、来年以降はJA全農と協力して実証を展開するなど将来展望なども語られました。

質疑応答では、「ものさし」という名前や、サービス展開の範囲や精度に関する現在の評価などについて質問が寄せられました。

食料レジリエンス・アトラス(FRA) – Food Resilience Atlas – Satellite & Causal AI Platform –

代表法人名:富士通株式会社
プレゼンター(敬称略):土井 悠哉

<概要>
本提案『食料レジリエンス・アトラス』は、衛星データ×因果AIで港・空港・道路と生産・消費・輸入を結ぶサプライ網を可視化し、遮断時の影響を即時予測、代替ルートや備蓄活用を自動提案し、官民の迅速な意思決定を支援します。
富士通が保有するAI技術を活用し、日本の食料安全保障強化と災害時の供給維持に貢献します。

<プレゼン内容と質疑応答のまとめ>
食糧危機の発生は生産不足だけではなく、供給ネットワークの破綻によって生まれることを指摘。1941年〜1945年の太平洋戦争、2022年からのウクライナ危機、2026年からのナフサショックなどが例に挙げられました。「どこの供給経路が止まると何が不足するか」「有事に代替案を検討するには」といった課題を解決する衛星データとAIエージェントを駆使した食料安全保障の問題を可視化・対策立案を行うアプリケーションが発表されました。AIエージェントによる自然対話で施策立案ができることなどの新規性が語られ、ステークホルダーとの連携、実用化による社会発展性も合わせて示されました。

質疑応答ではデータの粒度や事業化する上での短期・中長期的なアプローチの質問が寄せられました。

eDNA(環境DNA)× 衛星データで内水面漁業をDX化 -効率的な漁場整備と持続可能な水産資源管理の実現

代表法人名:株式会社フィッシュパス
プレゼンター(敬称略):中谷 優基

<概要>
環境DNA分析と衛星・地形データを統合し、魚類の生息情報と環境条件の関係を解析することで、生息適地を推定するプラットフォームを開発。環境DNA分析だけでは把握が難しい広域の河川環境を衛星データで補完することで、魚が「どこに、なぜ生息しているのか」を科学的に可視化した。
さらに、衛星データを活用して過去から未来にわたる環境変化を捉えることで、生息環境の変遷や将来の生息適地を予測し、水産資源管理や河川環境の保全・再生、効率的な漁場整備を支援する。

<プレゼン内容と質疑応答のまとめ>
フィッシュパスは水産資源減少によって鮭おにぎりの価格が高騰(2016年120円⇒2026年=230円)していることを例に、放流などの現場での水産管理が経験や現場感覚によって行われる不透明なものであったという課題を指摘。水や空気、土壌などに含まれる環境DNA分析で水中を可視化し、衛星データをかけ合わせることで魚の生息適地を推定するプラットフォーム「すみかマップ」を発表しました。

竹田川水系、九頭竜川水系、日野川水系など3つの河川でアジメドジョウを対象にした全78地点の実証実験を行い、現地実証でアジメドジョウを捕獲することができ、データ予測と合致したことを報告しました。初期実証段階ではAUC評価指標が0.79と十分な精度を誇ることも伝えました。

全国441漁協と8大学とのネットワークがある自社の優位性、想定ユーザーへのヒアリングで高い現場ニーズを獲得したことも語られました。SOMは約175億円、SAMは約750億円、TAMは2,380億円を掲げ、今後も継続的に学習更新を続け、漁港や自治体、大学などとも連携し次世代の自然資本データインフラを目指すことを伝えて締めくくりました。

質疑応答では今後の可能性や波及効果などについて触れられました。鮭おにぎりにこだわった理由にはいくつか疑問が寄せられましたが、中谷さんが鮭おにぎりが好きという理由からスタートしていると説明されました。

(4)スペシャルイベント:「農林水産分野における衛星データ利活用の成功要因と資金獲得のポイント」

それぞれのテーマの参加者によるプレゼンが終わり、農林水産分野・宇宙分野の第一線で活躍するトップランナー、投資機関や農林水産省のゲストを招いたスペシャルイベントが開催されました。

テーマは2部制で分かれ、前半は「農林水産分野における衛星データ利活用の成功のポイント」、後半は「政策と投資から読み解く資金獲得のポイント」と各分野に通じたパネリストからさまざまな知見が飛び出しました。

登壇者は以下の7名です。

<ファシリテーター>
・国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA) 第一宇宙技術部門 地球観測プログラム戦略室 室長 松尾 尚子さん
・PwCコンサルティング合同会社 公共事業部 パートナー 片桐 紀子さん

<パネリスト>
・農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境研究部門 土壌環境管理研究領域 農業環境情報グループ グループ長 石塚 直樹さん 
・鹿児島大学 農学部 教授 寺岡 行雄さん
・漁業情報サービスセンター 技術参与 斎藤 克弥さん
・農林水産省 農林水産技術会議事務局 研究総務官 東野 昭浩さん
・農林中央金庫 執行役員 事業戦略投資部長 宮路 出さん

それぞれのテーマを簡潔にまとめてお届けします。

●テーマ①「農林水産分野における衛星データ利活用の成功ポイント」

ディスカッションの冒頭では松尾さんが全11チームのプレゼンを振り返り、「NEDO Challengeを通じて、農林水産分野に資する多くの技術が誕生したんじゃないかと実感した」と、参加者の発想や着眼点を称賛しました。そして、片桐さんからは「一方で社会実装や事業化まで進むものは一握りに限られる」とし、「実証で終わってしまうものと社会実装まで進むものはどのような違いがあるのかをディスカッションしていきたい」と意気込みが語られました。議論のはじめとして、農業、林業、水産業の今についてパネリストの3名よりそれぞれ紹介がありました。

・農業

まずは「農業分野における衛星データ利活用の成功事例」と題した石塚さんのプレゼンから。石塚さんは成功事例として、小麦の収穫適期予想マップと青森県のブランド米「青天の霹靂」の2つの事例を挙げました。

また、失敗した事例を踏まえつつ、石塚さんは農業分野での成功に必要な3つの要素を紹介しました。

1.時間:農作物はナマモノ(天気)、継続、タイミング、運
2.人:キーパーソン、継承者
3.地域:適した場所、適したスケール

時間、人、地域、どれも農業分野では重要なファクターとなっています。石塚さんは「いわゆる“天地人”が揃うことが成功のカギ」と孟子の一節を引用しつつ、孫子兵法を援用し“はかりごと”の重要さを説明して締めくくりました。石塚さんが会話の流れで諸葛孔明が持っている羽扇を取り出したときはパネリストの皆さんも思わず笑顔になっていました。

・林業

そして林業分野に携わる寺岡さんにバトンタッチ。林業が農業と大きく異なる点として、生産や管理経営期間が長期にわたりより広大な土地を取り扱うことを挙げました。現場で新たな技術が受け入れられるかどうかは、家電のようにデータをすぐに使えるような環境になっているかというポイントです。

そうした成功事例として森林を観察するリモートセンシング技術を使った九州大学の事例をピックアップ。今後は欧州の「欧州森林破壊防止規則(EUDR)」が発効するようになることから、長期的に大面積を網羅し変化を抽出する衛星データが非常に重要になってくるのではと締めくくりました。

・水産業

次は、水産分野に関わる斎藤さんからのプレゼンです。衛星データを漁業で利用しようという動きは1970年代から早期に始まっていたことに触れ、そこから衛星データと現場のデータの合致検証を20年以上やってきたという進化の歩みが述べられました。当時はFAXなどの洋上データ通信のコストは高いものでしたが、通信インフラの進化により大量のデータを安価によりスピーディに送ることができるようになっています。そうした点を踏まえ、洋上データ通信がさらに本格化する時代がやってくるはずと話されました。

3人のプレゼンが終わり、松尾さんから寺岡さんに林業分野での資金獲得の質問が飛び出しました。寺岡さんからは炭素クレジットがビジネスの対象としていけそうな手応えが得られていると林業の資金獲得の可能性が説明されました。

続けて石塚さんにも農業分野の資金獲得についての質問が。石塚さんは農作物は天候に左右されるところがあるので、ある程度長い目で資金面など事業計画を練らないと失敗しやすいと回答しました。

また、斎藤さんも同様の質問に対し、鹿児島で赤潮でブリが大量死したことの例を挙げ、イレギュラーに対処するために資金を持っておくことの重要性が語られました。

●テーマ②「政策と投資から読み解く資金獲得のポイント」

続いては、東野さん、宮路さんを招いて「政策と投資から読み解く資金獲得のポイント」のディスカッションが始まりました。

東野さんは農業の生産性向上や自治事務の効率化を進めるうえで衛星データに大きな期待を寄せていることを伝え、その上で、「スマート農業技術開発・供給加速化対策」「スマート水産業普及推進事業」などさまざまな予算支援策を用意していることを強調しました。

宮路さんからはなぜ農林中央金庫が宇宙領域に着目しているのか、今後どのようなことに取り組んでいくのかの展望が語られました。農林水産分野においては生産基盤の変化やデータの不確実性が目立つ中で、「経験と勘」の打ち手から脱却することが重要です。農林中央金庫として宇宙技術を有するスタートアップ企業への事業投資を進め、技術と現場をつなぐハブとして農林水産業や地域に貢献していく意気込みが示されました。

合わせて、宮路さんは「衛星データには、活用や解析に注目が集まりがちだけどそこがゴールではなく、あくまでもスタートライン」と指摘しました。誰が、いくらで、何のためにどういうサービスを買うことができるのかまでを考えつつ安定した収益構造を構築することが重要であると語り、一度買って終わりではなくサブスク型でデータを継続的に使ってもらうなど収益モデルの提案も寄せられました。

松尾さんからは東野さんに、産学官連携という観点での政策の質問がありました。東野さんは様々なプレイヤーが一堂に会して技術開発をする・社会実装に向けた取り組みをするというのは非常に大事だと話したうえで、スマート農業イノベーション推進会議(IPCSA)、「知」の集積と活用の場(「知」の集積と活用の場 産学官連携協議会)を例に挙げ、産学官の連携が多数行われている状況を説明しました。「知」の集積と活用の場では、すでに5000社以上の会員数、自主的な研究開発プラットフォームが150を超えていること(なかには人工衛星を利用したものも存在)など教えていただき、今後もこのような場を多数設定していきたいと締めくくられました。

最後にパネリストから今後の展望のコメントがありました。「フィジカルAIなどいろんな技術を衛星データとかけ合わせていくことが大事」といった具体的な方策から、「明るい未来が待っていると私は思う」「今だからこそ稼ぐ事業にできるんじゃないか。ぜひ新しい未来を一緒に作っていきたい」といったポジティブなメッセージが語られました。

(5)「衛星データ活用アワード 2025-2026」 表彰式

「NEDO Challenge, Satellite Data -農林水産業を衛星データでアップデート!-」の結果発表の前に、「衛星データ活用アワード 2025-2026」の表彰式が行われました。

審査委員特別賞はキリンホールディングス株式会社の「スペーステロワール ~衛星データによるテロワール可視化で地域と農家の想いを伝えるビジネスへ~」が選ばれ、目録として10万円が贈呈されました。

最優秀賞にはPenguin Labs合同会社 の「TWINZ Plus:衛星×気象データで農地ポテンシャルを可視化し、適地適作をアップデート」が選ばれました。目録として300万円が贈呈されました。

(6)テーマ1:「生産現場の課題解決に資する技術開発」 表彰式

そして「NEDO Challenge, Satellite Data -農林水産業を衛星データでアップデート!-」テーマ1「生産現場の課題解決に資する技術開発」の結果発表が行われました。

結果は以下の通りです。

<第1位>
「TWINZ Plus:衛星×気象データで農地ポテンシャルを可視化し、適地適作をアップデート」
代表法人名:Penguin Labs合同会社  プレゼンター(敬称略):梶本 宗義
賞金1000万円

コメント「先ほどの衛星データ活用アワードに引き続き、名誉ある賞をいただきありがとうございます。衛星リモートセンシングに携わってきて事業化やマネタイズに距離感があったところ、事業化に評価をいただいたことを非常にうれしく思っています。ここからスタート地点だと思って今後もがんばっていきたいと思います」

1000万円の使い道を宙畑編集部が伺ったところ、コンピューティングリソースへの投資、また良い椅子を購入する資金に充てたいと喜びのコメントをいただきました。

<第2位>
「スペーステロワール ~衛星データによるテロワール可視化技術の開発と日本ワインの高付加価値化~」
代表法人名:キリンホールディングス株式会社 プレゼンター(敬称略):若林 英行
賞金500万円 

コメント「先ほどに引き続きましてダブル受賞とのことで本当にありがとうございます。今回キリンホールディングスが衛星データを活用するのがゼロベースからスタートしてというところもありますので、キリンの衛星利用元年としてこれから衛星データを積極的に活用していきたいと考えています」

<第3位>
「食料・飼料自給率向上および遊休農地解消のための衛星データ活用システム」
代表法人名:株式会社アグリライト研究所 プレゼンター(敬称略):岩谷潔
賞金300万円 

コメント「身近なテーマで始まったプロジェクトに対してこのような評価をいただいたことに心より感謝したいと思います。チームのメンバー全員、審査員の方々、それから事務局の皆さまに心より感謝申し上げます」

<審査委員特別賞>
「スマート水産養殖:分子生態情報と海洋データ統合による魚病早期検出技術の開発」 
代表法人名:株式会社 極洋 プレゼンター(敬称略):田原 将初
賞金100万円

コメント「まずはこのような賞をいただきありがとうございます。水産分野では衛星データの活用が進んでいないのが現状です。この機会を契機にみなさまと新たな価値を作っていきたいと思っています」

<松尾さんからの講評>

「皆さんすべてのテーマにおいて衛星データを非常にうまく使っておられて、衛星を開発する側におりますのですごくうれしく思いました。

今回、1位のPenguin Labsさんはモデルを組み合わせて将来の情報を出し、世界のデータをアプリケーションにしていこうという点を高く評価させていただきました。アグリライトさんのこれまでの実績をまとめて作り上げたということも評価しています。キリンさんも非常にさまざまなデータを価値情報に変えていく期待感を評価させていただきました。

極洋さんは、非常に難しい環境DNAという情報を衛星データとどう組み合わせるのかという技術的にチャレンジングなことをされており、今後も引き続きトライいただきたいという点で評価をしています。

すべてのテーマが本当に素晴らしくて評価が難しいところもありました。今後もぜひ衛星データを使ってチャレンジいただければと思います」

(7)テーマ2:「資源の管理・監視および物流の高度化に資する技術開発」 表彰式

「NEDO Challenge, Satellite Data -農林水産業を衛星データでアップデート!-」のテーマ2「資源の管理・監視および物流の高度化に資する技術開発」の結果発表が行われました。

結果は以下の通りです。

<第1位>
「eDNA(環境DNA)× 衛星データで内水面漁業をDX化 -効率的な漁場整備と持続可能な水産資源管理の実現」
代表法人名:株式会社フィッシュパス プレゼンター(敬称略):中谷 優基
賞金1000万円

コメント「(胸を押さえながら)正直かなり驚いていまして今も胸がドキドキしている状況です。名誉ある賞をいただきまして本当にありがとうございます。我々の場合は環境データをメインに扱っておりますけども、まずは全国の鮭の分析をしたいなと考えています。明日からでも北海道に行きたいなと思っているところなんですけども、それは会社が許してくれないので、賞金を徐々に使いつつ最終的には誰でも使えるような生息適地のモデルを作っていければなと思っています。ありがとうございました」

1000万円の使い道を宙畑編集部が伺ったところ、環境DNAの採取に利用予定とのこと。1箇所の環境DNA採取と分析には3万円が必要とのことで、300箇所程度の分析ができるようです。

<第2位>
「水稲栽培に関わる全ての人のための「ものさし」の開発」
代表法人名:三菱電機ソフトウェア株式会社 プレゼンター(敬称略):鳥井 健司
賞金500万円 

コメント「我々は衛星データを提供する側に近いところでずっと業務をやってきましたけども、なかなか市場が広がっていかないというところでこういったデータ利用のほうにも足を広げてみようということで参加を決めました。ニーズと出会うことって今まで全然なかったので、今回マッチングプログラムで全農様と出会わせていただきまして、事務局の皆さん、及び全農の皆さん、ありがとうございました。また、チームの皆もここまでがんばってくれてありがとうございました」

<第3位>
「食料レジリエンス・アトラス(FRA) – Food Resilience Atlas – Satellite & Causal AI Platform -」
代表法人名:富士通株式会社 プレゼンター(敬称略):土井 悠哉
賞金300万円

コメント「(増田理事に3連覇ならずと言われたことについて)3連覇ならずという言葉をいただきましたけど、今回3連覇したら審査員にでもなるのかなとちょっと思ってたりもしたので、次回もチャレンジしていいということかなと解釈しました。この度はありがとうございます」

<審査委員特別賞>
衛星データを起点とした竹資源のサプライチェーン構築
代表法人名:スターフィールド株式会社 プレゼンター(敬称略):河田 涼士
賞金100万円

コメント「このような機会を作ってくださった皆さま方と、メンタリングですごく真摯にアドバイスをくださった皆さま方、あなた方の力が助けになりました。ここをスタート地点と捉えまして実用化に向けたスタートを明日から進めていきます」

<石田さんからの講評>

「中谷さん、いいリアクションでしたね(笑)。審査委員会としては最高のリアクションをいただきました。まずは受賞された皆さま、おめでとうございます。惜しくも受賞を逃した皆さん、悔しい気持ちとか自分たちのほうがいいんじゃないかなと思ってる気持ちもあるかと思いますけれども、ぜひ次回もう一回挑戦をいただければと思います。

私は去年も審査委員をやらせていただきましたが、今年は農林水産業ということで前回とは(ソリューションの)傾向が違いました。最も違ったのが、業界の長らく誰も解けなかった課題を最先端の技術で解こうという提案が多かったことです。例えば、テーマ2でいうと需給のギャップや資源の管理とか、10年くらい前からずっと言われ続けてきたことになります。

そして、今回はサテライトチャレンジなので衛星データを使うのが必須なわけですが、去年と比べてAIというキーワードが多かったなと感じました。そういう意味で業界の課題を最先端の技術で解くというのが今年のけっこう大きな傾向だったかなと。

また、もうひとつの傾向だと思ったのが、農林水産業は課題を自分ごと化しやすいということです。自分ごと化しやすいということは熱量を持って取り組みやすい。そういう意味では非常に良いテーマだと感じました。

一方で、テーマ1の方も含めてこれから事業が本格化していくと思うんですが、ひとつ皆さんにお願いがあります。今回、さまざまな衛星データを使われていたと思いますが、日本の衛星データをもっとたくさん使ってください。

経済産業省様が宇宙戦略基金という大型の政策の中で、商業コンステレーションの構築加速のご支援をしています。この政策のもと、日本の衛星がこれからどんどん打ち上がり、今後も日本の衛星が増えてきますので、ぜひ皆さんには率先してそういったデータを使い倒していただいて、フィードバックが回っていくことで日本の産業がどんどん強くなっていくと思います。

あらためまして皆さん、大変おめでとうございました」

(8)総評と閉会挨拶

最後に、東野さんの代理で登壇した農林水産省 大臣官房政策課 技術政策室 室長である阿部 尚人さんから総評をいただきました。

阿部さんは参加者に感謝を伝え、農林水産分野に山積するさまざまな課題に行政としてしっかり取り組んでいく意思を説明しつつ、それには技術とイノベーションが不可欠だと強調しました。そこに衛星データは欠かせない存在になると期待し、衛星関連で多数の人が関わった今回のイベントは大変意義深いものになったと語られました。

そしてイベントは高濱さんの閉会挨拶で締めくくられました。高濱さんは技術から入らずに現場のニーズから入っていくことや、調査の前提から疑っていくことなど全チームの姿勢を評価していました。衛星データが社会課題解決に寄与することを期待しつつ、宇宙産業という目で見ると、衛星データが衛星やロケットの市場を需要で引っ張っていくところにさらなる期待を寄せていることが語られました。そしてみんなが使いたくなるような衛星データを作っていくといった意欲を燃やしていました。

以上、「NEDO懸賞金活用型プログラム”NEDO Challenge, Satellite Data –農林水産業を衛星データでアップデート!-」のレポートをお届けしました。

石田さんからの講評にあったように、農林水産分野は課題を自分ごと化しやすいテーマだと思いました。鮭おにぎりや竹林の話など、自身の情熱を突き詰めることでより多くの人を救い、より良い未来を描く新たなソリューションを生み出すことにつながります。受賞者については市場規模を明確にし、顧客やお金の出所が明確であること、さらにその次の展開についてもワクワクさせられるようなチームが高く評価されていた印象があります。

また、マッチングプログラムを通じたニーズとシーズの出会い(三菱電機ソフトウェア様と全農様)や、技術面・事業面の両方からのメンタリングによる成果物のブラッシュアップ(フィッシュパス様やスターフィールド様、キリンホールディングス様など)について、受賞者のプレゼンやコメントで語られたことも、単なるビジネスアイデアコンテストにはない本プログラムの特徴がうまく機能しているのだと実感できたポイントでした。

宙畑編集部としては、飼料用トウモロコシの国内自給率が著しく低いことや、生産した野菜の23%が出荷されずに廃棄されてしまっていることなど、新たに知った課題も多数ありました。これらの事例も、各分野のエキスパートだからこそ、切実な問題意識を抱えていらしたのだと思います。農林水産分野は国の要であり、今後の農林水産業の発展に衛星データが寄与することを願ってやみません。

なお、2026年8月31日まで公式HP上でNEDO Challengeおよび衛星データ活用アワードのファイナリストによる提案概要を公開しており、気になったファイナリスト企業へ事務局を通じてコンタクトが可能なフォームが公開されています。興味を持ったビジネスアイデアや技術シーズがある方はぜひお問い合わせてしてみてはいかがでしょうか。

(9)懇親会から生まれる新たなマッチングと次のテーマ

イベント後の懇親会では、参加者同士が積極的なコミュニケーションを行っており、審査の緊張がほどけたことも相まってみんな終始朗らかな雰囲気でした。懇親会から新たな事業や協業の種が生まれることに期待が高まる時間となりました。

また、次回のNEDO懸賞金活用型プログラムの公募も開始されています。次回のテーマは「NEDO Challenge, Satellite Data -衛星データで革新する未来の都市インフラ-」です。応募期間は2026年7月15日から8月31日まで。

次回の懸賞金は各テーマで1位に2,000万円、2位に1,000万円、3位に500万円と、賞金額が2倍となり、NEDO Challenge, Satellite Dataシリーズ最高額となっています。興味を持った方はぜひ応募してみてはいかがでしょうか?