宙畑 Sorabatake

宇宙業界のキャリアナビ by インバイトユー

「宇宙業界は、地上の経験を求めている」異業種から転職した3人が語る宇宙業界のリアル【SPACETIDE Career Connect 2026 Summer】

2026年9月26日に開催された宇宙業界に特化したキャリアイベント『SPACETIDE Career Connect 2026 Summer』の特別セッションで語られた宇宙業界への転職のリアルの内容をまとめました。後日談として、登壇した3名の言い残しも収録しています!

2026年9月26日、東京・虎ノ門で宇宙業界への転職・就職を考える人向けのイベント「SPACETIDE Career Connect 2026 Summer」(主催:一般社団法人SPACETIDE)が開催されました。

一般社団法人SPACETIDEの代表理事である石田真康さんの開会の挨拶、会場に立ち見が出るほどのイベント参加者が訪れました。
当日は21社以上が会場でブースを設置し、イベント参加者と活発な会話を重ねていました。SPACETIDEのブースもあり、石田真康さんが直接参加者と1対1でお話される光景も見られました。

会場では、スペシャルトークセッションとして、SPACETIDEの代表理事である石田真康さんと小惑星探査機「はやぶさ2」のプロジェクトマネージャを2025年4月まで務めたJAXAの津田雄一さんとの対談や、「宇宙業界の起業家のリアル」と題された宇宙起業家・アストロスケールHD CEOの岡田 光信さんによるスペシャルメッセージの時間もありました。

上記2つの内容については後日記事で公開を予定しております。ぜひご覧ください。

そして、イベントの最後に開催されたのが、トークセッション「転職者のリアル」です。モデレーターを宙畑編集長の中村が務め、宙畑の非宇宙業界から宇宙業界に転職をした人に焦点を当てたインタビュー連載連載「Why Space」に登場いただいた3名にパネリストとして登壇いただきました。

登壇者紹介

井上 大夢さん
株式会社インフォステラ

現在の仕事
セールスエンジニア。衛星と地上をつなぐ地上局の領域で事業開発を担う。宇宙業界4〜5年目

前職
NTTコミュニケーションズ

小林 秀和さん
株式会社アークエッジ・スペース

現在の仕事
ソフトウェアエンジニア。衛星を宇宙で動かし、データを地上に下ろすシステム全体の設計を担う

前職
クックパッド

山田 由貴さん
Star Signal Solutions株式会社

現在の仕事
プロジェクトマネージャー。宇宙交通管制の基盤を作るプロジェクトを担当

前職
通信・電力インフラ業界の建設系PM

この3名は、いずれも宇宙業界の外でキャリアを積み、ここ数年で宇宙ビジネス企業へ転職した方々です。
「宇宙に詳しくなくても飛び込めたのか」「前職のスキルはどう活きるのか」「宇宙業界は結局、誰の役に立っているのか」という3つの問いに対し、3名が語った、宇宙業界への転職のリアルをお届けします。

登壇した3社はどんな会社?

本編に入る前に、パネリストの3人が働く企業の事業内容についてそれぞれ整理しましたので、ぜひご覧ください。

インフォステラ
衛星と通信するための地上局をサービスとして提供する会社です。ロケットや衛星を打ち上げた後、衛星を監視したり、衛星が取得したデータを地球に持ち帰ったりするうえで欠かせない存在です。冒頭の紹介で、井上さんは「地上局という領域を、ソフトウェアやAIの力でモダンなものにしてサービス提供している」と説明されていました。

アークエッジ・スペース
超小型衛星を中心に、衛星の開発から運用、そこから得られたデータを地上に下ろして現実の課題解決につなげるところまでを一気通貫で手がける会社です。小林さんは「一言で説明するのはすごく難しい」と前置きしつつ、自らはそのシステム全体を設計する立場にあると紹介しました。宇宙をこれから始めたい企業の相談に乗りつつ、多数の衛星を連携させるコンステレーションにも、探査機の開発にも取り組む、非常に幅広いミッションと事業に挑戦する企業です。

Star Signal Solutions
宇宙の交通管制のためのサービスを提供する会社です。軌道上には運用中の衛星だけでなく、過去に打ち上げられた衛星や、衝突などで生じた破片(スペースデブリ)が無数に存在します。同社は地上からそれらを観測・監視してデータベース化し、衛星運用者が安全に運用するための情報を提供するサービスを構築しています。

衛星同士がぶつかりそうになるとアラートが出て、衛星を少し動かす「マヌーバ」が必要になり、実際に衛星が回避をする回数は増え続けています。そのうえで、そもそもぶつかりそうだと分かるためには、どこにどんな衛星や宇宙ごみがあるかを把握しなければなりません。そのカタログを作ろうとしている会社の1社がStar Signal Solutionsです。

以上、今回登壇いただいた3名の会社を紹介しましたが、「宇宙」と聞いて多くの方がイメージするだろうロケット開発に携わる方々ではありません。

そして、宇宙産業は夢やロマンで語られることが多かったように思いますが、すでに国にとって必要なインフラになり始めています。

ちょうど2026年9月28日に開催された宇宙政策委員会では「宇宙はこれまで次世代の国家インフラと位置付けてまいりましたが、実態としては今や国民生活、産業、安全保障に欠くことのできないものとなっていることに加え、各国間競争やビジネスが急拡大しており、我が国としても早急かつ強力に整備すべき国家インフラと位置付け、大きく発展させていくことが重要と考えております。」という古川俊治内閣府特命担当大臣(宇宙政策ほか科学技術政策、人工知能戦略、海洋政策、サイバー安全保障など)の発言もありました。

本パネルディスカッションでも、そのインフラを築き、支えてくださる皆さんに、たまたまですが集まっていただいたのかなと思っています。

(1)なぜ宇宙業界へ? 詳しくなくても飛び込めた?

中村:小林さんはもともとクックパッドにいらっしゃって、前職時代の知り合いから声をかけられてアークエッジ・スペースに入られたんですよね。インタビューで印象的だったのが、面談のときに「解決できそうな課題がたくさん思い浮かんだ」という話でした。

小林:前職のクックパッドは完全にWebサービスの会社で、レシピサイトを運営しています。次の仕事をどうしようかと考えていたときに、アークエッジ・スペースの共同創業者であるクックパッド時代では後輩にあたる鈴本に誘ってもらいました。

話を聞いたら、宇宙業界って本当に何も解決されていないんだなと。こんなにめちゃくちゃな状況なら、私にもできることがあるだろう、というのが大きなモチベーションになりました。

また、単純に鈴本が困っていそうだったので、助けてあげたいという気持ちも半分くらいありました。

中村:直感で、宇宙業界のITやソフトウェアの状況は何年くらい遅れている印象でしたか?

小林:技術そのものというより、考え方が追いついていないんです。だから、その考え方を実践する人間として前に立とう、という意志で入りました。

中村:小林さんは8歳ごろからプログラミングをされていた方ですが、そうでなくても、IT業界で働いていた人が当時の宇宙業界を見たら「活躍できそうだ」と思えるくらいだったのでしょうか。

小林:問題はいくらでもある、という感じだと思います。そして、確かに大変なんですけど、すごく手をつけたくなるような、ワクワクする状況でした。

中村:井上さんが宇宙業界に入られたのはどのようなきっかけだったのでしょうか?

井上:端的に言うと、宙畑です。前職では、私のお客様が衛星通信の会社でした。それが5、6年前で、ちょうど「低軌道衛星」という言葉が出てきたころ。低軌道衛星って何?と調べると、宙畑が一番上に出てきたんです。

記事を読んでいくと、まず市場規模として伸びそうだ。次に、社会的な意義が非常にある。そして一番大事だったのが、純粋に面白そうだったこと。この3つが揃えば十分だろうと、正直それだけで転職しました。

中村:宙畑をご覧いただいてとのこと、ありがとうございます。特に仕込んではいないので、会場の皆さん、ご了承ください(笑)。社会的意義について、もう少し詳しく伺えますか。

井上:私の目線でいうと、やはり通信が大きかったです。私たちは携帯電話で当たり前のようにインターネットにつながりますが、世界人口で見ると、今も約3割の人が通信できない状況にあります。それを解決するだけで、非常に大きな社会的意義がある。

通信に限らず、測位衛星もあれば地球観測衛星もあり、それぞれが私たちの生活インフラに結びついています。

中村:井上さんは前職の社内新規事業コンペで最優秀賞を取られていますよね。そこから宇宙スタートアップに飛び込むのは、勇気がいったのではないですか。

井上:私は前職を3年で辞めているので、3年だと失うものは何もなかったんです。それ以上に、主体的に、具体的に動ける環境を選びました。ちなみに、前職とは今も一緒に仕事をしていて、非常に良い関係です。

中村:山田さんが宇宙業界に入られた背景も教えてください。

山田:私はPMとして、電気や通信などいろいろな業界に携わってきました。そのなかで自分のこれからを考えたときに、今の会社に出会いました。

面接の際に言われたのが、「ロマンとしての宇宙ではなく、インフラとして、我々はこの事業をやりたいんです」という言葉です。私自身、インフラに関わっていきたいという思いを当初から持っていたので、今の会社に入ることを決めました。

中村:宇宙をインフラとして捉えなければいけない時代になっていると思いますが、メディアとしてもどかしいのは、そう感じている方がまだそこまで多くないことです。

地図アプリもそうですし、私がよく話すのはケチャップの例です。ケチャップのトマトを育てるために地球観測衛星が使われていて、それが生産量の向上につながっている。もし宇宙が使えなくなれば、生産量が上がらず、ケチャップの単価が高くなる。

同じようにお米も果物も野菜も高くなり、インフレがどんどん膨らんでいくかもしれない。そういう話をもっと多くの方に届けたいと思っています。
衛星同士がぶつからないようにするというのは、まさに今後の未来を守る技術が持続的に使えるための本当に重要な役割だと思います。

(2)他業界のスキルはどう活きる/自分の強みの見つけ方

中村:続いて、他業界でのスキルは宇宙業界でも活きているのかについてお話を伺いたいと思います。井上さんからは、前職で身につけたビジネスマナーやプロジェクトマネジメントのスキルが非常に役立っていると伺いました。

中村:普段の井上さんの動きを拝見していて思いますが、入社後はさまざまな海外企業と、お酒も酌み交わしながらパートナーシップを結んでこられていますよね。

井上:お酒の話からしますと、日本のサラリーマンの「お酒パワー」はやはり偉大で、飲み比べで決めた案件が私には2つあります(笑)。

そのうえで、前職では営業・事業開発系の仕事をしていました。通信系なので、大きくとらえるとSIerのような仕事です。プロジェクトを提案して案件を組成し、1年、2年にわたるプロジェクトをマネジメントし、ステークホルダーを管理する。これは普遍的・汎用的なものなので、宇宙業界だからどうこうというものではないと思っています。

いわゆる「JTC(日本の伝統的な大企業)パワー」ではないですが、そこで培ったものは宇宙業界でも非常に活きています。むしろ宇宙業界のほうがステークホルダーは多い気がしますし、時間軸も長い。海外との仕事も多く、言語や国籍の多様性もあります。

基本的なことを前の会社で身につけていたからこそ、それが非常に活かされている。前職の上司の方々に教えていただいたことに感謝しながら働いています。

中村:小林さんはいかがですか?

小林:使っている技術や扱っていた領域は全く違うので、前職の経験が役に立たないことはないですが、直接役に立つことは多くありません。

一方で、表面が変わったからこそ、自分の経験がもう一段抽象化されて分解され、考え方や問題解決の方法論にまで落とし込まれました。

その結果、エンジニアとしての根本的な解決能力が、違う分野に取り組んだことで一段階一般化されて強くなった、という感覚が非常にあります。「自分はこの考え方で、この分野にも向き合えるんだ」という発見があったんです。

それまでは「経験」だったものが、違うところに取り組んだら「スキル」に変わった、というイメージですね。

中村:山田さんは入社されて約3か月ということでまだ宇宙業界の全体像把握の中かもしれませんが、いかがでしょうか?

山田:弊社はJAXA発スタートアップで、創業者はJAXA出身です。アイデアはあって、それはすごく素晴らしい。そして、そのアイデアを実現するためのパワーがもっと欲しい。そこに、私を含めたメンバーがついている、という構図です。

だからこそ、本当に宇宙業界ではないさまざまな知見・スキルを持っている人こそが欲しい、という状況だと思います。

中村:小林さんのインタビューでもう一つ印象的だったのが、採用面談で「衛星を作っている会社です」「宇宙の会社です」という話はあまりせず、「あなたの持っているスキルで宇宙業界をアップデートしてほしい」という言い方をされているという話でした。すごく刺激をいただきました。

宇宙業界というと、夢やロマン、ロケット開発のような最先端のイメージを持たれている方が非常に多いと思います。でもビジネスとしては、これからビジネスになっていく分野です。さまざまな知識や経験を持った他業界の方々に来ていただいて、それをアップデートしてほしい。宇宙業界に「おいでよ」ではなく、むしろ「来てほしい」と求めているのが、宇宙業界の現状だと私は思っています。

(3)各社がいま求める人材も三社三様

せっかくの機会ということで、具体的に「どういう業界の、どういう知識を持っている人が特に欲しいか」についても3名に回答いただきました。その内容をまとめると、次のとおりです。

会社 特に欲しい人材
インフォステラ 数字を作れるセールス、無線・電波が分かる人、多国籍な環境を楽しめる人事・制度づくりの人材
アークエッジ・スペース 職種を問わず、「原理まで立ち返って、その話が本当か確かめられる」人
Star Signal Solutions 法務・契約管理・調達などのコーポレート人材、事業開発、エンジニア

井上:インフォステラの場合は、まずは売上を作るセールスです。これはどの領域にいた人かは関係ありません。「我こそは」という気持ちで来てもらえれば、それ以上に特別なことはないと思います。もちろん衛星の軌道や電波の話はありますが、それは転職すれば必ずついてくる話です。まずは数字を作れる人です。

その一方で、すごくスペシフィックなのが無線・電波が分かる人も非常に求めています。宇宙業界に限らず、実は無線が分かる人ってそんなにいないんです。
また、弊社は社員の6、7割が外国籍です。そういった環境を楽しめる人や、人事系で制度を作れる人も募集しています。

小林:アークエッジ・スペースはどのポジションも欲しいという状況ですが、私がエンジニアなのでエンジニアの目線で答えると、一番は、原理まで立ち返って、その話が本当か確かめられる能力のある人です。

なぜかというと、まだまだ宇宙業界は、宇宙開発をやったことがある人が少なく、試行回数も少ない業界です。そのため、一回うまくいっただけで、それが正しいと思い込んでいる人がすごく多いように感じています。「それ、本当にどうなの?」と突っ込んでいける人間が本当に重要。そうでなければ、それは技術じゃなくて、ただの呪術になってしまいます。

これはエンジニアだけでなく、PMも事業系も同じだと考えています。

井上:小林さんのお話に乗っかると、まさに、原理に立ち返れる人が大事なのはビジネスでも共通です。

宇宙業界には70年ほどの歴史がありますが、「なぜかあの企業とは働けない」「あの企業の仕事は取れない」といった話の理由が、なんとなくそうだったから、ということを耳にします。

ただ、事実関係を整理して立ち返ってみると、そんな話はなかった、ということもあります。ビジネス系でも、これまでの常識を疑い、解決できる人は非常に大切だと思います。

中村:これは宇宙業界に限らない話でもありますね。そのような経験がある方は、きっと宇宙業界で活躍できますし、ヒーローになれる方々だと思います。

山田:弊社として欲しい人材は、まず会社を構成するためのコーポレートの人です。人数が増えているなかで、法務や契約管理、調達などが足りていません。

もちろんエンジニアも募集していますが、データや機器を扱うエンジニア以外にも、事業開発を含めて仕事は本当にたくさんあります。「技術的なことは分からないから」にとらわれずに、ぜひ声をかけていただけたらありがたいです。

これから宇宙業界が産業として拡大していくなかで、「なんでこれ、こうなっているの?」というところはそこかしこにあります。そこで声を上げて、今から会社の形や文化をつくっていくくらいの気持ちで働くのが正しいのかなと思います。

中村:本当にさまざまな方が宇宙業界で求められているというお三方のお話でしたね。
ちなみに、山田さんの転職のきっかけになったのは、元リクルートキャリア上席執行役員の浅野和之さんが立ち上げた宇宙業界特化の人材エージェントでした。浅野さんに教えていただいたのが、宇宙スタートアップは人数規模によって必要な人材が変わる、という話です。

50名くらいが一つの段階で、そこを超えるとまた必要な人材が変わってくる。その会社に今何名くらいいて、どういうキャリアの方がいるのかを想像しながら転職活動をすると、進めやすくなると思います。

(4)テーマ③宇宙業界は「誰の役に立つ」のか

中村:続いて、宇宙業界は「誰の役に立っているのか」という最後のテーマに移ります。山田さんのインタビューで「そういう考え方があるのか」と思ったのが、「環境」の定義の話でした。これまでは地球温暖化のように、地球の大気のあたりまでが「環境」というイメージでした。でも今は、宇宙も環境に含まれる時代になっている。これは、いつごろそう思われたんですか。

山田:入社前後だったと思います。私は釣りが趣味で、船に乗って海を走っていくんです。水平線があって、空が見えている。そのとき、目には見えないけれど、GPSのような測位衛星だったり通信衛星だったり、その先にある見えない衛星とのあいだで、いっぱいやりとりが重ねられているわけですよね。

そう考えると、人間が今の社会を構成している部分って、目に見えている青い空までじゃなくて、その先の見えない軌道上まで広がっているんです。

中村:今は至るところで宇宙とつながっていて、ただ衛星が見えないだけ、という状況になっているのかもしれませんね。

小林:今役に立っているのか、これから役に立つのかという話もあるかもしれませんが、人類はまだ地球を十分に活用しきれていないと思うんです。東京にいるとあまり気がつきませんが、まだまだ住みづらい地域が世界にはたくさんあります。

なぜ住みづらいかというと、インフラが足りていません。人はそこに住みたいけれど、整備が追いついていない。宇宙からそのインフラを作っていくという意味で、これから特に役に立たなければならないのはそこだと思います。地球にはまだ残された場所があって、それは地上の皆さんがあまり想像していないような土地だったりする。そういったところを活用していきたいです。

井上:非常にミクロな話になりますが、2、3年前に、ソニーがやっていた小型衛星のプロジェクトがありました。一般の人が宇宙から地球を撮る地球観測衛星のシャッターを切れる、というコンセプトの衛星です。その通信を支える地上局の支援を、私たちがやっていました。

その2年後くらいに、たまたまそのプロジェクトのキーホルダーをつけている、純粋なカメラ好きの方に出会ったんです。「めちゃくちゃシャッターを切りました」と言われて、「実は裏で通信をやっていたんですよ」と伝えたら、すごく感謝されたんです。

個人対個人のミクロな話ですが、役に立っているんだと、すごく嬉しかったです。社会全体のような大きい領域もありますが、個人レベルでもいろいろなところで役に立っているんです。

中村:エンドユーザーの方と会う機会ってなかなかないですよね。『君たちはどう生きるか』という本がありましたが、宇宙業界も本当にいろいろな方が関わっています。

通信の方もいれば、衛星を作る方もいる。宇宙の安全を守る方もいれば、ロケットを打ち上げる方もいる。ぜひ宇宙産業の全体像をまず見ていただきながら、どういう転職をしようか選んでいただけると面白いのかなと思います。

宙畑では毎年年末にゆく年くる年という記事企画を実施し、昨年は100社以上の宇宙ビジネス企業に事業内容のご紹介をいただきました。ぜひこちらも合わせてご覧ください。

(5)今、宇宙業界に飛び込む意味とは

セッションの最後に、3名に「今、宇宙業界に飛び込む意味」を一言ずつ尋ねました。

井上:今飛び込む意味は、やはり皆さんが今日ここに来られていることだと思います。もう来られているので、ぜひ飛び込んでください。もちろん伸びる会社と伸びない会社はありますが、市場全体は伸びています。

小林:興味があるなら、それだけで十分な理由だと思います。興味がある方は、ぜひ来てください。

山田:転職という観点では、どの会社に入ろうかは各人悩む余地があると思います。

でも、宇宙業界に入るかどうかは、悩まなくていいんじゃないかなというくらい宇宙業界は進んでいます。どう進むかは見通せなくても、進んでいくことは間違いない。今からこの業界に入って経験を積むのは、とても意味があることだと思います。

中村:井上さん、小林さん、山田さん、ありがとうございました。最後に私からもお話させてください。本当は生成AI×宇宙業界のお話もしたかったなと思っていました。

今、生成AIが出てきたことで、エンジニアの方々が生成AIを使って、夜な夜なAIエージェントが衛星開発をしている時代になっています。人によってはパソコンを2台持って生成AIを動かしていて、控室でもちらっと話していましたが、小林さんのパソコンも今、稼働中だそうです。

一方で、生成AIが出てきたことで、いろいろな仕事のやる意義を見出しづらくなっている状況でもあると思います。そんななかで、宇宙業界に関わる方が口をそろえるのは、自分の仕事が何の役に立つのかが見えやすい、ということです。

若手を育てるとき、「何のスキルを伸ばした方がいいですか」と聞かれても、生成AIの時代に答えられなくなってきたという方も多いのではないでしょうか。そうなると、「何をやりたいか」をちゃんと持つことしかない。宇宙業界は、何をやりたいかを持ちやすい業界だと思っています。

さまざまな企業が、さまざまなミッションを持っています。「こういうことをやりたい」「こういう人の役に立ちたい」という自分の思いに合うところを見つけて、カルチャーも見ながら、転職先を選んでいただけたらと思います。

最後に、宙畑では、非宇宙業界から宇宙業界に転職した方々に「なぜあなたは宇宙業界へ?」「なぜ宇宙業界はこうなってる?」と問いかける連載「Why Space」を掲載しています。

起業家、役員、ハードウェア/ソフトウェアエンジニア、事業開発・PM、通訳まで、これまでに14名のインタビューを掲載しています。宇宙業界への転職を考えている方は、ぜひあわせてご覧ください。

(6)パネルディスカッションで言い残したこと

今回、パネリストの皆様とは、パネルディスカッション後に軽くご飯をご一緒しました。ご飯の場ではぽろぽろとさらに面白い、興味深いお話が出てきたので、言い残したことをぜひ追記してくださいと依頼してみました。

最後に、皆さんが言い残されたことをいただきましたので、ぜひこちらもご覧ください。

小林さん
電信以前の時代には、腕木通信という仕組みがあったことをご存じでしょうか。塔の上に棒を立て、その向きや角度を望遠鏡で人が読み取ることで情報を伝えるという通信方式です。フランスでは大規模な通信網が構築されたものの、電信の発明により急速に廃れてしまいました。

今、日本、とくに東京などのインフラの整った都市圏に住んでいると、宇宙開発は「余計なこと」のように思えるでしょう。しかし、いかなるインフラも完成形ではなく、技術革新によって常に移り変わります。腕木通信で満足せず、電信を普及させたいという情熱を持つ方はぜひ宇宙業界に飛び込んでみてください。

井上さん
宇宙開発というと、最先端技術に目が向きがちですが、個人的には宇宙技術がいかに既存の社会インフラに溶け込み、当たり前のものになっていくかが重要だと考えています。

かつてインターネットや携帯電話が普及する以前には、現在のように誰もが世界中の情報にアクセスできる社会を想像することは難しかったと思います。一方で、今ではそれらが利用できない生活を想像する方が難しいでしょう。

宇宙開発も同様に、将来的には宇宙を利用していることすら意識しない社会になるのではないでしょうか。宇宙業界の面白さは、単に新しい技術を生み出すことだけでなく、それを社会に実装し、次の時代の当たり前をつくっていけることにあると思います。

宇宙そのものに興味がなくても、新しい社会インフラをつくりたいという方には、ぜひ宇宙業界に興味を持っていただきたいです。

山田さん
通信技術が普及して、AIが普及して、宇宙も個人の意思にかかわらず、同じように一般的なものになっていくのだろうと思います。私自身新しい物好きではないのにこれに関わろうと思った理由について、取材をきっかけにあらためて考えた結果、ちょっと大仰に響きますが、世代としての責任のようなものなのかもしれないと思い至りました。参加し、手を動かし、近くで見届ける。働く動機としては強いのではないかと。いかがでしょうか。

進むべき道として共感できる考えに出会えたら、それを実現するために必要となるのは結局人や物を動かす技術で、これまで他の産業でさんざん揉まれてきたものをまずは適応するのが近道だとすると、異業種の経験を携えて参加することでチームの前進を支える一員になれる。チーム戦ですから。なんだか少年漫画みたいですね。

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