宙畑 Sorabatake

衛星

【2026年9月】衛星データ利活用に関する論文とニュースをピックアップ!

2026年9月に公開された衛星データの利活用に関する論文の中でも宙畑編集部が気になったものをピックアップしました。

2026年9月に公開された衛星データの利活用に関する論文の中でも宙畑編集部が気になったものをピックアップしました。

・Advancing conflict research and response through satellite-derived data
(紛争研究で主流の報道ベースの死者数データと、衛星画像から得た戦争被害データを改善 / 拡充 / 融合の3段階で統合する方法を提案、ウクライナとミャンマーの事例にて死者数だけでは1週間で収まったように見える暴力が実際には半年以上続いていたことなどを示した)

・The changing surface of the world’s roads
(PlanetScope衛星画像とディープラーニングを用いて、世界の幹線道路約920万kmのうち95.5%について、舗装/未舗装と道路幅を2020年と2024年の2時点で判定することで、道路の位置表示に留まっいた地図に道路の機能状況を書き加える手法を提案する)

・Building a dataset of offshore oil and gas extraction platforms from satellite data (2017–2023)
(衛星で見つかったメタンの噴出源を特定するには海上の石油/ガスプラットフォームの正確な台帳が欠かせなかった中で、Sentinel-1のレーダー画像の時系列から正解ラベルなしで検出する手法を開発、世界の主要な6つの産油海域に適用し、2017年から2023年の計5,358基の位置、設置と撤去の時期、ガスフレア(余剰ガスの焼却)の有無を公開データセットとしてまとめた)

宙畑の連載「#MonthlySatDataNews」では、前月に公開された衛星データの利活用に関する論文やニュースをピックアップして紹介します。

実は、本記事を制作するために、これは!と思った論文やニュースをX(旧Twitter)上で「#MonthlySatDataNews」「#衛星論文」をつけて備忘録として宙畑編集部メンバーが投稿していました。宙畑読者のみなさまも是非ご参加いただけますと幸いです。

それではさっそく2026年9月の論文を紹介します。

Advancing conflict research and response through satellite-derived data

【どういう論文?】
・本論文は、紛争研究で主流の報道ベースの死者数データと、衛星画像から得た戦争被害データを改善 / 拡充 / 融合の3段階で統合する方法を提案し、ウクライナとミャンマーの事例にて、死者数だけでは1週間で収まったように見える暴力が実際には半年以上続いていたこと等を示した

【技術や方法のポイントはどこ?】
◾️先行研究の課題
①テキストベースデータの限界
・UCDP GEDやACLEDに代表される紛争イベントデータは、報道記事を人手で読み解き、事件の場所、日時、関与主体、死者数を記録することで作られている
・ただし、報道は注目度に依存して生まれるため、メディアの存在しない地域や時期、そして住居や農地の破壊、住民の避難といった死者を伴わない暴力は記録から漏れてしまう

②衛星データの限界
・学習と検証に使う参照データが少数の紛争に偏る
・農村部では建物が小さく植生に囲まれて検出が都市に偏る

◾️本研究のアプローチ
①改善(一方のデータが捉えている暴力に、他方から欠けている属性を補う)
・空間的精度の改善では、殺害と住居破壊が同一の作戦で共起するという条件のもと、報道された死者を衛星が検出した破壊区画に帰属させることで、集落単位でしか分からなかった死者の位置を集落内の地区単位に引き上げる
・具体的には、まず英サウサンプトン大学などが公開する人口分布データWorldPop(国勢調査と衛星画像から約100m四方ごとの人口を推定したもの)を用いて、暴力が起きる前の2016年時点で人が住んでいた区画を抽出し、次にUNOSAT(紛争や災害の被害を衛星画像から判読し、人道支援機関に提供する国連組織)が作成した破壊区画と重ね合わせることで、各区画を被害ありと被害なしに分類する
・州レベルでしか記録されていない事件については、NASAなどの地球観測衛星に搭載されたセンサーVIIRS(375m解像度で地表の熱を捉え、火災を毎日検出できる)の熱異常データを集落から500m以内に限定して野焼きや森林火災と区別し、さらに欧州の光学衛星Sentinel-2(10m解像度)やGoogle Earthの高解像度画像で焼け跡を目視確認したうえで、村の焼き討ちが起きた地域を絞り込む
・文脈の改善では、(夜間や雲越しでも撮影可能な)Sentinel-1の画像から自動検出された月次の建物被害に、報道記事やウクライナの戦況地図サービスDeepStateMapなどから両軍の支配地域を日ごとに記録したデータセットVIINAを結合し、支配が移った月を基準とする前後2か月の窓で、ロシア側の獲得とウクライナ側の奪還に伴う被害を比較する

②拡充(単一データでは捉えきれない暴力の全体を、共通の時空間単位で並べて読む)
・民族浄化のように殺害、破壊、避難が連鎖する暴力は、いずれか一方のデータでは一部しか見えない
・拡充は両データを分析上独立させたまま、集落と月のような共通の単位で結び付け、暴力の形態間の時間的、空間的な関係を可視化する

③融合(画像と文章を同一モデルで学習し、どちらにも直接現れない現象を推定する)
・改善と拡充がデータの出力を組み合わせるのに対し、衛星画像と報道文という生の情報源を視覚言語基盤モデル(VLFM)で表現し、民族を標的とした暴力のような潜在的な現象を推定する

Sticher, V., Bara, C., Kotajoki, J. et al. Advancing conflict research and response through satellite-derived data. Nature 657, 891–899 (2026).
https://doi.org/10.1038/s41586-026-11004-6

◾️検証対象
①ウクライナ
・報道も衛星データも豊富な紛争であり、2022年3月から2023年10月までの建物被害がSentinel-1の画像から月ごとに自動検出されていて、国内約2,670万棟の建物のうち246,777棟が被害を受けたと判定されている
・さらにウクライナでは、どちらの軍がどの地域を支配していたかが日ごとに記録されているため、被害と支配の変化を細かく突き合わせることができる

②ミャンマー
・報道がほとんど届かない紛争であり、使えるのはUNOSATの専門家が衛星画像を目で見て判読した被害データと、数少ない報道から作られた死者データに限られる
・そのためミャンマーでは、乏しい報道を衛星データが補う形となり、分析の多くを衛星データに頼ることになる

【議論の内容・結果は?】
◾️ミャンマー
①同じ村の中で、ロヒンギャの家だけが壊されていた
・2017年のロヒンギャ迫害では、報道に基づく記録54件のうち42件(78%)が8月25日から9月9日までのわずか2週間に集中していたが、その多くは村の名前までしか分からず、ピーク期の死者の13%に至ってはラカイン州のどこかとしか記録されていなかった
・数百人が殺害されたチュッピン村で衛星の破壊データを重ねると、壊されていたのは村の一部だけで、ロヒンギャの住む地区が破壊される一方、同じ村に住むラカイン族の地区は無傷のまま残っていた
・上記偏りは、村単位の死者数をいくら眺めても分からず、殺害が民族を選んで行われた可能性を衛星データが初めて浮かび上がらせたことを意味する
・州のどこかとしか分からなかった死者281人分の事件についても、同じ時期に衛星が捉えた村の火災は、すでに被害が確認されていた3つの郡区だけに集中しており、これらの事件も同じ地域で起きたと推定できた

②死者の記録が止まった後も、半年以上破壊が続いていた
・最も被害の大きかったマウンドーとブティダウンの2つの郡区では、記録された死者がすべて作戦開始からの1週間に集中しており、死者数だけを見れば暴力は1週間で終わったことになる
・ところが衛星データを並べると、集落の破壊はその後も少なくとも6か月にわたって続いており、焼け跡の村がブルドーザーで整地され、木々が切り払われ、治安部隊の拠点や別の民族のための村が建てられていた
・逃げた住民が二度と戻れないよう土地そのものが作り替えられていたことになり、死者数では1週間の出来事に見えた暴力が、実際には数か月がかりで民族を追い出す過程だったと捉え直された

Sticher, V., Bara, C., Kotajoki, J. et al. Advancing conflict research and response through satellite-derived data. Nature 657, 891–899 (2026).
https://doi.org/10.1038/s41586-026-11004-6

◾️ウクライナ
①ロシア軍が獲得した集落は、ウクライナ軍が奪還した集落より多く壊されていた
・本論文では、2022年5月から2023年10月にかけて支配者が入れ替わった集落を抽出し、ロシア軍が獲得した集落とウクライナ軍が奪還した集落にてその前後の建物被害を比較した
・支配が入れ替わったその月に新たな建物被害が出た集落は、ロシア軍の獲得した地域(
95カ所)では7割にのぼったのに対し、ウクライナ軍の奪還した地域(148カ所)では4割強にとどまり、この差は偶然では説明できない水準であった(P < 0.001)
・被害が出た集落だけで比べても、壊された建物の数はロシア軍が獲得した地域の方がウクライナ軍により奪還された地域に比べて2倍近く多く、この差は支配が入れ替わる2か月前から1か月後まで続き、2か月後には同程度に戻った

Sticher, V., Bara, C., Kotajoki, J. et al. Advancing conflict research and response through satellite-derived data. Nature 657, 891–899 (2026).
https://doi.org/10.1038/s41586-026-11004-6

②建物の壊され方は似ていても、命の失われ方は大きく異なる
・ロシア軍の激しい砲撃を受けたマリウポリとセベロドネツクという2つの都市を取り上げ、死者データと衛星の建物被害データを都市ごとに並べて比べた
・以下の図は、a, bで死者数を戦前の人口に対する割合として、c, dで壊された建物の数を街の全建物に対する割合として、それぞれ2022年からの積み上がりを示しており、人口や建物数の異なる2つの都市を同じ物差しで比べられるようにしている
・建物被害のグラフ(c, d)を見ると、両市とも壊滅的な被害を受けており、衛星データだけを見れば2つの都市は同じような惨禍に見舞われたように見える
・ところが死者のグラフ(a, b)を見ると、マリウポリでは侵攻開始から1週間ほどで街がほぼ包囲されて住民が逃げ場を失ったため、侵攻直後から死者の割合が急速に積み上がったのに対し、セベロドネツクでは死者の割合がはるかに低い水準にとどまっている
・この差を生んだのは攻撃の時期であり、セベロドネツクではロシア軍の地上攻撃が2022年5月下旬に始まったため避難する時間があり、戦闘が最も激しくなった時点で街に残っていた住民は戦前の10〜15%にまで減っていた
・つまり、衛星データだけでは2つの都市で失われた命の数の違いが見えず、死者データだけではセベロドネツクに残った少数の住民が耐えた大規模な破壊が見えないのであり、両方を並べて初めて2つの都市の経験の違いが分かる

Sticher, V., Bara, C., Kotajoki, J. et al. Advancing conflict research and response through satellite-derived data. Nature 657, 891–899 (2026).
https://doi.org/10.1038/s41586-026-11004-6

#衛星由来データ #紛争研究 #戦争被害 #Sentinel-1 #SAR #変化検出 #VIIRS #UNOSAT #UCDP #視覚言語基盤モデル #データ統合 #ウクライナ #ミャンマー #ロヒンギャ

The changing surface of the world’s roads

【どういう論文?】
・本論文は、PlanetScope衛星画像とディープラーニングを用いて、世界の幹線道路約920万kmのうち95.5%について舗装/未舗装と道路幅を2020年と2024年の2時点で判定し、道路の位置にのみ留まっていた地図に道路の機能状況を書き加える手法を提案する

【技術や方法のポイントはどこ?】
◾️先行研究の課題
①AIが整備したのは道路の形状のみであった
・MetaやMicrosoftによる大規模なAIデータセットは道路網の形状を世界規模で整備したが、路面の種類のように道路が実際に機能するかを決める属性は含んでいなかった
・OpenStreetMap(OSM)でも、路面の情報が付いているのは世界の道路網の30〜40%にすぎず、一度未舗装と記録された道路が舗装されても更新されないことが多い

②既存の代替手段では全球を一貫して捉えられなかった
・著者らの先行研究では、一般の人が投稿する路上写真サービスMapillaryから路面を判定したが、写真が撮られている場所が限られるため、世界の路面情報の充足率を33%から36%に押し上げるにとどまった

◾️本研究のアプローチ
・道路の位置はOSMで既に分かっているため、本論文ではその位置に沿って衛星画像を切り出し、路面の種類と道路幅という中身だけをAIで読み取るという方針を取った

①世界1,390万地点の衛星画像から路面を判定する
・解像度3〜4mのPlanetScope画像を、高速道路から二次幹線道路までの幹線道路上の約1,390万地点から収集した
・判定には、画像の各ピクセルを舗装、未舗装、背景に塗り分けるセマンティックセグメンテーションモデルMask2Formerを用い、さまざまな地域に対して人手によってラベルを付けた画像で追加学習させた
・特にグローバルサウスでの精度を重視し、見分けにくいピクセルを重点的に学習させる手法などで、地域が変わっても精度が落ちにくいモデルに仕上げた
・同じ処理を2020年と2024年の画像に適用することで、4年間でどの道路が新たに舗装されたかまで追跡できるようにした

②路面と道路幅を組み合わせ、災害時の通行しやすさを点数化する
・塗り分けた道路の幅から道路幅を推定し、狭く危険な道路、詰まりやすいボトルネック、主要な補給路の3段階に分類した
・この道路幅と路面の種類を掛け合わせて人道的通行可能性スコアを作り、洪水などの際に物資を運べる道と、通行が滞りやすい箇所を地図上で示せるようにした
・ただし3〜4mの解像度では幅の細かな違いまでは測れないため、道路幅をあくまで一次推定と位置付けている

③道路データを開発と脆弱性の物差しに変える2つの指標
・1つ目は正規化変化率で、2020年から2024年の舗装率の伸びを、2020年時点で残っていた未舗装の割合で割ることにより、もともと舗装率の高い国と低い国の伸びを相対的に比べられるようにした
・2つ目は到達不能率で、未舗装道路をすべて取り除いて舗装道路だけを残したと仮定したとき、主要都市同士の組み合わせのうち何割が道でつながらなくなるかを計算し、その国の道路網がどれだけ未舗装道路に依存しているかを測る

※Randhawa, S., Randhawa, G., Langer, C. et al. The changing surface of the world’s roads. Nat Commun 17, 9345 (2026).
https://doi.org/10.1038/s41467-026-76234-8

◾️検証データ
・精度の評価には、サブメートル級の高解像度画像を人が目で見て判定した2,628区間の道路を用い、低所得地域も含むよう世界各地から抽出した
・OSMの未舗装タグの古さを確かめるため、未舗装と記録された約9万本の道路から3万地点を抜き出して検証した

【議論の内容・結果は?】
◾️概要
・人が判定した正解データと照らし合わせると、衛星AIの正解率は89.2%で、OSMの路面タグの64.7%を24.5ポイント上回り、この差はアフリカ、アジア、南米のすべての地域と道路の種類で一貫していた

※Randhawa, S., Randhawa, G., Langer, C. et al. The changing surface of the world’s roads. Nat Commun 17, 9345 (2026).
https://doi.org/10.1038/s41467-026-76234-8

・とりわけOSMで未舗装と記録された道路は、実際に未舗装だったのが世界平均で26%にすぎず、残りの多くは既に舗装されていたのに記録が古いままだったことが分かった
・この差を生んだ主な原因は、急速に進む道路整備に対して、地図を作るボランティアが路面の変化にまで目を配れていないことにあると本論文では推測している
・結果として、対象とした幹線道路の47.8%に当たる、これまで路面情報がまったくなかった区間を埋めることができた

◾️世界の舗装格差の原因
・地域別の舗装率は、欧州と中央アジアで97.4%、北米で96.9%とほぼすべてが舗装されているのに対し、サブサハラ・アフリカは63.1%にとどまった
・都市部の道路はどの地域でも93%以上が舗装されている一方、農村部ではサブサハラ・アフリカの61.4%に対し欧州と中央アジアは97.2%と大きな開きがあり、格差の大部分は農村の道路で生じていた
・国別では中央アフリカ共和国が9.3%、コンゴ民主共和国が19.0%、南スーダンが25.3%と最も低い水準だったが、これらの国では深い森や狭い道幅のために路面を判定できない区間が多く、舗装率は判定できた道路だけから計算されているため、実態とずれている可能性がある

※Randhawa, S., Randhawa, G., Langer, C. et al. The changing surface of the world’s roads. Nat Commun 17, 9345 (2026).
https://doi.org/10.1038/s41467-026-76234-8

・2020年から2024年にかけては世界全体で舗装率が上昇し、特に南米、アフリカ、南アジア、東南アジアの低所得から低中所得の地域で大きく伸びていた

※Randhawa, S., Randhawa, G., Langer, C. et al. The changing surface of the world’s roads. Nat Commun 17, 9345 (2026).
https://doi.org/10.1038/s41467-026-76234-8

◾️発展指標としての道路舗装率と夜間光
・2024年の舗装率と人間開発指数(HDI)の相関係数は、道路網全体でr = 0.73、農村部でr = 0.74と強く、都市部ではr = 0.54にとどまった(いずれもp < 0.001)
・都市部の道路は発展段階にかかわらずほぼ舗装済みのため差が出にくいが、農村部の道路は発展とともに舗装率が上がっていくため、国の発展段階をより敏感に映し出す

※Randhawa, S., Randhawa, G., Langer, C. et al. The changing surface of the world’s roads. Nat Commun 17, 9345 (2026).
https://doi.org/10.1038/s41467-026-76234-8

◾️道路舗装状況と道路行政の縦割りの関係性
・ガーナの首都アクラでは、衛星AIの結果とMapillaryの路上写真による判定を組み合わせることで、RedcoやMacarthy Hillといった未舗装道路が密集する地区を特定でき、近隣の中心部との整備格差が浮かび上がった
・同じアクラでも、民間開発の住宅地Sakumono Estateは内部の道路がすべて舗装された飛び地となっており、資産価値を高めたい民間事業者と公共の道路整備主体とで動機が異なることを示していた

※Randhawa, S., Randhawa, G., Langer, C. et al. The changing surface of the world’s roads. Nat Commun 17, 9345 (2026).
https://doi.org/10.1038/s41467-026-76234-8

・全国では、幹線道路の84.6%が舗装されているのに対し、都市道路は44.9%、生活道路や支線に当たるフィーダー道路はわずか5%であり、この序列は幹線道路公社、都市道路局、フィーダー道路局の3機関に分かれた管理体制と対応していた

※Randhawa, S., Randhawa, G., Langer, C. et al. The changing surface of the world’s roads. Nat Commun 17, 9345 (2026).
https://doi.org/10.1038/s41467-026-76234-8

#PlanetScope #Mask2Former #セマンティックセグメンテーション #道路路面分類 #舗装率 #OpenStreetMap #Mapillary #人間開発指数 #SHDI #夜間光 #ネットワーク解析 #人道的通行可能性 #ガーナ #パキスタン洪水 #SDGs

Building a dataset of offshore oil and gas extraction platforms from satellite data (2017–2023)

【どういう論文?】
・本論文は、衛星で見つかったメタンの噴出源を特定するには海上の石油・ガスプラットフォームの正確な台帳が欠かせなかった中で、Sentinel-1のレーダー画像の時系列から正解ラベルなしで検出する手法を開発した上で世界の主要な6つの産油海域に適用し、2017年から2023年の計5,358基の位置、設置と撤去の時期、ガスフレア(余剰ガスの焼却)の有無を公開データセットにまとめた

【技術や方法のポイントはどこ?】
◾️先行研究の課題
①既存の台帳は、報告のみに頼るため古く、情報が偏っている
・世界の石油やガス施設を統合したOGIM(Oil and Gas Infrastructure Mapping)や米国安全環境執行局のBSEEといった既存の台帳は、政府や企業の報告をもとに作られているため、更新が遅れ、撤去された施設が記録に残り続けるという問題を抱えている
・加えて、記録が充実しているのは米国のメキシコ湾北部に限られ、それ以外の海域では公開された網羅的なデータがほとんどなかった

②光学衛星や熱赤外は、雲と天候に左右される
・可視光や熱赤外のセンサーでも、金属構造物の強い反射やフレアの高温をもとにプラットフォームを検出できるが、雲や雨があると観測できないため、何年にもわたって一貫した監視を続けることが難しい

③レーダーの既存手法は誤検出が多く、ディープラーニングは他の海域に持ち出せない
・雲を透過するSAR(合成開口レーダー、電波を当てて跳ね返りを測る観測方式)は金属構造物を強く映し出すが、Sentinel-1を用いた既存の手法は、荒れた海面や行き交う船を誤ってプラットフォームと判定しやすかった
・教師あり機械学習やディープラーニングは、正解ラベルが十分にある海域では高い精度を出せるものの、大量のラベル付けが必要なうえ、学習に含まれない海域では精度が落ちやすく、複数海域にまたがる長期の台帳づくりには向かなかった

◾️本研究のアプローチ
①レーダーの偏波を使い分けて、狙うものだけを浮かび上がらせる
・プラットフォームの検出には、送信した電波と直交する向きで受信するVH偏波を用いており、クレーンや配管、ヘリポートが入り組んだ複雑な金属構造物は電波を何度も反射させて向きを変えるため、この偏波で特に強く映る
・一方、北海などでプラットフォームと紛らわしい洋上風力発電の風車は、滑らかな円柱状の塔のため送信と同じ向きで受信するVV偏波で強く安定して映ることを利用し、VV偏波で風車を別に検出して取り除いた

②月平均画像と海域ごとに変わるしきい値で、候補を漏れなく拾う
・まず各月のレーダー画像を平均し、その月の海域全体で明るさが上位10%に入るピクセルをプラットフォームの候補とした
・海面の明るさは海域や季節によって大きく変わるため、固定の値で区切るのではなく、毎月の画像の明るさの分布に合わせてしきい値を自動的に変える方式を採り、85、90、95パーセンタイルを比較した感度実験から、見落としと雑音のバランスが最も良い90パーセンタイルを選んだ

③一年のうち何か月現れたかで、船とプラットフォームを見分ける
・候補の中には船や海面のぎらつきも含まれるため、一年分の月平均画像のうち同じ場所が何か月候補になったかを数える出現頻度(OF)を計算し、何か月も同じ場所に現れ続けるものだけをプラットフォームとして残した

④設置と撤去の時期、ガスフレアの有無を属性として付け加える
・プラットフォームが建設されるとその場所のレーダーの反射が急に強くなるため、Mann–Kendall検定(時系列データに有意な上昇や下降の傾向があるかを調べる統計手法)で反射の急変点を探し、設置と撤去のおおよその時期を月単位で推定した
・稼働状況の手がかりとして、Sentinel-2の短波赤外のバンドで捉えた高温の異常からガスフレアを検出し、各プラットフォームにフレアの有無を判断した

※Si, L., Zhou, S., Irakulis-Loitxate, I., Roger, J., and Guanter, L.: Building a dataset of offshore oil and gas extraction platforms from satellite data (2017–2023), Earth Syst. Sci. Data, 18, 6545–6564,
https://doi.org/10.5194/essd-18-6545-2026, 2026.

◾️検証データ
・精度の評価には、2023年を対象に6海域で計5,622地点の検証サンプルを用意し、メキシコ湾北部の米国連邦水域ではBSEEと米国海洋大気庁(NOAA)の台帳、その他の海域ではOGIMや北海の洋上構造物データベース、Sentinel-2画像、Google Earthの高解像度画像による目視判読を組み合わせた
・稼働中かどうかの確認には、NASAの火災情報システムFIRMSが捉えた熱の集中箇所を重ね合わせ、プラットフォームが稼働中のフレアの位置と一致するかを確かめた

【議論の内容・結果は?】
◾️検証結果の概要
・正解ラベルを使わない手法でありながら、6海域全体で適合率0.95、再現率0.89、F1スコア0.92を達成し、既存の台帳では捉えきれなかった縁辺の海や沿岸部まで含めて5,358基を網羅したうえで、メキシコ湾の縮小とペルシャ湾の拡大という海域ごとに対照的な動きを7年間の推移として描き出した

◾️詳細
①ラベルなしでも、海域を問わず高い精度で検出できた
・適合率(検出したもののうち本物のプラットフォームだった割合)は、北海で99%、メキシコ湾とペルシャ湾で97%、カスピ海とタイ湾で92%、ギニア湾で91%と、すべての海域で9割を超えた
・誤検出の多くは、英国沿岸に残る軍用の古い海上要塞や桟橋、メキシコ沿岸の送電鉄塔など、海に立つ動かない構造物という点でプラットフォームと同じ特徴を持つものであった
・再現率(実在するプラットフォームのうち検出できた割合)は北海で99%、カスピ海で98%と高かった一方、メキシコ湾では84%にとどまり、その主な原因は、Sentinel-1の10m解像度では捉えきれない小型のプラットフォームが多いことにあった

※Si, L., Zhou, S., Irakulis-Loitxate, I., Roger, J., and Guanter, L.: Building a dataset of offshore oil and gas extraction platforms from satellite data (2017–2023), Earth Syst. Sci. Data, 18, 6545–6564,
https://doi.org/10.5194/essd-18-6545-2026, 2026.

②施設が減ってもフレアは減らず、少ない海域ほどフレアが目立っていた
・メキシコ湾ではプラットフォームの数が減る一方で、ガスフレアのあるプラットフォームの数は横ばいかやや増えており、残った施設での生産が集約されたことや、ガスを回収する設備を持たない古い施設が使われ続けていることが考えられる

③分布には油田の地質構造と開発の歴史が表れていた
・メキシコ湾、タイ湾、ペルシャ湾では、プラットフォームが堆積盆地の構造に沿って線状や小さな塊状に密集しており、石油やガスが地層の盛り上がった部分や断層帯に集まるという地質の条件を映していた
・長く開発が続いたメキシコ湾北部、北海、タイ湾では撤去されたプラットフォームが多い一方、ギニア湾では施設がまばらで撤去も少なかった

※Si, L., Zhou, S., Irakulis-Loitxate, I., Roger, J., and Guanter, L.: Building a dataset of offshore oil and gas extraction platforms from satellite data (2017–2023), Earth Syst. Sci. Data, 18, 6545–6564,
https://doi.org/10.5194/essd-18-6545-2026, 2026.

#Sentinel-1 #SAR #VH偏波 #Sentinel-2 #GoogleEarthEngine #海上石油ガスプラットフォーム #ガスフレア #メタン排出 #洋上風力発電 #教師なし検出 #Mann-Kendall検定 #メキシコ湾 #ペルシャ湾 #北海 #ギニア湾

「#MonthlySatDataNews」「#衛星論文」は2026年12月まで更新予定です。残り2カ月、お楽しみに!