宙畑 Sorabatake

衛星データ

【2022年12月】衛星データ利活用に関する論文とニュースをピックアップ!

2022年12月に公開された衛星データの利活用に関する論文の中でも宙畑編集部が気になったものをピックアップしました。

宙畑の新連載「#MonthlySatDataNews」では、前月に公開された衛星データの利活用に関する論文やニュースをピックアップして紹介します。

実は、本記事を制作するために、これは!と思った論文やニュースをTwitter上で「#MonthlySatDataNews」をつけて備忘録として宙畑編集部メンバーが投稿していました。宙畑読者のみなさまも是非ご参加いただけますと幸いです。

2022年12月の「#MonthlySatDataNews」を投稿いただいたのは6人でした!

それではさっそく2022年12月の論文を紹介します。

coastTrain: A Global Reference Library for Coastal Ecosystems

沿岸環境を、泥質海岸、マングローブ、サンゴ礁、沿岸塩性湿地、海草藻場、岩礁海岸、ケルプ林の7種類に分類した全球のデータセットを開発。

Satlas: A Large-Scale, Multi-Task Dataset for Remote Sensing Image Understanding

リモセン画像タスク用の大規模データセットの提案。137カテゴリ、8500万km2の画像で構築。

衛星画像は中解像度用にSentinel-2、高解像度用にNAIPを使用。このデータセットを用いて事前学習を行うことでImageNetに比べ平均精度が16%上がったとのこと。

A robust index to extract paddy fields in cloudy regions from SAR time series

SARデータで水稲の生育監視をすることで、曇りの日でも時系列でその生育を管理できるようにするという論文。

Synthetic aperture radar (SAR) data applications for tropical peatlands monitoring activities: An overview

熱帯泥炭地のモニタリングにSARデータを利用した研究の概要やよく利用されるバンド、よく適用される手法をまとめたレビュー論文。

Use of Landsat 8 and UAV Images to Assess Changes in Temperature and Evapotranspiration by Economic Trees following Foliar Spraying with Light-Reflecting Compounds

Landsat8とUAVのデータを組み合わせてピスタチオ農園の分析を実施。ピスタチオ果樹園において、高温の悪影響に対処し、水の消費効率を高めるための解決策として、光を反射する化合物を使用することが提案されている。

本研究では、イラン中部のピスタチオ果樹園(150 ha)において、石膏、硫黄、NAX-95(カルシウム系懸濁液)を樹木に葉面散布した際の効果を調べた。

WeatherFusionNet: Predicting Precipitation from Satellite Data

降水量の短期予測として、衛星画像を3つのアプローチ(将来予測、雨情報抽出、そのままの画像)で融合させるWeatherFusionNetを開発。

Soft Labels for Rapid Satellite Object Detection

ソフトラベル(画像分類のベクトル表現)を使って、新しいデータセットの生成が容易になるという話。まず、YOLOv5で車、飛行機、船を検出するモデルを作って、別のデータセットのソフトラベルを生成してる。

A Forward Future-Based Approach to Optimizing Agriculture and Climate Change Adaptation in Lower Eastern Kenya

気候変化予測等から、2040年の農業生態系ゾーンの変化を予測し、適応力と回復力を向上させる機会を評価。データ処理には、Google Earth EngineとR Statisticsを使用。

例えば、低地の乾燥地では、生育期間がますます長くなり、より干ばつに強い作物を栽培する能力や、流出水の増加を利用した水利用の可能性があり、生産システムを放牧地から農牧地へ多様化する可能性があるなど。

FedUKD: Federated UNet Model with Knowledge Distillation for Land Use Classification from Satellite and Street Views

複数の衛星データを使って被覆分類をするために、Federated UNet Model with Knowledge Distillation(FedUKD)を使って通信コストと応答時間を削減した。

得られた精度 は95%以上であり、ストリートビューと衛星画像に対してそれぞれ17倍、62倍という大幅なモデル圧縮を実現した。の画像に対してそれぞれ17倍、62倍という大幅なモデル圧縮を実現。

Using Hyperspectral Remote Sensing to Monitor Water Quality in Drinking Water Reservoirs

貯水池の水質(植物プランクトン等の藻の検出・監視)を確認することで、飲料水として適した状態かハイパースペクトルセンサの画像解析から推定。

地上のハイパースペクトルセンサと、Sentinel-2、GeoEyeを使用。

Super-resolution Probabilistic Rain Prediction from Satellite Data Using 3D U-Nets and EarthFormers

気象衛星のマルチバンドデータ使って確率的雨量予測。3次元U-NetとEarthFormerを使用。

Weather4castという気象系のデータコンペに参加したチームの論文。

Investigation of Minerals Using Hyperspectral Satellite Imagery in Bangladesh

ハイパースペクトルを使ったバングラディッシュの資源探査。データはEO-1のHyperionの242bandsを使用。

Remote Sensing of the Subtropical Front in the Southeast Pacific and the Ecology of Chilean Jack Mackerel Trachurus murphyi

南太平洋亜熱帯前線のチリマアジの生態を衛星データから明らかにしようというもの。
チリマアジという魚種指定で生態を明らかにしようとしている。概要によれば南東太平洋のリモートセンシング研究は少ないらしい。

Impact of Land Use/Land Cover Change on Ecological Quality during Urbanization in the Lower Yellow River Basin: A Case Study of Jinan City

土地利用・土地被覆の変化に対する生態系の質の応答を評価。

Development Of A Fire Detection System On Satellite Images

森林火災を衛星データで検知と聞くと、赤外で物理法則的な検知かなと思いがちだが、中国の FAIR1MとDIgital GlobeのRGB画像からCNNで検出。

Knowledge mapping and trends in research on remote sensing change detection using CiteSpace analysis

2000-2022年に公開された5012本の変化検出に関連する論文の傾向をまとめた論文。中国、米国、イタリアの出版件数がトップ3。

Automatic extraction of highly risky coastal retreat zones using Google earth engine (GEE)

Landsatのデータを用いて1985年から2021年までの海岸線変化を時系列に求めるアルゴリズムを生成した。画像取得、マスキング、強調処理、海岸線の抽出などを自動処理。

Assessing the Fragmentation, Canopy Loss and Spatial Distribution of Forest Cover in Kakamega National Forest Reserve, Western Kenya

カカメガ国立森林保護区の森林生態系における分断化と森林被覆損失の影響を評価した。

Preliminary observation of Marmolada glacier collapse of July 2022 with space-based cameras

氷河崩壊で死傷者が出た災害について、明確な崩壊のサインがなかったところを、Planet Labsのデータを用いて前後比較したという論文。アーカイブを残し続けているからこそ検証できたという、過去に遡れる衛星データの価値をあらためて感じられました。

Object Delineation in Satellite Images

被覆分類や物体検出のために、ラスター形式の衛星データをベクター形式にするためのシンプルで軽量なアルゴリズム。詳細な解析を行うためにベクター形式にしているとのこと。

Combined Optical and SAR Remote Sensing for LULC Mapping of Imphal Valley Using Machine Learning Algorithm

Landsat 8とSentinel-1Aを組み合わせて土地被覆分類図を作成.SARデータ組み合わせて精度あがったという結果が出ている。

Cascaded U-Net with Training Wheel Attention Module for Change Detection in Satellite Images

リモセン画像の変化検出モデルの提案。4つのCascade U-Netから構成されて、BlockにはConvNeXTブロックを使用。更に学習を容易にするためTEAMと呼ばれるAttention機構を提案。

The downstream impact of the first and second filling of the Grand Ethiopian Renaissance Dam - Abstract - Europe PMC

ダム建設が下流域の生態系などに与える影響を衛星データから評価。結果としては、ダムの貯水池にも植生被覆にも影響を及ぼさなかったそう。主観で影響が出そうだと思うものでも衛星データからマクロな観点で客観的な評価をできる。

Optimizing ship detection efficiency in SAR images

SAR画像による船舶検出の効率を最適化するアプローチ。最初にコストの低い簡単なモデルでスクリーニングして何もない画像を捨てた後で、より高度なモデルで検出を行う。

Tracking Changing Evidence of Water Erosion in Ordos Plateau, China Using the Google Earth Engine

2013年から2021年までのオルドス地域の土壌侵食の変化をGoogle Earth Engine (GEE)を用いてLandsatのデータから評価することで、河川下流の生態系への影響評価を行った。土壌侵食の状態を追跡することで、生態系の保護にもつながる。

What is going on within google earth engine? A systematic review and meta-analysis

影響力の大きい科学雑誌で 2020 年から 2022 年に発表されたGoogle Earth Engine (GEE)を用いた343 件の論文を評価。

・本数は中国>アメリカ>インド
・Landsat8が最も利用されている
・主にRandom Forestが利用されているアルゴリズム

Evaluation of Urban Ecological EnvironmentQuality Based on Google Earth Engine:A Case Study in Xi’an, China

急速な都市化が生態環境に与える影響を加速させている。その影響を調べるため、衛星画像を用いて、生態環境の質の定量的評価を行った。生態学的環境の政策立案をサポートするための重要な情報を提供するとしています。

Extraction of long time series wetland information based on Google Earth Engine and random forest algorithm for a plateau lake basin – A case study of Dianchi Lake, Yunnan Province, China

1988年から33年分のLandsatデータを用いて湿地帯評価を行っている。その分類精度は高く、特定エリアの湿地帯評価の管理データが欠損している箇所についても、衛星データで補完することができるとしている。

Developing the Role of Earth Observation in Spatio-Temporal Mosquito Modelling to Identify Malaria Hot-Spots

45,844匹の蚊の地上での観測情報と衛星データを組み合わせて解析し、蚊の発生を予測した。2020年に50万人以上の死者を出しているマラリアの感染源である蚊の居場所を分析することが感染拡大予測や予防につながる。結果は、降雨量と地表面温度が一貫して最も重要な変数であると分かったそう。

Satellite edge computing for real-time and very-high resolution Earth observation

衛星間リンクでデータを分散処理して、地上に下ろしてくるデータを効率化させようという試み。直接ダウンロードするのに比べて扱う画像の量が12倍に増えるとのこと。本当はおろしたいデータがあるが、下ろせるデータ容量の問題で下ろせないという課題を解決する。

A change detection approach to flood inundation mapping using multi-temporal Sentinel-1 SAR images, the Brahmaputra River, Assam (India): 2015–2020

Sentinel-1を解析して2015-20年までの浸水域を分析(しきい値を適用し、SAR 画像から恒久的な水域と影を除去して、実際の浸水地域を描写)することで洪水氾濫マップを作成・評価した。

Capacity Estimation of Solar Farms Using Deep Learning on High-Resolution Satellite Imagery

世界の太陽光発電容量は、2040年に大きく増えることが予測されているが、正確な情報ソースがあり、検証されているわけでない。

そこで、衛星画像から太陽光発電所(主にはメガソーラー)を検出し、発電量を推定を行い、検出にはU-Netを用いて実施。検出されたエリアと予測された発電容量は、公開されているデータに対して平均 4.5% の誤差の範囲内で検証されたそう。

TorchGeo: Deep Learning With Geospatial Data

PyTorchに地理空間データを取り扱えるようにした、PythonライブラリであるTorchGeoの紹介。大抵のベンチマーク用のデータセットはtorchgeo.datasetsモジュールに利用できるようにしてある。

Building Height Prediction with Instance Segmentation

DSM(Digital Surface Model)やLiDARなどのセンサを使わずに、RGBの衛星画像から建物の高さ推定を行う論文。

Mask R-CNNを用いて、

① 建物を抽出できるように転移学習
② ①からさらに建物高さの推定ができるように転移学習

といったように二段階の転移学習で実現している。

以上、2022年12月に公開された論文をピックアップして紹介しました。
皆様の業務や趣味を考えた時に、ピンとくる衛星データ利活用に関する話題はありましたか?

来月以降も「#MonthlySatDataNews」を続けていきますので、お楽しみに!

Share

衛生データに無料で触れる Tellusを試してみましょう 登録して使ってみる