宙畑 Sorabatake

衛星データ

【2022年10月】衛星データ利活用に関する論文とニュースをピックアップ!#MonthlySatDataNews

2022年10月に公開された衛星データの利活用に関する論文の中でも宙畑編集部が気になったものをピックアップしました。

宙畑の新連載「#MonthlySatDataNews」では、前月に公開された衛星データの利活用に関する論文やニュースをピックアップして紹介します。

実は、本記事を制作するために、これは!と思った論文やニュースをTwitter上で「#MonthlySatDataNews」をつけて備忘録として宙畑編集部メンバーが投稿していました。宙畑読者のみなさまも是非ご参加いただけますと幸いです。

2022年10月の「#MonthlySatDataNews」を投稿いただいたのは5人でした!

それではさっそく2022年10月の論文を紹介します。

Growth and yield monitoring of potato crop using Sentinel-1 data through cloud computing

Sentinel-1のVHの値の傾向は現場の状況と一致し、異なる成長段階における作物のモニタリングに適していることが分かったとのこと。

Dense-TNT: Efficient Vehicle Type Classification Neural Network Using Satellite Imagery

衛星画像や航空画像での車の車種判別。能力向上のために、DenseNet(Densely Connected Convolutional Transformer in Transformer Neural Network)とTNT(Transformer in Transformer)層を積層した、新しい車種分類フレームワークを提案。

Digital and Geographical Feature Detection by Machine Learning Techniques Using Google Earth Engine for CPEC Traffic Management

衛星データを使って、中国パキスタン経済回廊(CPEC)に関するインパクト評価を実施。Landsat 8の画像を機械学習(ランダムフォレスト、SVM、分類回帰木)することで、2013年から2021年までのパキスタンの水、植生、都市化に関する時空間変化を求め、生態反応変数、環境緊張、社会経済開発可能性、天然資源可能性などの複数の指標に関する土地の適合性を推定した。

Small-Scale Analysis of Characteristics of the Wildland–Urban Interface Area of Thessaloniki, Northern Greece

急速に都市開発が進む地域は、山火事リスクが高まるそう。そのため、Sentinel-2のデータを用いて野生地と都市地域の境界をマッピングして、適切な防火林処理を行う参考にするそう。

A Workflow for Collecting and Preprocessing Sentinel-1 Images for Time Series Prediction Suitable for Deep Learning Algorithms

Sentinel-1の画像の前処理が従来よりも改善できるのではないかということで新しいワークフローを提案しているもの。

Decision surface optimization in mapping exotic mangrove species (Sonneratia apetala) across latitudinal coastal areas of China

中国で、外来種の植物が生態系を壊している?ようで、その外来種がどこまで広がっているかを衛星データで観測しているそう。たしかに外来種というと動物をイメージしてしまいますが、植物の拡大による生態系破壊も様々なところで影響がでそうですね。

OBBStacking: An Ensemble Method for Remote Sensing Object Detection

リモートセンシングの物体検出に用いられるOriented Bounding Box(OBB)に対応したアンサンブル手法の論文。個々のモデルを最適に組み合わせる学習と判読結果のOBBを融合させる手法を合わせたOBBStackingを提案。

Scorched earth tactics of the “Islamic State” after its loss of territory: intentional burning of farmland in Iraq and Syria

イスラム国によるイラクとシリアでの意図的な農地への放火が行われたその影響範囲と時系列をSentinel-2とMODISを用いて調査した結果。農地面積と降水量の関係なども最後の方に出てきている。

Identifying driving factors of urban land expansion using Google Earth Engine and machine-learning approaches in Mentougou District, China

土地被覆分類から都市部の土地拡大に影響を与える要因を総合的に検討した。標高、鉱山崩壊リスク、アクセス性、地方財政支出、産業再編、農村部の一人当たり所得、GDPなどの要因が都市部土地拡大変化の重要なドライバーとなった。

Transfer Learning with Pretrained Remote Sensing Transformers

衛星データを事前学習(pretrain)させたTransformerが、分布の異なる画像に対してどう機能するかを調査。データセットを特徴に合わせて14つに分類、別々に学習させ、他のデータセットでどうなるか。コードはGitで公開されてる。

Comparing Satellite and Ground-Based Measurements of Environmental Suitability for Vector Mosquitoes in an Urban Landscape

感染症の媒介となる蚊の生息域を衛星データから推測するもの。都市部での蚊の生息地分析に、衛星データが有効である可能性があるそう。

Deep Learning for InSAR Phase Filtering: An Optimized Framework for Phase Unwrapping

初期位相ノイズを利用することで位相アンラッピング処理を最適化し、精度良く干渉解析をできる手法を提案した。

MuS2: A Benchmark for Sentinel-2 Multi-Image Super-Resolution

複数のSentinel-2画像を使って超解像を行うアプローチ。高解像度衛星画像のレファレンスとしてWorldViewの画像も使っている。

Effect of Vegetation Carryover and Climate Variability on the Seasonal Growth of Vegetation in the Upper and Middle Reaches of the Yellow River Basin

気候変動と植生成長キャリーオーバーの関係性を論じた。長期間での正規化差植生指数(NDVI),総基本生産力(GPP),葉面積指数(LAI)を分析することで,季節ごとの植生成長の年較差の相関を明らかにしたことで,生態学的に脆弱な地域における将来の植生動態を長期的に正確に予測するのに役立つとのこと.

A systematic review of the use of Deep Learning in Satellite Imagery for Agriculture

衛星データとDeep Learning使った農業系事例150個を整理したまとめ系。土地被覆分類(LULC)、土壌の状態、植物生理学、穀物の被害状況把握、収量予測の農業系の5つの主要タスクで分類。

Forest Height Estimation Using Sentinel-1 Interferometry. A Phase Unwrapping-Free Method Based on Least Squares Adjustment

Sentinel-1のデータを用いて、干渉SARで森林の高さの推定を行っている。精度が高いのであれば、企業のCSR活動の植樹した樹の状態や林業の生育具合を遠隔地から把握するなど様々なことに応用できそう。

A Comparative Analysis of Farmland Occupation by Urban Sprawl and Rural Settlement Expansion in China

中国の無秩序な都市化(スプロール化)によって、農地面積が減少している。その結果、限られた農地で14億人の食料安定供給を実現しなければならないという課題が悪化している。その影響を衛星データで定量化している。

Mangrove forests mapping using Sentinel-1 and Sentinel-2 satellite images

Sentinel-1とSentinel-2を用いてマングローブの森をマッピングするもの。Sentinel-1よりもSentinel-2の方が検出精度はよかったものの,利用する上では十分そうとのこと.雲がかかっている地域に生育しているのでSARで見れるのは大事。

Rare flood scenarios for a rapidly growing high-mountain city: Pokhara, Nepal

急速な都市化による洪水シナリオを衛星データとOpen Street Mapを用いて検証している。衛星データ(Maxar ,RapidEye,PlanetScopeなど)は、土地被覆と砂地の採掘活動の状態を見るために使っているようです。

Quantifying golf course nitrogen use efficiency

ゴルフ場の窒素散布量を評価する試み。GEE経由で温度情報は取得したらしい、草や土壌の種類も使って評価してるようなのでまだ衛星データは使ってないみたいだけど使えそう。

The use of Standardized Precipitation Index values (SPI) and MODIS vegetation indices to assess drought of steppe regions, Algeria

MODISと標準化降水量指標(SPI)を用いて干ばつ事象を評価

MODISから
・NDVI→植生状態指数(VCI)
・地表面温度(LST)→気温状態指数(TCI)
を算出。

VCIとTCIを組み合わせて、植生健全度指数(VHI)を算出し、1ヶ月標準化降水量指数(SPI)データと比較することで干ばつを評価した。

Condition‑ and context‑dependent variation of sexual dimorphism across lizard populations at different spatial scales

イタリアンウォールトカゲの体長と頭部形状の性分化形質について、性的二形の発現の潜在的要因を衛星データ等を使って調査。”DEMやランドサット等の衛星データ等を用いた空間的なマルチスケール解析が性的二形の発現パターンを理解する上で有用なアプローチであることが示唆された”とのこと。

Rice Crop Height Inversion from TanDEM-X PolInSAR Data Using the RVoG Model Combined with the Logistic Growth Equation

多偏波干渉SAR解析(PolInSAR)にロジスティック解析を組み込むことで精度良く稲の生育状況を推定。

Forest Community Mapping Using Hyperspectral (CHRIS/PROBA) and Sentinel-2 Multispectral Images

ハイパースペクトル画像(CHRIS/PROBA)とSentinel-2それぞれで、森林の樹種分類をしてみた結果、Sentinel-2の方が分類精度が高かったというもの。原因としてはradiometric errorsが挙げられていて、前処理では完全に除去できない?とあります。

Sentinel-1 衛星データによる水田の排水性評価

Sentinel-1(SARデータ)を用いて水田の排水性を把握できるかの検証。Sentinel-2(光学)よりも精度は劣るができないわけではなさそう。雲がかかっているなど、良い光学画像がないときにプランBとして知っていてもよい知恵かも。

A Data Fusion Method for Generating Hourly Seamless Land Surface Temperature from Himawari-8 AHI Data

提案手法により、2016年から2021年までのひまわり衛星の1時間おきの0.02°シームレスLSTデータセットを作成して公開。

Potential of ALOS2 Polarimetric Imagery to Support Management of Poplar Plantations in Northern Italy

ALOS-2の4偏波解析によりポプラを3つの樹齢(3年未満、4~6年、7年以上)に分類に加え,年ごとの伐採と植林も検出したらしい。

Multi-Modal Fusion Transformer for Visual Question Answering in Remote Sensing

Visual Question Answering(VQA)と呼ばれる、画像に対する質問を提示された時に正しい答えを導きだすタスクを、リモセン画像に適用した例。住宅街の衛星画像で「家の数はいくつ?」とかできるようになるってことなんですかね、近未来だ。

Analysis of Floating Macroalgae Distribution around Japan Using Global Change Observation Mission-Climate/Second-Generation Global Imager Data

Sentinel-2のデータを用いて、日本周辺の大型の藻類の分布を観測しているもの。意識し始めたからなのか、森林や藻類などの監視や分類への衛星データ利用の論文がほぼ毎日のようにGoogle Scholarに更新されてる。ほぼ環境問題とセットで語られている。

The Application of Remote Sensing Techniques and Spectral Analyzes to Assess the Content of Heavy Metals in Soil –A Case Study of Barania Góra Reserve, Poland

農地の土壌中の重金属含有量を把握するためにSentinel-2を利用しているもの。農地については、モニタリング対象となる要素が知れば知るほど出てきますね。

Evaluating the Label Efficiency of Contrastive Self-Supervised Learning for Multi-Resolution Satellite Imagery

リモセンデータのアノテーションされてるデータが少ない問題に対して、 Self-Supervised (自己学習)で色々な解像度の画像に対応できるようにするためのアプローチ。データセットはfMoWとRESISC45。

Transferring learned patterns from ground-based field imagery to predict UAV-based imagery for crop and weed semantic segmentation in precision crop farming

農業のための雑草および作物のSegmentation。データセットとしてUAV画像と地上カメラ画像を用いて構築。Segmentation結果を用いて除草剤散布の省力化に貢献。

Towards Transformer-based Homogenization of Satellite Imagery for Landsat-8 and Sentinel-2

Landsat-8とSentinel-2の互換性を高めるために、L8側をBicubicとUNetとtransformerで超解像みたいなことしている論文。意外なことにBicubicよりは良くなるけど、UNetとtransformerだとUNetの方が結果が良くなったとのこと。

Blind Super-Resolution for Remote Sensing Images via Conditional Stochastic Normalizing Flows

リモセン画像に対する条件付き確率的Normalizing Flowを用いた超解像。劣化カーネル推定やGANだと生成品質や学習安定性に課題があるため、Normalizing Flowによって条件付き確率分布を学習し超解像を実現する。

工夫点はLR Encoderだけでなく劣化表現を求めるモデルを用いて対照学習を実施することで劣化推定の誤差増大を防いでいる点。Normalizing Flowといってはいるが、ガウス分布を仮定しているので実質diffusion modelになっているような気がする。

Self-Supervised Pretraining on Satellite Imagery: a Case Study on Label-Efficient Vehicle Detection

これもfMoW使ったSelf-Supervisedによる、超高解像度光学画像(WV-3)の車両検出。用途が安全保障想定で、軍用車両と一般車両、ロンチャーとか地上設備の分類になってるの面白い。そりゃ、教師少ないですわ。

Seasonally-decomposed Sentinel-1 backscatter time-series are useful indicators of peatland wildfire vulnerability

NDVIでは違いが判らなかった、泥炭地の山火事の脆弱性を、SARデータであれば判別できたというもの。植生とかを見るのは光学が強い印象がありますが、実はSARデータもというものも多くありますね。

Using Google Earth Engine and GIS for basin scale soil erosion risk assessment: A case study of Chambal river basin, central India | SpringerLink

Revised Universal Soil Loss Equation(RUSLE)を用いて、河川による土壌損失を推定しています。峡谷地域の土壌侵食の平均速度が最も高かったとのこと。

STARS-c, A Google Earth Engine Tool to Evaluate Long-Term Water Quality Trends Globally

Google Earth Engine上でクロロフィルa濃度のマップを作成し、経時的なクロロフィルa濃度の変化を可視化できるようになっています。

A Novel Water Index Fusing SAR and Optical Imagery (SOWI)

光学画像とSAR画像を用いた水指数の提案。両方のデータを使用することで、光学で発生していた雲や植生の下の水域が検出できない欠点や、SARで発生していたランダムノイズや空間解像度が光学画像より低いことによる輪郭の曖昧さといったそれぞれの欠点を解消することができるとのこと。

以上、2022年10月に公開された論文をピックアップして紹介しました。
皆様の業務や趣味を考えた時に、ピンとくる衛星データ利活用に関する話題はありましたか?

来月以降も「#MonthlySatDataNews」を続けていきますので、お楽しみに!

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