週末に宇宙産業の起業体験?! Startup Weekend Tokyo Space 2nd 開催レポート
日本で2回目の開催となる週末の起業体験イベント「Startup Weekend Tokyo Space」を潜入レポート!
2019年4月5日3(金)~4月7日(日)にかけて、Startup Weekend Tokyo Space 2nd が開催されました!日本では2回目の開催となる、宇宙“Space”がテーマのStartup Weekend。宇宙への熱い想いがほとばしる濃い3日間となりました。
Startup Weekendとは
Startup Weekendとは、金曜の夜から日曜の夜までの週末54時間をかけて起業をリアルに体験することができるイベントです。2007年にアメリカのシアトルで始まって以来、世界150ヶ国以上で開催されており、ここから2万3千以上のチームが生まれてきました。Startup Weekendは起業を志す人たちの集うコミュニティの名前にもなっています。
決まったテーマが設定されていないStartup Weekendから、アニメ・ブロックチェーン・エネルギーや、今回の「宇宙」のように特定のテーマが設定されているStartup Weekendもあります。
自らのアイデアを1分間で伝える!
Startup Weekendでは、イベントの初日はピッチからスタートします!ピッチとは、新しいアイデアを相手に提案するための、1分間程度の売り込みです。(プレゼンは既製品の強みを伝える目的であるのに対し、ピッチはまだ解決されていない問題やそれに対する解決案を伝えることが目的です。)今回は、21人の参加者がピッチを行いました!
ピッチが終わったあと、参加者による投票が行われ、アイデアが絞られていきます。絞られたアイデアは、以下のようになりました。そして、それぞれのアイデアの発案者が最後のアピールを行い、チームメンバーを集めます。
そして、以下の6チームが誕生しました!
- 誰でも宇宙に行ける社会実装のためのサービス
- 途上国旅行を安全にする
- 魚と人と宇宙をつなぐ
- 夜空に星座を描く
- 宇宙旅行者お土産をいれる容器開発
- 宇宙で仕事ができるプラットフォーム作り
チーム作りが完了した時点で、一日目は終了です。
中には、交流を深めるために出来たばかりのチームで早速飲みに行くチームもありました。
議論!コーチング!検証!起業はアクションあるのみ!
2日目は初日に投票で決めた6チームで活動開始です!
最初に、今回のStartup Weekendでファシリテーターを務める岩城さんから今後のアクションについて簡単なアドバイスがあります。2日目昼に実施するコーチングの案内や最終日のプレゼンでの審査基準などの話がありました。
そして各チーム、アクションに移っていきます。
さっそく、街頭インタビューをしてくるチームもありました!
各チームには、コーチングの時間が用意されています。各チームにコーチの方が入って、約20分、壁打ち(ビジネスに関するアドバイス)相手となってくれています。コーチの方々は、自らの宇宙産業での経験を基に、様々なアドバイスをして下さいます。コーチ陣は、JAXAで新規事業創出に関わっている方から茨木県庁でスタートアップ支援を行っている方まで、多彩なラインナップです!
コーチの皆さんからの総括として、「プラットフォームやマッチングなど、使いやすい言葉は使わないほうがいい。直接的な言葉で自分たちの事業を表現しよう。」
「宇宙をいかに活用するかと考え出すと難しいので、結果的に宇宙を活用しているというニュアンスで考えてみてほしい。」との言葉がありました。
最終日である3日目。
参加者の皆さんは、色々なサイトで情報を集めたり、外で顧客インタビューをしたり、17時の最終プレゼンに向けて必死にアクションを続けます。
3日間の宇宙ビジネスの成果を発表!最終プレゼンタイム!
そして、3日目の17時から審査員を前に、最終プレゼンを行います。
[1] “ダイヤモンド”
プロダクトは、【宇宙で購入したお土産の容器】です。
このチームは、「今後、宇宙旅行に行かれる富裕層に、お土産を購入するという需要が発生するのではないかと予測し、そのお土産を入れる容器の開発に着手しました。
事業内容としては、魅力ある容器を開発する事で、”お土産の価値を最大化する”ことを目指す。また、宇宙空間における未知の資源を使用して容器の成型をする事で、研究開発の手助けをすることも考えているそうです。
[2] “Drawing Star”
プロダクトは、【夜空にリアルに描く星座】です。
このチームは、「誰もがきれいな夜空を見ることはできない。」という課題に着目しました。そこで、現実の夜空に実際に星座を描くことでこの課題を解決できるのではないかと考え、イベントのようなスタイルで夜空に実際に星座を描く事業を3日間のアウトプットとして用意してきました。
具体的に星座を描く手法については、レーザーによる空間立体描や、水蒸気に光をあてたプロジェクションマッピングを検討しています。
審査員からの、「あえて、Mixed Reality(複合現実)にしなかったのはなぜ?」という質問には、「見上げるときれいな星空をだれでも見上げれるようにしたいといのが根本のビジョンなので、現実との乖離を発生させずに実際に星を見るというアクションを大事にしたかったから。」と回答しました。
[3] “Space everyone”
プロダクトは、【宇宙旅行希望者の金額を負担する旅行代理店サービス】です。
このチームは、”宇宙に行きたいと思っている人の多くが、数千万を準備することができない”という課題に着目しました。
まず、日本橋で39名に街頭インタビューを実施し、22名から宇宙に行きたいとの回答を得たそうです。その22名からの宇宙旅行の希望金額として最多だったのが100~300万だったそうです。
そこで、サブオービタル(※1)旅行者に企業が希望する広告提供などの業務を委託することで、一般企業が一般人の宇宙旅行代金の一部を負担するサービスを考案しました。
(※1:サブオービタル旅行は宇宙旅行の形態の一つ。地球を一周したり月に向かったりするのではなく、数分程度宇宙空間に滞在する宇宙旅行のこと。現在、2500万円程度の金額で販売されている。)
実際、一般企業がISSのきぼうを有償利用する際は数十億円もの金額がかかり、宇宙飛行士に広告を委託するのも多額の金額が発生することからサブオービタルにニーズがあると判断し、3日間アクションしたそうです。想定ユーザーとしては、初期段階ではyoutuberやインフルエンサーなど広告宣伝力のある人で、次期フェーズでは一般人で健康な方を対象にするとのことでした。
審査員からの、「営業力・企画職勝負と思いますが、既存のサービスに対してどんな競争力をもちますか?」という質問に対しては、「国内に一定数存在する、宇宙旅行にいきたいけど費用が足りないというユーザーを最初に抱え込むことで、先行者利益で逃げ切ることを考えている。」と答えました。
[4] “魚と宇宙”
プロダクトは、【魚と人がコミュニケーションするロボット】です。
このチームは、”世界中で海産物の需要は増加しているが、日本近海での海産物の減少が危惧されている”という課題に着目しました。海産物の減少を引き起こしている一つの原因として、中国から大量の漁船が日本近海に来て乱獲している事案が存在します。そこで、魚がそういった不正な乱獲をする漁船から逃げることが可能となるプロダクト開発を、三日間アクションとしました。
具体的には、衛星データから違法な船舶を把握し、その情報を海上ロボットにインプットさせ、海上ロボットから魚に直接コミュニケーションさせることを実現します。
伝達する内容については、
- 赤潮の発生
- 違法な船舶の接近
などを想定しており、衛星AISサービスとの連携も考慮しています。
[5] “途上国旅行”
プロダクトは、【Tabi友】です。
このチームは、”日本人旅行者数は1996年から横ばいであり、個人旅行者には、知らない土地である海外に踏み出せない壁が存在する。”という課題に着目しました。
そこで旅行における不安や壁を撤廃し、旅行意欲の促進を実現するアプリ”Tabi友”を開発しました。
Tabi友を使用することで、
- 一般ユーザーの口コミ
- ローカルな情報
- 危険なエリアに侵入した時のアラート
などをアプリ内で知ることができ、途上国での不安を解消させるそうです。また、渡航先としては、検証の結果から、インド・バングラディシュ・ボリビア・中東・タイ・フィリピンなどを想定しているとのことでした。
渡航先に関する詳細な情報は地上にIoTデバイスを設置するほうが安いので、衛星情報と地上での測定の掛け合わせを検討しています。
審査員から、「現地の様子を、リアルタイムで発信するサービスという認識であっているか?」という質問がありましたが、「旅行検討時は“購入と検討を促進させる”、旅行開始後は“現地での情報をリアルタイムで発信する”という2つのフェーズが存在する。」との回答でした。
[6] “Region Planet”。
プロダクトは、【地方自治体インフラの整備サービス】です。
チームのリーダーの方が高知県から来られていて、”地方の未来へ貢献したく、地方には課題が山積みである現状を解決したい。”との想いがあったそうです。
そういった課題の中で、
- 道路の老朽化
- 人材不足
の2点に着目しました。
地方における課題のひとつであるインフラの老朽化を解決する事業として、衛星データを用いて地方インフラの経年変化を探知し、インフラの整備・点検を実施する事業を考案しました。まず着手するのは、道路の整備です。
ビジネスモデルは、地方自治体や鉄道会社への加工した衛星データの販売です。衛星データの分解能は最高精度でなくても良く、システム利用料として年間500~1000万円を設定した事業を計画しました。
衛星データを売るのではなく、衛星データから得られる知見を適切なユーザーに価値ある情報として提供することを強調しました。
審査員からの「これは、人の作業を減らすサービスなので、地方から益々人が減ると思いますが問題ないですか?」という厳しい質問に対しては、「人がいるけど業務がまわってないことが、地方の課題の根本。したがって、業務あたりの時間の有効化を実施するのが目標。」と回答しました。
6チームのアツいプレゼンが終了。審査員の皆さんによる協議は難航しました。
以下、結果です。
Up Tsukuba賞:チーム ”魚と宇宙”
第2位:チーム”Space Everyone”
そして、優勝は、
チーム“Region Planet”!
Startup Weekendが狙うのは、”宇宙ビジネスコミュニティの醸成”
Startup Weekendで重要なのは、順位ではありません。この3日間が終わった後もアクションを継続させていくことであり、Startup Weekendが創るのはスタートアップではなく起業家です。実際に起業しなくても、起業家精神・アントレプレナーシップ精神は持ち続けることが出来ます。まさにその意志こそが重要だと、Startup Weekendは考えています。
Startup Weekendでは、3日間のイベントを開催する事にとどまらず、その後も続いていくコミュニティの醸成を狙っているのです。今回の運営メンバーも、日本の宇宙開発の未来を本気で考えるコミュニティを創っていくことを目指しています。
宇宙産業が、日本の基幹産業となり日本を支えていく日を目標に、参加者・審査員・コーチ・運営メンバーの垣根を超えて日本の宇宙産業に関わっていくことを支えるコミュニティとして、今後もStartup Weekend Tokyo Spaceから目が離せません!