宙畑 Sorabatake

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Rocket Labが軌道投入に成功!【週刊宇宙ビジネスニュース 12/2〜12/8】

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Rocket Labが10回目の打ち上げに成功!

Rocket Labは12月6日に、ニュージーランドのマヒア島の打ち上げ場から同社の10番目の小型ロケットElectronを打ち上げ、7個の小型衛星の軌道投入に成功しました。

Rocket Labは毎回Electronに愛称をつけていますが、今回の小型ロケットの愛称は”Running Out Of Fingers”です。

今回の小型ロケットの打ち上げには、ロケットの第1段を再利用可能にする技術の試験も組み込まれていました。実際の回収には挑戦しませんでしたが、地上への再突入の際の制御システム及びナビゲーションシステム用テレメトリーを測定したようです。

Rocket Lab社のElectronの打ち上げの様子 Credit : Rocket Lab

ロケットの第1段の回収というとSpaceXのFalcon 9が有名ですが、Rocket LabのElectronは小型ロケットです。ペイロードが数100kg級の小型ロケットは限界まで燃料以外の重量をカットして打ち上げ効率を向上させています。(専門用語で構造効率と呼びます)

したがって、再利用の際に使用する推進剤を搭載すると、逆に小型ロケットとしての性能が下がってしまいます。

Electronの場合は性能を低下させずに機体を回収するべく、第1段を大気圏突入後にパラフォイルで降下させヘリコプターで回収することを計画しています。具体的には、Electronの第1段は分離した後そのまま自由落下します。一定高度まで降下するとバリュートという装置で減速。その後パラフォイル(翼の形状のパラシュート)を展開。最後にパラフォイルから伸ばしたテザーをヘリコプターが引っかけ、機体を釣り下げながら船で回収する計画です。

Electronの第1段回収のイメージ図 Credit : Rocket Lab

Rocket LabのCEOのPeter Beck氏は、この第1段の回収はコスト削減が目的ではないと明言しています。超小型衛星の打ち上げ需要が高まるなか、ロケット第1段を毎回製造すると、打ち上げの機会損失が発生してしまうことが想定されます。超小型衛星の打ち上げの需要に応えつつ、自社ロケットの打ち上げ頻度を向上させるために、ロケット第1段の回収に踏み切る姿勢のようです。

また、今回のペイロードの一つは日本の宇宙ベンチャーALEの衛星であるALE-2であり、高度400kmの極軌道に投入されました。約75kgのALE-2衛星は、60 x 60 x 80cmの大きさで、人工流星の試験を行う予定です。

日本の宇宙ベンチャーの衛星を海外の宇宙ベンチャーが打ち上げるという、民間宇宙産業の波を感じるニュースですね。今後の2社にも注目です。 

Electronに積み込まれるALE-2 Credit : ALE

Inmarsatの買収が完了

英国の衛星オペレーターであるInmarsatは、12月5日にロンドン証券取引所から上場廃止となり、Connect Bidcoによる33億ドルの買収が完了しました。今回のConnect Bidcoによる買収は、Inmarsatの既存株主である、Oaktree Capital・Kite Lake Capital・Rubric Capitalによる抗議のため、予定より約1か月遅れでの完了となりました。

Connect Bidcoによる買収額に、InmarsatとLigado Networksの間のスペクトルリース契約の価値が反映されていないとして、前出の既存株主の3社は裁判所に抗議を申しつけていました。同3社はConnect Bidcoとの協議ののち、12月3日に買収に対する抗議を撤回する共同声明を発表しました。

公開市場から上場廃止となった衛星オペレーターは、香港を拠点とするAsiaSat・ロンドンを拠点とするAvantiに続き、今年に入って早くも3社目となっています。

Inmarsatのロンドン支社 Credit : Inmarsat

アストロスケールが米軍を潜在的顧客と発言

アストロスケール米国支社の社長であるRon Lopez氏は、2020年に低地球軌道で衛星の再突入技術を実証する準備をしており、この取り組みの潜在的顧客の一つに米軍があると述べました。

アメリカ空軍の組織の一つである、宇宙ミサイルシステムセンター(SMC)が主催した業界会議でLopez氏は新しい技術について議論したそうです。

その中で、アストロスケールが焦点を当てているデブリの除去だけでなく、米軍へのスピンオフアプリケーション(短期間での衛星の軌道遷移など)を見込んでいるとのことです。米軍は、LEO(地球低軌道)に通信衛星を配置する際に、有事の事態など衛星の軌道高度や軌道面を変更する技術を民間企業に頼る可能性を示唆していることになります。

今後も、宇宙ベンチャーと軍の技術提携は頻繁に行われることでしょう。

2020年打ち上げ予定の、デブリ除去実証機のELSA-d衛星 Credit : アストロスケール

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