宙畑 Sorabatake

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HAKUTO月へ”R”eboot(再起動)【週刊宇宙ビジネスニュース9/24~9/30】

毎週宇宙ビジネスの気になる話題をピックアップする本連載! 今週は2018/9/24~9/30までの話題です。

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

今週も再び月に関する話題がありました。

1.HAKUTO-R始動。2020、2021年に月へ

An artist's illustration of the Japanese startup ispace's lander and rover (on ramp) on the surface of the moon.. Credit : ispace

Japanese Startup ispace to Launch Moon Lander Missions on SpaceX Rockets – SPACE.com

SpaceX Falcon9ロケットで2020年、2021年に月へ打ち上げ 史上初の民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」始動 月面探査レースは次のフェーズへ
ispaceのプレスリリース

Google Lunar XPRIZE主催の月面レースは誰も月面に到達することなく終わってしまいました。

しかし、iSpaceのプロジェクトであるHAKUTOがHAKUTO-Rと名前を変えて、再び月を目指すことが発表されました。

HAKUTO-Rを月へ運ぶのは、先日前澤友作氏を月へ連れていくことが発表されたばかりのSpaceX。

同じロケットに乗って月を目指す訳ではなく、今回はFalcon9ロケットの副衛星として月を目指います。なお、気になる主衛星についてはまだ公表されていません。

iSpaceは「独自のランダーとローバーを開発して、2回のデモンストレーション・ミッションを2020年半ばと2021年半ばに実施した後、本格的な商業ミッションを連続して実行する計画」なのだそうです。

月への着陸は、JAXAもSLIMを計画しています。SLIMは2021年度にH-IIAロケットに搭載されて月へ向かう予定です。

民間で月面に降り立つ最初の企業はどこになるのか、そしてその先の月面開発はどうなっていくのか、楽しみですね。

余談ですが、今回のニュースについて、各国がどのように伝えているのか、調べてみると面白いです。

Googleで「iSpace SpaceX」のキーワードでニュースを調べると様々なWeb媒体が今回の件について記事を書いているのが分かります。

記事の中身自体は大差ないのですが、タイトルは若干異なります。
5つほどピックアップしてみるとこんな感じになります。

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Silicon Beach Report Sept. 26: Lunar Mission on Horizon for SpaceX – Los Angeles Business Journal
Musk’s SpaceX lands new Japanese client for lunar rover mission – technology
Tokyo firm to send rovers to moon via SpaceX by ’21 – The Japan News
Japanese company ispace selects SpaceX for lunar missions – SpaceNews.com
Japan’s ispace strikes deal with SpaceX for launches to the moon in 2020 and 2021 – GeekWire
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宇宙にある程度詳しい人が読んでいて、iSpaceは知っていそうな媒体はiSpaceという名称がでてきて、
iSpaceの知名度があまりないな、と感じる媒体ではiSpaceの名前が出ず、
アメリカがやってるんだぞ、という雰囲気を出したい場合はSpaceXの名前しか出ず、
日本がやっていることをアピールした場合にはJapanが入っていることが分かります。

同じニュースであっても、各媒体でこのように差が出るのって面白いですよね。

2.小型SAR衛星へ約19億円もの大型投資

Capella Space’s 37kg radar satellite compared to traditional 1000kg radar satllites Credit : Capella Space

Capella Space Closes $19M Series B to Deliver Reliable Earth Observation Data on Demand – Capella Space

小型SAR衛星コンステCapella Spaceが初号機の打ち上げを11月に控えている今、シリーズBとして約19億円を調達したというニュースです。

通常、小型衛星は展開すると言っても、せいぜい数倍に大きくなるだけです。
しかしながら、Capella Spaceの場合、高さ0.6 mの大きさで打ち上げられ、軌道上で高さの約7倍にもなる4 m程度のアンテナを展開します。
イメージとしては、折り畳み傘やテントがいきなり広がる様子を想像してみるとよいかもしれません。

アンテナを大きく展開することで、より高精度に地上を観測することが可能になります。
衛星自体は小型なため、打ち上げ費用・開発費用共に安く抑えることができ、大型なSAR衛星を1機打ち上げるコストで、多くのCapella Spaceの小型SAR衛星を打ち上げられるようになる、というわけです。

Capella Spaceは、最終的に36機体制で地球を観測する計画だそうです。

小型SAR衛星と言えば、同じくコンステレーションを構築して地球を観測予定のICEYEが、年始に打ち上げた衛星画像を先日公開しました。

下記よりダウンロード可能ですので、SAR衛星の画像でどのようなことが分かりそうか、ぜひみてみてください。
個人的には、SAR画像への理解が進みますのでGoogleMapで同一地点を探し、並べて見るのがおすすめです。
※ダウンロードにはユーザー登録が必要です。
ICEYE-X1 EXAMPLE SAR DATA: ORTHORECTIFIED GEOTIFF

3.金融機関がOrbital Insightとの提携を発表

Orbital Insight and RBC Capital Markets Partner to Incorporate Geospatial Analytics into Next-Generation Sell-Side Research for Customers – globenewswire.com

外国債券の販売業務を行っているカナダの銀行であるRBCが、データ解析により経済動向を導き出すOrbital Insightと提携した、という発表がありました。

金融業界では、損失を増やすわけにはいきませんし、債券や株価がどうなるか、などの予測精度向上は必須です。予測精度向上のためには、正確な情報・状況を知る必要があります。

今までは人海戦術などで経済動向がどうなりそうか、という情報を入手していたと思われますが、今回の提携から、RBCはOrbital Insightが導き出す結果が「信用するに足る」というように判断している様子が示唆されています。

RBC自体は東京にも支社を持っているような銀行ではありますが、衛星データだけで各国・各企業の動向が分かるようになってくると、支社もなくなっていくのでしょうか…。宇宙分野の発展とともに、各分野がどのように変化するのか、ということも楽しみな点ですね。

まだまだ私たちが個人的に直接購入するには高価な衛星写真ではありますが、1枚当たり100万円を超えるような衛星写真であったとしても、損益が支出よりも大きく変化する金融業界のような場合には、衛星写真を定期的に購入する、というのが当たり前になってきているのかもしれません。

このような知見が蓄積されると、どこかの金融企業が衛星を購入し、運用する日もくるかもしれませんね。

【参考記事】