NASA主催! SpaceAppsChallengeで生まれた衛星データ利用アイディア5選+湯村さんおすすめ6選
「SpaceAppsChallenge」で生まれた過去の面白く、わくわくするアイデアをまとめてみました。
「SpaceAppsChallenge」というハッカソンをご存知ですか? これは、毎年NASAが主催する世界各国各所で行われるハッカソンです。
今年も10/19~21に全世界で一斉に開催されます。宙畑として注目しているのが衛星データを利用したアイデア。本記事ではこれまでの衛星データを利用したアイデアを5つ厳選してまずはご紹介。
さらに、Space Apps Challenge Tokyo 事務局長(2014-2015)を務められた湯村さんに、衛星データ以外の過去の面白い事例を厳選していただきました!
自由度の高い宇宙のアイデアにワクワクすること間違いなしです。
(1)NASAが主催する「SpaceAppsChallenge」とは
「SpaceAppsChallenge」では、NASAやJAXAの提供する様々なオープンデータを元に、まずは科学者が使い方を説明。その後、一般の方がアプリやグッズを考え、開発し、企業は協賛の形でイベント開催をサポートするハッカソンイベントです。
各会場の上位2作品が、後日開催される国際コンペティションに参戦。世界中から選出されたアプリとその成果を競います。
(2) 衛星データ利用アイディア5選
■ 事例①:花粉を避けるルート検索!
【概要】
花粉症持ちの方にとっては目から鱗のサービスアイデアが2017年の「Best Use of Data」部門のWinnerでした。Googleマップは目的地までの最短距離を教えてくれますが、このサービスでは「花粉を出す木の近くを避けて通る」ルートを教えてくれます。
方法としては、木の情報がオープンデータとなっている街の衛星データ(NDVI/植生指数)を見て、過去の天気情報も合わせて、ユーザーが目的地到着までに花粉を出す木の横を通らないルートを教えるというものでした。
【今後の展望】
花粉を出す木の波長の特性を特定できれば、木の情報がオープンデータになっていない街でも、同様のルート検索ができそうだ、とのことで期待が高まります。
■ 事例②:理想的なビーチスポット検索
【概要】
ビーチを選ぶところから、ビーチにいる間の危険回避までサポートしてくれるアプリ。
紫外線や有害な藻の情報、波の速度などビーチのリスク情報を提示。また、選んだビーチまでの最適なドライブルートの設定、ビーチについた後はリアルタイムな紫外線情報や津波の情報を提供を提供するというものでした。
【今後の展望】
危険生物の出現情報やビーチの混雑予測なども追加していくとより良いアプリになっていくと期待されます。
※紹介ページ(英語)
https://2017.spaceappschallenge.org/challenges/earth-and-us/lets-go-beach/teams/magic-conch/project
■事例③:NASAのEOSプログラムにもっと気軽に触れる!
【概要】
NASAの地球観測プログラムに興味を持ってもらうという目的のもと開発されたアプリ。
衛星データにアクセスでき、同じ地点の違うセンサで撮影した画像を見比べることができ、リアルタイムな衛星の場所を表示したり、衛星の3Dモデルも見ることができるというものでした。
【今後の展望】
このような活動を通じ、若い世代に地球観測プログラムに興味を持ってもらい、次世代の衛星データ利用者を育成していくことが期待されます。
※紹介ページ(英語)
https://2017.spaceappschallenge.org/challenges/ideate-and-create/1d-2d-3d-go/teams/satrek/project
■事例④:衛星データと病気の相関性を見つける!
【概要】
大気清浄度データを民主化する!をスローガンに、温度、相対湿度、大気汚染などの環境要因の変化をアレルギーや呼吸器疾患の症状の発生と比較するための情報を収集するアプリまたはプラットフォームを開発したチームです。
SNSでの人々の投稿をテキストマイニングしたり、NASAの公開情報を利用して、ローカルな大気汚染のリアルタイム情報を集める、また、独自の地上センサネットワークからも情報を集めるというものでした。
【今後の展望】
ユーザーはWEBポータルから、自分の周辺の大気の汚染度を知ることができます。また、事業者向け(例えばランニングマシンのメーカーなど)にはこれらの情報を使って顧客を教育することができるかもしれません。
※紹介ページ(英語)
https://2016.spaceappschallenge.org/challenges/earth/aircheck/projects/scintilla
■事例⑤:翌日の発電量予測
【概要】
この先数日分の太陽光発電の発電量と消費量を予測する電力マネジメントシステムです。
天気予報と太陽電池パネルがある場所からこの先数日分の発電量を予測し、ユーザーは効率的にどの電子機器を使用するかを選択できるようになるというものでした。
【今後の展望】
発電量の実例を提示し可視化することで、太陽光発電に対する理解が深まることが期待されます。
※紹介ページ(英語)
https://2017.spaceappschallenge.org/challenges/earth-and-us/you-are-my-sunshine/teams/heliox/project
(3)衛星データだけではない! 湯村さんが選ぶ「SpaceAppsChallenge」のおすすめ事例6選
第2章では衛星データを利用したアプリのみ宙畑が気になったものをピックしましたが、「SpaceAppsChallenge」のアイデアは衛星データ利用だけにとどまりません。
実際にどのようなワクワクするアイデアが生まれたのか、Space Apps Challenge Tokyo 事務局長(2014-2015)を務められた湯村翼さんに厳選していただきました。
【湯村翼さんのプロフィール】
■ 宇宙VR:DREAM SPACE SIMULATOR
【概要】
打ち上げから宇宙飛行を体験できるVRアプリ。
スマホのVRと動きに連動する椅子、操作用のレバーとAIから成るシステムで、体験者はVRで流れてくる映像に合わせてレバーで操作を行うことができます。
操作に合わせて椅子も動き、AIで音声認識も行っているようです。
【湯村さんのコメント】
「VRは割と定番ですが、打ち上げ時から宇宙旅行を体験できるのは臨場感があって面白そう。まだまだVR化してないコンテンツたくさんありそうなのでもっと増えてほしいですね。」
※紹介ページ(英語)
https://2017.spaceappschallenge.org/challenges/ideate-and-create/space-jockey/teams/kepler/project
■宇宙用ウェアラブルセンサ:Canaria
【概要】
耳に装着し、心拍数や血中の酸素濃度、空気中の二酸化炭素のレベルを計測するセンサー。データはBluetoothでモニタ装置に収集されます。
宇宙空間だけでなく、地球上で二酸化炭素が溜まるところ、例えば、炭鉱やトンネル工事などの現場でも利用されることが期待できます。
【湯村さんのコメント】
「洗練されたデザインと、機能的な設計で、すぐ実用化されてもよさそうなクオリティの高いプロジェクトです。」
■ハチの巣型宇宙建築:BEe Space
【概要】
火星での居住空間を設計したチャレンジ。
ハチの巣のような6角柱の集合体で作られる居住空間は、それぞれ別々の機能を持っています。
ISSでの研究の成果から、長期間人々が狭い空間の中で暮らすには認知機能の低下や鬱など問題があることがわかっています。
本チャレンジではそういった問題を解決するだけでなく、組み立てやすい構造や環境に配慮した設計となっています。
6角柱はユニット化されており、その組み立て手順や材料まで検討がされています。
地球上で国連総会で設定された目標(SDGs)のうち「すべての人にとって安全で価格の安い家」「持続可能な家を開発する」を2030年までに達成できます。
また、地上で本構造の有用性が示されれば火星での居住空間として適用できることが期待されます。
【湯村さんのコメント】
「細かいところまでよく設計されていて、火星での生活が身近に感じます。」
■折り畳み式惑星探査車:Origami Rovers
【概要】
宇宙探査は持っていける物資のスペースや質量が限られています。このチャレンジは、折り畳み式の惑星探査車(ローバー)で、惑星着陸後自動で展開する構造です。
チーム名に折り紙が入っていることからも分かるように、ローバーが折りたたまれて小さく収納可能。
惑星に到着すると、内部の張力で自然にローバーが展開。風力で走るローバーとなっており、数多くのローバーが展開され、惑星の調査が行われます。
表面は三角型の太陽電池パネルが搭載され、夜でも駆動できるようになっています。
【湯村さんのコメント】
「省スペースな構造物を設計するチャレンジで、折りたたみ・展開可能なローバーを作成。将来の惑星探査ミッションで本当に使われるかもしれないという期待が持てるプロジェクトです。」
※紹介ページ(英語)
https://2016.spaceappschallenge.org/challenges/tech/origami-space-recycled/projects/tumbleweed
■子供向け月面探査アプリ:Kid On The Moon
【概要】
4~8歳の子供向けのインタラクティブな月面探査アプリです。
子供たちは自分の顔写真と名前の入った宇宙飛行士となりロケットで打ち上げられます。月面に着陸すると、動画やゲームなどを通して自由に月面を探検できます。地球に戻ってくるとミッションバッジがもらえ、親御さんにはオフラインのイベントの紹介メールが届きます。
今後は月だけでない他の惑星の紹介や、他の年代の子供たち向けのコンテンツへ展開していきます。
これらの活動を通して、宇宙探査の新しい世代の形成が期待できます。
【湯村さんのコメント】
「子供向けの絵本のようなインタラクティブコンテンツ。完成度も高くて、そのままプロダクトにもなりそうです。」
■ 90秒の超かっこいい地球動画:WHY IS IT COOL?
【概要】
一般の人にいかに地球がかっこいいかを伝える動画を作成しました。
NASAやインターネットで公開されている動画や写真を探してきて、一般の人に地球の科学的なことや複雑なことをシンプルに理解してもらえる動画になっています。
【湯村さんのコメント】
「『地球がいかにかっこいいか』を伝える映像作品をつくるというチャレンジ。疾走感があってとてもいい映像です。」
(4)2018年も「SpaceAppsChallenge」が日本各地で開催!
以上、これまでの「SpaceAppsChallenge」で開発されたアプリを宙畑では衛星データを利用したものを、また、湯村さんのおすすめのものを合計で11事例ご紹介しました。
そして今年も日本では東京、大阪、豊橋、神戸、宇部、会津の全6箇所で開催されます。今年はどんなアイデアが生まれ、開発されるのか、とても楽しみです。
※「Space Apps Challenge」に関する日本のコミュニティはこちら
また、今回ご紹介した事例以外にもたくさんの面白く、ワクワクするアイデアが生まれています。過去の事例は英語になってしまいますが以下から確認できますのでぜひご覧ください。
【過去のNASASpaceAppsチャレンジ一覧】
・2017
・2016
・2015
・2014
・2013
・2012