宙畑 Sorabatake

ロケット・衛星

今後のロケットの市場を取るのは固体推進か液体推進か?

世界中で様々なロケットが開発されていますが、大きく分けて種類が2つ。【固体推進】と【液体推進】です。今後市場を取るのはどちらなのでしょうか。考察しました。

2018年11月にRocket Labが新たに資金獲得を発表し、小型ロケット市場は今まで以上に盛り上がりを見せるとともに、少しずつ産業としても輪郭が見え初めてきています.

小型ロケットの乗客である小型衛星について、米調査会社スペースワークによると需要が2023年には16年比で約5倍の、年間500機以上になると予想。今後世界的に小型衛星市場は大幅な拡大が見込まれており、これに伴い小型衛星を宇宙へ輸送するための小型ロケットの需要も増加すると言われているのです。

そこで今回はこの小型ロケットに関して、コア技術である推進機構の違いからその特徴に迫ってみたいと思います。

近年ブームの小型ロケット

そもそもロケットにおける大型小型の違いはどこにあるのでしょうか?
現在の主な日本のロケットを用いて、サイズを含めた違いを見てみましょう。

国内ロケットの比較(参考文献[7]より宙畑が作成) Credit : sorabatake

現在主に運用されているH2AやH2Bなどの大型ロケットは大量の荷物(ペイロードと呼びます)を運べる分、大型のプロジェクトとなり一回の打ち上げに対し高い費用と打上までに長い期間を要する、大型衛星を宇宙へ運ぶためのロケットでした。

この10年ほどで数を増やしている小型衛星の打上げの際は大型ロケットを専有して打ち上げるにはコストが高く、打ち上げられる質量も余ってしまうため、主となる大型衛星の脇、空いたスペースに”相乗り”させて運ぶという方法が取られてきました。

しかし近年、情報通信や衛星技術の発達から、小型衛星の打上げ需要が高まり、従来の”大型衛星との相乗り”ではなく、より自由度高く打ち上げられる小型衛星単体での打上げが期待されています。 単体で打ち上げるため、質量 当たりの単価としては高くなるものの、打上げの時期や軌道を自由に選ぶことができる小型ロケットへの期待が高まっています。

代表的な小型ロケットのプレイヤー

世界でのプレイヤー

現在小型ロケットの市場にはどのようなプレイヤーがいるのでしょうか?
代表的なプレイヤーを以下示します。

Credit : sorabatake

代表格の1つは先述の Rocket Lab と言えます。シリーズEで1億4000万ドルの資金調達を獲得し、最も勢いのある企業です。また、Rocket Lab はロケット本体の一部を3Dプリンターで製作するなど技術的に見てもユニークな企業でもあります。

海外の傾向としては、アメリカの企業が多くまた従来のロケットメーカに限らず、新たに参入してきたロケット開発を専業とするベンチャー会社が多いことが特徴と言えます。

国内でのプレイヤー

では、国内に目を向けるとどうでしょうか。
現在国内では主に2社がこの市場に参入しようとしています。

1つは「インターステラテクノロジズ株式会社」(以下IST)です。

Credit : IST(参考文献[4])

2019年5月に民間で日本初の宇宙空間(高度100km)到達を成し遂げた、堀江貴文氏がファウンダーを務める企業です。北海道の大樹町を射場とし、打上げ号機ごとにクラウドファンディンで資金を募るなど従来の宇宙企業にはない活動も行っています。
技術的には【液体推進】を採用し、民生品の利用などで打上げコスト削減を目指しているのも特徴です。

2つ目は「スペースワン株式会社」(以下S1)です。

Credit : S1(参考文献[5])

キヤノン電子株式会社、株式会社IHIエアロスペース、清水建設株式会社、そして株式会社日本政策投資銀行など日本の大企業が出資をして作った小型ロケットベンチャーです。技術的には【固体推進】を採用し、世界最小のロケットとしてギネスにも認定された”SS-520”ロケットの技術を活用すると見られており技術面での蓄積の強みがあります。また和歌山県に新たなロケットの射場「スペースポート紀伊」を作る計画が2019年11月に発表され話題になりました。

このように、国内ではいわゆる【液体ロケット(液体推進)】【固体ロケット(固体推進)】のそれぞれの方式を採用した小型ロケットの開発が進んでいます。

推進機構の違い(固体・液体)

仕組みの違い

ではこのロケットの種類の違いとはどういうものなのでしょうか?
少し技術的な話しに入ってみましょう。
先述したようにロケットはその推進機構から大きく【液体推進】と【固体推進】につに分けられます。

【液体推進】液体の燃料と酸化剤を混合し燃焼させることで推力を得る
【固体推進】搭載した固体推進剤を直接燃やすことで推力を得る (ロケット花火と同じ仕組)

左図が【液体推進】方式によるISTのMOMO3号機、右図が【固体推進】方式によるJAXA宇宙科学研究所のSS-520ロケットになります。

外見的な違いとしては、打ち上げ時に比較的小さな炎が見えるのが【液体推進】であり、大きな煙を上げるのが【固体推進】になります。

この推進機構の違いから、全体構造や性能、特徴などそれぞれの方式のロケットは以下のような違いがあります。

推進機構の違い(液体・固体)(参考文献[7][8]より宙畑が作成)
※2020年2月9日記載内容に誤りがあったため修正しました。 Credit : sorabatake

上表よりコスト以外の観点で比較すると、【液体推進】はシステムが複雑ではありますがロケット自体で精密な軌道投入が可能となり、衛星自身が軌道調整をする量が少なくなるため、衛星に優しいロケットと言えます。

一方【固体推進】では構造の簡単さや燃料の扱いやすさから、製造から打ち上げまでにかかるリードタイムが短く、打ち上げたい時にすぐに打ち上げることが可能(即応性に優れる)という点がメリットです。

小型衛星との相性

次に小型ロケットに搭載する小型衛星との相性を見てみましょう。

一般的に小型衛星はサイズが小さく低価格で開発期間が短いことが強みと言えます。一方でサイズの制約により衛星自身で軌道を遷移するための燃料を削減せざるを得ず、ロケット頼りの軌道投入となることも少なくありません。

つまり、小型衛星はロケットのサポートを多分に必要とする(もしくはミッションの精度をを下げざるを得ない)という弱みと、比較的手軽に扱えるという強みを持っていることになります。

従って小型ロケットと小型衛星の組み合わせで考えると、【液体推進】はロケット自体で衛星をしっかり目標軌道まで投入できるため衛星への負担を軽くすることができる”衛星に優しいロケット”と言うこともでき、【固体推進】は衛星・ロケット共々のリードタイムが短く扱いやすいため”小型衛星の強みを活かしたロケット”と言えるでしょう。

これらの特徴を踏まえ、小型衛星の特徴を考慮して性能と相性を整理しましょう。
小型衛星の特徴から、【液体推進】【固体推進】それぞれの特性を、①「扱いやすさ」と②「正確な誘導」の2つで分類し下表に分類しました。

このように、小型衛星の長所である低コストやリードタイムの短さを生かすには【固体推進】が有利ですが、短所である自力での軌道遷移を補うには【液体推進】の精度の高い制御が必要となることがわかります。

つまり、小型衛星との相性に関しては、現段階ではどちらが明らかに有利と言うことは難しいと言えるでしょう。以上より、どちらの機構においても強み・弱みがあるため、衛星との兼ね合いが重要になってくると言えそうです。

コスト面

次にコストの面に関しては文科省より以下のようなペイロードとその時の打ち上げコストについて各方式のみで行なった場合の試算が提示されています。

固体・液体ロケットのペイロード/コスト特性比較 Credit : 文部科学省資料(参考文献[9])

この試算からは、小さなペイロードにおいては構造上【固体推進】の方がコストを抑えやすいことを示しています。理由としては【固体推進】は【液体推進】と比較して構造が簡易であるためです。【液体推進】は心臓部であるエンジンにて多くの部品を必要とし、それによる複雑化は避けられません。
従って、現状の試算では小型衛星に関しては固体ロケットの方がコスト面では有利と言えるのでしょう。また、製造期間や打ち上げ準備の容易さも寄与していると考えられます。

但し、冒頭で述べたように、小型ロケットが”量産”されるとなった場合、【液体推進】エンジンの方が製造方法の違いから量産効果を得やすいと考えられています。但しその効果は量産する”数”によって大きく左右されるため、構造的に低コストな【固体推進】と量産効果を得た【液体推進】のどちらが最終的に”安く”作れるのかは、実際に操業してみないと分からないところだと言えるでしょう。
いずれの方式にしても、いかに早く信頼性の高い安全で安定したロケットを完成させ、その受注および量産体制を確立することで、低価格の宇宙輸送を実現するのが小型ロケット市場の一つのゴールとなるのでしょう。

最後に

性能やコストなど総合的に見ると、現状ではどちらの方式にも長所と短所があり、一概にどちらかがいいとは言うことができませんでした。また技術的にもそれぞれ大きく異なることから、どちらの推進方式を採用するかは、会社や国と言ったレベルでの影響も大きいと言えます。
結局のところ、小型衛星のニーズやそれぞれの方式の利点欠点を上手く生かすことが重要になってくるのでしょう。

日本国内においては、日本ロケット開発の父と言われる糸川先生の流れを汲んだ固体ロケット技術が伝統的に強く、その技術レベルは世界でも高水準にあると言われています。一方で世界的には液体推進の方が比較的主流と言えます。また、液体推進、固体推進どちらも特徴も備えたハイブリットロケットの研究開発も進められており、小型衛星市場の拡大にあわせて、ロケットがどのような形で発展していくのか今後注目です。

参考文献

[1]JAXA 第一宇宙技術部門  Web site

[2]三菱重工業株式会社 Web site

[3]株式会社IHIエアロスペース Web site

[4]インターステラテクノロジズ株式会社

[5]スペースワン株式会社

[6]「国産ロケット、大型から格安まで多彩に 民間も参入、ビジネス拡大の試金石」『ア日本経済新聞(電子版)』、2017年1月9日 朝刊

[7] 株式会社 日本政策投資銀行 航空宇宙室「日本における宇宙産業の競争力強化 ~変革期にある本邦宇宙産業の歩みと将来~」、2017年5月

[8] 内閣府宇宙戦略室「我が国宇宙葬システムを検討する視点(資料4)」、平成25年3月

[9] 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 宇宙開発利用部会「文部科学省における宇宙分野の推進方策について(参考資料)」、平成24年12月

その他の参考図書
[A] G.P.Sutton. Rocket Propulsion Elements. 9th ed. Wiley. 2017
[B] 冨田信之. ロケット工学基礎講義. コロナ社. 2001
[C] 宮澤政文. 宇宙ロケット工学入門. 朝倉書店. 2016