新興ロケットベンチャーAstraが初打ち上げに挑戦!【週刊宇宙ビジネスニュース 2/24〜3/1】
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突如ベールを脱いだロケットベンチャーAstraが初打ち上げに挑戦
宇宙産業のボトルネックが輸送であることから、多くのロケットベンチャーがしのぎを削っている昨今ですが、そんな中、外部に情報を公開してこなかったAstraが突如打ち上げを発表しました。
カリフォルニア州アラメダに拠点を置くAstraは、2月25日にアラスカの打ち上げ場であるPacific Spaceport Complex(PSCA)から最初の打ち上げを実施予定でしたが、悪天候により打ち上げは延期されました。その後も天候は回復せず延期を続けており、最短で3月2日の打ち上げ実施とAstraの公式ツイッターが発表しています。
数多あるロケットベンチャーの中でAstraが注目を集めている点を2点紹介したいと思います。
- 1. 最低限の性能で挑戦するロケット
Astraが目指すのは、最低限の性能のロケットです。
Astraの共同創業者であるChris C. Kemp氏は、同社のロケットのことを「かなり退屈なロケット」とメディアに語っています。
同社が開発するロケットは、その名もずばり「ロケット(Rocket)」という名前で、特別な名前はありません。過去2回試験飛行をしており今回が3回目の打ち上げであることから、今回のロケットの名称は、Rocket 3.0です。
Rocket 3.0の打ち上げ価格は250万ドル程度を目指しており、この価格は小型ロケット市場のフロントランナーであるRocket Labの打ち上げ価格の半分以下です。
共同創業者であり航空宇宙工学の博士号を持つAdam London氏は、「私たちは、最もシンプルで、最も製造しやすいロケットを造りたいと思っている」と語っています。このような設計思想は、インターステラテクノロジズ社のMomoと近く、同社の競合となってくるかもしれません。
- 2. 「The DARPA Launch Challenge」のファイナリスト
今回の打ち上げは、DARPAが実施する技術開発プロジェクト「DARPA Launch Challenge」の一環となっています。
このプロジェクトは、以下のような2つの段階があるかなり過酷なプロジェクトです。
- Launch 1
・DARPAがロケット会社に対して、打ち上げ日の30日前にペイロードの詳細を伝える。
・打ち上げ数週間前に射場の位置を伝える。
・既定の打ち上げ期間内にLEO(地球低軌道)に打ち上げる。
・成功すると、賞金200万ドル獲得
- Launch2
・Launch1の完了から既定の期間以内に、独立した別の射場から2番目のペイロードをLEOに打ち上げる。(現在は一部ルールが変わり、同じ射場の別の打ち上げパッドからの打ち上げという内容になっています。)
・成功すると、賞金1000万ドル獲得
今回のチャレンジには、50社以上が応募し、18社が予選通過。ファイナリストには3社が選ばれました。しかし、ファイナリストの一つのVirgin Orbitはプロジェクトから辞退し、もう一つのファイナリストのVectorは破産したため、Astraが唯一のファイナリストとなっています。
Launch1のペイロードは、
・南フロリダ大学が開発した2つのCubesat
・ロスアラモス国立研究所が開発した国防総省のCubeSat
の合計3機です。
Launch2のペイロードはまだ発表されていません。
Launch1の打ち上げは早ければ3月2日、Launch2の打ち上げは、3月18日から3月31日の間が予定されています。
新興のロケットベンチャーであるAstraがこの過酷なチャレンジを見事達成すると、資金だけでなく、自社の技術力を世界に発信することにも成功します。
今回のチャレンジからは、目が離せません!
SpaceXが、Starshipのプロトタイプの耐圧試験に失敗
SpaceXは2月28日にテキサス州ボカ・チカの開発施設にて、同社が開発中の新型宇宙船Starship SN1の耐圧テストを実施しましたが、失敗に終わりました。
Starshipは昨年11月にも耐圧テストの失敗を経験しており、その時のプロトタイプモデルであるStarship MK1に改良を重ねたものが今回のStarship SN1(serial numberの略)でしたが、同じ結果となってしまいました。
上記の画像にあるロケットで言うとノーズコーンに当たる、Starshipの先端部分は、Elon氏がStarshipの主要部品の中で最も難易度が高いと言及している部分です。
今回の試験は、液体窒素(LN2)を用いてStarshipの強度を評価する低温耐圧試験でした。Starshipは有人宇宙船であるため、強度は非常に大事な項目となっています。今後更なる改良を重ねていくと思われます。
また、Elon氏は、Starship SN2以降は屋内で製造することを検討しているといった内容を個人のツイッターで発信していました。Starshipで使用されているステンレス鋼(SUS301)のアーク溶接は風による影響を受ける可能性があり、ボカ・チカでは強風が吹き荒れる時があることが懸念点のようです。
ロケット開発会社として前人未踏の記録を打ち立ててきたSpaceXですが、新しいチャレンジに失敗はつきものです。それに、現在のStarshipはプロトタイプの段階ですので、失敗を経験し不十分な点を洗い出すことは今後の成功のために避けては通れません。
日本人の前澤氏が搭乗予定のStarship。今後の更なる改良に期待です!
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参考文献・HP
How a California startup aims to prove it could launch orbital rockets on a daily basis
The clock is running for the DARPA Launch Challenge, with Astra chasing $10M prize
SpaceX Boca Chica - Starship SN1 cryo proof test failure - Feb 28, 2020
SpaceX's Starship SN1 prototype appears to burst during pressure test