宙畑 Sorabatake

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独自の軌道投入システムを検討するSpinLaunchが3500万ドルを調達!【週刊宇宙ビジネスニュース 1/13〜1/19】

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

独自の軌道投入システムを検討するSpinLaunchが3500万ドルを調達

人工衛星を軌道投入させる新しいシステムを検討しているSpinLaunchが、シリーズBの資金調達ラウンドで総額3500万ドルを調達したことを発表しました。今回のラウンドではリードインベスターのAirbus Venturesをはじめ、venture capital funds GV・KPCB・Catapult Ventures and Lauder Partners・個人投資家のJohn DoerrとByers Familyが参加しました。

2014年に創業者兼CEOであるJonathan Yaneyによって創業されたSpinLaunchは、今回が4回目の資金調達であり、調達額の総額は約8000万ドルにのぼります。

同社は、いわゆるロケットを打ち上げる企業とは異なる方式で軌道投入することを試みているユニークな企業です。大砲を撃つように、地上に設置した装置から小型ロケットを空に向けて発射(カタパルト発射)し、軌道投入することを目指しています。装置で小型ロケットを極超音速で打ち出し、最終的な軌道投入時のみ小型ロケットに搭載した燃料を使用する為、既存の打ち上げの仕組みよりも安価に打ち上げることができる、と同社は述べています。

形式は異なりますが、試みとしては、小型ロケットを航空機に取りつけ、空中発射することで軌道投入を目指しているVirgin Orbitに近いです。(Virgin Orbitについてはこちらの記事で取り上げています。)

衛星を軌道投入させるカタパルト Credit : SpinLaunch

同社は最終的に1日に最大5回の打ち上げを目指しており、一回あたりの輸送費は約25万ドルにまで下げられる見込みのようです。

同社はSpaceport Americaと協力して、2019年5月7日に約700万ドルを投じてニューメキシコ州に新たなSpinLaunch用の試験施設の建設を開始するなど、事業化にむけて非常に意欲的です。

更に、SpinLaunchはペンタゴンの防衛イノベーションユニットからOTA*1契約を締結し、ペンタゴンが同社のシステムで衛星打ち上げを実施することについて検討が開始しているそうです。

同社は技術的な情報を外部に一切公開しておらずベールに包まれていますが、Airbus Venturesのような宇宙技術に詳しいVCからも資金調達に成功していることから、開発は順調に進んでいるのではないかと考えられます。

ただし、技術的な壁を乗り越えることが出来たとしても、現在の商用打ち上げライセンス制度は従来のロケット打ち上げのものなので、今後同社の取り組みを商用化するには、規制上の障害に直面する可能性があります。

宙畑メモ

OTA:Other Transaction Authorityの略であり、1960年代のNASAへの適用以降、多くの政府研究開発機関に活用されている制度のことです。具体的には、
・研究開発機関が計画の立案に当たり事前に自由に企業と話し合うことを許容。
・価格競争によらず、計画遂行に必要な技術を重視して契約を行うことが可能。
・契約関係は主従の関係よりは協力者(パートナー)の関係と位置付ける。
といった内容が含有されています。

小型ロケットベンチャーのRocket Labのように、小型ロケットの打ち上げ頻度を向上させることで打ち上げコストをさげる事が一番効果的か、同社の取り組みのように、新しい打ち上げシステムを導入することが打ち上げコストを下げるのに一番効果的かは、まだまだ分かりません。今後のSpinLaunchに注目です!!

カリフォルニア州ロングビーチにあるSpinLaunch本社。
Credit : SpinLaunch

政府を顧客とした宇宙ベンチャーの増加と課題

1月14日に、民間宇宙産業の発展のためのリーダーシップフォーラムであるWashington Space Business Roundtable (WSBR)にて、ベンチャー投資に関するディスカッションが実施されました。

議論をするBryce Space&TechnologyのCEOのCarissa Christensen氏(右) Credit : SpaceNews/Caleb Henry

Bryce Space&TechnologyのCEOのCarissa Christensen氏は、「2019年は、民間宇宙産業にとって、まさに政府の年でした。多くのベンチャーが、潜在的な顧客として政府から舵を切る(ベンチャー企業としてより強固なビジネスモデルを支える民間顧客の開拓)ことをしなかった」と述べました。

Christensen氏は、宇宙ベンチャーの米国政府間契約への関心が高まっている理由はいくつかあると語ります。宇宙軍の設立やNRO(国立偵察局)からの研究契約の増加により、一度の契約金額が大きい場合が多い政府事業は宇宙ベンチャーにとってより関心が高いものになっている、と彼女は述べます。また宇宙ベンチャーが政府契約に高い関心を寄せることで、商業宇宙市場の発展が遅れる懸念もあるだろうとの声もあがりました。更に、伝統的であり手続きが煩雑な政府契約は、時間が勝負である宇宙ベンチャーにとって厄介なままであるのが問題だという意見もイベント内で出ていました。

政府の案件を受注することも宇宙ベンチャーが成長していく上で大きな実績にもなりますが、政府以外の顧客をどのように開拓していくのかにも注目していく必要がありそうです。

その他、NASAがAWS(アマゾンウェブサービス)のAmazon Machine Learning Solutions Labと連携し、太陽嵐の予測を機械学習で実施していくというニュースもありました。今後、機械学習やディープラーニングといった技術と宇宙産業がシナジーを生んでいく流れは加速しそうです。

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