宙畑 Sorabatake

衛星データ

自分好みの牛肉をお取り寄せ! 239種の国産銘柄牛を衛星データで比較してみた

200種類を超える銘柄牛の牧場を衛星データと気象データで比較し、自分好みの銘柄牛を探して購入してみました。

突然ですが、最近美味しいものを食べられてますか?

新型コロナの影響で、外食も旅行もできず、食の贅沢も奪われて悲しい昨今、なんとか美味しいお肉をお取り寄せしたいと考えたのですが、安易に松坂牛、但馬牛に飛びつくのも趣がないなと思ってしまったのが本企画のハジマリ。

今回、200種類以上の国産銘柄牛について、その牧場の周辺環境をTellusのデータを用いて様々な視点から分析し、自分にぴったりの国産銘柄牛を見つけるチャレンジをしてみました。

※牧場の調査はかなりざっくりと行っているため、誤情報も混ざっている可能性があります。本記事の登場するデータは、参考程度にご覧いただけますと幸いです。
※本記事は宙畑メンバーが気になったヒト・モノ・コトを衛星画像から探す不定期連載「宇宙データ使ってみた-Space Data Utilization-」の第20弾です。まだまだ修行中の身のため至らない点があるかと思いますがご容赦・アドバイスいただけますと幸いです!

本記事はTellusの開発環境を使って解析を実施しております。実践したい方はぜひTellusの登録をこちらから。

(1)国産銘柄牛の牧場を調べ、緯度経度情報をまとめる

まず行うのは、国産銘柄牛(産地、品種、格付け、飼育方法といった一定の基準を満たした牛肉)の牧場調査。今回は「銘柄牛肉検索システム」に掲載されている銘柄牛の牧場住所を調査しました。

本サイトに掲載されていた銘柄牛は全部で239種類。牧場の位置が不明な銘柄牛もありましたが、ほとんどの銘柄牛は、育てられている場所を市町村単位まで把握できました。
※市町村単位までのみ把握できた銘柄牛の緯度経度情報は、該当する市町村の中心を今回の計測基準の地点としています。
※今回、各銘柄牛において、ネット状の調査で発見できた牧場を任意でピックアップしており、すべての牧場を把握できているわけではありません。

調査が完了した緯度経度情報を衛星データプラットフォームTellusの可視化ツールであるTellus OSに反映してみた結果が以下になります。

200件を超えるとワケが分からなくなりますね……

(2)比較するデータを決める

牧場の位置情報が分かったところで、比較するデータを決めます。

まず、個人的に好きな牛肉の特徴をもとに、独断と偏見で条件を考えてみます
※今回の条件と実際のお肉のおいしさは異なります。あくまで選び方のひとつとしてお楽しみください

・ハラミがおいしい
⇒横隔膜付近の筋肉が発達している
⇒①標高が高く、空気が薄い場所で飼育されている

・柔らかい
⇒ストレスを感じにくい、自然豊かな場所で飼育されている。
⇒②半径1km以内の植被率が高い&③気温差が緩やか

・ユニークなこだわりがある
⇒ネットでそれぞれの牧場のこだわりを検索

上記条件から、今回はTellusにあるデータの中から以下3つのデータを用いて比較を行うことに決定。

●標高の高低:衛星データ(ASTER GDEM)
●気温差の大小:アメダス(気温情報)
●周辺の植被率:衛星データ(AVNIR-2)

上記3つの指標の偏差値とその合計値を求め、それぞれの銘柄牛の特徴と通販で購入可能か否かを調べ、取り寄せる銘柄牛を決めます。

では、さっそくデータを確認していきましょう。

(3)実際にデータを抽出してみた

1.標高の高低(ASTER GDEM)

ASTER GDEMは、水平解像度30m相当、高さ方向精度7~14mの標高データで、経済産業省が開発したASTERセンサのデータをもとに作成したもの。

宙畑でもやまびこができるスポット探しや、森林限界を確認するために利用しましたが、今回は牧場の標高データ取得に利用し、標高が高い牧場を15個並べたものが以下になります。

「ワイン」「りんご」と飼料のこだわりに関する名前を冠した銘柄牛が1,2位にランクイン!

結果としては、「甲州ワインビーフ」を育てている牧場が1,134mと最も標高が高いという結果になりました。

実際にweb検索すると標高1,200m以上の肉牛牧場もちらほら出てくるのですが、今回の国産銘柄牛の牧場調査では引っかからなかったようです。例えば、標高1,400mの場所にあるまつき牧場は焼肉店の直営牧場のようでものすごく美味しそう……行きたい……

2.気温の高低、気温差の大小(アメダス1分値)

アメダス1分値データは、気象庁の保有する全国各地の地域気象観測所(アメダス)で得られた1分値データで、降水量、気温、風向、風速、日照時間、積雪の深さなどが確認できます。

今回は気温データに絞り、
・2017年の年間の最高気温
・2017年の年間の最低気温
・気温差(※)が小さい
・気温差(※)が大きい
※前日との気温差(前日の最高気温、当日の最低気温の差分を取得)が年間で最も大きかった時の気温差
上記4つの指標について、ランキングを出してみました。

気温データは地域によって大きく乖離があり、とても興味深いランキングとなりました

北海道はさすがに寒いですね……。また、最高気温ランキングのトップはてっきり沖縄だと思っていましたが、福岡県というのは意外でした。
※今回は年間の瞬間的な最高気温を取っているため、年間の平均気温を取るとまた違ったデータになるでしょう。
※そもそも牧場の住所があっているのかも少し不安になっています苦笑

3.周辺の植被率(AVNIR-2)

AVNIR-2はJAXAの「だいち」という衛星に搭載された光学センサで、人間の目で見るのと同じ可視光データ以外にも、近赤外線の波長を用いることで地上の植生を把握することができます。

国産銘柄牛の牧場の周辺の植生状況を見ることで、牧場がどの程度自然に囲まれているかを確認するため、今回は牧場を中心に1km圏内の植生を調査しました。

半径1kmの植生状況を可視化して切り取った図は以下のようになります。

牧場を中心に1km圏内の植被率が大きい順に15の国産銘柄牛を並べてみると以下のようになりました。

牧場の植生率ランキングは98.7%以上でも15位と激しい争い……!

最も自然に囲まれている国産銘柄牛は「あおもり十和田湖和牛」となりました。
※あおもり十和田湖和牛の住所は牧場不明で旧十和田湖町の中心地点を基準にしているため、実際はみついし牛が1位かもしれません

(4)お取り寄せする国産銘柄牛を決める

では、データが揃ったところで今回お取り寄せしてみる国産銘柄牛を選びたいと思います。

おさらいすると、今回お取り寄せする国産銘柄牛の牧場に求める環境は以下の3つでした。
・標高が高い
・気温差が緩やか
・半径1km圏内の植被率が高い

さっそく3つの項目で偏差値をそれぞれ算出し、合計すると以下のようになります。

さらに、上位にランクインした銘柄牛の中から、こだわりがあり、通販で購入できる銘柄牛を探したところ、「甲州ワインビーフ」が該当しました。

あぁ……美味しそう…… Credit : 甲州ワインビーフ・甲州牛 小林牧場公式HPより Source : https://www.winebeef.co.jp/beef

甲州ワインビーフが育てられている牧場は、今回調査した牧場の中では最も標高が高い場所で飼育されています。また、自然豊かな場所という観点でも高順位にランクイン。

さらに、ワインの生成時に発生する葡萄の搾りかすを飼料の一部とすることで、従来の飼料で育つ牛よりも肉の酸化が進まず、柔らかい赤身の肉になりながら、牛肉の臭みも減るため、食べやすく赤身がおいしい牛肉になっているとのこと。こだわりも◎ですね。

ということで、甲州ワインビーフを購入してみました。残念ながらハラミの購入はできないようでしたが……レトルトでビーフシチューとビーフカレーもあるようでしたのでこちらも合わせて購入(自費)。早く食べたい……!

(5)まとめ

衛星データを使うことで、200箇所以上もの離れた場所の定量データを簡単に集めることができました。今回のように離れた地点の相対的な比較に衛星データはとても有効なツールです。例えば、地方自治体の方が特産品を売り出すときのキャッチコピーを考える参考に利用したり、特定の条件下で新しい施設を建築する際の参考データとしても有効でしょう。

また、今回利用したのは標高、気温、植被率の3つのデータのみですが、Tellusに最近追加された雷観測データ(雷の音がストレスになっているか否か)や、モバイル空間統計データ(人と触れ合うことがストレスになっているか否か)などを調べてみるのも面白いかもしれません。牛に限らず、特定の野菜について調べてみるのも面白そうです。

ぜひ読者のみなさんも思いついた企画があればどんどんTellusを触ってみてください。

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(6)利用したコード(後日公開)

本記事を作成する際に使用したcsvデータと利用したコードの一覧は後日公開予定です。公開まで少々お待ちください。