宙畑 Sorabatake

ニュース

超小型衛星ハッキングの危険性に指摘【週刊宇宙ビジネスニュース8/13~8/19】

毎週宇宙ビジネスの気になる話題をピックアップする本連載! 今週は2018/8/13~8/19までの話題です。

一週間に起きた国内外の宇宙ビジネスニュースを厳選してお届けする連載「週刊宇宙ビジネスニュース」は毎週月曜日更新!

今週は中国の小型ロケットスタートアップへの投資など、ロケットに関する話題もいくつかありましたが、衛星に関する情報に絞って3本のピックアップお届けします。

1.ボーイングが小型衛星を開発するMillennium Space Systemsを買収することを発表

衛星製造大手のボーイングが、防衛向け小型衛星に強みを持つMillennium Spaceを買収というニュースが入ってきました。ボーイングはこれまで500kg以下の小型衛星をラインナップとして持っていなかったので、今回の買収はその領域の補完になると思われます。

かつて通信衛星製造市場を牽引していたボーイング含む大手5社の他4社の動向を見ると

・SSL
超小型で高分解能な衛星写真を撮影可能なSkySat衛星(PlanetLabs社)の製造を受注

・AIRBUS
超小型衛星開発の老舗であるSSTLを買収し、ソフトバンクの投資で話題となったOneWebの衛星製造を受注

・Thales
高性能な小型衛星であるBlackskyの衛星製造を受注

・Lockheed Martin
Tyvakと超小型衛星バス開発

と大型衛星のみならず、小型衛星業界に参入していることを考えると、最後の1社であるボーイングの今回の動きは必然かもしれません。

ボーイングが開発する衛星とミレニアムスペースシステムズが開発する衛星の比較 Credit : 宙畑

高頻度で観測可能な小型衛星と、高精度な情報を取得できる大型衛星を組み合わせてデータ解析する流れが一般的になりつつあり、衛星製造メーカとしては、大型・小型両方のラインナップを揃えることが重要になっていると思われます。

また、その際に、大型・小型では開発思想・開発に必要な設備が異なるため、小型衛星開発技術を有する企業を買収するという決断がされていると考えられます。

【参考】
Boeing to acquire El Segundo small-satellite maker Millennium Space Systems

2.画像解析会社であるDescartesLabがAirbusと組むことを発表

今までは(防衛的な側面が中心だったため)見ることができれば十分だった地球観測情報をビジネスとして利用するためには、ユーザが必要とする情報へと加工・解析することが必須です。

たとえば、オービタルインサイト社の解析事例を挙げると、ユーザは自動車が見たいのではなく、自動車の駐車台数により、どのような経営状態にあるのかを知りたいわけです。

そのため、近頃では衛星データのプラットフォームが様々に展開されています。

今回の発表では、衛星画像の解析会社であるデカルトラブスと、地上分解能50cmと高解像度な画像を撮影する衛星を運用中のエアバスが組むこととあります。

今までにない知見(インサイト)がデータプラットフォームで展開され、それをユーザが利用することでさらに付加価値がついた情報が生まれるのではないか、と期待されます。

日本でも、さくらインターネットがTellusというデータプラットフォームを発表しました。

年内にベータ版が公開される見通しとなっており、衛星画像を利用することで、どのようなことを知ることができるか、他のプラットフォームを利用しながら考えてみるのはいかがでしょうか。

プラットフォームは様々にありますが、例えば下記のようなものが挙げられます。
Geocento
descarteslabs
Google Earth Engine
Copernics
EO browser

【参考】
Descartes Labs Platform Emerges from Beta with First Non-Satellite Data Set and Airbus Partnership” by @DescartesLabs

3.超小型衛星に対してもセキュリティを求める動きが

安価で気軽に開発できる小型衛星が多く打ち上げられる中で、情報セキュリティの機能を有することを求める動きが出始めています。

既に地上分解能(地上判別精度)が高い衛星については、リモセン法と呼ばれる宇宙の法律により、暗号化が求められていますが、そうでない衛星については、セキュリティ対策をしていなくても、特に問題がない状況にあります。

しかしながら、小型衛星の高機能化により、推進系を有するものもいくらかでてきています。また、今後推進系を搭載している小型衛星の割合は増していくと言われています。

推進系を有する小型衛星について、セキュリティ対策をしていないと、ハッキングにより衛星を乗っ取られ、小型衛星を他の衛星に当てに行く危険性が主張されているのです(スペーステロとでも言うのでしょうか)。

小型衛星であってさえも、他の衛星にぶつかることで、ケスラーシンドロームと呼ばれるように、デブリ(宇宙のゴミ)を大きく増やす危険性があります。実際に、過去に衛星同士がぶつかった際には、デブリの数が大きく増えました。

持続的に、そして平和的に宇宙を利用するためにも、このように情報セキュリティを求める動きは必然と言えるかもしれません。

【参考】
“No encryption, no fly” rule proposed for smallsats – SpaceNews.com

【今週のニュースに関連する宙畑記事】